登録日:2020/03/21 Sat 00:07:40
更新日:2025/05/11 Sun 09:45:53
所要時間:約 12 分で読めます
ナゾとふしぎを追いかけろ!
カービィたちが大冒険!
『星のカービィ 夢幻の歯車を探せ!』とは、角川つばさ文庫より出版している
小説版星のカービィシリーズの一作である。
作:高瀬美恵
絵:苅野タウ・ぽと
対象年齢:小学中級から
価格:680円(税抜)
概要
つばさ文庫版
星のカービィシリーズの第16弾。
国内外が新型コロナウイルスの対応に追われて各業界が大変な時期の最中、予定通り2020年3月14日に無事刊行された。
2019年にゲームとは別路線でグッズ展開されたアートワーク、『
カービィと夢幻の歯車』を題材にしたノベライズ。
このため、同じ小説版カービィでも
パラレルワールドに迷い込む『
カービィハンターズ』シリーズとは異なり、
完全に本編から独立した世界が舞台となる。なのでデデデは大王じゃないし、ワドルディは
城住まいでなく(
ついでに沢山いたりしない)、メタナイトも
戦艦に乗っていない。
原作(?)のスチームパンクファンタジーな世界観をもとに繰り広げられるカービィ達の活躍はどこか新鮮に映るだろう。
……が、その一方で
厳しい階級社会、贅沢で堕落した貴族層、腐敗した権力などといった背景設定も描かれており、久々に
黒いつばさ文庫全開の内容である。
また、例によって小説版独自のオリジナルキャラクターも登場する。勿論読者の期待を裏切らない黒さを見せてくれます
ちなみに、『カービィと夢幻の歯車』については「星のカービィファン」という雑誌でも
それを題材とした漫画が掲載されている。
あらすじ
ここは鉱山の街、ダイヤモンド・タウン。
飛行機乗りのカービィが、楽しく暮らしている。
ある日、鉱山で古代機械が見つかって、街は大さわぎ!
機械を動かすためには、街のどこかに封印された
「歯車」を見つけなければならないらしい。
カービィ、ワドルディ、デデデ社長、メタナイト、
ドロッチェ、そしてマホロアは、歯車を探して大冒険!
でも、どうやら、この「歯車探し」には、
とてつもない悪だくみがかくされていて……!?
(裏表紙より引用)
登場人物
メイン
「かぜのまち」に住む飛行機乗り。
食いしん坊で元気いっぱい。
「でも、そんな機械なんてなくても、コックカワサキのデラックスランチを食べたら、みんな幸せな気もちになれるのにね」
小型飛行機「
ワープスター号」を駆る飛行機乗りで、本作の主人公。本作ではスチームパンク風のゴーグル付き帽子を被っている。世界が違っても食いしん坊で昼寝ばかりなのは変わらない模様で、その性格と飛行機乗りとしての腕前からか、「かぜのまち」では有名人らしい。
今回のカービィは吸い込みはできるが、コピー能力は使用していない(使用不可なのかまでは不明)。しかし、魔法都市の魔物を退治した経験があることから戦闘能力は高い方と思われる。
住居がゲームのようなドーム型の家ではなく
そのうち取り壊される予定の誰も住んでいないボロアパートという地味に衝撃的な生活環境だが、当人は屋上に飛行機を置ける事や、
大声で歌っても怒られない事、冒険に出かけたり荷物運びを手伝ったりの日々を過ごしている事もあり、むしろ楽しく暮らしている。
ライバルのデデデ社長とは飛行機乗り同士、レースで競い合う関係。作中冒頭で
通算百連勝を達成している辺り、結構長い間柄であることがうかがえる。
歯車の話には案の定ほぼ興味無かったが、賞金でたらふく食事ができると分かってテンション上がり、歯車探しの冒険に出かける。
デデデ工場で働く腕ききの整備士。
カービィの友だち。
「カービィならね。でも、願いごとは、みんないっしょじゃないよ」
やはりこの世界でも心優しい性格で、カービィと同様、本作ではスチームパンク風のゴーグル付き帽子を被っている。
カービィとは大の仲良しで、その事について社長からは特に咎められていない様子。
ダイヤモンド・タウンの後述の性質上、お菓子を食べたことが今まで一度も無いため、その中でも特に
チョコレートを食べることを夢見て、カービィと共に歯車探しに出発する。
細かい部分にもよく気づく機転を持ち、それを活かして機械の故障を直してきた。今回の事件の真相に近づく上でもその注意力は大いに発揮される。
デデデ工場の社長。
飛行機乗りで、カービィのライバル。
「あのくらいの墜落で、ケガをするようなオレ様ではない!」
何とまさかの社長。服装もパイロット風になりカッコいい。自称止まりだった本編世界と違い、肩書きは違えどれっきとした権力者である。
カービィとは百回もレースで対決する関係であり、毎回勝とうと躍起になるのだが一度も勝てた事がない。
作中冒頭でも無理が祟ったのか機体が不調に陥った挙句、レバーを力任せに押し込んだせいで折れて墜落……という間抜けな敗北を晒した。しかも墜落はこれまで十七回も引き起こしたらしく、カービィから「墜落に慣れてるもんね」と悪気なく言われる始末。
そういったミスを本人は認めようとせずワドルディに責任を押しつけるが、何だかんだとカービィの実力は認めており、ワドルディの事も部下として大切に思っている。
カービィには及ばないものの、飛行機操縦の腕前自体は決して悪くなく、それ故にある人物に目を付けられる。
わがままで意地っ張りだが、フーゴーと違って曲がりなりにも正義感を持ち合わせ、歯車騒動の真相を知ってから彼と対立することになる。
「ひかりのまち」に住む貴族。
冒険心がある紳士。
「いつもどおりさ。たいくつな会話と、こってりした料理ばかり。うんざりだ」
「ひかりのまち」に住む貴族の一人だが、金には興味がなく、心の奥底で冒険を欲している変わり者。本作では歯車と羽根の飾りを付けたシルクハットを被っており、カッコいい。
逆に刺激のない退屈な貴族社会には辟易している。
以前よりフーゴーの本性を知っており、
ドロッチェから歯車の件を持ちかけられた時も、賞金ではなく古代機械への興味も一端となって行動を開始した。
本作では剣を使わず、どこぞの紳士の如くバラや帽子の羽根飾りを飛び道具として使う。そのせいなのか本編のようなバーサーカー気質は見せないが、代わりに
乗り物を操縦すると人が変わるスピード狂という新しい一面を見せつけてくれる。
敵に自動車のタイヤをパンクさせられた時も窮地なのに
タイヤ自慢しながらキレる程。
「ひかりのまち」に暮らす貴族であるため、「かぜのまち」に住むカービィとデデデ社長とは面識がなかった。
しかし終盤、ワープスター号にカービィと(ついでにマホロアも)同乗した際には互いに「初めて会った気がしない」と意気投合した。
本編シリーズではカービィを厄介者扱いすることが多いので、少々新鮮に感じる。
なお例によって甘いもの好き……なのだが、ドロッチェの作るスイーツが美味しすぎて他のものではもう満足できないとの事(実際、初登場のシーンでは貴族のパーティーに出されたスイーツを頂こうともしなかった)。
おいしいカフェの店長。
しかし、そのウラの顔は大盗賊!
「そこらのドロボウといっしょにしてもらっちゃ困るな。オレは、世界を股にかける大盗賊ドロッチェ!」
「かぜのまち」のカフェ「ドロッチェ・カフェ」を経営する店長。
しかし、裏の顔は悪い貴族から盗みを働く義賊のような大盗賊である。
普段はカフェ店員で裏の顔が赤いシルクハットの義賊的泥棒だが某ありがチューな快盗ではない
歯車探しを始めたのも、フーゴーの悪事を暴き古代機械の秘密を探るためだが、同時に歯車をコレクションするという目的もあった。
部下には多数のチューリンを従えているが、ストロン、スピン、ドクは存在しているのかも不明。
メタナイトとはある事件をきっかけに知り合った仲であり、頻繁に会う程ではないが、事件が起きると
メタナイトの屋敷に忍び込んで知らせてくる。
バル執事からは不法侵入を毎回咎められているものの、ドロッチェ自身は彼がどうにも苦手であり正面から入りたがらないらしい。
食物連鎖的に猛禽類とネズミでは仕方ない
ダイヤモンド・タウンにやってきた薬の行商人。
古代機械にくわしい。
「ウン! タップリ賞金をもらって、ケンキュウジョを建てて、クスリの開発をするのが夢ナンダ!」
夢幻のあんちくしょう。
カービィとは彼が雪の上で転げまわって風邪を引いた時、薬をあげて知り合った関係である。
デデデ社長とも彼がラーメンの食べ過ぎで腹痛を起こした時に薬をあげてからの知り合い。主役とライバルが揃いも揃って何やってんだ
一緒に歯車を探して賞金を分けようとカービィに持ちかけると、歯車探しのより具体的なヒントを与え、歯車を見つけやすくする「魔法の目薬」を与えた。
……と思いきや、その後もデデデ社長、メタナイトの所にも回って同じような話を持ちかけては目薬を与えるという不可解な行動を取る。
果たしてこの一連の行動に秘められた意味とは……?
「サクセン大成功! ボクってヤッパリ天才だナァ!」
やっぱりと言うか、なんと言うか、本当は自分のためだけにダイヤモンド・タウンの人々を利用していた。
だが、その目的というのが意外や意外。
力が欲しいとか支配者になりたいとかではなく、遥か空の彼方に浮かんでいる古代の船「
ローア」を動かす事であった。
余談だが、今回はパラレルであり、特に前科もないはずなのにマホロアが接触したカービィを除く全員に最初は一度疑われている。
存在そのものが胡散臭いのだろうか。
工場の煙に覆われた街の空、その更に上で浮かんでいるという古代文明の船。
本作においては現時点でマホロアの所有物となっていない。
心を持っている、異世界に渡れるといった伝説も存在するが、真実は誰にも分からない。
現在はパーツが欠けているせいでローアを動かすことが出来ず、復活させるには同じ古代文明の技術に由来する歯車が必要だった。
どうやって手に入れたらいいのかマホロアが途方に暮れていた所、ダイヤモンド・タウンで密かにフーゴーが古代文字を読める者を探していると聞きつける。
実際に解読して、欠けている歯車を集めればローアを動かせるかもしれないと考え、フーゴーに助言を与えて今回の作戦に至ったのである。
カービィが持つ星のコンパスで歯車の位置を探し当てた後は、彼とデデデ社長、メタナイトらに協力させ、一同に会した所を強引な理由で箱に集めてまんまと持ち逃げに成功。
賞金より歯車が大事なマホロアにとって、フーゴーも自分に利用されるだけの愚か者に過ぎなかった。
ところが街を脱出しようとした時、そのフーゴーと手下達に出くわし捕らわれてしまう。
彼は最初からマホロアの事など信用しておらず、見張りをつけて動向をうかがっていたのだ。ざまぁ
幸いにもドロッチェとメタナイト、そしてカービィ達が駆けつけたおかげで難を逃れ、その後は
ちゃっかり味方ヅラしてカービィ側についた。
これが本当のドノツラフレンズ
事件解決後、肝心のローアや詳しい動機については触れられないまま共にフェードアウトしてしまうが、一部では「続編フラグなのでは?」と予想する読者もいる。
「ひかりのまち」に住む、やさしい大富豪だと言われているが……?
「賊め……ゆるさん! 必ず、とっつかまえて、痛い目にあわせてやるぞ! じゃまは、させん。古代機械を、必ず動かしてやる……!」
本作のオリジナルキャラクター。「ひかりのまち」に住む有名な大富豪。名前は直球に富豪からだろう。
地の文では一貫して「フーゴー氏」と呼ばれている。
キレると怖いギャングとは関係ない
ダイヤモンド・タウンの事業(鉱山、鉄道会社、パン工場など)殆どを所有しており、事実上ダイヤモンド・タウンの支配者でもある。市民のために寄付やパーティーを行い、そうした善行から市民達にも支持されている。
……が、これらは表の顔に過ぎず、本性は悪どい金儲けや取り引きを裏で行う闇の権力者である。
(意外にも本作までのオリジナルキャラクターと違い、物語前半の早期から腹黒い人物だと明かされている)
極めて自己中心的かつ傲慢な思想の持ち主で、心優しい大富豪というのも虚飾でしかない。
本編のいつぞやのあんちくしょう以上に腹黒く、自分に楯突く者を決して許さない。
ドロッチェとメタナイトに屋敷を荒らされた際に発した上記台詞に、フーゴーという男の本質が見え隠れしている。
金にとても汚く、古代機械に執着するのもその恩恵を独占するため。屋敷でも絵画を金や宝石で飾り付けて金持ちアピールするなど悪趣味の極み。
実は歯車にかけた賞金も払う気などさらさら無く、古代機械の文字を解読してくれたマホロアを含め、最後は発見者全員ダイヤモンド・タウンから追い出してしまえばいいとさえ考えている。
しかも後に古代機械の起動が重大な危機を同時にもたらすと判明しても、それで市民に及ぶ影響など知ったことかとばかりに吐き捨て意にも介さない正真正銘のドグサレ。
兼ねてよりドロッチェは彼の本性と悪事を既に把握していたものの、街の権力者であるため証拠なしに動いても捻り潰される危険があり、今まで行動に移すことが出来ずにいた。
その点では過去作の黒幕達とも異なった、遥かに厄介な敵と言える。
本作では古代機械の文字を解読できたマホロアの助言を受け、歯車に賞金をかけて街中に報せを出したはいいが、屋敷に忍び込んだ賊(ドロッチェ達)が古代機械に関連する資料を盗み出したと知って怒り心頭。
更にある人物が自分をも出し抜こうとしている事を把握しており、何が何でも、古代機械を利用しようと本格的に動き出していく。
サブ
「お帰りなさいませ、だんな様」
本編と違ってハルバードが無いため、メタナイトに仕える執事となった。
ドロッチェをはじめとして許可なく来客が上がり込んでは怒りまくる。
「星のコンパスはな、悪い心を持つ者の手に渡れば、恐ろしい結果をもたらすことになる。だが、カービィどのならば、安心じゃ」
魔法都市に住む、マホロア曰く「トッテモ偉い」魔法使いの老人。
都市で暴れていた魔物をやっつけたカービィに、お礼として星のコンパスを授けた。
コンパスを生き物のように扱っており、プレゼントしたのもコンパスがカービィの事を気に入っていると感じたから。
足元まで届く程立派なヒゲを生やし、ローブを羽織った
ブルームハッターっぽい見た目。
「古代機械が見つかったと聞いたら、じっとしてはおれんよ。魔法使いの血がさわいだのじゃ」
発掘された古代機械を魔法使いとして見ずにはいられず、ダイヤモンド・タウンに潜入すると黒ずくめの男に変装。密かにフーゴーの手下として振る舞っていた。
目論見が台無しになって尚、誰も自分の悪事など信じないと主張するフーゴーの前で正体を現す。
これにはカービィ達も驚愕し、マホロアに至っては本気で驚いている様子さえ見せた。
古代機械の伝説を最初から知っており、彼らの前で伝説の真相を語った。
名前だけ登場。
スチームパンク仕様のカワサキもそれはそれで見てみたい気はするが。
ドロッチェの部下。音も気配もなく盗みの対象となる屋敷を探索する。最新式の鍵も朝飯前に開けてしまう。
名無しのオリジナルモブキャラ。ただし、名無しのモブにしては珍しく挿絵で登場している。
名有りなのに挿絵に出れなかったグレイやベリルとは正反対である
顔だけは『
星のカービィ3』のドゴンっぽくもある。
地名・設定など
本作の舞台となる、小さな街。
ダイヤモンド鉱山で繁栄した街であり、大富豪フーゴーの手によって支えられている。
これだけ見ると普通の鉱山の街なのだが、最大の特徴は貴族は全て「ひかりのまち」に、それ以外の普通の住民は「かぜのまち」に分けて暮らしていること。
「かぜのまち」の住民は勝手に「ひかりのまち」へ入ることは出来ず、例え外からの行商人であっても例外は無い。街の外から持ち込んだお菓子も全部取り上げられてしまう厳しいルールが存在する。
逆に、「ひかりのまち」の貴族達は自由に甘い食べ物を食しており、毎日パーティーを開くなど贅沢の限りを尽くしている。贅沢三昧の生活を送っているために、メタナイトのような冒険心ある貴族の方がむしろ珍しい程。
明らかに貴族階級と労働階級に分かれた階級社会が敷かれており、作中の世界観も相まって産業革命時代の西洋諸国を思わせる。
カービィが魔法都市で大長老から貰った、文字通り星の形をしている不思議なコンパス。
魔法の力を探すアイテムであり、魔法陣や砂などの準備が必要なのだが、カービィには当然ながら使い方が分からず、壊れていると思い込まれて活用されていなかった。
カービィが乗る飛行機。黄色い星が翼にペイントされている。
かなりの高性能な機体らしく、デデデ社長の飛行機には一度たりとも負けたことがない常勝無敗の機体。
ちなみに、メタナイトが後にこのワープスター号に搭乗したことがきっかけで飛行機を購入するのだが……歴戦のカービィファンならその飛行機の名前を見た瞬間、どうなるか察しが付くだろう。
デデデ社長が乗る飛行機。機体に「DDD」の文字がペイントされている。
性能もパイロットの腕も悪くは無いのだが、これまで一度もワープスター号に勝てたためしがない。
かの戦艦のごとく墜落が当たり前になっているらしく、作中でも墜落するたびに十九世、二十世と名を変えていく。
デデデ社長が「かぜのまち」で経営する工場。勿論
こうじょうけんがくとは何も関係ない。
何の工場かは具体的に書かれていないが、飛行機を所有する所から少なくとも飛行機の製造は関わっていそうである。
ちなみに休みは週一日。
「かぜのまち」の西地区にある時計塔。
かつては魔法ギルドの塔が建っており、歯車の一つもそこに封印されていたが、長い時が経過して塔は崩れ、歯車のことを知る者はいなくなってしまった。
普段は番人が守っているため監視が厳しく、正面からは入らせてくれない。
本作の重要なキーアイテム。
ダイヤモンド鉱山で発掘された謎の巨大な機械と、それを動かすのに必要なパーツ。
「みんなを幸せにする」力を秘めているとされるが、かつて悪い魔法使いによって機械を動かす歯車が盗まれてしまい、ダイヤモンド・タウンのどこかに眠っているという。
歯車は魔法がかけられており、誰かの手に触れないと目に見えず、それまでは魔法の目薬の効き目がある間だけ一時的に見えるようになる。
フーゴーは古代機械を動かすため歯車に賞金をかけ、市民に協力してもらって集めようとしていたが……
私は、のちの世の者たちのために、たいせつなことを書き記す
この機械は、史上最悪の発明品である。石っころを高価なモノに変え、あきれるほどの大もうけができるかわりに、不幸をまきちらす
かつて、この機械が昼も夜も動き続けていたとき、貴族たちは、千年かかっても使い切れないほどのお金をもうけた。
けれど、お金持ちになったのは、貴族だけ。
機械のせいで、街にはすさまじい悪臭がたちこめた。
目も開けられぬほどの悪臭に苦しみぬいた私は、ついに魔法の力で三つの歯車を封印し、機械を停止させた。
これにより、街は救われたのだ。
のちの世の者たちよ!
二度と、この機械を動かしてはならない!
ふたたびこの機械が動くとき、街はわざわいに襲われ、ほろびるであろう!
その全容とは、
別世界では銀河の彼方を飛ぶ大彗星と全く同じ姿の巨大な機械であった。
機械にはめこまれた銀色の板には古代文字が書かれており、マホロアが解読に成功した。
この機械はまだ動いていた頃、街に莫大な富を生み出していた。
しかし、恩恵に預かれたのは貴族だけで、引き換えに街は悪臭が発生。
魔法使いは悪臭に耐えかね、街が滅びる前に歯車を抜き取り、機械停止させて封印。決して動かしてはならない……と、後世に警告を残したのである。
市民向けの新聞では「悪い魔法使いのしわざ」などと説明したフーゴーであったが、実態は逆。街を守るために歯車を抜き取ったのだ。
むしろ大事な部分である悪臭の件を、利益優先のフーゴーは市民の反発を恐れひた隠しにしていた。
一方、銀色の板の下にはマホロアも見落としたであろう(あるいは無視してたのかもしれない)、魔法使いのものと思しき謎の走り書きも残されている。
何かの情報になると考えたカービィ達は必死に解読を試みるが……?
また、上述のマホロアの行動から、この歯車の正体は恐らく…
「まさか、あそこに真実が書かれていたのか?」
「うん! あの走り書きは、こういう意味だったんだ……」
チョコレートなんて、大っきらいだー!
古代機械が生み出す「高価なモノ」の正体。それはあふれんばかりの大量の極上チョコレートである。
今でもダイヤモンド・タウンでは高級品のチョコレートだが、大昔は更に高い価値を有する貴重な食べ物、それこそまさにダイヤモンド以上だった。
そもそも古代機械の本質は、「どのような願いでも叶える」機能にある。
何故チョコレートだったのかと言うと、古代の人々がチョコレートを沢山食べたいと願ったため、ダイヤモンドをチョコレートに変換するようになった。
……ところが、不幸にも古代の魔法使いは大のチョコレート嫌いであり、街中に漂う甘い香りに耐えきれず、機械を停止させた。
その後にあの古代文字を警告として残し、ついでにしょうもない恨み節魂の叫びも走り書きで添えた……というのが全ての真相。
悪臭とは魔法使いの大嫌いな「チョコレートの甘い香り」という意味で、それを街が滅びるなどと大げさに誇張していたのだ。
……要するに、魔法使いが古代機械を封印したのは単に自分の好き嫌いの問題で、「街を守る」という大義はあくまで建前だった。
もちろん、当時の古代人達は貴重な極上チョコレートが食べられなくなって落胆しただろう。
フーゴーの陰謀で悪者扱いされていたけど、あながち間違いじゃなかったかも……
しかし、古代機械はフーゴーの価値観と致命的に相容れなかった。
なんせ業突く張りの彼にとって、只の食い物でしかないチョコレートなど無価値に等しく、金になるダイヤモンドの方こそが大事だったのだ。
古代機械の本質を知らないままに利用してどうなったかと言うと、鉱山のダイヤモンド全部がチョコレートに変換されるという大損をこくハメに陥った。
しかも魔法ギルドの大長老が証人となったことで悪事の言い逃れもできないというおまけ付き。
では如何なる裁きを受けたのかと言うと……何もされずに終わった。
賞金に釣られた連中の追放を画策していた上、市民の安全も無視したこの男は何の裁きを受けなかった。
そして憎まれず、庇われず、顧みられることもなく、誰からも忘れ去られた。
何故このような事になったのかと言うと、前述のチョコレート変換事故が全ての原因。
鉱山のダイヤモンドが丸ごとチョコレートになったおかげで、ダイヤモンド・タウン、改めチョコレート・タウンは以前にも増して賑わい、「かぜのまち」を含めた全ての住人達がその恩恵に預かれるようになった。
皮肉なことに、新聞でうそぶいた通り彼は本当に市民を幸せにしたのだ。
そうして「チョコレートの幸せ>>>越えられない壁>>>フーゴー諸々」の図式が人々に出来上がっていたものと思われる。
恐らく、彼らが幸せに満たされた結果「フーゴーが悪事を働いてた?でもチョコレート美味しいし別にいいや!」と結論づけたことは想像に難くないわけで、市民にとってフーゴーの悪事など些細なこと。
街の支配者として注目され続けていた彼は一転、憤る、裁く、庇う、全てにおいてそこまでする価値の無い矮小な存在として片づけられてしまったのだ。
事実、フーゴーが人知れず街を去った時もその場面は地の文だけであっさり済まされ、引き留める者もなし。
さらには終わった話だからという事なのか、カービィらネームドキャラでさえ一人もフーゴーに言及する者がいなかったことも、彼の記憶がすっかり人々の頭の片隅から追いやられた証左。
考え無しに目先の欲を優先し、ある意味で金より大事な食べ物・人命を軽視したばかりに、周囲全てに存在を忘れられる「災い」が古代機械によってもたらされたのである。
フーゴー程の自己顕示欲が強い輩にしてみれば、単に刑罰を身に受けるよりもある意味残酷すぎる結末と言える。
ともあれ、小説版シリーズのオリジナル悪役では珍しく目立った制裁も改心も発生しなかったことには変わりないが(強いて言うなら築いた富を全部失ったぐらい)、かといって民衆や主要人物らに関心すら向けられなくなったという末路もまた珍しい。
追記・修正は人の幸せを考えられる方にお願いします。
- この設定でRPGゲームにできそうだな。ミニゲームでカービィとデデデのレース対決とかクエストでドロッチェの義賊活動とか -- 名無しさん (2020-03-21 00:51:47)
- 変わり者とはいえ貴族のメタナイトを満足させる製菓の腕前って、普通にドロッチェすげえw -- 名無しさん (2020-03-21 01:18:13)
- メタナイトの胸ポケットってどこなんだろう -- 名無しさん (2020-03-21 01:59:20)
- マホロアの足ってどこなんだろう -- 名無しさん(2020-03-21 12:38:06)
- 2人×3組に分かれて行動するシーンとか、ローグライクで遊んでみたい -- 名無しさん (2020-03-21 21:03:44)
- メイドインワリオの町?って思ったらあっちはダイアモンドシティだったか -- 名無しさん (2020-03-22 10:13:51)
- アラレちゃんや、おそ松くんでもこーゆうパラレル物語があるから、映画化もRPG化も有りですね。そして、今回の悪役の末路は...罰を受けるよりも重いモノでした...な。 -- 名無しさん (2020-03-22 13:20:22)
- ハルバードこっちでも壊れるのか…w -- 名無しさん (2020-03-22 15:32:15)
- ↑もはや名前自体に強烈な呪いが発生してるとしか思えねぇ…w -- 名無しさん (2020-03-22 17:10:16)
- 夢をかなえる大彗星の縮小スケールが出てくるとは・・・ -- 名無しさん (2020-03-24 18:41:08)
- まーたハルカンドラか。 -- 名無しさん (2020-03-26 07:57:04)
- この世界観凄くいいね。続編やってくれたらいいな -- 名無しさん (2020-03-29 19:08:13)
- 何だかラストは見てて一番ほのぼのした。平和だなぁ -- 名無しさん (2020-05-28 21:28:00)
- 知らないとはいえエナジースフィア以外の歯車でローアを動かそうとするマホロアが滑稽すぎた…w -- 名無しさん (2020-11-12 21:11:46)
- PC4人構成のTRPGのキャンペーンみたいなものを感じた -- 名無しさん (2021-07-08 04:23:32)
- 一番好きな作品 技術は無いけど将来自主映画化させるんだと誓った おかげで毎日毎日絵しか描いてない -- 仁宝(にほ) (2024-08-08 14:46:32)
最終更新:2025年05月11日 09:45