ラヴズオンリーユー(競走馬)

登録日:2023/07/12 Wed 05:41:57
更新日:2025/04/23 Wed 16:46:15
所要時間:約 5 分で読めます




君だけが、見た世界。



ラヴズオンリーユー(Loves Only You)とは日本の元競走馬・現繫殖牝馬。
日本調教馬として初めて米国競馬最大の祭典・ブリーダーズカップを制した名牝。

目次

【データ】

誕生:2016年3月26日
父:ディープインパクト
母:ラヴズオンリーミー
母父:Storm Cat
調教師:矢作芳人(栗東)
馬主:DMMドリームクラブ
生産者:ノーザンファーム
産地:安平町
セリ取引価格:1億7,280万円 (2017年 セレクトセール)
獲得賞金:3億3,874万円 (中央)
通算成績:16戦8勝 [8-2-3-3]
主な勝鞍:19'優駿牝馬(オークス)、21'クイーンエリザベスⅡ世C・ブリーダーズカップフィリー&メアターフ・香港カップ

【誕生】

2016年3月26日生まれの鹿毛の牝馬。
父は三冠馬ディープインパクト。母はラヴズオンリーミー。
キタサンブラックの同期であり、2016年のドバイターフを制覇した同厩舎の伝説の名馬リアルスティールは彼女の全兄。

母ラヴズオンリーミーは競走馬としては未出走ながら、大種牡馬ストームキャットと20世紀のアメリカ名馬100選にも選ばれた名牝ミエスクの血を引く世界的な良血。
その血統が評価され2017年のセレクトセールにて1億7280万円の高額で落札された。

【現役時代】

2018年11月3日に京都競馬場の2歳新馬戦芝1800mでデビュー。
デビューから負けなしの3連勝をあげ、その勢いのまま挑んだ2019年の優駿牝馬(オークス)*1も制してGⅠホースとなった。
無敗での優駿牝馬(オークス)制覇はカワカミプリンセス以来、グレード制導入後2頭目の記録。しかもこの優駿牝馬(オークス)2.22.8のレースレコードであった。また、このレースを観戦していたある声優が競馬の沼に沈むきっかけになった。

しかし、その後出走したエリザベス女王杯でラッキーライラックの復活劇に屈し3着と敗れたのを皮切りに、2020年末まで勝てないレースが続いた。
だが、2021年の初戦である京都記念で久々の勝利をあげて復活の狼煙を上げると、ドバイシーマクラシックで僅差の3着となり、そこから迎えた香港のクイーン・エリザベス2世Cでオークス以来のGⅠ勝利を手に入れた。

帰国後の札幌記念は白毛の桜花賞馬ソダシの2着に甘んじたものの、その後アメリカ競馬最大の祭典であるブリーダーズカップに出走することが決定。
このイベントでは、馬の年齢や性別、更にはコースの馬場や距離ごとに、様々なカテゴリーのレースが一度に開催されるもので、ラヴズオンリーユーはフィリー&メアターフ(芝2200mの牝馬限定戦)に出走することになった。
以前から日本馬による挑戦例こそあったものの多くはダートによるもので、世界一のダートの本場の高い壁の前ではお世辞にも通用したと言える馬はほぼいなかった。また芝においては日本のトップホースは日本競馬最大の悲願とされる凱旋門賞へ向かうばかりで、芝であればいつでも取れるとのファンの声とは裏腹に、日本馬はブリーダーズカップにはほぼ無縁であった。
そのため日本の芝牝馬トップ格の参戦、またレースメンバーにも格上と言える馬はいなかったこともあり、日本馬による初勝利を確実視するほどの期待を集めていた。
そんな中迎えたレース本番。道中4~5番手につけてレースをすすめ、最後の直線では前にいたラブやウォーライクゴッデス、マイシスターナットらの間をねじ込むように差し切り、ラヴズオンリーユーは最初にゴール板を駆け抜けた。
これにより同馬は大きな期待に応え、日本調教馬で初めてブリーダーズカップを制するという、日本の競馬史に残る快挙を成し遂げたのである。なおその僅か数時間後に更なる快挙が待ち受けていた模様

その後、アメリカから直接香港に移動し、香港カップに出走することが決定。そして、これが引退レースになることも発表された。
レース本番では中団の内を進むが、直線で前を完全に塞がれてしまい、その隙に一旦ハーツクライ産駒ヒシイグアスに交わされてしまう。
しかし、残り200mで前が開けると、川田騎手の鞭に応えるようにヒシイグアスを猛追。
執念の差し返しを見せ、引退レースを勝利で飾った。

この勝利で、ラヴズオンリーユーは日本馬史上初の同一年海外GⅠ・3勝を達成。その名を世界に轟かせた。
更にブリーダーズカップの勝利が評価され、2021年のエクリプス賞*2最優秀芝牝馬を受賞。これももちろん日本競馬史上初の快挙である。また、全米サラブレッド協会が選出する「モーメント・オブ・ザ・イヤー*3」にも「Japanese Duo」として僚馬マルシュロレーヌ(後述)とともに選ばれ、2頭揃ってアメリカ競馬史にその名を刻むこととなった。

日本に凱旋後の2022年1月30日に全レースの終了後に東京競馬場のパドックにて引退式が開催され、競走馬としての馬生を終えた。

【引退後】

引退式後は北海道安平町のノーザンファームで繁殖牝馬となる。

【余談】

この世代の牝馬について

この世代の牝馬三冠を制した馬は
  • 桜花賞馬グランアレグリア:GⅠ6勝、春秋マイルGⅠ制覇
  • オークス馬ラヴズオンリーユー:GⅠ4勝、日本馬初のBC制覇
  • 秋華賞馬クロノジェネシス:GⅠ4勝、グランプリ3連覇
と超大物揃い*4。後に3頭共及び後述のカレンブーケドールはウマ娘化を果たしている。
更に後述するマルシュロレーヌや重賞未勝利の2勝馬ながら重賞2着7回3着2回(うちGⅠ2着3回3着1回)を記録した最強の2勝馬カレンブーケドール、馬体の小ささで有名なメロディーレーンもこの世代であり、牝馬では日本競馬史でも史上屈指のタレント揃いの世代だろう。

  • マルシュロレーヌ
ブリーダーズカップフィリー&メアターフの同日に開催されたG1ブリーダーズカップ・ディスタフ(ダート1800m。名実共に世界一のダート牝馬限定戦)を制し、レース順の関係でブリーダーズカップを制した2頭目の日本調教馬かつ日本史上初の海外ダートGⅠ馬となった、もう一頭の歴史的名牝。こらそこ、芝は前座とか言わない。
実はこの馬はラヴズオンリーユーとは幼馴染で同じ厩舎の大親友。当時の現役ダート牝馬では国内最強格と目されていたものの、交流G1を捨ててまでラヴズオンリーユーのために帯同馬として同行した………と思われていたが、海外遠征経験の差から矢作調教師の感覚的にはむしろ逆だったとか。
日本馬初のBC勝利は実質この大親友と共に、そして同時に成し遂げた"ふたり"の偉業とも言えるかもしれない。
また彼女の父はディープの次の三冠馬オルフェーヴルであり、色々と数奇な縁とドラマを感じさせる結果となった。
詳細はこちらを参照。
レース後、マルシュロレーヌが先に日本に帰ってしまい、ラヴズオンリーユーは大層寂しがったという。
ラヴズオンリーユーがラストランを終えた後も、引退式の日までマルシュロレーヌと併せ馬を行い、サウジカップでラストランを迎える彼女の背中を後押しした。
そして引退後も2頭ともにノーザンファームで繁殖入りすることになった。これからもずっと仲良くね。

取り違い

2021年のオークスを勝利したユーバーレーベンのアクリルスタンドが販売される際、何故か2019年優勝の当馬のスタンドが商品として出回ってしまっていた。確かに騎手は同じだが毛色から違うし何より印字されてる馬名に気付こうぜ…

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最終更新:2025年04月23日 16:46

*1 何故桜花賞を飛ばしてオークスかというと、年明けに細菌性疾患を発症し治療→リハビリ→調教が桜花賞まで間に合わないと判断してのこと。

*2 簡単に言えばアメリカ版年度表彰。

*3 その年のアメリカ競馬において最もファンの印象に残った出来事を選定するもの。

*4 三冠を分け合った馬が全て古馬GⅠを勝ったというのは牡牝問わず史上初の事。後に21年クラシック世代の牡馬も成し遂げている。