2021年第38回ブリーダーズカップディスタフ

登録日:2021/11/20 (土) 14:18:12
更新日:2025/03/18 Tue 13:18:55
所要時間:約 11 分で読めます





2021年第38回ブリーダーズカップディスタフとは、2021年11月7日にデルマー競馬場で開催されたGⅠレース(ダート9ハロン、3歳以上牝馬、定量(3歳北半球産121ポンド、南半球産118ポンド、4歳以上124ポンド))である。
レース史上最大の大番狂わせと評されると共に日本競馬史に残る偉業が達成されたレース。


出走馬


馬番 馬名 騎手
1 プライベートミッション(Private Mission) F.プラ
2 ロイヤルフラッグ(Royal Flag) J.ロザリオ
3 マラサート(Malathaat) J.ヴェラスケス
4 ブルーストライプ(Blue Stripe) L.デットーリ
5 クレリエール(Clairiere) R.サンタナJr.
6 レトルースカ(Letruska) I.オルティスJr.
7 ホロロジスト(Horologist) J.アルバラード
8 シーデアズザデビル(Shedaresthedevil) F.ジェルー
9 アズタイムゴーズバイ(As Time Goes By) L.サエス
10 マルシュロレーヌ O.マーフィー
11 ダンバーロード(Dunbar Road) J.オルティス
※米国だと枠番による帽子色等はない


ブリーダーズカップディスタフとは

米国競馬最大の祭典であるブリーダーズカップ・ワールド・サラブレッド・チャンピオンシップを構成する1レースであり、
米国の牝馬限定レースとしては最高タイの格と賞金を誇るレースである。

……こっちと同じ説明書いてる? 芝とダートのそれぞれ同格のトップと言う扱いで賞金も同額だからね、仕方ないね。
ただしフィリー&メアターフがブリーダーズカップターフから分化して追加されたレースであるのに対しこちらはブリーダーズカップ初回開催当初からあったものであること、米国競馬においては日本とは逆にダート競走が重視されることから格(レーティングではない)は高く見積もられており、
歴代勝ち馬もこれまた多士済々。具体的には、

  • 年間GⅠ8勝という新記録をうちたて、45戦25勝という破格の出走数及び勝率をマークしたThe Iron Ladyことレディーズシークレット(Lady's Secret)
  • 生涯戦績13戦13勝(うちGⅠ8勝)という成績を残しただけでなく、ラストランのBCディスタフでダービー牝馬ウイニングカラーズ、(キングヘイローの母でもある)GⅠ7勝馬グッバイヘイローをなぎ倒したことで今なお米国史上最強牝馬の一頭に数えられているMs.Perfectことパーソナルエンスン(Personal Ensign)
  • 牝馬でありながらカナダの牡馬三冠路線に挑み見事三冠を達成。返す刀で遠征先のBCディスタフも制覇し3歳時8戦8勝の成績を残したカナダの女王ダンススマートリー(Dance Smartly)
  • 史上初のBCディスタフ2連覇を含むアメリカGⅠ12勝(当時の世界記録)を達成したアルゼンチン史上最高の女傑バヤコア(Bayakoa)
  • デビュー以来GⅠ13勝を含む19連勝を達成し、その中で牝馬史上初のBCクラシック制覇も成し遂げた空前絶後の超名牝ゼニヤッタ(Zenyatta)

など、実に多彩かつ強烈なメンバーがそろっている。

レース開催順もクラシック、ターフに次いで後ろから3番目と、ブリーダーズカップ内においても重要度の高いレースとして扱われている。早い話がダート牝馬世界最強決定戦だと思えばいい。

レース前

レース前から「ブリーダーズカップクラシック*1よりレベルが高いのではないか*2と評される程の好メンバーが勢揃いしており、
1番人気は前回・3回前の勝ち馬モノモイガール*3に引導を渡し、GⅠ4連勝を含む重賞5連勝で本番に臨むメキシコ出身のレトルースカ
GⅠ2勝を含む7戦6勝2着1回の今年のケンタッキーオークス馬マラサート、前年度のケンタッキーオークス馬シーデアズザデビルも控える等多士済々。

そんな中、日本から参戦したのはマルシュロレーヌ
4歳夏までは芝の条件馬だったもののダートに転身すると適性を発揮し、地方交流重賞のうちGⅡ(Jpn2)を2勝、GⅢ(Jpn3)を2勝、ダート転身以降8戦5勝と躍進、日本のダート牝馬としてはトップレベルに上り詰めていたが肝心のGⅠ(Jpn1)は2戦2敗、しかも直近の帝王賞では8着止まり*4
さすがに上記の面々と比べられるレベルではないことは言うまでもないだろう。
しかも地方重賞は国際グレードを持たないため国際基準にあてはめると重賞未勝利扱いされ、レーシングポスト社が付けたレーティングは出走馬唯一の二桁であるわずか99*5という事から大抵の賭けの会社でブービーの10番人気
所によっては10番人気が34倍の中67倍のぶっちぎり最低人気扱いになるのは無理もない事であった。現地オッズでは50.9倍で11頭中9番人気、複勝2着払い(Place)は20.5倍、複勝3着払い(Show)は9.4倍である。
ジョッキーはオイシン・マーフィー騎手。今回がこの馬への初騎乗であり、これも不安要素となった。遠征なので仕方ない……と言いたいところだが、本来の主戦騎手川田将雅がこの遠征に帯同しているのに何故か乗り替わっていた。
もっとも、海外騎手だが過去何度も来日している日本なじみの騎手であり、実力も折り紙つきなので「初騎乗」以外の不安はなかったと言える。とはいえマーフィにとっては「デルマー競馬場での」初騎乗日という、二重の初騎乗が重なる状態だったのだが。
2019年のジャパンカップ(海外招待馬0)では日本馬スワーヴリチャードを勝利へと導いた経験がある。他にも、ディアドラとのコンビでイギリスのナッソーステークスを制し、以降も共に世界中を巡ったことが記憶に新しい。

なおマルシュロレーヌはキャロットファームのクラブ馬であり、一口馬主たちからの反応は否定的なものが多かった。
大きな理由として、BCディスタフに遠征すると日本ダート牝馬の最大の目標となる交流重賞JBCレディスクラシック(Jpn1)に出られなくなるからである。優勝すれば栄誉と賞金4,100万円が手に入り、勝ち目も十分にあった*6レースであった。
それを捨てて勝ち目が全く見当たらず、さらに遠征費用も一口馬主たちの負担になった*7ことを考えたらやむを得ない反応であったといえる。

そんな有様なのもあってか、ブリーダーズカップを放送していたグリーンチャンネルではBCディスタフの放送はなく*8、レース時間の間に次に放送するレースの調教動画を流す始末であった。


では、何故こんな馬がはるばる遠征してきたのか。
彼女は、2時間前のレースを勝利することとなったラヴズオンリーユーとは同じ牧場で生まれ、幼駒時の放牧地も一緒で所属厩舎さえ一緒と言う大親友。
ラヴズの方は日本と海外のGⅠを獲っておりすでに実績十分、満を持しての挑戦である。
つまり彼女に求められているのは、海外遠征にはつきものの「帯同馬」としての役割
挑戦はそのついで、ダメで元々。
実際彼女のおかげかラヴズは不安要素なくレースに挑むことができ、日本馬初となるBC制覇を成し遂げられたのだ。すでに立派に役割を果たしており、後は無事にコースを回ってくるだけで彼女の仕事は終わり…

……と、少なく見積もっても99.9%くらいの関係者・ファンは思っていたであろう。


響き渡る行進曲

スタート直後からレトルースカ、シーデアズザデビル、プライベートミッションが恐ろしい勢いで吹っ飛んで行き、マルシュロレーヌは中団後ろに位置を取る。
アメリカの本場ダートGⅠはスタート直後の加速が日本より遥かに早く、日本では逃げ馬なのに逃げられずに中団からの競馬を余儀なくされると言う事も多いので、ついて行けてない?と思うかもしれないが、彼女は元々日本ダートでも差し追い込み中心で走っていた為問題がない位置取りと言える。前方では大問題が発生していたが。

Hot Pace! twenty one point eight!
forty-four! point nine seven!

逃げるプライベートミッション、レトルースカが作ったペースは何と最初の400mが21秒8、800mでも44秒97と言う地獄の超ハイペース展開
例を挙げるのならば日本のほぼ同距離(本レースは9ハロンであり1800mより微妙に長い*9)の芝レース毎日王冠のレコードペースで400m23秒5、800m45秒9と800m地点でも約1秒遅く、その毎日王冠では後方待機の差し馬が勝っている
この翌年にフライトラインが叩き出すBCクラシック史上最速ラップですら800m通過は45秒台であり、冗談抜きで(この時点での)牡馬のそれより速いペースでかっ飛ばしている。
いくらアメリカの競馬がハイペースで逃げあって粘り切った方が勝ちに近い物があるとは言え物には限度と言う物がある
何せ上記実況の下の「forty-four!」の方は実況の口調が完全に呆れ果てた物になっていたぐらいだし。

前の馬は3コーナー地点で手が動き出し、後続もそんなペースなのにさほど離れず付いてってたせいであまり手ごたえが良くないか……と言った所で、
持ったままで大外ぶん回して進出を開始した1頭が、そのまま4角先頭から押し切りを図る姿に実況が驚愕の声を上げる。





Marche Lorraine(マルシュロレーヌが), trying to go for A GIANT UPSET(大番狂わせを狙っている!)!





さらに外から喰らい付こうとしたロイヤルフラッグを突き放したもののアホみたいなハイペースを3コーナーからまくって早め先頭と言う強引な競馬をした為さすがに余力がなく、
その時点で完全に力尽きて恐ろしい勢いで後方へ撃沈して行く人気馬達を尻目に後ろから付いて行って内に潜り込んだダンバーロードが内から強襲。
しかしそれでも鞍上のO.マーフィーの必死のゲキに応えて粘りを見せると鼻面を並べたままゴールイン。着順は写真判定に委ねられた。
判定待ちの間には、現地映像が様々なアングルからゴールシーンのリプレイを何回も流しており、それらの映像が、画角によってどちらが先着かが変わるほどの接戦であることを物語っていた。


そして遂に着順が発表された。その結果は……。







Now! Marche Lorraine!!!



1着:マルシュロレーヌ
2着:ダンバーロード
3着:マラサート
4着:クレリエール
5着:ロイヤルフラッグ
6着:シーデアズザデビル
7着:ブルーストライプ
8着:アズタイムゴーズバイ
9着:ホロロジスト
10着:レトルースカ
11着:プライベートミッション

ハナ差だけギリギリで粘り切ったマルシュロレーヌが日本調教馬初となる海外ダートGⅠ制覇を成し遂げた*10
それも生半可なGⅠレースではない、紛れもないダートの本場アメリカの最高峰でそれを成し遂げたのである。
2着にはこれまた人気薄のダンバーロードが入り、人気どころではマラサートが3着に入るのが精一杯。
1番人気のレトルースカはマルシュロレーヌから約32馬身離された10着に大惨敗、と言うか5着までが大体1馬身少々の圏内での混戦、6着以降は数馬身や10馬身以上や離れてぽつぽつと入線と言うレースだったのだが、
レース結果の掲示板5頭=向こう正面の隊列の後ろから5頭と言うあからさまなまでの飛ばしすぎの前潰れレースであった。
何せ勝ちタイムが1.47.67、1200m通過が1.09.70の為上がり3ハロンは37.97。マルシュロレーヌ自体は残り600m地点で先頭に立っている訳ではないのでもう少し上がりが早いとは言え、
レトルースカ等はそこから32馬身(=約6秒)を600m足らずで離された訳なのだから完全に歩いていると言っていい状態。
そのためこの勝利は展開が味方した部分も確かにあるが、とはいえそんなレースを早仕掛けのまくりで4角先頭から押し切ったマルシュロレーヌの実力は本物であったと言えよう。
勝ちタイム自体も本レースにおける歴代5位の好タイムであることもそれを裏付けている。

また、ここまで荒れ狂ったレースは、長いブリーダーズカップディスタフ史上でも極めて稀であり、判定が出た瞬間思わず実況がHoly cow(なんてこった)!と口走ってしまう程。
アメリカでは4連単5連単の馬券も販売しているが、4連単は20000倍以上、5連単に至っては的中者なしでキャリーオーバーになる有様であった。

さらにブリーダーズカップディスタフはこれまで1回を除き全て米国馬が勝っており、その1回も上述したカナダ調教のダンススマートリーが勝利していた。
そのため、日本はおろか北米大陸以外の馬が勝利したのもこれが初めてである。どれだけ偉業を重ねれば気が済むのか*11


余談

  • 調教師の矢作芳人は「米国のダートは芝もやれる馬なら行けるのではないか*12それならば3勝クラスで僅差2着があったり底は見せてなかったマルシュロレーヌならば」と思っていた事が挑戦の要因*13
    • その為勝利調教師インタビューでは「何でこんなに舐められてたんだろう」と発言し、インタビュアーを完全に苦笑いさせていたりも。その一方で、マルシュロレーヌの大金星に対しては「もう死んでもいい」と発言するほど感無量の様子だった。
  • なお、マルシュロレーヌはあの産駒成績がカオスかつ極端な事に定評がある三冠馬オルフェーヴル産駒でもあり、彼女が三頭目のGⅠ馬となったおかげで産駒の傾向がますます読めなくなった
    • マルシュロレーヌの偉業の影響として、日本馬が海外ダートレースへ挑戦する事が格段増えた事と、オルフェーヴル産駒のダート転向が増えたという点が挙げられる。ダート替わりからドバイWCを制したオルフェーヴル産駒ウシュバテソーロまさにこの2つの影響を象徴する存在と言える。
    • ちなみにレース後の映像やニュース記事の写真ではしっかり父親譲りのディクタスアイ*14を披露している。フランスの競走馬ディクタスの血が日本を経由してアメリカに上陸した瞬間であった。
      • ディクタスは気性の荒い馬で、その子孫たちの気性も例に漏れないことが多いのも有名だが、マルシュロレーヌは、むしろインタビュー中に延々とインタビュアーが乗っていた馬の毛づくろいしてた馬大好きタイプである。
        え、あの後鞍上振り落としてる?…いやーアレどう見ても勝者用の豪華なレイの飾りにビビって飛び退いただけだし…
    • 余談だがマルシュロレーヌの祖父ステイゴールドも日本では詰め甘の善戦マンだったのに同厩の馬のドバイ遠征に帯同馬としてついて行き、『ついで』で出走したドバイシーマクラシック(当時は国際GⅡ)にて並み居る強豪を抜き去り、王者ファンタスティックライトをハナ差差し切って勝つという大番狂わせを演じており、孫娘の勇姿とギョロつく目に在りし日の彼の面影を重ねる者が続出した。
      • ただし矢作調教師の言によれば本来はであり、「(既に同一年でドバイと香港への海外遠征をこなしている)ラヴズは大丈夫だろうが初遠征であるマルシュは不安だからラヴズを傍に付けよう」と言う、立ち位置としてはラヴズオンリーユーがマルシュロレーヌの帯同馬的物だったとの事。
      • また彼女の母方の曽祖父ダンシングブレーヴはアメリカ生まれ・英国調教の凱旋門賞馬であり、父方の曽祖父サンデーサイレンス(ブリーダーズカップクラシック馬)と合わせ多重に血の因果が存在していたり。
    • といったように父系まわりでは海外由来の血が目立つが、逆に母系を辿ると1925年生まれの輸入繁殖牝馬シユリリーまで遡れるというかなりの日本土着血統。他に特筆すべき要素としては、祖母が97年桜花賞馬のキョウエイマーチであることや、7代母クインナルビーの牝系は他にオグリキャップを生んでいることなどがある。
  • 前述通りグリーンチャンネルも生放送の放映権を購入しておらず、制覇後に慌てて放送中にレース映像の録画中継を差し込んで流すような有様であった。
    • なおアナウンサー等があまりにも慌てすぎて「とんでもない事が起きてしまいました」等、完全にネタバレめいた言動をしてしまっていたし、差し込み前には番組内容変更を準備する裏方のドタバタが思いっきり視聴者側に伝わってきていたとの事。
  • マルシュロレーヌが過去に挑んだJpn1レースのうち、帝王賞ではないもう一つとは、前述のJBCレディスクラシックである。前年(2020)に挑んで3着であった。
    で、このJBCシリーズはそもそもブリーダーズカップをモデルとしたレースであり、BCで言うところのディスタフ=JBCで言うところのレディスクラシックである*15
    つまりオマージュの方で勝てなかったのに元ネタの方で勝っちゃった形になる。
    • ちなみにBCディスタフの賞金は104万ドル(日本円で約1億2000万円)。さらに言えばJBCレディスクラシックの約3倍である。出資者たちが手のひらを返したのはもはや言うまでもない
  • マーフィー騎手は前述通り短期免許を取得して日本で騎乗した事のある騎手だが、その理由はマルシュロレーヌの父であるオルフェーヴルの競馬を見て衝撃を受けたからだったりする。
    • ちなみにマーフィー騎手への乗り替わりは本来ラヴズオンリーユーの海外遠征用の切り札としてマーフィー騎手の起用が考えられており、BCの舞台と言う事から招聘した所川田騎手の「どうしてもラヴズオンリーユーに乗せてくれ」との懇願を受けて乗り替わりが取り止めになり、招聘したマーフィー騎手が宙に浮いた為代わりに、と同時遠征であり主戦騎手が一緒だったマルシュロレーヌにスライドさせた為である事が後に語られている。
    • …がその後、本レース以前に起こしていたアルコール関連のトラブル等から治療が必要と判断され翌12月から騎手免許を一時返上*16している
  • 2021年度JRA賞ではこの年中央競馬未勝利なのに最優秀ダート馬投票2位、年度代表馬にも1票入る事態となり特別賞にノミネートされるも落選。特別賞の選考委員8名の内6票以上の賛成票が入らないと落選する仕様で、反対票の理由も述べられていた。
    • が、その内1つの理由が「偉業そのものは相応しいがライト層への浸透が歴代の特別賞受賞馬に比べると弱いから」と言う理由であった事で馬の者界隈が大炎上
      • 何故かと言われれば選考委員は競馬関係の記者を中心として選定されている為であり、「おめーらが浸透させなきゃいかんのだろうが!」「偉業は相応しいんならむしろ浸透させる為に特別賞受賞させるべきだろ!」と言った轟々たる非難を浴びている。そして非難ツイートが多すぎて「#マルシュロレーヌ」が日本トレンド2位取って「浸透が薄い」がただの世間知らずの妄言と化した
      • 放映権料の問題等で生放送権利買ってなかったのはともかく、その後TVニュースでろくに放映しない、実は後付けでも日本語実況入れての再放送等も全くしてない*17状態での上記理由表明の為大きく叩かれている事も大きい。
      • そしてNAR*18「じゃあ俺らが賞渡すわ」とばかりにマルシュロレーヌに特別賞を渡す、アメリカもNTRA*19が「1年で最もファンの記憶に残った瞬間」を表彰する「モーメント・オブ・ザ・イヤー」にラヴズオンリーユーと合同で「#JapaneseDuo」として選出したほか、投票による自国競馬の年度代表表彰「エクリプス賞」においては最優秀古馬牝馬の得票2位にマルシュロレーヌ(1位はレトルースカで221票、マルシュロレーヌは残り14票中11票)が入っている。
    • 因みにもう1つはダート部門の受賞馬テーオーケインズ(帝王賞・チャンピオンズCと当年国内GⅠ級2勝)と比較しての得票数の差(240票に対して47票)。その点を割り引かれるのはさすがに仕方ない…というか発表前から世間的には「JRA賞」である以上は勝ち鞍的に部門賞テーオーケインズ・特別賞マルシュロレーヌでないといけないという声が大半だったため、こっちは特段ツッコまれていない。
  • その後のマルシュロレーヌはクラブ規定*20により、世界最高賞金レースのサウジカップ6着を最後に引退した。そのラストランに向けて最後の併せ馬を行い送り出したのもラヴズオンリーユーであり、その後2頭揃ってノーザンファームで繁殖入りしている。どこまでいってもこの2頭は仲良しなようだ。
  • 実は翌年のブリーダーズカップディスタフにてこの年のレベルが低かった訳では全くない事が判明している。何故か?1着がマラサート、2着がブルーストライプ、3着がクレリエールとこの年の出走メンバーで翌年も出走した3頭が上位3着までを独占しているのである。




追記・修正が大番狂わせを狙っている!




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最終更新:2025年03月18日 13:18

*1 ブリーダーズカップの構成レースの一つにして、ブリーダーズカップ全体のメインレース。その年の米国競馬ダート路線の最強格を決めるレースであり、米国競馬におけるダート戦線の位置付けを考えれば、事実上の米国競馬最強馬決定戦。

*2 あちらの1番人気ニックスゴーが実績面では申し分ないのだが陣営ですら「この競馬場の10ハロンなら少しは自信が持てる」ぐらいにトーンダウンする程に距離不安があった。

*3 前々回勝ち馬ブループライズは未出走。

*4 ただし帝王賞は牡牝混合戦であり、前評判も9番人気に留まっていた。

*5 参考までに、一番人気のレトルースカのレーティングが118でマサラートが117。BCフィリー&メアターフに出走したラヴズオンリーユーも118。レースブービーのレートですら108。

*6 有力馬の中で未対戦が1頭、それ以外は全て過去の対戦で薙ぎ倒して来ていた相手しかいなかった。

*7 ラヴズの方はクラブの方針として「初期の募集総額高めにしてその代わりその手の諸費用は全て自前でやる」スタイルの為そちらでは一口馬主の負担はなかった。

*8 これに関してはレースの放映権料などの問題もあるので、一概にグリーンチャンネルを責めるのは酷である。また、この年のブリーダーズカップはJRAで馬券発売が行われるレースがあったが、このレースは対象外であり、その一つ前と一つ後のレースは発売対象だった。

*9 日本では本来のハロンではなく200mを1ハロン換算している。

*10 ドバイWCでのヴィクトワールピサの勝利は当時の馬場がオールウェザーだった為「ダート」ではこれが初。なお日本「生産」馬としては、ウッドワードSを勝ったヨシダが初。

*11 ついでに、上述のバヤコアや2019年にこのレースを勝ったブループライズなど南米生産馬の勝利は存在するが(両者ともアルゼンチン生産馬。彼女たちは転厩して米国調教馬となった)、「南北アメリカ大陸以外で生産された馬」の勝利もマルシュロレーヌが初。これはこれでとんでもないレベルの偉業。

*12 米国に限らずサウジやドバイなど、日本の乾いた砂とは違う、水分を含んだ土という表現が近い海外のダートと日本の芝馬の親和性は実際よく指摘される。そしてそれを証明するかのようにこの後矢作師は2022年ゴドルフィンマイルに勝利したバスラットレオン、2023年サウジカップに勝利し日本史上初の海外芝ダートGⅠ制覇を成し遂げたパンサラッサを輩出している。

*13 ラヴズの出走も含め、2021年のBCは西海岸であるデルマーにてレースが行われるので、飛行機での移動が一度で済むことも後押ししたとされる。

*14 感情を示す際に目を大きく見開き白目を剥く表情をすること。フランスの競走馬・種牡馬ディクタスの産駒や子孫に多い特徴で、正式には「輪眼」という。有名どころだとサッカーボーイやステイゴールド、ステイゴールド産駒でマルシュロレーヌの父であるオルフェーヴルやゴールドシップなどがこの特徴を持つ。

*15 というか、BCディスタフも一時期「BCレディスクラシック(Ladies’ Classic)」に改名しており、ちょうどその時期にJBCレディスクラシックが創設されたのでこんなことになった模様。

*16 停止措置とする記事もある。

*17 ラヴズは生放送があった事もあり日本語実況あり、後付けならばそれこそ祖父ステイゴールドのドバイ等前例はかなりある。

*18 JRAが「中央競馬」に対して「地方競馬」の競馬会。正式名称「地方競馬全国協会」

*19 National Thoroughbred Racing Association、「全米サラブレッド競馬協会」のこと。北米における全ての競馬場および競馬関係団体の任意加盟団体。

*20 牝馬は繁殖入りさせる為に6歳3月末までに引退。