大都会 PARTIII

登録日:2022/07/18 Mon 21:35:00
更新日:2025/03/16 Sun 21:12:24
所要時間:約 10 分で読めます





大都会 PARTIIIとは、かつて石原プロモーション制作・日本テレビ系列で放送されていた刑事ドラマである。
主演は渡哲也。

【概要】

石原プロでは、累積赤字解消と映画製作の資金作りのために1976年からテレビドラマの制作に参入した。
その第1弾が倉本聰をメイン脚本に迎えた刑事ドラマの『大都会 闘いの日々』である。

ところが、倉本特有の鬱展開や刑事ドラマなのに事件が解決したのかよくわからずに終わる回も多く視聴率は伸び悩み、翌1977年からは松田優作を迎え、オーソドックスなアクション路線にシフトした『大都会 PARTII』を開始。
これが好評だったことから、翌1978年からアクション路線をさらに強化した本作を開始した。

背景にはハリウッド映画『ダーティハリー』の大ヒット以降、類似のアクション映画が登場し本家もシリーズ化されるなど、
当時のエンタメ界全般で「正義のためには過剰な暴力も辞さないアクションもの」がトレンドだったことも大きい。
国内作品では平松伸二の劇画『ドーベルマン刑事』が人気を博したことからもうかがえるだろう。

この目論見は見事に当たり、平均視聴率が20%超える好評ぶりから続編製作が検討されたが、テレビ朝日から破格のオファーが舞い込み、翌1979年10月からは出演者・スタッフともどもテレビ朝日に移籍が決定。これが『西部警察』となった。
(移籍の経緯については西部警察の項目を参照)


【作風】

『西部警察』の前身作品と書いたが、その内容は西部警察を凌駕するバイオレンスぶりを誇る。
具体的には

・犯人がバズーカやトンプソンマシンガン、M16やAK-47、英国製の高威力のライフル、火炎瓶や手榴弾で武装していることはもっぱら、刑事側もショットガンや44マグナムを使用。
・刑事が火炎瓶を自作して犯人の車に投げ込む
・逃亡する車をライフルで狙撃し、転倒した車から出てきた犯人を何の躊躇もなく射殺
・2・3話おきに刑事が拉致監禁されるエピソードが登場
・謹慎中の刑事が犯人と対峙し、どこからか持ってきた火焔放射器で(謹慎の原因となった)相手を焼き殺す
・取調室で犯人相手にガチのロシアンルーレット
・取り調べ中にわざと「暑いから扉を開けてくれ」と容疑者に命じ開けさせた途端に拳銃を向けて「お前は逃げようしたから撃たれても当然だよなぁ?」と嵌める


など、枚挙に暇がない。

それゆえ当然ながら犯人が生きたまま捕まるケースも少なく、たいていは射殺か焼死か爆死となる。
尤も相手側のヤクザもバズーカや手榴弾を持っているのが当たり前なので、そのくらいやらないと治安が保てないという事情もあるのだが。ここは本当に日本なのか?

ロケ先も皇居前や目黒雅叙園の百段階段*1など、よく許可が降りたor許可取らずにやったと思える場所でのドンパチが多い。
後年の西部警察で地方ロケが多かったのも、これが原因で当局からお灸が据えられたのが原因ともされている。

要するに本作をマイルド・ファミリー路線に変更したのが西部警察であり、西部警察が5年にわたる人気作品になったことを考えるとこの路線変更は大成功だったと言えよう。

【登場人物】

本作の捜査課は「黒岩軍団」と呼ばれており、西部警察にも「大門軍団」と引き継がれ、制作する石原プロ自体も「石原軍団」と呼ばれるようになった。

全話を通じて女性のレギュラー出演者がほとんどいないのが大きな特徴。
また、当時の刑事ドラマとしては珍しく殉職者が一人も出ていない。
()内は刑事のニックネーム。◎は『大都会 PARTII』からの続投組。

・黒岩頼介(デカ長・クロさん)◎
演:渡哲也
現場責任者で、捜査課の黒岩軍団を率いるボス。階級は巡査部長。
五分刈りにサングラスというお馴染みのスタイルは本作でほぼ定着し、途中からショットガンを持つようになり、西部警察の大門団長にそのまま引き継がれた。
犯罪者に対する冷酷さは大門以上で、何の躊躇もなくバンバン射殺する。
本作以前の「大都会」と後年の「西部警察」には妹がいたが、本作ではその設定が無くなっている。

・牧野次郎(ジロー)
演:寺尾聰
44マグナムを持った黒岩軍団のハリー・キャラハン。
普段は沈着冷静だが凶悪犯相手には容赦をしない。
メカや重火器に関する知識に長け、狙撃の名手という設定は西部警察のリキにそのまま引き継がれた。

・虎田功(トラ)
演:星正人
本作のイケメン枠。
その見た目にそぐわない武闘派で、上司にも平然とたてつくことも。
意外なことに大卒で女好き。ハードな任務からか、女子高生の教師になっておけばよかったと愚痴る場面も。
城西署配置前には城南署に配属されていたことがある。

・宮本兵助(弁慶)◎
演:苅谷俊介
強面の顔立ちと屈強な体格の持ち主。登場時に「ワシが城西署のベンケイじゃっ!!」と啖呵を切る。
カナヅチで、捜査中にパトカーが海に飛び込んだ際はガチで溺れかけたことも。
撮影中に転倒事故を起こし本当に渋谷病院へ入院してしまい、40~48話には未出演。最終回には間に合った。

・丸山米三(丸さん)
演:高品格
黒岩軍団のベテラン刑事。そのキャラからアクションは不得意に見えるが、とある回ではガッツ石松扮する凶悪犯と肉弾戦を演じている。

・大内正(坊さん)
演:小野武彦
黒岩軍団の中堅刑事。荒くれ者だらけの黒岩軍団の中では比較的加川課長から理解されており、その板挟みになる描写も多い。
途中撮影スケジュールの都合から、1話の中でスキンヘッドになったり普通の髪型に変わる奇妙な回も存在する。
後年城西署から湾岸署に転勤した模様。

・上条巌(サル)
演:峰竜太
前作「PARTII」からの続投だが、ストイックさの目立つキャラに変貌。
衣装は夏冬問わず黒い服装で統一されている。
この後の西部警察では更にキャラを転換し、これが氏のキャリアに多大な影響を与えることとなる。

・加川乙吉
演:高城淳一
城西署捜査課課長。黒岩軍団の上司にあたるが、行き過ぎた軍団の捜査を何かと目の敵とすることが多く、刑事からも平然と文句を言われることも多い。

・宗像悟郎 ◎
演:石原裕次郎
城西署救急指定の渋谷病院医師。
相手が凶悪犯でも分け隔てなく辣腕を振るう。
愛車は白の日産プレジデントで、プライベートに運転中に踏切で後続車から押され、あわや踏切事故に巻き込まれそうになったことも。

・戸倉綾子
演:金沢碧
東都日報の若手記者。
当初は城西署の記者クラブに所属していたが、記者クラブを批判する記事を書いたため以降は単独で取材を行う。
黒岩相手にスクープを狙うがはぐらかされる一方、極秘情報をもらうことも。
数少ない女性レギュラーであったが、登場回数は少なく13話を最後に降板。


【余談】

本作からは日産自動車が車両提供に加入し、セドリックを筆頭とした車種がカーチェイスで活躍することになった。
但し後年の西部警察と異なり、初期には前作で使っていたトヨタ・クラウンなど他社の自動車も登場している。

冒頭の30台ものパトカーとヘリが駈け下りるシーンは、当時宅地開発中だった横浜市あざみ野付近の坂道で撮影されている。
現在は開発が終わったため大きく変貌しているが、坂道はそのままなので一度訪問されることをお勧めする。

第19話の「警官ギャング」は、放送直前に三菱銀行人質事件という本物の強盗事件が起きた関係で2週間延期されて放送された。


追記・修正は日暮れ坂を聞きながらお願いいたします。

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最終更新:2025年03月16日 21:12

*1 2009年に東京都指定の有形文化財となっている。