Dr.キリコ~白い死神~

登録日:2022/03/06 Sun 22:01:00
更新日:2023/03/09 Thu 22:26:25
所要時間:約 6 分で読めます




『Dr.キリコ~白い死神』(原作:手塚治虫 脚本:藤澤勇希 漫画:sanorin)とは、手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』のスピンオフ作品。
同作に登場する安楽死専門医ドクター・キリコを主役にした1話完結型の医療漫画。全5巻。

概要

安楽死専門医が主役の医療漫画という事もあり、人の生死を巡る人間ドラマが展開されることが多い。原作のエピソードが回想として語られるシーンはあるが、世界観は現代社会がベースになっているためノートパソコンやスマートフォンも普通に登場する。
また、幽霊や精霊などのオカルトが度々登場するが、実は原作からして心霊手術などそういう存在は登場していたりする。
なお、本作にブラック・ジャックはほとんど登場しない。


登場人物

「よく勘違いをされるんだが…確かに私は金次第で安楽死を請け負う”死神”などと呼ばれていますがね……。俺は死神ではあっても殺し屋じゃない。人に頼まれて他人の命を奪うなんてなぁ、医者のやる事じゃありませんや…」

ドクター・キリコ

主人公。手の施しようのない患者を救済する方法の一つとして安楽死を請け負う元軍医。
日本だけでなく世界中にその名は広まっており、日本の田舎町から海外の戦場まで幅広く活動している。

安楽死を請け負ってはいるものの本質的には患者を救いたい医師であり、治せる見込みのある患者であれば治すという原作のキャラクターはしっかりと踏襲されている。
本作ではキリコが依頼を受ける条件として
①助かる見込みがないこと
②生きているのが苦痛であること
③本人自らが死を望んでいること
が設定されていて、特に重い病気というわけではない相手に自分の安楽死を依頼されたり、患者の関係者に本人に無断で安楽死を依頼されても上記台詞のように断るシーンが多い。
一応全く融通が利かないというわけではなく、相手の状況次第では上記の条件に当てはまっていなくても引き受けることはあるが、非常に稀。

眼帯の下に義眼代わりに高性能カメラを仕込んでおり、それを使って密かに撮影した映像を武器に窮地を脱することがある。


「父ちゃんを殺したのはキリコだろ?」

白河郁馬

ピノコ枠その1。貧乏な父子家庭に育った小学4年生。
郁馬が幼い頃に母が病に倒れ、その治療費と葬儀代で預金は消滅。父も体を壊してしまい日雇い仕事しかできないという家庭で育ったために家事が得意で勉強が苦手。
初登場時に虫垂炎と腹膜炎を併発していたところをキリコに手術されて回復した。

しかしその治療代130万円を払うために頑張っていた父が糖尿病性腎炎に倒れ、保険に入っていなかった彼は大病院に治療代として2520万円を請求されてしまう。
ひとまずキリコが立て替えることになったが、郁馬にこれ以上苦労を掛けたくなかった父は密かにキリコに自分の安楽死を依頼。
キリコは病院側のミスに見せかけて依頼を遂行したため、病院は医療ミスの発覚を恐れて3000万円の口止め料を郁馬に渡すことになる。

実はキリコと父の会話を郁馬は聞いていた。
父の遺志を尊重してキリコを憎むことはせず安楽死の料金を払おうとしたが、キリコはバレにくさを重視して安らかに死なせなかったとして料金を請求しなかった。
その後はキリコの家に押しかけて同居を認めさせ、家事を担当することになる。


「死んでない!約束したんだから!あたしが医者になって絶対母さん治すって!!それまで絶対生きてるって!!」

存尾美亜

ピノコ枠その2。郁馬が転入した小学校のクラスメート。
貧乏な母子家庭に育ち、その貧乏さを理由にクラス内で避けられていた。彼女の苗字は「ありお」と読むが、同級生たちには「ゾンビ」と呼ばれている。
本人は気にするそぶりも見せていなかったものの、長期間そうされてきたためか人間不信なところがある。

2年前に母親がALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を発症。闘病の甲斐なく3ケ月ほど前に帰らぬ人となってしまう。
しかし美亜は母の死を受け入れることができずにその後も遺体と一緒に住み続け、その死臭が身体に染みついたことでクラス内での扱いがさらに悪化。
父親を失ったばかりで人の死に敏感になっていた郁馬はその臭いによって美亜の母が死んでいることに薄々勘付き、キリコにそれを相談。
キリコが大病院に押しかけてカルテを見た上で美亜を「お母さんは自分のせいで娘に辛い思いをさせている事に苦しんでいる」と説得し、遺体に注射することで『安楽死を施して安らかに死なせてやった』という形にして弔った。
その後は転校したのか、郁馬と共にフリースクールに通う傍らでキリコ宅に入り浸るようになる。

実は彼女の母は資産家の娘であり、結婚を反対されたために家を出たという過去があった。
叔父たちが迎えに来たことでそれが発覚するも、自分が祖母の遺産の相続人に指定されていること、叔父たちはその遺産を目当てに近寄ってきたことを知って見切りをつけ、祖母の「お前はお前が一緒にいたい人のそばにいればいい」という遺言に従って遺産を放棄。
キリコ達のもとへ帰ってきた。


「意志薄弱はね。一生治らない不治の病さ」

六道善優

六道ファイナンスのイケメン社長。
表向きは真っ当な経営者を装っているが実は裏社会に通じており、自ら他人を射殺しても顔色一つ変えない。
善人とはとても言えないが、どこか憎めない性格で悪人であるとも言い切れない人物。

金融業で貸し付けた客のうち、返済が滞って改善の見込みもない者を殺し保険金で回収するビジネスを考案して実行していたが、自分達よりも確実な実行者としてドクター・キリコに目をつけスカウトしようとする。
しかし安楽死はあくまで患者を救うための医療行為という信念を持つキリコにはにべもなく断られた。上記の台詞はその際に債務者を指して言った言葉。
その後も度々キリコの前に現れてはあの手この手でスカウトしようとするもキリコにはかわされている。

物語終盤、いつものように保険金ビジネスで殺害した人物が実は海外マフィアのボスの親戚だったために追われる事態に陥ってしまう。
繋がりのあったヤクザもマフィアとの取引の方をとって六道を見捨ててしまったため、キリコのもとへ逃げてくる。彼の目的はマフィアによる生き地獄を味合わされる前にキリコに安楽死させてもらうことだったがキリコは拒否。
すると自分との繋がりをマフィアに話すと脅し、郁馬たちを人質に取る形でキリコ邸に居つくことになる。

その後、つかの間の平穏な日常を楽しんでいた六道だったが、マフィアの手はキリコ邸にも伸びてきた。
郁馬と仲良くなった六道は彼を守るために覚悟を決めてキリコ邸を去ろうとするも、その姿を見たキリコが六道の顔に整形を施したために逃げ切ることができた。
しかし六道本人は安楽死をしてもらうつもりだったのに無断で整形をされた上に、整形された顔が不細工な中年男性だったために感謝しつつも苦言を呈している。


「兄さん!!あなたにこれ以上人を殺させたくないの」

ユリ

原作にも登場したキリコの妹。
キリコの稼業をやめさせたい一心で医学の道へ進み、カナダで心理療法と麻酔を学んで終末医療緩和ケアのエキスパートとなる。
しかし皮肉にも医者となったことでキリコのやっていることの意味とそれを求める人々のことを理解できるようになってしまった。

後に海外で医療に従事するようになるが、とある中東の村での活動中に不法投棄された核燃料イエローケーキによって被爆し、全身を癌に侵されてしまう。
昏睡状態になる前に最後の意識で夫にキリコへの依頼を託し、キリコに再び「肉親の安楽死」という試練を突き付ける。
キリコはこれを父を殺した自分への復讐だととらえたが、彼女の真意は……。





「お引き受けするには条件があります。改善の見込みがない事、記事を読むのが苦痛である事、そしてなにより本人の意志である事。その条件を満たすなら安らかな追記・修正を約束しましょう…。記事の幸福と尊厳のために死神キリコが―…ね」

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最終更新:2023年03月09日 22:26