小笠原貞宗(逃げ上手の若君)

登録日:2021/10/05 Tue 22:11:00
更新日:2025/01/06 Mon 21:40:21
所要時間:約 ? 分で読めます





お任せ下さい尊氏様 我が弓と視力は天下一

どんな小虫も見つけ出し 射殺してご覧に入れましょうぞ


小笠原(おがさわら) 貞宗(さだむね)は室町時代の武人。現在も続く弓術の流派「小笠原流」中興の祖とされている。
本項目では、史実を参考に創作されている漫画作品『逃げ上手の若君』における貞宗を紹介する。

CV:青山穣


●目次


ステータス


レアリティ
(1333年)
☆☆☆☆ SSR
能力 南北朝適正
武勇 90 蛮性 87
知力 73 忠義 72
政治 67 混沌 64
統率 69 革新 55
魅力 80 逃隠 41

  • 技能:小笠原の弓
武力と命中35%上昇。

  • 技能:鬼視力
命中20%上昇 観察10%上昇。

  • 固有武器:四人張四方竹弓(よにんばりしほうちくゆみ)千眼(せんげん)
射程15%上昇。

  • 他に目で出来る事
紫外線感知、地震感知など。呼吸、体外消化も少しなら可能


概要


足利尊氏を頂点とした足利家郎党に仕える信濃守護。
フルネームは『小笠原右馬助(うまのすけ)*1貞宗』であり、2回目のボス演出で明かされた。
妙にギョロついた大きな眼の男で、他人に顔を寄せる際も目がとにかく近い。
また、松井先生のアレンジとして、着物にはダーツの的のような模様が入っている。
マーキング・パターンは「矢絣に的」

元々は信濃出身の一介の侍に過ぎなかったが、幕府ではなく高氏側に付き武勲を立てたことで信濃守護職に就任。
以後は信濃で多大な力を持つ諏訪頼重、そして主人公の北条時行率いる「逃若党」と火花を散らし、あの手この手で諏訪領の簒奪を目論む、諏訪大社及び逃若党にとっては一番近くの小癪な敵に当たる。
……のだが、後醍醐天皇からの綸旨が届いたからとは言え、時行に大恥をかかされた翌日にも友達の家に遊びに来た現代の小学生のように手を振りながら笑顔でやってくるシリアスもギャグもいける稀有な存在となり、今では助房共々ライバル枠を兼ねた準レギュラー枠になった。
弧次郎「強えーなあいつ」
ルパン一味に対する銭形のとっつぁんポジション。

劇中で頼重はこれから幾度も起こるであろう貞宗との戦いの中で貞宗の技を盗み見て戦い方を学ぶ「隠れ鬼」作戦を時行に提案。
以後中先代の乱勃発までの信濃編における因縁のライバル兼弓の師となって時行をあの手この手で追い詰めていき、時行も敵対する中で己の成長を実感したのか彼へは素直な崇敬も向けている。
1338年では新田軍を撃退した武勇から足利軍内での名声を高めており、土岐頼遠が出しゃばるまでは北畠顕家討伐軍を束ねる大将として最有力視されるほどにのし上がっている。


因みに眼球運動で言葉を耳打ちしたり目玉から汗をかくといった変な特技の持ち主。なんでも「胃液とかも目から出せる」らしい。
後に尊氏の人外じみたカリスマ性がお披露目された結果、尊氏に魅了されることなく堂々と忠義を示した武将として、地味に株が上がった。


人物像


一人称は「儂」。
尊氏に対する忠誠心こそ本物だが、敵対する諏訪勢力に対しては非常に高圧的かつ嫌味に接する陰険で高慢な性格。
現れていきなり巫女の耳を矢で射抜いて裂く残忍な行動を取ったこともあり、時行からは「目玉一杯に性格の悪さが詰まった男」と酷評された。と、同時に弓の腕前を素直に称賛した。
一方で武人としての才覚も本物であり、瘴奸入道の賊としての残忍さを把握しておきながら敢えて取り立てる柔軟性も併せ持つが、流石に無駄な殺生を犯す行為に関しては「これから税を収めてくれる民を無駄に殺してどうするんだこのバカ(意訳)」と咎めるなど、当時の為政者としては至極真っ当な器量も持ち合わせている。

しかしポジション的にはあくまで中間管理職に近い部分があり、悪徳国司である清原信濃守など目上の相手にはご機嫌取りに終始する苦労人としての姿も見せる。
貞宗本人も自身のその立場を自覚しており、天下取りに動いた時行に向けて「少し貴様が羨ましい」と呟いている。足利尊氏の腰巾着をしている貞宗もまた野望に関心を寄せる一人の武士なのだ。

初登場時は残虐な卑劣漢といった印象が強かったが、本人的には非道な手段を取るのは全て戦の一環であり戦が関わらなければ礼儀作法を非常に重んじる威厳ある武人。
「命を奪う敵だからこそ奪う命には敬意を払え」という信念を持ち、後の江戸時代に定着した正座などの礼儀作法全般をまとめ上げた人物ゆえ、礼儀作法などのマナーにはかなり厳しい。*2
ただし「礼儀だけでは戦には勝てないことは儂が誰よりも知っている」という現実的な思想もあることから、「それはそれ、これはこれ」のノリで必要とあらば礼儀作法とはかけ離れた冷徹な戦略や非道・姑息な手段も躊躇いなく使えるダブスタ上等のメンタル強者。
また根が常識人なので人の域を外れた振る舞いを取る土岐頼遠には終始ドン引きする様子も見られ、数々の傍若無人っぷりに「(意味がわからんっ!!)」などと内心ツッコミを入れた上で彼等と関わり合うことを早々に忌諱していた。


戦闘能力


異名は千里眼鬼(せんりがんき)
言動はやや小物臭いが、頼重からお世辞抜きに「天下有数の武人の一人」と称され、新田義貞をも小童呼ばわりできるだけの実力者。
その騎射の腕前は「小笠原は武士の定式なり」と後醍醐天皇から直々に絶賛され、更には後醍醐天皇から「王」の字を家紋に賜った程の弓術の達人である。
弓の技の中でも対象を正確に捉え、一射で仕留める狙撃が得手。反面、初戦の犬追物勝負では集中や照準のために連射の速度が犠牲になっていると解説された。

この手のキャラにありがちな傲慢さが腕や心を鈍らせているということもなく、精神力のみならず馬術や戦術眼に関しても超一流を誇る。*3
犬追物では時行の人間離れした逃げ上手を知らなかったうえに、諏訪大社の訓練された犬達に翻弄され敗北寸前に追いやられるものの、一瞬でメンタルを立て直して冷静さを取り戻し、死角に入り込んで反撃するなど百戦錬磨の武人らしい胆力も持ち合わせている強敵。
熟練の武士なだけあって軍を率いての戦略眼も優れており、逃若党側の戦略担当である吹雪からも「戦の勘所を押さえている」と評された。

またその眼球、視力こそ天賦の異能めいているものの、弓術を始めとする貞宗の武術はあくまでも合理に基づいた「技術」である。
時行は青野原にて真っ向から相対した折、逆立ちしても真似できない顕家の“天才の弓”と対比する形で「貞宗の弓は全て理に適っていて… 真似るほど見るほどに理解が進む」「貴方を目指します 貞宗殿」と内心で絶賛している。さしずめ“達人の弓”か。


千里眼

貞宗の特技である超人的な観察眼と視力
尊氏が狩った獲物に付いていた虫の数と雌雄を離れた位置から正確に当て、100m先で隠れた武士の姿すら一瞬で見抜くほど。
本人によれば若干加齢の影響でこれでも夜目が利かなくなっているらしく、全盛期の若さであれば更なる視力を発揮できた模様。
この千里眼は観察力にも通じるため戦以外の他者との問答・交渉術に対しても有用。
弁舌による心理的追い込みと合わせて些細な動揺をも見抜くため、貞宗との論戦では何よりも淀みない返答に加えてポーカーフェイスが求められる。



  • 射将共射馬(将を射んとすれば馬ごと射ん)
貞宗の奥義にして最強の威力を誇る弓技。
  • 馬の最大速度を真っ直ぐ乗せた追物射
  • 貫通力に優れる薄手の尖矢の鏃
  • 流鏑馬並みの至近距離の間合い
これらを複合させ、どう体勢を変えても回避不可能な鳩尾目掛けて射る射撃術。
その威力は馬の頭蓋を容易く貫通するほどで、全ての障害を貫いて標的を射抜く。


小笠原郎党


足利家郎党の中の一派で貞宗を頂点とした勢力。
領土が諏訪に隣接しているため度々諏訪の領土を奪おうと画策している。
逃若党と諏訪神党の主力が信濃を出立した後もコツコツ策を練っていたようで、中先代の乱の中で信濃における勢力を伸ばしたと語られている。

  • 赤沢(あかざわ)常興(つねおき)
小笠原軍副将。
小笠原家の中核部隊を率いる将で、一糸乱れぬ統率騎射術の名手。
中先代の乱では先鋒として錐行の陣で諏訪軍に突撃。このまま無理矢理直進して背後を取る……と見せた敵前急右折射術「貞宗流騎射術“松本奔り”」*4からの一斉射撃で前衛を崩した。
北畠顕家討伐軍にも参加しており、貞宗共々土岐頼遠にドン引きする様子が見受けられた。

  • 赤沢(あかざわ)新三郎(しんざぶろう)
口先と宴会芸だけのガキ共!
俺の武芸で諏訪ではなく土に帰りな!

常興の弟。
無機質な爬虫類顔で、癖なのかよく舌を出しており、豹変時には舌を刀のように伸ばして喉元に突きつける。

小笠原家では使役を務めるほか、薙刀の扱いに絶対の自信を持ち、戦場では近接戦部隊として活躍する。
だが功名心に逸りがちで何かにつけて手柄や評価に拘る性格。また、亜也子に対してセクハラを吹っ掛けるなど下劣な側面もある。
以前は鎌倉に出仕していたらしく、その縁で諏訪大社の衛士の長寿丸として潜伏する時行が北条家に連なる者かを詮議する場に召喚されるがハッタリを悉く看破されてしまう。
さらに一緒に控えていた亜也子が奇策を弄するのをむざむざ見逃してしまい、完全に面目を潰される。
その報復として帰路につく時行と亜也子を襲撃するが、なりふり構わない亜也子の反撃によって顔面を岩盤に叩きつけられて敗北。そのままとどめに(首を)ポロリされかかるが、流石に使者を殺すと事が荒立つという時行の説得によって命を拾った。
以降は後遺症で顔面に包帯を巻いた状態で登場するようになり、1340年の大徳王寺城の戦いでも鼻を補強した姿のままだった。


信濃諸勢力

厳密には貞宗の配下ではないが、守護としての権限を使えば招集できる味方勢力。
守護寄りの独立勢力と言った方が近く、あくまで貞宗とは同盟相手のようなものなので時勢によっては乗り気じゃなかったり、適当な理由で戦線を離脱したりもする。
建武の新政後、南北朝に分かれた後は特に自立意識が強くなっていき、貞宗の命令も聞かなくなっていった。

  • “順風耳鬼”市河(いちかわ)助房(すけふさ)
今日の闇夜に俺さえ居なけりゃ…(ガキ)の首など晒さずに済んだろうに

CV:山本高広

レアリティ
(1334年)
☆☆☆ SR
能力 南北朝適正
武勇 79 蛮性 80
知力 70 忠義 49
政治 63 混沌 72
統率 71 革新 44
魅力 59 逃隠 49


信濃守護補佐役。
水色の着物に猿めいた小憎たらしい顔と大きな耳、げっ歯類っぽい出っ歯が特徴的な男。

常に貞宗の横について回る貞宗の腰巾着だが、貞宗の目を使った変態的な特技に対して真顔でツッコミを入れたり、征蟻党の徴用を不安視する常識的な一面を持つ。
…が、忠誠心が行き過ぎて隙あらば彼氏面してくるというかなりアブない所がある。
助房「馬鹿だな、拙者がいるよ」
彼氏面してタメ口で語り掛けたかと思えば、目下の立場に戻って敬語で話してくるなどブレのあるキャラクター性は、貞宗も少々困惑している。
時行と玄蕃が綸旨を盗みに忍び込んだ夜まで上記の振る舞いはしてこなかったらしく、顔にこそ出さなかったが 恐怖すら覚えていた模様
口振りからすると、子供を傷つけたりすることを好んではいないようで、その意味では瘴奸入道とは対照的。とはいえ、そこは乱世の人間だけあり戦闘となれば子供相手でも油断も容赦もせずに追い詰めていく。
まあ子供相手と甘く見れば寝首をかかれる時代なのである意味当然である。
噂話は逃さない質で、自領内や小笠原家中の勢力、人事、恋愛事情に至るまで把握しているらしい。

特技は超人的な耳の良さ。
床に耳を付けるだけで微かな音すら聞き漏らさず周囲の隠れた敵の動きを見破るソナーみたいな地獄耳の持ち主。
闇夜のような視界の不自由な場所に於いてその聴力は本領を発揮し、貞宗も「そちさえいれば闇夜の賊など皆殺しよ!」と全幅の信頼を置く。
その真価は貞宗の視力と助房の聴力で互いを補い合う連携であり、光源のない闇夜に潜む100m先の標的を正確に射抜く極めて高精度な狙撃を可能にする。
要は人力暗視スコープ。
加えて貞宗陣営の将として前線に立ち、自軍の指揮や正面からの戦も行えるくらいには充分な武芸の技も修めている。

史実では小笠原勢力に属していた武将。
彼の一族はこまめに一族の動向をメモしており、かの武田信玄の部下である山本勘助が実在した人物と証明した現代まで残る歴史資料「市河家文書」で有名。
ちなみにかの迷言「馬鹿だな、拙者がいるよ」はメナードの薬用ビューネのイメージキャラ「ビューネくん」の初代担当藤木直人が演じたCMのパロディ。

アニメ版のCVを務める山本高広はかつて織田裕二のモノマネ*5でブレイクしたモノマネ芸人として知られるが、芸能界を目指し始めた当初は声優志望であり、2010年代後半頃からは洋画吹き替えをメインに本格的な声優業に進出している。テレビアニメの主要キャラクターの担当やジャンプ作品への出演は本作が初である。

  • 村上(むらかみ)信貞(のぶさだ)
我々北信濃人は自立せねばなりません 共に戦いましょう市河殿

北信濃に所領を持つ独立勢力。信州惣大将の地位にある。
見るからに鼻がデカい容貌のままに、対応する五感は視覚・聴覚に次ぐ嗅覚
烏帽子にも鼻の穴のような装飾が施されている。

嗅覚は物理的にも良いらしいが、主に政治的に鼻が利く方面で活用されており、情勢を嗅ぎ分けて朝廷や足利に巧みに近づき北信濃の支配権を握っていった。
北信濃周辺の武士は全て彼が掌握しており、結果として貞宗の目標である信濃統一を阻んだ形となる。
元々は時行が鎌倉を奪還した頃、貞宗による信濃に残る諏訪勢力掃討作戦に1コマのみ登場したモブめいた存在だったが、大徳王寺城の戦いで戦線を離脱する市河を迎えに来る形で再登場。
あんなにも貞宗とぞっこんだった市河ですらカブトムシで篭絡されており、まるでNTRモノの間男のような存在感を放っていた。

史実においても市河氏や足利首脳の高兄弟と関係を持ち、中先代の乱後に北信濃で覇権を握った新興勢力。
信州惣大将は建武政権から賜った地位ではあるが名目だけのものだったため、実際の信濃全体の支配者である小笠原家とは世代を超えて対立を深めていくことになる。
戦国時代には武田晴信(信玄)を2回も敗北させている信濃屈指の雄・村上義清を輩出している。


征蟻党(せいぎとう)

逃若党に一杯食わされた貞宗が、「武士の常識に囚われていてはこの乱世は勝ち抜けない」と考え傘下に招き入れた悪党集団。
首領の瘴奸を始めとして強者揃いで、「五人いれば集落一つ滅ぼせる」と豪語するレベル。
しかし歴史用語でも現代的な意味合いでも「悪党」であり、瘴奸の徹底した教えもあって、郎党全員が己の快楽のためだけに奪い、犯し、殺すことに何ら躊躇いがない。
中山庄での戦い後は幹部が軒並み討死したことに加え、瘴奸が正式に小笠原郎党の一員となったことで「悪党としての征蟻党」は事実上の解散となった。

なお征蟻党幹部の名称は全員死体の状態を表しているが、ぶっちゃけフランス国旗男に「腐乱」って名前をつけたいだけだった気がしてならない。

  • “鍼口鬼”瘴奸(しょうかん)入道(にゅうどう)
怖がらないで 君たちなら合計十五万円(三貫文)の値がつくよ
君たちは十五万円(三貫文)になりたくはないのかい?


レアリティ
(1335年)
☆☆☆ SR
能力 南北朝適正
武勇 85 蛮性 85
知力 90 忠義 88
政治 73 混沌 99
統率 81 革新 14
魅力 68 逃隠 79


今までの自分の配下に不足している剛の者を欲した貞宗が敢えて傘下に招き入れた本名不明の怪人で、「奪う事」を生き甲斐と嘯く征蟻党の頭目。
頭を僧のように丸めており、夥しい数の蟻が集っているような異様な模様の着物や大鎧が特徴。

「入道」なので一応は出家した身のはずだが信心は皆無。殺した相手に念仏とともに唾を吐き、別の場面では「衝撃の事実を教えてあげよう!仏様はね、いないんだよ!」と宣う悪辣な性格。
そして襲った村の人々、特に親を失った子供を売り払い、彼らに訪れるであろう絶望の未来を肴に酒を呑んで酔って悦に浸る外道である。
なお守銭奴でもあり、大体他人を呼ぶ時はルビにその人間の算定価格が出る。対峙した逃若党が相手でも値踏みしながら追い回し、時行に「長寿丸」と名乗られたときには

        少 年 (ちょうじゅまる)
    二十万円 (四貫文 )
瘴奸「長 寿 丸 か」

時行「さっきから読み仮名くどくない!?」

と四段重ねで呼んだ。*6
名乗るシーンからどうやら幾度か改名しているらしい。

征蟻党では最も戦略眼に長けた指揮官として優れた能力を持つ男で、その戦略眼と軍略の采配は貞宗も忖度抜きに認め部下として取り立てた所。
戦場でも悪党としての悪辣さ・狡猾さを最大限に活用しており、特に山岳を利用した軍略に長ける。
1335年の北信濃で戦いで功績を上げてからは貞宗から全幅の信頼を置かれる武将にまで成り上がっており、中先代の乱の段階では頼重も「私にも読めない不安要素」「貞宗の鬼札(おにふだ)と評して危険視するほどの存在になった。
加えて全身フル装備の武者鎧を駆使した戦闘を得意とするため、鎧武者との交戦経験のなかった逃若党は苦戦を強いられた。
そして本気になると大鎧による防御に加えた二刀流と体術を駆使した円熟の武芸と鉄壁の護りで相手を圧倒する古強者である。

元はそれなりの武家の三男坊。
分割相続から長子相続への過渡期であったことから領地を与えられず、兄の家臣となることを強いられたことに激怒し出奔。
賊として放浪する中で楠木正成の傘下に入って戦に加わるも敗戦、再び賊と成り果てている。

劇中では「悪党」特有の野盗の悪辣さ・暴力性と侍の武力を備え、貞宗の依頼で諏訪神党の領地を荒らしまわっていた。
が、戦略眼には優れるものの享楽に走るあまり行動が長引きがちになることが欠点であり、諏訪勢にその動きが知られたことで、通りすがった吹雪を一時的に軍師に据えた逃若党と諏訪神党の連合部隊と激突。
時行とのタイマンに持ち込まれた上に、鬼心仏刀をほぼ完璧な形で決められて失血死する寸前に小笠原勢が攻め込み、救い出される。
奪う予定の領地にいる領民を傷物にしたことを咎められながらもその戦略眼を評価され、賊から足を洗うことを条件に小さな土地(領地)を与えられ小笠原の正式な配下として認められる。
一方で、戦場にあって命懸けの逃げを楽しむ時行の笑みに、全く信じてこなかった「仏」を見出しており、貞宗は入道から毒気が抜けたことに気づいた。
以後は小笠原領の西豊科庄で地頭を務めていたが、毒気が抜けたことや念願の領地持ちになれたことから領民に慕われ、狼藉を働こうと目論んだ部下を刀で脅して狼藉を行わないよう制止する真っ当な地頭として生計を立てるという真反対の心変わりを成した
…が、慕われれば慕われるほど、過去に犯した外道の所業に苛まれる辺りは因果応報と言えば因果応報。
このことに関しては本人は過去の罪と向き合った上で「闇にいれば迷い苦しみ、光が差せば過去の罪が照らし出される。結局どこに行こうがこの世は地獄よ」と自嘲している。

元ネタは不明だが、一説では鎌倉時代末期の武士「将監(しょうげん)入道」こと平野重吉(平野将監)ではないかとされている。

  • 腐乱(ふらん)
隠す事こそ乱世の処世術 さあ死んで黙りな!

CV:奈良徹

征蟻党幹部。
胴鎧だけを身に着け額に「仏」の文字、目の周りをペイントしたふざけた風貌の悪党。
イロモノな見た目に違わずヒハアアアなど奇怪な叫びを上げたりと、軽薄かつ浅慮な言動の目立つ三下……

と思われたが、それは仮の姿。
実は瘴奸を含めた征蟻党の中で最強の剣士であり、普段は道化を装って仲間にすら実力を隠していた。
素顔は「能ある鷹は全てを隠す」を信条に、下手に能力を見せて使い潰されることを防ぎ、道化を演じて上に取り入ることで甘い汁を啜る乱世の処世術を身に着けた狡猾な男。
また、そこまでして隠し続けた力を使っていずれは党を乗っ取る下剋上を目論んでいた。
その隠し持った力を見抜いた吹雪と対峙し、複雑に刃先を操る「変化する太刀筋」*7で彼を翻弄した。
しかし、その極意が「腕を駆使して敵の視界を遮って手首を隠し、太刀筋の起こりを悟らせない」ことにあると理解していなかった。
吹雪を殺し口封じを図るが、吹雪はわずかな立ち合いを通して、折角の剣技の真髄をまるで分かっていない腐乱の底の浅さを看破。
「思ってたより大したものを隠してなかった」と酷評され、吹雪以外の誰にも本当の実力を見せぬまま首を斬られて死亡した。

結果的に良いとこなしに退場したものの、初登場時にコマの隅に描かれた際にはネウロの時によく見られた一発ネタキャラと思った読者が多数いた中、「台詞つきモブ→名付き幹部→征蟻党内最強」と週を跨ぐ毎に予想の斜め上に出世していくキャラクターとなった。
ある意味、誰よりも読者を欺き、本性を隠し切った悪党であろう。

実は「足利学校」*8からの脱走者である。
どう見てもちゃんとした教育も受けていないにもかかわらず、不完全とは言え「変化する太刀筋」のような高度な剣技を身に付けていたのもこのため。
元々剣術もロクに知らない庶民の出身だったらしく、敢えて技術のみが移植された実験体だった。技の要点をまるで理解していなかったのも当然と言えよう。
また、「ヒハアア」の奇声と目の周りの三色ペイントは素であった。

なお、後に本気を出した瘴奸は、時行と二人掛かりで攻める吹雪を相手に難なくしのぎ切っており、「征蟻党内最強」という腐乱の実力には疑問符がつく。
これは腐乱が「自分以外も実力を隠している」可能性を失念していることが原因であり、例え生き延びたとしても下克上はまず無理だったと思われる。まあ、腐乱の実力を見抜いて倒した吹雪をして実力を見誤らせた瘴奸が規格外とも言えるが……

また顔の三色ペイントに関してはフランス国旗モチーフという説と、浄土宗の「二河白道(二河譬)」モチーフの2説が挙げられている。


  • 死蝋(しろう)
無能な主君だぜ
ガキにろくな快楽も教えてやれず こんなチンケな村のために無駄死にさせるとはな

CV:菊池通武

征蟻党幹部。
モヒカンヘアで白目を剥いた薙刀使い。
腐乱曰く「征蟻党で随一に強い」とのことだが、腐乱の性格を踏まえると、実際は彼より劣ると思われる。
とは言え一度見せた奇襲は通じず、弧次郎と亜也子の連携にも難なく対応する程度には強い。
子供の時に瘴奸に拾われ、あらゆる悪党としての快楽を教わり弱者を犠牲にする今の生き方に至ったため、ロクな報酬もなしに弱者を守らせるために戦わせる逃若党の主君を嘲笑。
しかし、雫の吹き矢による不意打ち+薙刀を素手で押さえる亜也子の怪力+弧次郎の斬撃の連携プレイで致命傷を負う。
そのまま先ほど嘲笑った逃若党の主君が北条時行であることを知らされ、愕然としたまま亜也子の全力のゴルフスイングで首を刎ねられ死亡した。

  • 白骨(びゃっこつ)
CV:堀総士郎

征蟻党幹部。
その名の通り、骸骨のように削がれた鼻と落ちくぼんだ黒い目元を持つ不気味な容貌の男。
吹雪に上記3名と並んで頭抜けて強いと評されるも、弧次郎と亜也子の奇襲を受けて即死した。


余談

おまけページによるとデザインモチーフは阿部寛
阿部寛の画像をトレースしてから全てのパーツを完全に原形が無くなるまで崩して完成したとのこと。

アニメイトタイムズのインタビューで松井先生は「極まった変態こそが最強である」という考え方のもと本作を描いているというが、松井先生によると「アニメはまずは入門編として、小笠原貞宗と市河助房のコンビをオススメします。」と先生直々に分かりやすい変態としてオススメされていた。



追記修正は師匠キャラと敵キャラを兼ねてからよろしくお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 逃げ上手の若君
  • 松井優征
  • 小笠原貞宗
  • 千里眼
  • ギョロ目
  • 信濃
  • 弓使い
  • 征蟻党
  • 小笠原流
  • 武人
  • 偉人
  • ライバル
  • 濃すぎるキャラクター性
  • 中間管理職
  • 礼儀作法
  • 理想の上司
  • ゲス野郎→漢
  • 南北朝鬼ごっこ
  • 正座の産みの親
  • 貞宗流騎射術
  • 阿部寛
  • 変態
  • 青山穣
  • ツッコミ役
  • 守護
  • 千里眼鬼
  • 目玉
  • 師匠
  • 武士
  • 北朝
  • 山本高広
  • 東地宏樹
  • 奈良徹
  • 順風耳鬼
  • 鍼口鬼
  • アクが強い
最終更新:2025年01月06日 21:40

*1 官職名。元々は朝廷保有の馬の飼育・調教にあたった職で正六位下相当。

*2 貞宗が礼儀作法全般を体系化する以前は男女共に立膝や胡座といったラフな座り方が一般的であったという。

*3 ただしこの時代の一流の武士は馬術に加えて剣、弓、薙刀などあらゆる武器を1人で扱えるのが大前提でもあった。

*4 元ネタは由緒正しい貞宗流騎射術…ではなく、長野県松本市内でよく見られる自動車の強引な右折走法「松本走り」から。松本市は細い道の交差点が多く右折車でよく渋滞するため、このような強引な走り方が横行しているという。当然、道交法違反なので真似しないように。

*5 代表的なネタは目薬のCMの真似である「キター!」など。

*6 さすがにアニメではこのルビ芸は再現できず、「名前と値段をステレオ音声で同時に流し、時行が不気味さに戦慄する」形となった。

*7 南北朝時代では力任せの剣術が主流であり、複雑な剣術はまだ広まっていなかったとされる。

*8 下野国足利荘に実在した教育機関。創設年や創設者には諸説あるが、逃げ若では元々朝廷が管轄していたが、衰退したところを上杉家に預けられた設定となっている。なお「坂東の学校」と称されるほどに栄えたのは本編より100年も先の話であり、南北朝時代の学校の実態は不明。そのため、逃げ若世界では上杉憲顕が日夜非人道的な人体実験や改造を施している研究施設が増設されるなど、大分魔改造されている。