永遠に美しく…

登録日:2021/08/04 (水) 18:13:41
更新日:2021/09/08 Wed 00:25:14
所要時間:約 14 分で読めます



Siempre Viva!“永遠の生命を!”


永遠(とわ)に美しく…(Death Becomes Her)』とは、1992年に公開された米国ユニヴァーサル制作の映画。
監督はバック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズやフォレスト・ガンプなどでお馴染みのロバート・ゼメキス。

●目次

概要

本作は『いつまでも若く、美しくありたい』という誰もが心に秘めている欲望を皮肉ったブラックコメディである。
原題は意訳すれば『死こそ彼女にふさわしい』となる。
『若返りの薬』を巡る人々の愛憎、葛藤、悲哀がこれでもかと描かれ、一応コメディであるのでギャグっぽく表現されてはいるものの、かなりドギツい描写も多い。
本作のSFXはスター・ウォーズジュラシック・パークでお馴染みILM(インダストリアル・ライト&マジック)が担当し、オプチカル・プリンターでの合成を行った最後の作品となり、同年のバットマンリターンズエイリアン3といった強敵を押し退けてアカデミー視覚効果賞を獲得、見事に有終の美を飾った。
永遠に生きる、とはどういうことなのか?いつまでも死なない、ということは本当に幸せなのか?という問いは本作を見ると即答できなくなる、かもしれない。
地上波で放送される機会も多かったので鑑賞した経験のあるアニヲタ諸氏も多いのではないだろうか。



ストーリー


1978年の雨の日……。

かつては人気があったが今や落ち目の女優、マデリーン・アシュトン
ある日の舞台公演後、楽屋に友人だったヘレン・シャープが婚約者の美容外科医アーネスト・メンヴィルを連れ立って訪ねてくる。
表向きは親しげな挨拶を交わすマデリーンとヘレン。しかし、ヘレンには別の思惑があった。
ヘレンは昔から付き合った男を何人もマデリーンに寝取られており、そこでアーネストがマデリーンに心を奪われないかテストのために連れてきたのだ。
それを聞いたアーネストは笑ってヘレンに答える。

「いいかい?僕はマデリーン・アシュトンなんかにこれっぽっちも興味はないんだ」

が、その舌の根も乾かぬうちにアーネストはマデリーンと結婚してしまう。
幸せそうにチャペルから出てくる二人をヘレンはハンカチを握りしめて見つめていた。
その手からが滴り落ちるほど強く……

それから7年後。

アーネストを寝取られたショックでヘレンは廃人同然となり、別人のように激太りした姿になっていた。
精神病院に収容されて治療を行うも一向に改善の余地は見られず、医師も匙を投げてしまう。
そして医師の言い放った「マデリーンのことは忘れなさい!徹底的に消してしまうの!」という一言を聞いて、ヘレンの眼に危険な光が宿った。

「そうよ……アイツを消せばいいんだわ……!」

それからさらに7年後……。
ビバリーヒルズに大きな邸宅を構えるも、すっかり夫婦仲の冷え切ったマデリーンと妻の浪費癖を支えるために死体の修復師へと落ちぶれていたアーネストの元へパーティーの招待状が届く。
内容はしばらく会っていなかったヘレンの新著出版記念パーティー。
著書のタイトルが『Forever Young(永遠の若さ)』であることを鼻で笑うマデリーンだったが、パーティーに出席する前にエステへ訪れ、そこで店長から『リスル』という人物の屋敷を紹介してもらう。
そして、パーティー会場で久々に対面したマデリーンとヘレンだったがヘレンはダイエットに成功した上に見違えるほど美人になっており、50歳とは思えぬほど若々しさを保っていたのだった。
自分の老いを痛感していたマデリーンは大きなショックを受け、さらに不倫相手の若い男にも振られたことで涙に暮れる。
その時、エステ店の店長から教えてもらった『リスル』という人物のことを思い出し、半信半疑ながらその屋敷へと向かい、そこで怪しい雰囲気を漂わせた女性と出会う。
彼女こそ店長が言っていた『リスル』であり、会話の後で一つの小瓶に入った薬を見せられる。
リスル曰く小瓶の中身は霊薬であり、飲めば老化をたちどころに止め、衰えを退散させてしまうというのだが……。



登場人物

※吹き替えはソフト版/テレビ放映版
  • マデリーン・アシュトン
演:メリル・ストリープ/吹き替え:池田昌子/一柳みる
かつては人気女優だったもののすっかり落ち目であり、冒頭でも公演の最中だというのに次々と客は退室していく有り様。
学生時代から付き合いのあるヘレンとはお互い『MAD(気狂い)』『HELL(地獄)』と悪口で呼び合う仲。
ヘレンからアーネストを寝取るも、元々愛情があって結婚したわけではないため、7年後にはすっかり夫婦仲は冷え切っている。
自分がどんどん老いて容姿が衰えていくことに怖れを抱いており、整形手術や身体に悪影響がある美容措置なども厭わぬほど若さと美に強く執着している。
そして、久しぶりに会ったヘレンが自分と同じ50歳にも関わらず若さを保っていることに衝撃を受け、リスルの屋敷で霊薬を飲んで若返りに成功する
演じたのはこの時点で2度のアカデミー賞に輝く押しも押されぬ大女優メリル・ストリープ。
当時43歳だがとてもそうは見えない美貌を有しており、老けメイクで50歳のマデリーンを演じている。


  • ヘレン・シャープ
演:ゴールディ・ホーン/吹き替え:井上瑤/藤田淑子
マデリーンと並ぶもう一人の主役。
彼女とは学生時代からの付き合いだが、その頃から恋人を寝取られるという仕打ちを受けている。
婚約したアーネストの愛情をチェックするためマデリーンに会わせたが再び婚約者を寝取られ、結婚までされる。
そのショックで廃人同然となって激太りした挙げ句に精神病院送りになるも、胸の内にはマデリーンへの復讐だけをひたすらに思い描いていた。
後に人気作家となり、容姿も別人のように痩せ、同い年のマデリーンと比較しても驚くほどの若さを保っているが、未だ胸の内にはマデリーンへの復讐の炎が燃え上がったままである。
演じたゴールディ・ホーンは当時47歳だがメリル・ストリープ同様にとてもそうは思えないほどの美魔女ぶりを披露している。


  • アーネスト・メンヴィル
演:ブルース・ウィリス/吹き替え:羽佐間道夫/樋浦勉
高名な美容外科医でありヘレンの婚約者だったが、マデリーンに一目会っただけで心を奪われ、ヘレンを裏切る形でマデリーンと結婚する。
その後はマデリーンとの仲も冷え切り、女優としての仕事はないくせに浪費癖だけはある彼女のために死体修復師の仕事で稼いでいた。
妻との愛のない生活に疲れ切っており、アルコール依存症気味でおまけにマデリーン曰く「フニャフニャ」。
妻とかつての婚約者が揃って医学の常識を超えて動き回るのを見て「奇跡だ!」と喜んでいたが霊薬のせいだと知るとガッカリしていた。
死体修復師としても一流で、「埋葬するのが惜しい」と遺族に言わしめるほどに遺体を生き生きとした見た目に修復し、首が折れたマデリーンと腹に風穴を開けたヘレンの身体を見た目には全くわからないほど綺麗に補修できる。
が、「遺体の修復にはスプレーでペイントする」といったことを遺族の前で言ってしまうなど、マデリーンとヘレンの陰に隠れているがなかなか性格に問題あり。
中の人は言わずもがなダイ・ハードのジョン・マクレーン刑事で有名だが、今作ではタフな刑事とはまるっきり逆の神経質な医者を演じている。

  • リスル・フォン・ローマン
演:イザベラ・ロッセリーニ/吹き替え:高島雅羅/駒塚由衣
大きな邸宅に住んでいる謎の女性。やたらと露出度の高い服を身に纏っている。
正体は選ばれた人間のみが所属できる秘密クラブの主宰であり、多数の男たちを手下として従え、若さを求めてきた者へ金銭と引き換えに秘密の霊薬を飲ませて永遠の若さをもたらしている。
実年齢は71歳だが霊薬のおかげで20代にしか見えない美貌を持つ。
演ずるイザベラ・ロッセリーニは名女優イングリッド・バーグマンを母に持つ映画一家の出身。
出演当時は40歳だが主演の二人に負けないほど若々しい。


  • シャガール
演:イアン・オギルビー/吹き替え:伊藤和晃/納谷六朗
マデリーンが懇意にしているエステ店の店長。
ナヨナヨした動作と喋り方が特徴。
「美しさの為ならお金なんか惜しまない」というマデリーンの言葉を耳にし、リスルの住所を紹介した。
自身も秘密クラブのメンバーであるらしく、会合では司会を務めている。


  • 秘密クラブのメンバー
リスルが主催する秘密クラブのメンバーたち。
全員がリスルに認められ、霊薬を飲んで不老の存在となっている。
また、世間一般には死んだと思われていたが、実は歳を取らないことを気づかれないように死を偽装していただけだったというスターも数多い。


霊薬

ガラスの小瓶に入ったピンク色の液体。
リスルに認められた者だけが飲むことができ、飲めば漏れなく秘密クラブのメンバーとなって会員証であるバッジをもらえる。
瓶の中身を飲み干せば老化が止まり、肉体は全盛期の年齢に保たれる。
加えて小さな傷ならばたちどころに治ってしまうなど、治癒能力を高める効果もある模様。
認められるためには料金を払わなければならず、相手によって上下するらしいがヘレンは全財産を差し出し、浪費家のマデリーンが驚いてしまうほどに高額。
また、ルールとして霊薬と秘密クラブの存在を決して公にしないこと、何年経とうが一向に歳を取らない以上、いずれは世間から不審に思われてしまうため10年が経過した後に偽りの死を公表するなどして世間から隠遁することを要求される。
そして、飲んだ後はリスルから「くれぐれも身体を労り、決して傷つけないように」との警告が発せられるのだが……。












「どうかくれぐれも、追記・修正をなさいますように……」
































37年後…











教会ではたくさんの人々がいる中でアーネスト・メンヴィルの葬儀がしめやかに行われていた。
彼は50歳になってから美しい妻と出会い結婚し、息子二人と娘四人に恵まれ、様々な活動に精を出し、幸せな生活を送り、最期は息子たちや孫たちに囲まれて穏やかに死んでいったという。
そしてその協会の最後列の席に、喪服姿のマデリーンとヘレンが座っていた。
ようやくアーネストの行方を探し当てたが、彼は死んでいたのだ。
かつて愛した男の死にヘレンは涙するが、その涙を拭うと顔の塗装が剥がれてしまう。
修復用のスプレーを探すも見当たらず、二人は教会の外へと出ようとする。
長年に渡って見様見真似で身体の修復と塗装を繰り返したせいで動きはぎこちなく、顔は肌色のペンキを塗りたくったせいでケロイドのようになり、まるでマネキンのように歪な二人はまともに歩くことすら苦労する有り様。
その時、牧師の声が教会に響き渡った。

「この男は、彼なりの方法で『永遠に生きる』秘訣を習得したのだと思います。その秘訣とは私たち、彼の友人の心の中で生きること。そして永遠の青年でいる秘訣は、あそこにいる彼の子供たちや孫たちの人生の中で生きること。これも私の意見ですが、我らの愛するアーネストは、真に『永遠に生き続ける男』だと思うのです」

それを聞いたマデリーンは吐き捨てるように言う。

「くだらないことをよくもまぁベラベラと……」

そのまま言い合いをしながらヘレンが階段を降りようとすると、失くしたはずの修復用のスプレーを踏んでしまい、階段から転げ落ちそうになる。
助けを求めるもマデリーンはニヤニヤと意地悪そうに笑い、腹を立てたヘレンは道連れにマデリーンの腕を掴み、二人は諸共に階段を転がり落ちていく。
そのまま地面に激突すると、継ぎ接ぎだらけの二人の身体は無惨にもバラバラになってしまった。
首だけになった二人が目を見合わせる。


「車どこに停めたか覚えてる?」


それでも、二人は生きていた。

そして、これからも永遠に生き続ける……。



END


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最終更新:2021年09月08日 00:25

*1 実はこれ、バック・トゥ・ザ・フューチャーで主人公のマーティがタイムスリップした日と同日。監督も同じロバート・ゼメキスなのでいわゆる楽屋ネタである

*2 つまり本作が公開される2年前に亡くなったばかりであり、実は死を偽装しただけだったという時事ネタとなっている。