D∴G教団

登録日:2021/12/12 (日) 18:13:41
更新日:2024/03/18 Mon 16:05:40
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《空の女神》エイドス!?

そんなものが何処にいる!?

全ては七耀教会によるまやかしだと何故気付かない!?




D∴G教団とは、英雄伝説軌跡シリーズに登場する宗教団体である。



【概要】

軌跡シリーズの舞台となっているゼムリア大陸では、広く七耀教会が奉ずる《空の女神》エイドスが信仰されている。大陸中東部では《翼の女神》アルーシャ、東部では《天上聖母》と呼称が異なるが基本的には同一存在と見なされており、七耀教会がノルド高原や中東部の山岳地域に伝わる民間信仰にも寛容的なこともあり、宗教的な軋轢はほぼ見受けられないと言える。

しかしそんな《空の女神》を明確に否定し、その存在が教会が生み出した虚像であるとあらゆる方法を使い証明しようとした集団が居た。そして彼らは約500年前にクロスベルの地にて、自分たちを救う真なる神《D》へと至る御子を発見。未だ眠り続ける御子を目覚めさせ、《女神》の呪縛と教会の支配から人々を解き放ち真に平等な世を築こうとある組織を結成した。それが「D∴G教団」である。


……とここで終われば単なる信仰の自由で済む話だが、女神を否定するために彼らがやったことは筆舌に尽くしがたい悪行ばかりであり、ここ数十年のゼムリア大陸における最低最悪の犯罪者集団と言っても過言ではない。

「ロッジ」と呼ばれる拠点を大陸各地に持っており、発足してから約500年、女神を否定するために「薬物を用いた人体実験」、「悪魔の召喚」、「古代遺物を用いた実験」などを幾度となく繰り返してきた。またそうした人体実験の際に必ず使われていたのが真なる叡智(グノーシス)という違法ドラッグである。人間の尊厳を徹底的に冒涜した実験の数々は、時に「人体実験のほうがまだマシ」と言われるレベルの外道なものもあったらしく、しかも数少ない成功例を除き殆どが的外れでしかない研究だったらしい。存在を認知する人間からは女神を否定して悪魔を崇拝すると認識されているが、それすらもただ女神を否定する概念として都合がいいから利用しているに過ぎず、そんな理由のために正解も分からないような狂った実験を繰り返してきたのだ。
そしてその被験者となった多くは「思春期を迎える前の無垢な検体のほうがデータ収集の精度がよい」というふざけた理由で各地から誘拐されてきた幼い子どもたちであり、おびただしい数の子どもたちが苦痛と絶望のなか命を落としていったのだ。

また教団の運営資金や後ろ盾を確保するために、各国の議員などの有力者とパイプを繋いでいたケースも確認されている。その一例として「楽園」と呼ばれた教団の関連組織では薬物投与の人体実験の合間に売春すらさせており、利用するためにやって来た客はもちろん、知らずに連れてこられた有力者も弱みを握られる事となり教団の協力者とさせられていた。作中ではクロスベル自治州のハルトマン議長が弱みを握られており、そしてそんな議長の子飼いである警備隊司令も間接的に教団の手駒とされていた。

被害の多くは発祥の地であるクロスベル自治州や隣国のカルバード共和国、時が進むに連れエレボニア帝国やレミフェリア公国などにも広がっていき、人知れず最悪の犯罪者集団は勢力を拡大し続けた。

しかし実験の規模を広げ、誘拐された被験者の数が隠しきれるものではなくなり遂に警察や遊撃士協会星杯騎士団などの治安維持組織に教団の存在が露呈。七曜暦1998年に当時遊撃士だったカシウス・ブライトを総司令とした国も組織の垣根も越えた「D∴G教団」の掃討作戦が決行されることとなる。
ロッジ制圧の際には凶悪な魔獣や召喚された悪魔、中世の魔導師が作り上げた魔導人形、死をも恐れず襲いかかってくる狂信者、そして実験の結果化け物と成り果ててしまい滅ぼす以外に救う道がなかった被験者などと大混戦となり、凄惨極まりないものだったらしい。
結果、教団の幹部や信者は大半が捕まる前に自決、捕縛できたものも間もなく精神が破綻し衰弱死することとなる。救出できた被験者もほんの僅かな生き残りだけであり、それ以外は夥しい数の死体の山となり発見されたという。
更には結社《身喰らう蛇》も、結社とパイプのある有力者に接触されたことから独自に《使徒》と《執行者》を派遣し信者を皆殺しにしており、生き残った被験者を保護している。

こうして表と裏、双方の掃討作戦により、事件の真相は殆ど分からず、生存者も極僅かという後味が悪い結果となってしまったが、「D∴G教団」は壊滅することとなったのだ。その後も掃討作戦からもれていたロッジは結社や教会によって壊滅させられている。

この事件は内容があまりにも凄惨過ぎることから一般には公表されず、被害が多かった共和国においても「何年か前に大きな事件を起こしたカルト教団が居た」ぐらいの認知しかなく、情報統制が敷かれることとなった。
一方で裏社会においてはその悪名は広がっており、闇に生きる彼らの中でさえ「一線を越えた最低最悪の連中」という認識は共通とされている。下手に教団の生き残りに接触しようものなら他の勢力に諸共潰されかねない為に、マフィアでさえ関わり合いになるのは避けている。

……しかし、極僅かな教団の生き残りは教団壊滅後も研究を進め、遂には独自の境地に達し大事件を引き起こしている。更に壊滅した教団の残党は蛇の使徒第四柱の古巣であった暗殺組織《月光木馬團》の残党と合流。幼い子どもを誘拐し、異能を持つ暗殺者として育成する最悪の暗殺組織《庭園》へと発展する。保護された被験者達も現在も消えないトラウマを引きずっており、教団が残した傷跡は未だ癒えることはない。彼らの悪夢はまだ終わっていないのだ。



真なる叡智(グノーシス)

教団が人体実験の際に必ず使用していた薬物。教団の名前にもなっている「G」を意味する彼らを象徴する薬物である。

原料は七耀教会の『外典』にも記されている「プレロマ草」と呼ばれる植物で、七曜脈の上に咲くとされている。このため作中で何らかの要因で七曜脈が活性化した際に発見されることが多く、『外典』には「吉兆とも凶兆ともとれる蒼色の神秘の花」と記されている。また記されている通り通常は蒼色の花であるが、何らかの要因が働くと色が変わることもあり、作中では赤、紫、黒色のプレロマ草が確認されている。

投与された人間は脳のリミッターが外れ身体能力と感応能力が飛躍的に向上し、更にはその人間が秘めた潜在能力も引き出す効力がある。作中では何の訓練も受けていない炭鉱員が服薬により感応力が高まりギャンブルで全戦全勝するようになったり、下っ端マフィアが片手で重火器を操る怪力を見せるなどしており、その効果は絶大。
反面、服薬すると精神にかなりの影響があり異常に凶暴になったり、逆に何も語らない人形のようになったりする。他にも髪の色が変色したり、睡眠を必要としない体質になるなど副作用も存在する。また長年の研究の成果か、服薬した人物の自我を奪い思いのままに操ることも可能で、クロスベルで起きた教団事件では警備隊の多くが黒幕の幹部司祭に操られることになり、甚大な被害となった。

他にも奇跡的にも助けられた被験体の子どもたちは、確認されている限り全員常人を越えた何らかの能力を会得しており、グノーシスを投与されなくなった現在でも固有の能力として身についている。

しかし上記の効力もあくまで副次効果であり、真の効果はグノーシスの服用者の精神が《御子》に接続され、知識や人格を送り込むことが出来るというものである。知識を蓄え続けることにより《御子》が真なる神へと覚醒すると信じていたのだ。

更にグノーシスには「蒼のグノーシス」と「紅のグノーシス」の二通りの種類が存在している。科学的な調査では双方に成分の差異はないとの事だが、「紅のグノーシス」には上記の効力の他「魔人化(デモナイズ)」という異形の姿に変化する効力がある。この効力は現代医学では解明できず、単なる薬物ではなく何らかの超常的な力が働いているとされるが、詳細は不明である。



【教団の真実】

教団幹部すら知らなかった彼らの真実。それは教団は1200年前の《大崩壊》の際に失われた「幻の至宝《虚ろなる神(デミウルゴス)》」に代わる人工的な新たな至宝「零の至宝」を生み出すため、錬金術師の家系であるクロイス家が用意した都合のいい駒であるというものだった。

高度な知性を持っていた「幻の至宝」は当初は人々の願いを叶えていたが、人間の度し難い欲望と業の深さに心が耐えられなくなり、自死という形で消滅する。しかし消滅という事実を受け入れられなかったクロイス家の祖先は錬金術を極め、オリジナルを超える新たな至宝を生み出そうと考えた。そして約500年前にとうとう完成したのが「零の至宝」に至る存在、キーアである。生み出されたばかりのキーアはまだ力もなく眠り続けるだけの存在だったが、知識や人格、叡智を送り続けることで目覚め「零の至宝」へと至る目論見だった。

その叡智を送り込むのに都合が良かったのが世に絶望し《女神》を否定していた「D∴G教団」の創立者たちであり、彼らに零の御子・キーアこそが真なる神《D》であると吹き込み、彼女を目覚めさせるため叡智を送り込む実験をさせたのである。その際に御子へと叡智を送り込む術として真なる叡智(グノーシス)の調合方法を教授したのだ。グノーシスの原料である「プレロマ草」は元々は《デミウルゴス》が自身の「眼」として使用していたものである。デミウルゴスは既に消滅しているがその機能は失われておらず、キーアに接続し情報を送り込む媒体とするにはもってこいだったのだ。

そして教団はクロイス家の目論見通り手段を選ばすグノーシスを使った実験を繰り返し、500年かけてより効率的に叡智を御子へと送る術を確立していった。
……実験の殆どが的外れで手当り次第に繰り返したに過ぎず、結果無数の犠牲を強いたことを悪びれることもなく。

つまり「D∴G教団」の「D」とは「幻の至宝」デミウルゴスのことであり、教団の名前は「真なる神(デミウルゴス)故に叡智(グノーシス)」という意味だったのである。教団は女神を否定しているにもかかわらず、そうと知らずに代替品とは言え女神の授けた「七の至宝」の一つを神として崇めていたのだ。
+ しかし…
クロイス家にいいように利用されていた教団であったが、長年の研究の末に彼らも予期していなかった独自の境地に至っている。それは「グノーシス」を服用すると「世界の枷」が外れて見え、この世界の真実を知ることが出来るというものである。

軌跡シリーズの舞台であるゼムリア大陸に住む人々は、《空の女神》の実在を疑わず、「ゼムリア大陸の外の世界があり得る」という発想に至れない「」がかせられている。幾ら行けども抜けることが出来ない海域など物理的にあり得ない現象も「女神の実在」を証明する根拠にしかなり得ず思考停止状態に陥ってしまうのだ。

だが「外の世界」というものは間違いなくある。結社が扱う「外の理」で出来た武器も然り、ノーザンブリア公国に災厄をもたらした「塩の杭」など根拠を示すものはあるのだ。それでも人々は、その発想に至れなくなっている。

しかし女神を否定し続けた彼らは、遂に世界の真実の一端を垣間見る領域にまで足を踏み入れた。真実を見た幹部司祭が口にした意味深な言葉、「魔人化(デモナイズ)」という説明不能の現象と、似通った見た目である外の世界の魔神の存在、そして《女神》という存在への疑念。やったことは間違いなく外道であり許されることでは決して無いが、不穏過ぎる謎を残すこととなった。


【教団関係者】


各ロッジの実験を統括していた幹部司祭。表向きには聖ウルスラ医科大学の准教授として職務に務めていたが、「グノーシス」を自身に投与したことで睡眠を必要としない身体を手にしており、空いた時間で怪しまれることなく研究を進めていた。人当たりが良さそうな顔は猫をかぶっていただけで、本質は外道そのもの。そのクソっぷりはエステルヨシュアをして教授の方がマシとまで言われるほど。
「紅のグノーシス」を大量に服薬し魔人化(デモナイズ)して特務支援課に決戦を挑むが、援軍もあり敗北。最期にこの世界に対する意味深な言葉を遺し、消滅した。

  • 黒のアルベリヒ
生体研究を中心に行っていた幹部司祭。恐らくフランツ・ラインフォルトに寄生する前の個体だと思われる。彼自身が「黒の騎神」の下僕なので教団の思想には間違いなく賛同しておらず、都合のいい研究場所として利用していたと思われる。
自分たちの動きを嗅ぎ回っていた巡回魔女であるエマ・ミルスティンの母、イソラを目障りに思い始末しようとするが、結果相打ちとなる。
なお、イソラは自身が死ぬということも予知していたが、それが巡り巡って次に繋がることを確信して挑んだ結果、奇跡とも言える可能性を引き当てることに成功した。

+ 最新作ネタバレ
  • ジェラール・ダンテス
幹部司祭。カルバード旧王国の王家の末裔であり、民主化革命の際に先祖が教団に迎え入れられた。しかし彼自身は一族の持つ「王家の再興」も教団の思想も関心がなく、他の信者を「とことん頭のネジが外れた集団」と冷ややかに見ていた。
しかしある日、他のロッジから魔の因子を宿した少年を確保したと報告を受け、それを抽出。その力に魅入られ自分の身に宿し、文字通り悪魔的な力を手に入れる。その後の《楽園》壊滅を始めとした結社の攻撃と教団掃討作戦をその力で乗り切り、世界を恐怖に満たすため最悪のマフィアのボスとして動き出す。
また部下たちに恐らく「グノーシス」を基にした違法ドラッグを配布しており、戦力の底上げを図っている。


【被害者】


本名はレニ・ヘイワース
元執行者NO.ⅩⅤ 《殲滅天使》。教団の組織である《楽園》という施設で人体実験及び売春行為をさせられていた。実験の際に天才的な適応力を見せたらしく、実験と性的暴行の苦痛から自己を守るため「周囲の子供達の人格を自身のものとして取り込む」という周囲のあらゆる状況に対応する環境適応能力を開花する。しかし取り込んだ人格は終わりのない地獄の日々に一つ、また一つと摩耗して消滅していった。
その後結社に保護され執行者になり、紆余曲折あって現在は結社を抜けブライト家の養子となる。

エプスタイン財団研究主任兼特務支援課の一員。共和国最西端にあった「アルタイル・ロッジ」に誘拐され人体実験を受ける事になる。動物との意思疎通も可能なほどの常人離れした感応力を持つ。
全身にセンサーを付けられての薬物の投与など考え付く限りのやり方で五感を高める試みが行われて、さらに強制的な暗示と精神的な負荷をかけることで霊感のようなものまで高められた。それが3年間も毎日続きティオ以外の子供が居なくなった頃に分厚い岩壁の向こうで他の子供たちが上げた最後の悲鳴を聞き取れるほどの感応力を手に入れた。
しかしこれでも他のロッジに比べまだマシな方だったと言う。
掃討作戦の際にセルゲイ班所属だったロイドの兄、ガイ・バニングスに唯一の生存者として保護されるが、実験で得た感応力のせいで両親や周囲と軋轢が生じてしまい実家を出奔。エプスタイン財団にその能力を見込まれ保護される。

  • 魔弓のエンネア
《身喰らう蛇》第七柱《鋼の聖女》アリアンロードに仕える「鉄機隊」の一員。詳細は不明だが誘拐された上述2人と違いなんと実験体として両親に教団へ差し出された過去を持つ。二つ名の通り「魔弓」という異能を持つらしい。
ロッジ制圧に来たアリアンロードと神速のデュバリィの2人に敗れ、そのまま自身も死ぬつもりであった。しかしアリアンロードから「せめて世界をその目で見る」ように諭され、人間として生まれ変わることが出来たと語っている。

  • エルマー
教団に人体実験をさせられた少年。外道の限りを尽くした教団ロッジの中でも最低最悪の連中に捕らわれてしまい、古代遺物を用いた人体実験の結果、満たされることのない飢えに苦しむ人喰いの化け物へと変じてしまう。教会の守護騎士であるケビン・グラハムの法術をもってしても元に戻すことは不可能であり、最期はこれ以上苦しまないようにと止めを刺されることになる。ケビンはこの一件の後に一週間は後を引いたと語っており、いかにエルマーが連れてこられたロッジが最悪だったのかが分かる。

+ 最新作ネタバレ
黎の軌跡の主人公で裏解決屋。オラシオンの孤児院から養子に出された際に教団に実験体として誘拐されたようで、その時「魔核」を宿していると判明。拷問とも言えるほどの過酷な抽出実験を受けさせられ、《吼天獅子》グンター・バルクホルン神父ら星杯騎士団に救出された際は心神喪失状態だったという。不穏な空気を「匂い」として捉えられるほど異常な《嗅覚》を持っているが、これが人体実験によるものなのかは現時点では不明。

カルバード共和国のバーゼル理科大学に所属する研究者で、両親が最初から教団に所属していた。しかも《楽園》で行われた《神の器》という計画の実験体の成功例という最悪中の最悪。レンほど凄惨な目には遭わなかったが、それと引き換えに洗脳でこの世の帰属意識を希薄にされた上に薬物投与と肉体改造で伝承の天使と同じ男でもあり女でもある肉体にされてしまった。



追記・修正は真なる叡智(グノーシス)を服薬してお願いします。


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最終更新:2024年03月18日 16:05