神宮京平(龍が如く)

登録日:2022/04/29 Fri 22:11:18
更新日:2025/03/30 Sun 03:14:46
所要時間:約 8 分で読めます





CV:吉田裕秋
演者:名越稔洋*1(劇場版)、加納幸和(舞台版)

神宮京平とは、ゲーム作品『龍が如く』及びそのフルリメイク作『龍が如く極』の登場人物。
警察庁出身の政治家であり、内閣府直属の特殊部隊『MIA(ミニストリー・インテリジェンス・エージェンシー)』の責任者を務める人物。額の黒子が特徴的な初老の男性。

MIAとは、表沙汰にはできない政治の裏工作や要人の護衛など、スパイやSPのようなことを行っている機関。恐らくモデルはアメリカの情報機関『CIA』。一介の警察官である伊達刑事でもその名を知っていたため、国民に存在が隠されているわけではない模様。

中盤で、東城会100億円盗難事件の影でMIAが動いていることに伊達が勘付き、裏社会の事件に政府機関が絡んでいることを怪しんだ彼の調査によってその名前が浮上した。
















以下ネタバレ












その本性は、東城会と癒着関係にある悪徳政治家。悪事の隠蔽や利益確保のために警察に圧力をかけたり、仮にも政府機関であるMIAを私物化し邪魔者を殺すことも厭わない極悪人。第1作における全ての元凶である。

そして、シリーズを通してのヒロイン・澤村遥の実の父親である。


  • 過去

実は、神宮は東城会三代目会長・世良勝と浅からぬ縁がある。二人は若い頃に学生運動を通して知り合い、共に日本の未来に対して理想を持つ仲だった。そして自分たちの理想のため、神宮は政治という表の世界で、世良は極道という裏の世界で頂点に立つと誓い合った。
神宮が政界を目指した際も裏では世良の支援があり、政治家になった後も度々東城会に出入りしていた。この頃の神宮は真っ当な政治家であり、東城会との関係もあくまで会長との個人的な親交にすぎなかった。

1996年頃、東城会を訪ねた神宮は、大幹部の風間が面倒を見ていた女性・澤村由美と出会い恋に落ちる。由美は前年に起きた殺人事件に巻き込まれたショックで記憶を失うという悲惨な目にあっており、これ以上由美を裏社会に近付けたくなかった風間も交際を後押しした。
やがて二人は、一人娘の遥を設けることになる。

しかし、神宮のもとに当時の総理大臣の娘との縁談が舞い込む。当時まだ由美と籍を入れていなかったこともあり、由美は神宮のことを慮って幼い遥を連れ自ら身を引いた。
こうして権力のため大切なものを犠牲にしてしまった神宮は、『自分たちの理想のため』のことだったと自分に言い聞かせてこれを正当化した。これ以降、彼は次第に『理想のため』という大義さえあればどんな悪事も平気で行える人間になっていく。

いつしか神宮は自分の権力基盤を作るための資金を得るため、東城会を利用してマネーロンダリングという犯罪行為に手を染めるようになっていた。彼が東城会本家に預けていた隠し財産は100億円に上っていた。
そんな中、隠し子である遥の存在を聞きつけたある記者に強請られ、咄嗟にその記者を殺してしまう。世良に手伝ってもらい死体を処理した神宮だったが、一度手に入れた権力を手放すことを恐れる彼は、遂に悪魔に魂を売る。
今後このようなことが起こらないよう、自分の最大のスキャンダルを抹消すること、すなわち自分のかつての妻子・由美と遥を殺すことを決断したのである。

友の頼みを受け悩みながらも二人を殺す決意をした世良は、再び風間に厄介になっていた由美の寝込みを襲おうとするが、異変を察知した風間に阻まれる。風間の一喝で目を覚ました世良は、遂に神宮と手を切る決断をする。(ちょうどこのとき、銃声を聞いた由美がそのショックで記憶を取り戻した。)

神宮を失脚させる唯一の方法は、彼の権力の基盤でもある100億円の隠し財産を取り上げること。その実行役には神宮と因縁のある由美が志願する。これが本編の100億円盗難事件の真相である。
だが娘の遥が巻き込まれないよう由美は最愛の娘を孤児院に預けることを余儀なくされた。
そして2005年。遂に計画は実行に移される。

  • 100億円の少女

100億円を失った神宮だったが、彼は野心家の幹部・錦山を利用し東城会の幹部会議の場で100億円盗難を暴露させるという手に出る。世良の計画を知る者は組織内でもほとんどいなかったため、傍目から見れば『ヤクザの金庫から大金が盗み出される』という会長の大失態であり、世良の組織内での求心力は地に堕ちる。

さらに神宮は『世良は東城会次期会長を指名する遺言状を持っている、それさえ抑えて改竄すれば正式に次期会長になれる』という虚言で錦山を唆し、世良の暗殺に踏み切らせる。
結局遺言状は見つからなかったものの、失われた100億円を取り戻すという功績を得た者が次期会長に一気に近づく流れになったことで東城会内部は群雄割拠の抗争状態になってしまった。
遺留品から実行犯が由美であることもバレ、由美と唯一接点を持つ人物・すなわち『100億の少女』遥が東城会全体から狙われる最悪の事態となる。

  • 桐生との対峙

終盤、由美と遥が神室町ミレニアムタワーに現れたと聞いた神宮は、MIAのエージェントを大勢引き連れてヘリコプターから遂にその姿を現す。
二人を守ろうとする桐生に容赦なく銃を向ける神宮。桐生は実の娘にすら銃を向ける神宮に怒りを爆発させる。

神宮は、世良が自分を裏切ることは既に予想していたと明かす。神宮は1年も前から東城会を捨てて近江連合に寝返ろうと企んでいたのだ。(この取引は郷田龍司が実質独断で行っていたことが次回作『龍が如く2』で明かされている。)
東城会が内部抗争で壊滅状態になることも予想済みであり、最終的には取り戻した100億円を近江連合に渡すことで東城会を完全に潰させ、近江連合に全国制覇させようとしていた。
神宮の最終目的は、全国統一した近江連合がもたらす強大な力を独占し、日本国の頂点に立つことであった。

それはすなわち、錦山も彼にとっては使い捨ての駒でしかないことを意味していた。

その計画は大詰めであり、後は100億円を奪い邪魔者である由美と遥、そして桐生を消すのみ。
しかし由美はなんと爆弾を盾にし、下手に発砲すれば自分たち諸共100億円が焼失してしまうという状況に陥らせる荒技で自分と遥の安全を確保する。

そして桐生は、神宮がかつてでっち上げた世良の遺言状は実在していたことを明かす。
世良と風間が極道の未来を託せる男として東城会四代目会長に指名したのは、桐生だった。
亡き男たちが残していったものを守るため、桐生の最後の戦いが始まる…!

  • ミレニアムタワーの決戦

ヘリコプターで駆けつけた伊達が『逮捕状を請求した』と宣言してもハッタリだろうと軽くあしらい、無数のMIAの隊員を桐生にけしかける。
彼らがあらかた全滅すると、MIAの屈強な護衛を伴って遂にミレニアムタワーの屋上で桐生と対決する。

戦闘では前衛を護衛二人に任せ、自分は逃げ回りながら銃や爆弾で攻撃してくる。
護衛二人は高速スウェーとナイフ攻撃が非常に厄介で、二人とも倒すと数秒後にイベントが発生し体力満タンで復活してしまう。ただし神宮本人の戦闘力は低く神宮を倒した時点で戦闘終了になるので、護衛を倒し切らずに一人だけ残しておく、あるいは護衛を完全無視して神宮への攻撃に集中すれば楽に勝てる。
……が、神宮を倒せば残りの護衛も一緒に倒れるのは流石にシュール過ぎたためか、龍が如く極では大幅強化されており、護衛の復活イベントを発生させた後でなければ神宮にとどめを刺すことはできず、更に復活した護衛と神宮を全員倒し切らなければ戦闘終了にならなくなった。必然的に長期戦となっており、最強のストーリーボスとして「神宮の護衛」を挙げる声も多い。


  • 末路

桐生に敗れた後しばらくして目を覚まし、錦山との10年に渡る因縁に決着をつけた桐生のもとに突如現れ彼に発砲、重傷を負わせる。
さらに桐生と遥を庇った由美にも容赦なく弾丸を打ち込み致命傷を与える。
勝ち誇りながら100億円の元に歩み寄るが、背後から現れた錦山に腹をサバイバルナイフで刺される。咄嗟に銃で反撃するも傷は深く動けなくなり、最期は東城会を滅茶苦茶にしたケジメをつけるために自爆を選んだ錦山に巻き込まれる形で命を落とした。

彼が溜め上げ最後まで執着していた100億の裏金は、爆発と共にクリスマスムード漂う神室町に雨のように降り注ぎ、国民の手へ返されたのであった。




他作品との関わり

後のシリーズ作品『龍が如く4』では、彼のマネーロンダリングには警視庁副総監である宗像征四郎が関わっていたことが明かされている。実際神宮は警察庁出身であるため、宗像と接点があっても不自然ではない。このことを考えると伊達が請求した逮捕状というのも本当にハッタリだった可能性が高いだろう。
奇しくも宗像も大勢の護衛を率いて主人公と激闘を繰り広げている。

また、組織ぐるみでマネーロンダリングに関わっていたある大手銀行が何も知らない一人の銀行員に全責任を被せ解雇に追い込んでいる。その銀行員が後の主人公・秋山駿である。
秋山は一度はホームレスまで落ちぶれたものの、爆発によって神室町に降り注いだ金を拾い集めたことで最終的には大金持ちに返り咲いている。
皮肉なことに、秋山は神宮に人生を狂わされ神宮に救われた形になっている。


余談

  • 強さ
作中の評価は『他人から与えられた権力に溺れた小物』というものが多いが、よくよく考えてみると、裏社会の動向を完全に予測して世良、風間、嶋野と歴代でも特に切れ物の幹部が揃った東城会三代目体制を完全に手玉に取り、最終的には彼らを全滅させ組を半壊にまで追い込むという凄まじい謀略の腕を持っている。その三者の活躍が存分に描かれた『龍が如く0』のストーリーを見た後だと尚更そう感じるだろう。
演出的にもヘリコプターに乗って仰々しく登場したりと初代黒幕だけあって相当恵まれていると言える。護衛が大勢いるとはいえ自ら戦いに出向いたりと胆力もあり、ただの汚職政治家とはワケが違う紛れもない強敵である。
ぶっちゃけ錦山より迫力があるように見える。

  • 錦山との関係
本作のラスボス・錦山とは、『元は真っ当な人物だったが、権力のために手段を選ばず成り上がった結果、親友と対立する』という共通点がある。
だが錦山が桐生に敗れたのに対し、神宮は世良に勝利を収めていると結果は真逆である。
また最終的に錦山は改心し命を賭けてケジメをつけたのに対し、神宮は最後の最後まで思想が変わることはなく、世良の意志を受け継ぐ者の手によって倒された。
ある意味神宮の存在は、『桐生に勝利した錦山の末路』なのかもしれない。

『龍が如く 維新!』において山内容堂として登場。
作中における真の黒幕にして、日本を売り渡して帝の立ち位置へと成り代わろうとした男。
維新では不意打ち・命乞い・自己弁護と小物要素が増していた。
最終的には武市半平太が「山内容堂」となって土佐の再建に貢献し、名前と立場まで持っていかれてしまった。

追記・修正はマネーロンダリングで100億円稼いでからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 龍が如く
  • 黒幕
  • 全ての元凶
  • ヒロインの父親
  • 政治家
  • 代議士
  • MIA
  • 黒子
  • 癒着
  • 吉田裕秋
  • フィクサー
最終更新:2025年03月30日 03:14

*1 「ミスターN」名義