星のカービィ デデデ大王の脱走大作戦!

登録日:2021/07/21 (水曜日) 00:03:34
更新日:2024/09/26 Thu 00:44:48
所要時間:約 21 分で読めます





真犯人を見つけ出し、
ごちそうを取りもどせ!!


『星のカービィ デデデ大王の脱走大作戦!』とは、角川つばさ文庫より出版している小説版星のカービィシリーズの一作である。
作:高瀬美恵
絵:苅野タウ・ぽと
対象年齢:小学中級から
価格:680円(税抜)


概要

つばさ文庫版星のカービィシリーズの第20弾。
2021年7月14日に刊行された。

第20弾という大台に乗った本作は、遂にデデデ大王が明確な主役として抜擢された。
過去にもデデデ大王がフィーチャーされた回はあるにはあるが、いずれもデデデだけが物語の主役というわけではないので、彼単独が取り上げられるのはこれが初。
……その記念すべき回でよりによって食料を盗んだ濡れ衣で捕まるのは、果たして何の因果だろうか。
長くシリーズが続き、色々掘り下げられてきたデデデの人柄が更に掘り下げられただけでなく、物語の核にも「王」の存在が関わっており、それに伴って「理想の王とは何か」というテーマが据えられている。
また、星のカービィの世界観では極めて珍しく、イスラム教の要素(後述)を取り入れた、宗教色の強い国が舞台なのも特徴。

オリジナルキャラも登場する。


あらすじ

デデデ大王とワドルディ、カービィは、山もりの
ごちそうがふるまわれるお祭りに参加するため、
砂の惑星・ミノーレへ出発! でも、お祭りの
ごちそうをぬすんだぬれぎぬを着せられて、
大王とワドルディが牢屋に入れられてしまった。
二人を救出するため、カービィとメタナイトは
調査に乗り出すが…? いっぽう大王たちは、
ミノーレの少年・アリーと脱走大作戦を決行!
真犯人を見つけ出し、ごちそうを取り戻せ!!!
デデデ大王が大かつやく! 大冒険のお話だよ!!
(裏表紙より引用)


登場人物

レギュラー

自分勝手でわがままな、自称プププランドの王様。
カービィに負けないほどの食いしんぼう。

「朝は小さなパンケーキ一枚、昼はおかゆ一杯、そして夕ごはんがこれか! この宿屋は、町でいちばんと聞いていたのに、なんということだ……!」

本作の主役。
食べ放題のお祭りに参加しようとワドルディ、カービィと共に惑星ミノーレへ向かう。
だが出発前、ワドルディが断食のことを説明したにもかかわらず全く聞かなかったため、初日から飢えに苦しむ羽目に。
おまけに食料庫から食べ物を盗んだ犯人として決めつけられ、ワドルディと一緒に牢屋に囚われてしまった。
濡れ衣に怒り心頭のデデデは真犯人を見つけ、無実を証明するべく、牢屋で出会ったアリーと共に奮闘することになる。

ミノーレ独特の風習のせいで常時食い物に困っていることに加え、怒り(と食い意地)から早く真犯人を捕らえようと躍起なせいか、冷静さを欠いた言動が多々見られる。
一方で、カービィの助けなど当てにしないと言いつつも、彼の居場所を知らせる作戦に気付いた時は一瞬嬉しそうにしたり(ワドルディに見られてすぐ隠したが)、いつもの如くワドルディを大切に扱っていたりと、単なる自分勝手だけではない憎めなさは健在。
謎が多いアリーの正体を察するなど、例によって勘が鋭いところも。
ただし、今回に限って言えば彼の推測は外れていた。


デデデ大王の部下でカービィの友だち。

「大王様がぐーたら遊んでいられるのは、プププランドが平和だからですよ」

偶然届いた旅行のチラシを彼が見つけ、ミノーレの事をデデデに教えたのがきっかけで今回の物語が始まった。
しかし、食べ物を盗んだ犯人として捕まったデデデ大王を庇おうとして、自身も牢屋に入れられてしまう。
本作では(小説版の)デデデ大王を「りっぱな王様」と評し、理由をアリーに問われて説明する場面があるのだが、その解釈が実に的を射ていて唸らされること請け合い。上記台詞はほんの一部であり、是非とも手に取って読んでみて欲しい。
更に終盤、前作を経てかデデデ城のトレーニングルームで鍛え続けていたことが発覚。非力ゆえに戦闘では活躍できないことが多かった過去作とは、まるで見違えるような活躍を見せてくれる。


食いしん坊で元気いっぱい。
吸い込んだ相手の能力をコピーして使える。

「ぼくなら、一口でりんご百個は食べられるよ! りんご百個食べたいよ~!」

祭り前の断食のことを知らず、デデデ達と同じく飢えに苦しむ(話を聞いてなかったので自業自得)。
デデデ達が囚われた時は無実を証明するため、真犯人を捕まえようと動くが、流石に一人ではどうにもならずボロボロの姿でメタナイト達に助けを求めた。
中盤で変装するために紙袋を被ったカービィの挿し絵は必見。


常に仮面をつけていて、すべてが謎に包まれた剣士。

「放っておくわけにもいくまい。それに、デデデ大王に貸しを作るのも悪くない」

戦艦ハルバードでのお茶会中にカービィからの通信が入り、デデデに貸しを作っておくのも含めて協力することに。
相変わらず目的のためなら容赦がなく、自身の知名度とプレッシャーで宿屋の主人に聞き込みを行う場面はほぼカタギの後ろめたい弱みを握っているヤクザの脅迫である。
本来の予定ではそれさえ済めば、後は事の真相を兵士の詰め所で証言するだけだったのだが、既にデデデ達が脱走した後だったため折角の聞き込みが無意味に*1
これ以上、彼らに下手な立ち回りをする(させる)とデデデの潔白証明が困難になるため、合流する際に兵士達に追われた時は、自身含めて戦闘を避けることを優先した。それが無ければきっと派手に大暴れしたかったことだろう


惑星ミノーレ

  • 宿屋の主人
「あいつです! うちの宿屋に泊まってる、あいつが犯人です!」

デデデ達が泊まった、ミノレーゼの宿屋の主人。
一日目の夜中、レストランを探しに宿屋を抜け出そうとしたデデデを止めるが、食料が盗まれた事件の翌日になんと宿泊客であるはずのデデデが犯人だと虚偽の告発をし、兵士達に引き渡してしまった。
どう考えても本当の事を隠しているため、カービィ達からは目下重要人物としてマークされることになる。


  • 大臣
「大事な食料をぬすんでおいて、なんと、しらじらしい。兵士諸君、こいつらを牢屋に放りこめ!」

惑星ミノーレの大臣。でっぷり太ったヒゲの男。
食料が盗まれた事件の翌日、宿屋に訪れて主人の証言をもとにデデデを犯人と断定、捕らえるよう命令する。
一方で「ヒャヒャヒャ」という露骨に悪人じみた笑い声や、宿屋の主人には昨晩起きた「何か」を口止めしているなど、あからさまに怪しい発言も目立つ。


  • アリー
惑星ミノーレの住民。
長い間、牢屋に入れられている。

「おまえら、うたがいが晴れないかぎり、自分たちの星に帰れないぜ」

囚われのデデデとワドルディ、その隣の牢屋にいた囚人。
見た目はターバンを被ったアラビア風衣装の少年で、一人称は「オレ」。

どこかだらしない性格の子供で、何故か長いこと牢屋に囚われており、最初は先輩面してデデデ達に囚人同士仲良くしようと話しかける。
だが、無実の罪で捕まった二人を気の毒に思い、一転して協力を持ちかけ、看守を騙して町へと脱走した。
以後は三人で身を隠し、たまたま見つけたレストランで食料にありつきながら機を待ち続けることとなる。

この国、特に先代の国王について思うところがあるらしく、デデデ達や町の住民から聞いた悪評にショックを受けたような素振りを見せ、
大王を名乗るデデデに対して「良い王様って、どんな王様のことなんだ?」と質問攻めしたことも。
更に、普通の住民なら知り得ないはずの王宮の構造を把握しているなど、只の少年ではないことからデデデやメタナイトに怪しまれるが……。



  • 「たっぷり亭」の店長
「いいわよ。少しだけど、分けてあげましょう」

牢屋から脱走後、腹をすかせるデデデ達が見つけたレストラン「たっぷり亭」の店長。
料理店の気の良い女将さんといった印象がうかがえ、腹ペコの人を放っておけない優しい人。
ミノーレの掟には従いつつも空腹に困る旅行者をかわいそうに思っているらしく、こっそりと食べ物を分けてくれた。
しかも、後で手配書からデデデ達がそれと同一人物だと気付いても、本当に犯人なら空腹にはならないはずと兵士達に告発せず隠し通した。
この人がいなかったらデデデ達はとっくに飢えで倒れていたことだろう。


  • 食料を盗んだ真犯人
ミノレーゼの食料庫から食料を盗み去った人物。
当然ながらデデデとは違うのだが、虚偽の証言によってデデデがその犯人と疑われてしまい、更には脱走したことでワドルディ達も含めて指名手配書が町中に貼られてしまった。



  • 国王
惑星ミノーレを治める王様。
神に祈りを捧げ、雨や風を起こす不思議な力を持っており、そのおかげで首都ミノレーゼだけは水に恵まれ、野菜や果物を育てることができた。
普段は王宮の奥に閉じこもって滅多に姿を見せず、年に一度儀式があるお祭りの日にだけ白いベールを被り姿を現すという。
そんな国王の在り方を、取り調べ中にベテラン兵士から聞いたデデデは「顔すら知らんヤツを、尊敬できるか?」と懐疑的な反応だったが、兵士が言うには常に祈りを捧げ続ける国王と神様の力が無ければ食料に困るため、住民はありがたみを忘れず感謝しているという。

一方で先代の国王はとんだ怠け者だったらしく、予定通りに雨を降らせず作物を枯らしてしまい、祭りの日に至ってはいつもの半分も料理が作れなかったという。
結果、先代は王宮から追放され、そのいとこが現在の国王となった。



その他脇役・設定など

  • ベテラン兵士
「ちょうど一年ほど前に、国王様が新しくなったんだよ」

デデデの取り調べを担当した、白いひげを生やしたミノーレの兵士。
祭りのために断食すること自体おかしいとわめくデデデに、ミノーレのしきたりや王様のことを説明した。


  • 飛行部隊
ブロントバートやバードンで構成された兵隊。
鐘の音がする方向を目指して飛ぶデデデが確認されたため、捕らえるべくサイレンを鳴らしながら出動した。


  • ディングル
「ひょえ!? や、やめろ、なにをする……ひゃああああああ!」

美しい鐘の音を鳴らす種族。
プププランドに住んでいるのとは違うディングルがミノレーゼに住んでおり、いつも時計塔で決まった時間に鐘を鳴らす仕事をしている。
それに目を付けたカービィが吸い込んで「ベル」をコピーし、デデデ達に居場所を知らせるために力強い鐘の音を鳴らした。


「ワシの推理によれば、それはデデデ大王の犯行にまちがいありませんぞ」
「うらみですね!」
「うらみにまちがいありません!」
「デデデ大王は、うらまれやすい性格だス!」

揃いも揃ってデデデ大王に対する偏見がひどい。日頃の行いの結果とはいえあんたらも前に相当お世話になってるだろ……
アックスナイトとバル艦長は当初、ナチュラルにデデデの犯行だろうと思っていたし、その他の面々に至ってはウソの証言をした主人の動機をデデデに対する恨みだと主張していた。
デデデ大王が主役なので、出番は控えめだが彼らも真犯人の企みを打ち崩す作戦に参加し、終盤で活躍する。


  • 惑星ミノーレ/首都ミノレーゼ
今回の物語の舞台。由来はストレートに「実れ(みのれ)」からだろう。
大地の殆どが砂漠ばかりの過酷な環境の星で、首都のミノレーゼだけは豊かな水に恵まれている。
年に一度、食べきれないほど大量の料理が振る舞われる祭りが開かれ、外から旅行者も参加するほど人気。名物料理は名産品のスパイスをまぶした「特大スパイシー・デラックス・ステーキ」。
しかし、祭りに参加するためには一週間前からミノーレに滞在して断食に参加しなくてはならない掟があり、期間中はどこのレストランも極端に量の少ない料理しか出さなくなる。

掟の元ネタは、祭りの日まで断食する月があるムスリムの「ラマダン」と思われる。


  • 雨呼びの水晶
雨や風を起こすことができる、ミノーレの王家に伝わる秘宝。
国王はこれを使って神様に祈りを捧げて雨を降らし、ミノレーゼを作物が育ちやすい町にしていた。





前『星のカービィ カービィファイターズ 宿命のライバルたち!!
次『星のカービィ ナゾと事件のプププトレイン!?の巻』



追記・修正は七日間の断食に耐えてからお願いします。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 星のカービィ
  • 角川つばさ文庫
  • 苅野タウ・ぽと
  • 高瀬美恵
  • 児童文庫
  • 小学中級から
  • デデデ大王
  • デデデ大王の脱走大作戦!
  • アリー
  • 断食
  • ミノーレ
  • ミノレーゼ
  • 理想の王
  • 2021年
最終更新:2024年09月26日 00:44

*1 大人しく牢屋にいれば証言して釈放できる可能性があったので、余計に疑われることもなかった。とはいえ誰が一番怪しいかという重要な情報は得られたので、完全に無駄だったわけではない。

*2 王宮職から地方の労働に飛ばされているので、事実上大臣をクビになった形とは言える。

*3 ひどい怠け者だという先代国王の悪評や、今の国王が人々に歓迎されている事など。特に後者を聞いたアリオンは「今の国王が良いなら真実を明かさない方がいいのでは?」と考え、一時は只のアリーとして生きようと思っていた。