かりあげクン

登録日:2022/04/14 Thu 19:53:12
更新日:2025/02/06 Thu 18:06:37
所要時間:約 10 分で読めます





かりあげクンとは、1980年から連載が開始されている植田まさしの四コマ漫画作品である。
読売新聞の『コボちゃん』とともに氏の代表作として知られる。

概要

いたずら好きのサラリーマン・かりあげクンが巻き起こす騒動を描く。
掲載紙は当初「漫画アクション」だったが、1999年からは同じ双葉社の「まんがタウン」「週刊大衆」に移籍した。
双葉社公式サイトの「ふたまん」でも作品がランダムで毎日配信されており閲覧可能。

開始当初は「ほんにゃらゴッコ」というタイトルで、かりあげが全く登場しないエピソードもいくつか存在した。
ちなみに「ほんにゃらゴッコ」の意味は作者でも不明とのこと。

掲載当時の流行や時事ネタを取り入れているのが特徴で、長期連載ゆえ世相を映した貴重な資料ともなっている。
また、開始当初は当時頻発していた国鉄のストライキやキセル乗車、更には「ブレーキハンドルを盗んで列車を止める」「トイレの小窓を使って駅弁を買う」などマニアックな鉄道ネタもあった。

特に初期の作品では
  • 社内でベストナインならぬ女性社員の「バストないん*1」を掲示
  • ゴルフのギャラリーを使って同僚女性のお尻をおさわり放題
  • 水族館でエイが二匹泳いでいるのを見て「エイズ!」と叫び、後ろの客がドキッとしてしまう*2
  • 壊れてノイズしか響かないラジオに適当に作ったセンサーみたいなのを取り付け、原子力発電所まで出かけてガイガーカウンター風に測定
…など、セクハラは無論、犯罪スレスレの過激なネタも多かった。

作者によると近年は何かと規制が厳しくなったこと、雑誌掲載から単行本化までのタイムラグが生じるようになったため、これらのネタを控える方針にしているという(完全に止めたわけではない)。

1989年には東映動画制作・フジテレビ系でテレビアニメが放送された。
また、CMキャラクターへの起用例も多い。
2023年にはBS松竹東急オリジナル作品として、まさかの実写化を果たした。
ドラマ版は演劇集団のヨーロッパ企画のメンバーが主に脚本を担当しており、オリジナルキャラクターとして派遣社員の清水彩花(演:樋口日奈)が登場する。

ローソンのロングセラーホットスナックである「からあげクン」は本作にあやかって名付けれたもので、2020年には連載開始40周年を記念して両者のコラボレーション商品が発売された。

この他、コミックマーケットの双葉社ブースで本作のラバーキーホルダーが発売されたことがある。内容はかりあげが「なのは完売」「総受けっぽいって言われる」など、コミケにありがちなセリフを発したものだった。

登場人物


・かりあげクン
CV:塩屋翼
演:戸塚純貴
本作の主人公で本名はかりあげ正太。年齢は永遠の29歳。
その名の通り頭を刈り上げたスタイルが特徴。
ほんにゃら産業営業課勤務。

いたずらの天才で、小道具を作ったりして仕掛けることが多い。
ターゲットは木村課長や木下社長など会社の上司を筆頭に、果ては大家さんや一般人、ペットまでと幅広い。
流石に子供や老人などには進んで手出しをしないものの、自らに不快な思いをさせた対象であれば例外は一切なく、たとえ相手が乳児であろうと相応のイタズラで報復に移ることも。
性格は非常なへそ曲がりで、ゴマすりや指図されるのを大いに嫌う。なぜサラリーマンになったのか
たまに何かしら失敗をしてもすぐに誰かへのいたずらに転化してしまうなどハートの強さを持つ。
社内での成績は万年最下位、遅刻やサボりの常習犯なうえにイタズラでの迷惑行為によって課長をはじめとした上層部からの評価は最悪の一言だが、同僚からは好かれておりプライベートでの交流も多い。
よく先方を怒らせてしまい取引や契約をご破算にしてしまう一方、たまに大手企業との契約を取って来たりする。*3
それらの問題行動の多さから当然クビを言い渡されたこともあるが、その後すぐに入社希望者として戻ってきたうえに、社長側も「希望者が0人だとみっともない」という理由で再雇用…といういたちごっこをこれまでに50回ほど繰り返していることが社員の口から語られている。

その性格ゆえ女性には全くモテないのだが、たまにデートをすることも。お見合いもベテランと言われているほどこなしているらしい。
女性のタイプは完全な面食いで、ブサイクな女性相手には露骨な嫌がらせをすることもしばしば。前述のように貧乳な女性相手にも厳しい。
また好みのタイプでも明らかにその気がない塩対応の相手には相応のやり返しをする事も。
ドラマ版ではキャスティングの影響もあってか残念なイケメン属性が加えられており、ひょんなことから一時的に記憶喪失に陥ったことで真剣に苦悩していた際には係長に「ダイヤの原石」と言わしめるほどにまで女性社員達のハートを虜にした。

前述した小道具を作るために手先は非常に器用で、上司のフィギュアを自作したこともあるほか、ちょっとした修理から魔改造をこなせる程DIYのスキルも高い。
パンを小麦粉から作るほど料理の腕前も高いのだが、来客に振る舞う際は「栗をイガごと炊いた栗ご飯」「ブランデーのストレートをガスで温める」などひねくれた方式でしか提供できない*4
また運動神経も高く、スキーやサーフィン、野球を行っている描写が多い。ただし野球は万年9番ライト、ゴルフやサッカーでも目立ったスーパープレイは滅多に描かれないなど劇中に登場する頻度が特に高いスポーツに関してはあまり得意ではない様子。ルールが絡むとダメなタイプなのだろうか。
変わり種ではキセルがばれないよう、電車の連結面に外側から飛び乗って車内検札をやり過ごすというスパイ映画さながらのアクションを見せたことも。
近年ではコンピューターウイルスを自作し、会社に侵入してきたハッカーを見事撃退している。
さらに入門書を熟読しただけで催眠術を習得し、自己催眠で恋人になりきって自分に手編みのマフラーを贈るというヤバめのアクロバットも見せている。*5
愛煙家且つ酒好きで、それ故の肩身の狭さや懐の寒さが度々描かれている。

服装は勤務時にチェック柄のスーツ*6を常に着用。
同僚からはバカにされているがこだわりがあるらしく、同じものを何着も保有している。スラックスについてはプライベートでも着用することが多い。

体内に特殊な細胞を持っているらしく、「かりあげを引っ掻いた猫の手が腫れ上がる」「かりあげがパソコンをただ操作しているだけで保有している菌がコンピューターウイルスを死滅」「かりあげの血を吸った蚊からかりあげと全く同じ顔のボウフラが産まれる」など、奇妙かつ不気味なエピソードもいくつか存在する。

趣味は登山、マージャン、釣り、競馬、陶芸、茶道、絵画、ダンスなど書き連ねるとキリがないほどに幅広い。珍しいものでは吹きガラス作りも器用にこなすシーンも。特に絵画の腕前が抜きん出ており、権威のある展覧会で入賞した過去を持つほど。それでもエピソードによっては下手になっていたりもするが。
資格については運転免許のみだが、自動車の運転機会はほとんどない。
アニメ版では中日ドラゴンズファンという設定と、いたずらを始める際に頭をかく仕草が追加された。
なお、連載開始から現在まで作中に父母きょうだいといった親族が登場したことは一切ない*7。そのため家族構成や出生など、実は意外と謎に包まれている。

作内ではヒラと馬鹿にされることがほとんどだが、そのスキルからサラリーマンじゃなくても充分生きて行ける最強キャラだったりする。

・木村課長
CV:野田圭一
演:岩井ジョニ男(イワイガワ)
本名は木村隆二で、連載当初は鈴木という名前だった。年齢は46歳。
眼鏡をかけており鼻の下にちょび髭を生やしている。
ほんにゃら産業営業課の課長で、かりあげのいたずら最大の被害者。
目の上のたんこぶであるかりあげに対して説教したり怒鳴るシーンも多くあるが、プライベートでは意外と仲良しで一緒に趣味を嗜んだり飲みに行くほか、課長の奥さんのへそくりの位置を知っているほど。*8
かりあげのいたずらを全面的に否定している訳でもなく、失礼な態度を取ってきた相手への仕返しとしてかりあげにいたずらを指示したこともある。
また、長男のタカシもかりあげに非常になついている。
一度床屋のミスでかりあげと同じ髪型になってしまったことも。
趣味はゴルフで教え魔だが、当人の腕前は非常に悪い。法事と偽ってゴルフに出掛けたこともあり、その際は「芝の増上寺はラフが深い」というかりあげの誘導に引っ掛かりバレてしまった。
阪神タイガースファン。
三流企業のしがない中間管理職だが、早稲田大学の商学部卒と不釣り合いなほど高学歴だったりする。
ドラマ版では高校生のマイコという一人娘がおり(演:小久保柚乃)、カフェでアルバイトをしている設定となっている。

・木下社長
CV:八奈見乗児
演:温水洋一
かりあげの被害者その2。本名は木下藤吉。
ほんにゃら産業の社長で、原作では2代目だがアニメでは創業者となっている。
ひげを生やしているが近年は顔のシミと頭髪の薄さに悩まされている。頭頂部のバーコードはリーダーに読ませると385円とのこと。
江ノ島水族館にそっくりな顔のタコがいる。

・係長
演:野口かおる
かりあげの(ryその3。本名不明で、1999年から登場。
30代半ばの女性係長で、体重85キロ・ウエスト88・ヒップ99の大柄な体型をかりあげに弄られることがお約束。
その見た目同様強力なパワーを誇っており、かりあげへの攻撃は無論、ゲーセンのパンチングマシンの球をビンタで吹っ飛ばしたこともある。
課長同様、なんだかんだでかりあげとは良いコンビネーションを見せる。
なお、アニメ版ではオリジナルキャラクターとして男性の係長が登場している。
ドラマ版では太田裕子という名前が設定されている。

・鈴木
演:大津尋葵
かりあげの同僚であり、数少ないいたずら仲間。
他の眼鏡をかけたキャラクター達とは違い、眼鏡越しの目が描かれていない描写が特徴。
性格はクールの一言。どんな事態に直面しても一切表情を崩すことはない。
かりあげとはプライベート間でも仲が良く、共同で中古車を購入しているほど。しかし非常に老朽化が激しいうえに碌に手入れもしていないためトラブルの原因になることもしばしば。
アニメ版ではほぼ鈴木そっくりながら、目が描かれている古川(CV:難波圭一)がその役割を一部担当している。

ドラマ版ではかりあげの奇行に触発されてヒートアップしがちな常識人といった人物像になっている。

・社長の息子
演:大水陽介(ラバーガール)
絵に描いたようなドラ息子で、ろくに定職につかず社長の金で高級車に乗り遊び呆けているチャラチャラとした青年。
ドラマ版では第3話からほんにゃら産業の新入社員として登場し、かりあげ達と同じ営業課に配属された。ドラマ化にあたって外見・性格共に大きく変更されたキャラクターだが、如何にも世間知らずといった印象を放つ風貌という点では原作と共通している
社長は彼の他にも5人の子供を外で作っている模様。
ドラマ版では木下(まさる)という名前が設定されている。

・大家さん
CV:大竹宏
かりあげが住むアパートの家主。
原作では何かと家賃を滞納するかりあげを叱責する口うるさいキャラクターであるが、アニメでは優しいキャラクターに変更された。
かりあげとは妙に馬の合う描写も見られる。

この他、同僚として女性マドンナのヒサエ(CV:渡辺菜生子)、係長の元ネタとなった太子さん(CV:江森浩子)等が登場する。


ほんにゃら産業

本作の舞台となる企業。
企業形態は商社で*9、接着剤や食用油の取引をしている場面がある。
商社ながら、「足踏み式餅つき機」など独自商品の開発も行っている描写もある。
また、かりあげが(恐らく)会社の伝手でジェット機のタイヤチューブを個人で所有していた事もある。
全国各地に支社があるが、その大半はプレハブの事務所。一方大阪支社のビルは5階建てで、下から見たら高層ビル風に見える遠近法な建築をしている。
かりあげを抜きにしても多数風変わりな社員がいるほか、「入社試験が社員との麻雀勝負」「会社説明会で他社の悪口を言いふらす」「社員の階級がけん玉の腕前で決まる」など、どこか抜けた部分が多い。
原作やアニメでは5階建て程度のビルだが、ドラマ版では平屋2階の建物が使われている。

労働組合があり、かりあげも組合に所属して団結・・と見せかけて寝返ることもしばしば。

経営はいつも右肩下がりで、給料は安く一度クビにしたかりあげを再度入社試験で入社させるほど就職面では不人気。(彼が入らなかったら希望者ゼロだったらしい)
自社ビルは施設の老朽化も進んでおり惨めさには欠かせない。
その一方、熱海や箱根への社員旅行や運動会など福利厚生はかなり充実している。

また、ロボット掃除機の導入や現実の日本企業ではいまだに少ない女性管理職など、妙に進んでいるところもある。




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最終更新:2025年02月06日 18:06

*1 今でいう貧乳のこと

*2 当時は明確な治療法もなく、死の病と恐れられ患者に対する差別も起きていた。

*3 ドラマ版において「歯に衣着せぬ物言いがかえって気に入られる時がある」と語られている。

*4 中には「とろろ芋をトーストに塗って食べさせる」のように、連載当時はゲテモノ扱いだったが現在では一般化したものもある。

*5 この状況で二人きりだった同僚の鈴木は「サイコかお前は」の一言で済ませていた。クールである。

*6 色は青がほとんどだが、緑になることもある。

*7 親戚の類が登場するエピソードはいくつか存在する。

*8 ちなみにこの奥さん、後述の係長に似ていたり、かりあげの同僚女子社員に似ていたり、眼鏡をかけていたりいなかったりと、ビジュアルが妙に安定していない。

*9 アニメ版では初期「ほんにゃら商事」と称していた。