足利尊氏(逃げ上手の若君)

登録日:2022/06/28 Tue 14:11:00
更新日:2025/04/20 Sun 19:46:54
所要時間:約 5 分で読めます


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「なぜ尊氏は勝てたのですか?」→太平記「前世での行いが良かったからです(考察放棄)」 きたないラッキーマン この時代の主人公 そうはならんやろ それもそのはず。なぜなら彼は足利尊氏だったからです たらし上手の兄君 アクが強い エキセントリック カリスマ コメント欄ログ化項目 サイコパス ハジケリスト ブラコン メンヘラ疑惑 ラスボス候補 主人公補正 事実は小説より奇なり 人外 切腹 北朝 南北朝時代 南北朝鬼ごっこ 史上最も「わけのわからない」天下人 史実がおかしい 天下人 完璧狂人 完璧超人 小西克幸 強欲 怪物 情緒不安定 戦上手 断髪 未来予知 未来視 松井優征 櫻井みゆき 欲しがりの鬼 武士 洗脳 無責任で身勝手な人格破綻者 狂人 現人神 理解不能 精神汚染 置文伝説 自殺下手の兄君 英雄 薙刀 訳がわからない 豪放磊落 足利家 足利尊氏 足利氏 足利高氏 逃げ上手の兄君 逃げ上手の若君 野心家 野澤英義 長髪 骨喰藤四郎 鬼神



声が聴こえる 誰の声か


誰だ


我を天下に推し挙げるのは


足利(あしかが) 尊氏(たかうじ)とは、南北朝時代前期を代表する日本の武将であり、後に初代室町幕府征夷大将軍となった史実の人物。
本項目では、史実を元に創作されている漫画作品『逃げ上手の若君』における キャラクターとしての足利尊氏 を扱う。

CV小西克幸(幼少期:櫻井みゆき)(TVアニメ)/野澤英義(ボイスコミック)


●目次


ステータス


レアリティ
(1334年)
☆☆☆☆☆ UR
能力 南北朝適正
武力 93 蛮性 85
知力 92 忠義 ?
政治 71 混沌 97
統率 98 革新 95
魅力 100 逃隠 91

  • 属性:武家棟梁
魅力・募兵50%上昇

  • 技能:異次元の求心力
従順・忠義・勇敢・文化・獰猛属性の武将忠誠度50%上昇

  • 技能:武芸百般(甲)
剣術・弓術・馬術の複合技能

  • 技能:京文化適正(乙)
詩歌・絵画・演奏の複合技能

  • 固有武器:足利家重代薙刀(あしかがけじゅうだいなぎなた)骨喰(ホネカミ)
太刀打40%上昇


解放された足利尊氏

レアリティ
(1336年)
☆☆☆☆☆ UR
能力 南北朝適正
武力 95 蛮性 88
知力 91 忠義 0100
政治 69 混沌 99
統率 99 革新 98
魅力 100 逃隠 97

  • 属性:武家棟梁
  • 技能:異次元の求心力
  • 技能:武芸百般(甲)
  • 技能:京文化適正(乙)
  • 固有武器:足利家重代薙刀「骨喰(ホネカミ)
同上

  • 備考:カオスマインド
ランダムに1ターン休み、休むたびに兵力が30%回復し全能力20%上昇(重複可)

  • 備考:神力
魅力と統率40%上昇

  • 備考:逃げ上手
逃走・回避・潜伏の複合技能


概要


鎌倉幕府の若き守護神と称される名将。
その見た目はオールバックにした髪を伸ばし、鮮やかな緑色の瞳を持つ精悍な若武者である。

武勇・教養・家柄・人望、武士に必要な全てを兼ね揃えた文武両道という言葉が命を持った様な存在であり、その実力の通り周囲からの信頼も厚く、主君であった北条家も絶大な信頼を寄せていた。
本作の主人公である北条時行も例外ではなく、第1話の時点では良好な信頼関係を築いている。

しかしどういった理由からか、彼は突如として北条家及び幕府へと反旗を翻す
後醍醐天皇と内通していた彼の謀反と手際は神速とも言えるスピードで、あっという間に京の幕府軍を壊滅させる。
その名声とカリスマは関東中の武士を惹きよせ、挙兵からわずか24日で鎌倉幕府を滅亡させた
つまり主人公・時行の恩人にして怨敵。そして当作品における ラスボス である。


本編が進むにつれて、回想シーンという形や並行して彼の描写がされるが、段々と人間離れした演出が目立つようになっていく。
そして57話で時行は配下の逃若党と共に京都で尊氏を強襲。


マーキングパターンは「目花菱に法輪」

ちなみに好物はうどん。*1

人物像





天下人(てんかびと)

一代で天下を獲るような天下人には…それぞれに特徴がある
ブランドを創る天下人 ブランドを集める天下人 耐えるのが大好きな天下人

足利尊氏は…

野心など感じさせない温厚な性格で 二度も謀反し
情け深く人を大事にするのに いざとなればあっさり見捨て
いつも隠居したがる癖に 自分が天下の中心にいないと気が済まず

心が強く豪胆だが 矢鱈自害したがる上結局死なず
行き当たりばったりに行動するが 緻密に計算された様に結果を出し
惨敗したかと思えば 次の瞬間圧勝している

そんな不可解さがカリスマとなり 人々を異常に惹き寄せる


足利尊氏は史上最も

「わけのわからない」天下人である


一人称は「我」或いは「私」
豪放磊落を絵に描いた人物で、その言動からは邪悪さの欠片も感じ取れない。
底抜けに明るい性格と人の良さを併せ持ち、例え命を狙われようとも全く意に介さず、逆に笑顔でそれを赦し恩人のように接す。
そのポジティブさは多くの民と武士達の人望を集め、社会的・戦力的にも盤石とも言える基盤を形成するに至っている。
帝に対する忠誠心も本物であり、涙を流し心清き部下達と共に支えることを誓うほど。

ここまでは模範的な忠義の武士だが、本性は慈悲、身勝手、無邪気、邪気、楽観、悲観、忠義、野心といった感情を全て宿す巨大な器を持ち、その上で己の感情のまま生きるせいで多重人格にしか見えないような訳のわからない男。
感覚も超然としており、「先々の事だけ考えていたい」という理由から関係の薄い者の存在は誰であろうとすぐ忘れ、過去のことすら碌に記憶しようとはしないなど、人でなしに近いような態度も平然ととってしまう。*2
いざとなれば他者を使い捨てるのにも躊躇いはなく、「この天下に二つ以上の太陽があるのは少し不自然」という理由で護良親王暗殺を直義に命じる残酷な腹黒さも持つ。
たまに「万事よろしく頼んだぞ」と直義に命じることもあるが、これは尊氏の意思が既に決定した後という意味の隠喩である。


これに加えて精神的に不安定な部分があり、劣勢に陥った途端普段の英傑然とした態度が一瞬で崩壊して発狂して自害を試みるとんでもない一面も持つ。これも尊氏の理解不能振りに拍車をかけている。
とはいえ、首に短刀を本当に刺し貫こうが神がかり的な幸運に守られ軽傷程度に収まってしまう上、終わればスッキリした表情で元の調子を取り戻してしまう。
概ねやっていることは『ジョジョ』のエシディシのルーティーンの同類だが、師直の冷静で迅速な対応を見る限り、自害を試みて即座に実行するのはよくあることらしい


人間関係

身内との人間関係は良好。
持ちうる資質が正反対な弟の直義とは非常に仲が良く、尊氏本人も彼の頭脳に全幅の信頼を置き、非常に大切に扱っている。
入れ込み具合も非常に強く、彼が窮地に討死寸前に追い込まれていることを聞いた際は発狂の最中から急に正気を取り戻して「直義は我が愛する分身だ。死なせる事は断じてできん!」とまで言い切っている。
「一心同体のお前の敗北は我の敗北!恥じる時も「(よっわ)っ!」て言われる時も二人一緒だ!」とは直義に対する尊氏の考えだが、心からの善意で直義をしれっとディスったため直義は若干困っていた。

また自分の心を動かしうる優れた人間に対しては極めて友好的な態度をとるようで、腹心である師直や友人である佐々木道誉に対しては上記の他者への酷薄な態度は微塵も見せない。
またこの友好的な態度は敵に対しても同様。
中先代の乱で諏訪頼重を追い詰めた際は彼が乱を引き起こしたことでその名に汚名が付くであろうと予測して悲しんでいる。
自身を劇中にて初めて本気にさせた楠木正成に対しての好感度は極めて高く、彼を「貴方ほどの傑物」「天下の鬼才」と最大限に評価。
自分が直接手に掛けたとはいえ、正成の死を「無益な死に方」と心の底から惜しんで涙を流した上で、正成に再び会いたい余り「死んだら直帰で生まれ変わって来て下さい!また敵でも全然良いので!」というぶっ飛んだ提案を満面の笑みで大真面目に語って見せて、敵であった正成も呆れさせながらも和ませてしまった。

しかし、敵は敵でも北条時行だけは例外的に蔑みと嫌悪の感情を向けており、随所随所で自身の気分を逆なでさせる時行に憎悪の念すら向けている節がある。
時行にとって尊氏は地雷だが、尊氏にとっても成長した時行は地雷そのものなのだ。


縺溘°縺?§鬼


全部よこせ 全部

尊氏が彼の内にいると称する謎の存在。尊氏曰く「欲しがりの鬼」
106話で遂にお披露目となったが、その文字は判読不能。
複数の漢字や記号を組み合わせたような異形の象形文字(?)となっており非常に禍々しい。
ちなみにこの文字は、担当した書家の前田鎌利氏曰く「書き上げるのにゆうに300枚超」を要した力作となっている。

尊氏はこの鬼の事を「平和な世では大人しく無害」と語るが、大乱が起こった場合はその限りではないとのこと。
事実戦いや争いとは関係のない場では一切その片鱗を見せることはない。

だが尊氏の「自分の歩幅で自由気ままに歩くのが好き」という考えから、自分の意のままにならなかったり己が不快感を感じたりといった具合にストレスを感じる様な事態になると態度が急変。
  • 普段とは真逆な程の邪悪と悍ましさを他者に感じさせる気性の荒い欲望に満ちた独り言を呟く
  • 戦で軽傷のまま戦いを終えた幸運を讃えて恩賞を与えようとした部下を一切表情を変えず衝動的に殺害し平然とした態度で死体を放置する
など、彼の中にある鬼の本音が漏れ出しているかのような一面も垣間見せている。
そうでなくても神仏を愛好してはいると標榜しておきながら、無自覚に神仏を食い物にしか思っていない絵を描いてしまったりとちょくちょく鬼の一面は日常でも漏れていたりする。

劇中での身内や一部の強者は彼の中に形容できない名状しがたき気配を感じ取り、それらの者からは最大限の警戒を向けられている。
尊氏本人もそれを認めているが、自分でも何をすべき―何をしているかよくわかっていないと思わしきシーンも多々見受けられる。


なお作者の過去作には絶対悪と呼ばれ、悪行や非道を行う事に一切の呵責のない生物がいたが、それ故に自ら「自分は絶対なる悪である」と豪語する強固な意志の強さを備えていた。
しかし彼は違う。その言動には悪意の欠片もない。善悪の物差しを持っていない所ではない。善悪或いはそれに類する概念の存在を知っているか、そういった単語の意味を理解しているか、そもそも聞いた事があるかどうかすら疑わしいのである。
同作品で外道と称された瘴奸は略奪や殺人を働き、子供を売り飛ばす悪行に酔っていたが、仏を見出した後は自身の悪行を恥じ、人生を狂わせてしまった子に対する罪悪感に苦しんだ。
だが同じく屍山血河を築き、主君を裏切った事で多くの者の運命を狂わせておきながら、彼はそれを楽しみも悔いもしていない。
実際に相対し、その在り方を見た吹雪は「怪物」「無自覚の極悪」「無邪気に生きているだけで人を狂わせ死なせる男」と評した。

この極端な二面性が尊氏の底知れなさをより深めている。


能力


鎌倉幕府の臣だった頃は「鬼神」と世に謳われる剛勇の士。後述の神力が齎す超常的な力ばかり目立つが、
そういった異能を使わずとも複数の手練れの首を一撃で纏めて斬り飛ばし、馬上という自由の利かない場所から向けられた三方向からの攻撃を楽々捌くなど、超人的な武芸者としての顔を持ち合わせている。

奇襲や暗殺といった方法で彼を殺すことはできないとされているが、それは本人が上記の通りの武芸の達人だから。
実際、作中においても護良親王と配下の武芸者達が幾度の暗殺を試みたがその悉くを返り討ちにしており、『軍神』楠木正成も神力に依らず当人の武芸のみで討ち取っている。

尊氏と激戦を繰り広げ、作中で初めてに尊氏に本機を出さしめた楠木正成曰く「人の力と人ならざる力、全てを宿せる巨大な器を持っているから…足利尊氏は最強なのだ」「足利(かれ)は戦上手では倒せない」との事。


神力(しんりき)

単純な個としての戦闘力以上に尊氏が恐れられる点。
『現人神』である諏訪頼重を凌駕するほどの神力を得たことによる神の如き求心力(カリスマ)と強運
このカリスマ性は無条件で人に好かれ、信頼を寄せられる魔性染みた魅力に繋がっている。
他にも己の神力を自身の唾液に宿らせ他者に経口摂取させる事で自身に絶対の忠誠という名の洗脳染みた依存感情を植え付けることが出来るという、前作理事長も真っ青な人心操縦術(マニピュレーション)を使うことができる。*3頼重よりも使い勝手がよくてハイスペックである。
頼重からは「悪しき神力」と断じられており、この神力の餌食になった者は正気という正気を失い、尊氏への忠誠心しか残らなくなるほど壊れてしまうという欠点はあるが尊氏本人は顧みていない。
そして強大無比な神力の恩恵を受け、
  • 僅かではあるが頼重のように未来視を行い、完全な奇襲であってもあっさり見抜いてカウンターを放って迎撃する。
  • 目潰しを受け片足をへし折られ片腕を傷つけられ首を蹴りでへし折られても神力の生命力活性の影響で何食わぬ顔でゾンビみたいなモーションで立ち上がり戦闘を再開。
    • 倒れた場所に偶然埋もれてた「骨喰」を手に入れて簡単に失った武装も回収。
などなど、とんでもない状況を引き起こした。

弟である直義は「人知を超えた勘の鋭さ」を持っていると評し、内心肉親でありながら「人間かどうか疑いたくなる」と呟く程だが、これが神力の恩恵なのかは不明。
ただし、この神がかった勘には一つだけ弱点があり、それは北条時行が絡むと決まって卓越しているはずの勘が外れるようになっている。
そういう意味では時行は尊氏にとって唯一の天敵であり、それが前述の時行に向けた悪感情に繋がっていると思われる。

その恐るべき魔性の所以は50年前に存在した尊氏の三代前の先祖・足利家時の予言を受けて産まれた呪われし末裔
足利家時は「我から数えて三代後の子に天下を取らせよ」と神に願いながら切腹・自害したという噂が伝わっており、噂が真実であれ嘘であれ、結果的に尊氏は強い怨念を宿しながら生誕を果たした。
それゆえ本来長い時間を掛けて万人に行き渡るべき神力を半ば独占状態で吸収しており、もし尊氏が天下統一を果たしてしまった場合、日本の神力が全て尊氏1人に独占され、人の発展は止まってしまうと頼重から危険視されている。
とはいえ突破口がないわけでもなく、頼重によれば「ごく平凡な人間のような動揺」を取らせることができれば、尊氏に宿る過剰な神力は失せ、尊氏を人の領域に引き摺り下ろせるだろうと考察している。


カリスマ性



足利尊氏の実像に迫る様々な仮説は どれも矛盾がある
行動と結果があちこち不可解すぎて人間らしくならないためだ

不可解さを象徴する現象の一つが
尊氏が絶体絶命の時
決まって敵が一斉に尊氏に降参する(・・・・・・・・・・・・・・・・)

(わけがわからない …人間じゃない)


尊氏の実像を不可解たらしめる才覚。ナレーションでは「身勝手で予測不能なカリスマ」とも称される。
強力無比な神力によって発揮されるカリスマ性は強烈な後光で表現され、戦場において自分が窮地に陥ると、相対した敵の大軍を一瞬で洗脳し、敵対した兵士達を降伏に追い込んでしまう無法の異能となる。
執事の師直曰く「以前にも力を浴びているか、心に強い餓えがある者ほど深く中毒(はま)る」とのこと。
自軍の士気向上にも大いに貢献しており、自分が何かしら特に戦とは関係のない突拍子もないアクションを取っても、部下が勝手に都合のいい解釈を取ることで結果的に士気の大幅な向上を齎していく。

護良親王が生前暗殺を繰り返していたのは、尊氏の野心と内に宿る何かを感じ取り、「帝に仇為す前に打ち滅ぼす」という父を慕った上での行動であった。
その懸念は杞憂ではなく的中していたのだが、当の父である後醍醐天皇は皇子(血を分けた実の息子)よりも出会って間もない尊氏に惹かれ、寵愛を向けていたのだ。
結果、尊氏と敵対した彼は将軍を解任され失脚。このように、彼と関わった人物は好悪関わらず必ず何かを狂わせられている。

作中の中先代の乱では自軍が劣勢の中、神力の後光を以て1万騎もの諏訪軍の兵士を一瞬で降伏させて諏訪軍の戦力をガタガタに崩壊させることで呆気なく逆転勝利。
1336年に新田義貞・楠木正成の連合軍に敗れた際も、朝敵認定されて敗走する尊氏に勝ったはずの新田・楠木軍の兵士が離反して尊氏へついていく常軌を逸した光景も発生しており、楠木正成ですら「尋常ではありえん事だ」とその光景を見て内心で畏怖。
後の回想にて護良親王は「尊氏の魔力は人を惹きつけ人格まで変える」「尊氏との戦は奴に魅かれた多彩な人材が最大の障壁」と奥州赴任前の北畠顕家に語っていた。

後に出力調整も可能なことが明らかになり、自分と目が合った敵兵を魅了して意識を一瞬だけ混濁させ、気抜けした敵兵の首をそのまま難なく刎ねる行為も行っている。


武器

  • 足利家重代薙刀「骨喰(ホネカミ)
ご安心を 一刀で逝けます

1336年の湊川の戦いで初お披露目した専用武器。
尊氏の身の丈ほどの全長を有し、柄が人間の背骨、千段巻の部分が人間の肋骨を模した奇怪なデザインの大薙刀。
肋骨のような出っ張りに相手の刀を引っ掛けソードブレイカーの要領で圧し折る使い方ができる。
切れ味も尊氏の武芸の技と合わせて大鎧ごと人体を斬り裂き致命傷を与えるほどに優れる。

モデルは史実でも足利家に代々伝わっていたとされる大薙刀「骨喰」*4
戦国期には足利将軍家から松永久秀大友宗麟・義統親子、豊臣秀吉徳川家康と次々持ち主を変えており、その間に脇差へと打ち直されている。
今日では骨喰藤四郎(ほねばみとうしろう)と呼ばれる名刀として有名*5
「斬る真似をして振り下ろしただけで相手の骨を砕いた」「軽く振っただけで、根もとから切られた大根のように骨を切るので、骨を丸嚥みにする刀」といった逸話が名前の由来とされる。

厳密には尊氏の固有武器ではなく性質。
強い悪しき神力が宿った光輝く唾液で、摂取した人間は短時間だが目の前の人間の命令に狂信的に従うようになるため強い催眠・洗脳作用のある興奮剤として機能する。
原理としては目の前の人間が尊氏であるかのように誤認してしまうことから起こる現象らしく、接種すると相貌が幽鬼めいたものへと変貌。過剰摂取すれば精神崩壊じみた悪影響すら及ぼす。
師直は酒に混ぜて運用しており、兵の士気を過剰なまでに膨れ上がらせるために用いた。


余談


  • 置文伝説
足利郎党の今川貞世が記した『難太平記』に記された伝説。
足利家にとって先祖にあたる源義家が「七代後の子孫に生まれ変わって天下を取る」と記した置文に端を発しており、義家から七代後の子孫である足利家時が自分の代では達成できないことを悟って、さらに三代後の子孫に天下を取らせる願文を残して自殺したという。
この家時から三代後の子孫こそ他ならぬ尊氏であり、彼は置文の怨念を宿したことで天下取りに臨んだ……という。
この置文は実際に高一族によって保存されていたらしく、直義がこれを見て感激した旨を伝える書状も残っており実在が確認されている。
ただし、実際の置文がこのような呪物めいた代物だったのかは疑問が残り…
  • 直義がこの置文を読んだのは足利家が後醍醐帝に反旗を翻した建武の乱から15年後のため、置文は天下取りの動機ではない
  • 尊氏には夭折した嫡流の兄・高義がいたのだが、何故嫡流ではなく庶流の尊氏が三代後の天下人に選ばれたのか
 →高義は後世で代数にこそ数えられていないが、足利当主として活動した記録があり(新田義貞も高義からの偏諱を受けている)、その場合、家時→貞氏→高義→尊氏となり、尊氏が家時の三代後となっている。
  • 義家から数えて七代後の家時が天下を取れないことを悟って、三代後に先延ばしにしたとのことだが、そもそもそれより以前の源頼朝が既に天下を取っている
 →鎌倉幕府の支配権が本格的に全国に及ぶようになったのは承久の乱(1221年)以後のため、頼朝の時点では天下を取ったとは言い難い。
といった数々の不可解な部分が散見される。
ぶっちゃけ置文自体は実在したとしても、その内容の論理的破綻からして本当に天下取り云々について書かれていたかは疑わしく、今日においてはオカルト伝説の類と見做されている。

  • 後醍醐天皇大好き
尊氏の元の名は時行の父で最後の執権であった北条高時からの編諱を受けた「氏」。幕府を滅ぼした後に後醍醐天皇から本名(諱)の字を一字授かり「氏」に改名している。
日本史上に於いて皇族以外で天皇から名を授かった数少ない人物(小田久他数名も後醍醐天皇(尊治)から偏諱を受けているが、身内以外で一文字目の「尊」を貰ったのは尊氏のみ)であり、以降は例え天皇と敵対しても「尊氏」を名乗り続けた。一方で後醍醐天皇も特に剥奪はしておらず、両者は立場故の敵対関係だったように思われる。
このことから、尊氏は常に後醍醐天皇に敬意を払っており、反逆したのは天皇に対してではなく、武家を重んじない建武の新政の在り方に対してではないかと推測されている。
後醍醐天皇に朝敵認定された際には大いに動揺し、実際に断髪して出家しかけていた。

後醍醐天皇が崩御した際にもその冥福を祈る天龍寺を創建し、崩御100日目には「君臨すること太陽のごとく、我らが仰ぎ見ること雲のごとく」等と著した怪文書願文を残している。
なおこの時、尊氏は既に北朝を立てており、後醍醐天皇率いる南朝と対立している真っ只中である。

  • 大英雄?大逆賊?
武家のトップである征夷大将軍に就任して室町幕府を開いた大英雄ではあるが、同時に南北朝の分裂と混乱を巻き起こし、そうでなくても天皇に叛逆したという一点で皇国史観的に江戸時代から戦前に至るまで天下の大逆賊と見做されるなど、日本史上でもトップクラスに毀誉褒貶が激しい人物である。
皇国史観を抜きにした評価も難しく、その場しのぎのライブ感でしか動いていないような行動が多々ある挙句、いざ逆境に陥ると出家や自害をほのめかすメンタルの弱さを見せ、そのクセ合戦になると鬼のような強さで蹂躙するなど人物像が安定しない。
そのあまりの言行不一致さに頭を抱えた学者が「尊氏躁鬱説」を大真面目に唱えだすレベル(現在はこの説は否定的にみられている)。

上記の通り、自身が追放した後醍醐天皇のことも終始敬っていた節があり、個人の思想と武士としての立場とのギャップに生涯悩まされた人物とも解釈できる。
第1話では「この時代の主人公」と称されているが、その行動のあまりの支離滅裂さから「物語の主人公としては不適格」とも言える。逆に何を考えているのか全くわからない底知れなさを持っているとも言え「ラスボス適正は抜群」との声も。

  • 人物像
本作の尊氏の人物像のモチーフになっているのは、恐らく尊氏の禅の師匠でもある夢窓疎石が『梅松論』に書き残した人物評。
  1. 心が強く、いくら合戦で命の危険に遭っても笑みを浮かべ、全く死を恐れない
  2. 生まれつき慈悲深く、他人を恨むことを知らず、仇敵すら許して我が子のように愛した
  3. 心が広く、物惜しみすることもないため、金銀すら気軽に人に分け与える
その上で、上記の「最新研究をもってしても矛盾点が多くよくわからない人」をも組み込んだ結果、上記の人物評の通りでありながら矛盾する一言で定義付けすることが不可能な怪物と化している。

作者の松井先生の師匠である澤井啓夫先生の『ボボボーボ・ボーボボ』のギャグの中には「それもそのはず。なぜなら彼は足利尊氏だったからです」というものがあるのだが、本作における尊氏の奇行も読者の間では同様の文言で流される傾向にある。やはりボーボボは預言書…

松井先生は本作の尊氏について「最も格好良く最も気持ち悪く、最も実像に近い足利尊氏像を目指しています」とコメント*6
また尊氏のこの異常性が描かれたのは連載からしばらく経ってからのため、もしも本作が短期打ち切りに終わっていた場合は尊氏は完璧超人のまま終わっていたという。
この人物像は「室町幕府を開いた英雄」という教科書掲載以上の情報を持たない読者から驚きの声が寄せられた一方、歴史好きの読者からは「創作物の尊氏の中で一番史実通り」との感想が松井先生の元にも届いたようで、作者の狙い通りの反響が得られていると言っていいだろう。
『塞王の楯』で直木賞を受賞し、楠木正行を主人公にした『人よ、花よ、』で南北朝時代の執筆経験もある今村翔吾先生も、松井先生との対談の中で「僕の考える尊氏像にかなり近かった」と語っている。

それを聞いた松井先生「それはそれで史実がおかしい」(第105話が収録された単行本12巻のおまけページより)


冥殿卿もう怯える事はありません。追記・修正は尊氏にお任せ下されば全て大丈夫。
さ…ゆっくりと目を閉じて


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最終更新:2025年04月20日 19:46

*1 おそらく本作独自の設定

*2 ただし、尊氏自身はそのことをちゃんと自覚しており、関係の薄い者は部下に記憶させる配慮をしいたり、忘れた事実に直面したら直ぐに謝罪したりしている。

*3 おそらく、尊氏の持つ絶対的な魅力を高濃度に摂取させる能力と思われる。

*4 本当に足利家重代かは議論の余地があり、例えば大友宗麟は多々良浜の戦いの際に先祖が主従の誓いとして尊氏に贈ったものだと主張して買い戻している。

*5 読みに関しては「ほねばみ」が一般的なのだが、9代将軍足利義尚が所有しているものは「ほねかみ」と記されており本作もその記述に倣ったのだと思われる。

*6 第105話『「わけのわからない天下人」である』とのナレーションが入った連載回のジャンプ巻末コメントより。ちなみに第105話のサブタイトルは『天下人1335』