バズ・ライトイヤー(映画)

登録日:2022/07/24 Sun 19:20:04
更新日:2025/02/03 Mon 16:24:36
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無限の 彼方へ――(To infinity And beyond.)


『バズ・ライトイヤー』は、2022年に公開された、ピクサー・アニメーション・スタジオとウォルト・ディズニー・ピクチャーズ製作の映画。

新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以降、ディズニープラスでの配信ビジネスを強化させたいディズニーの意向から、
ピクサー作品は同サービスの対象国での劇場公開を見送って配信へとシフトされる事態が続いていた。
2022年に入ってからは、劇場のみでの公開が内定していたはずの『私ときどきレッサーパンダ』が、
オミクロン株の感染拡大に加えてファミリー映画の興収の回復が遅れているという理由で当初の方針を転換し、配信でのリリースに変更されてしまう。
結果的にディズニーはアニメ映画の劇場公開の延期に否定的なスタンスを示し、特にピクサー作品は映画館とネット配信の同時展開も叶わなかっり、配信での公開となった作品が今後に劇場公開される保証が一切無い事を考慮すると、本作も世界情勢次第で劇場公開が危ぶまれていたかもしれないが、当初の予定通りに無事に公開され、『2分の1の魔法』以来の劇場公開作品となった。

トイ・ストーリー』に登場するバズ・ライトイヤーが、いかにして生まれたかの原点を描く映画。
スタッフは様々なSF作品をリスペクトしており、劇中にも、スタートレック、スターウォーズなど、さらにはガンダムまでオマージュとして詰め込んでいる。
また、メカデザインには「超時空要塞マクロス」に影響を受けていると語っている。
「アンディはこの映画を見ている」という設定である。*1
登場人物それぞれがコンプレックスを抱えており、それを克服しようとする王道展開と、自身の失敗に対してどう向き合うかという複雑なテーマを同時に描いている。
この映画を見たら、いかにアンディが相当に大人びた子供なのかが理解できるだろう。
まあ打ち切りに遭った人形劇の主人公であるウッディが一番のお気に入りであるあたり、アンディの趣味が特殊なのかもしれないが。

なお、この映画には同性愛描写が含まれているため、イスラムを国教とする国々や中国を含む14か国で上映禁止が発表された。



あらすじ

バズ・ライトイヤーは新たに発見した惑星が居住可能なものかを確かめるために探索することにしたが、敵対的生物の存在から撤退しようとする。
しかし、脱出中に宇宙船を損傷させてしまい、バズたちは惑星から脱出できなくなってしまった。
船の中で冷凍冬眠していた人を外に出している中、罪悪感を感じたバズに、アリーシャは励まし、脱出するための環境を整えることにする。
1年後、乗組員たちはコロニーを建設し、脱出するための燃料を生成し、4分の飛行テストを行うことになった。
バズが飛行機に乗り、テストを行ったのだが、燃料が安定せず失敗。着いた頃には「ウラシマ効果」によって約4年の月日が流れていた。
その後も飛行テストを続けるものの、ことごとく失敗し、そうこうしてるうちに62年もの月日が経ち、アリーシャは老いて死んでしまった。
そして新たに務めることとなった司令官から、任務の中止を言い渡される。
茫然自失となったバズだが、ちょうどその時、燃料が安定する手がかりを入手。
燃料を改めて調合して、施設にあった航空機を強奪し、飛行テストを強行する。
すると今度は無事にテストが成功した。しかし、勢い余って予定地から離れたところで不時着してしまう。
信号弾を打ち、救助を待とうとしたところ、突然誰かが隠れるよう指示。
言われたとおりに隠れると、突然ロボットが現れ、自分が乗ってきた航空機に装置を取り付け、持ち去ってしまった。
この「誰か」はアリーシャの孫であるイジー。彼女の話によると、1週間前から「ザーグ」と呼ばれる勢力が突如基地を攻撃してきたそう。

ザーグの目的は一体何なのか。そして、バズは無事に燃料を持ち帰り、脱出させられるのだろうか。

キャラクター

声の出演は(原語版/日本語版)

  • バズ・ライトイヤー
CV:(クリス・エヴァンス/鈴木亮平)
トイ・ストーリー』シリーズでお馴染みバズ・ライトイヤー…ではなく、こちらは本物のスペースレンジャーとしてのバズ・ライトイヤー。
吹き替えもこれまでの所ジョージから鈴木亮平にバトンタッチした。
使命感・責任感が強く、他人が失敗してもそれを責めたりはしない。
その一方で新人は苦手。曰く「あれこれ教えるくらいなら自分一人で行った方がやりやすい」。
戦闘能力は高く、序盤のアリーシャとのタッグ戦闘は見物。
操縦技術も高く、アリーシャはそれを期待してバズをテスト飛行のパイロットに任命した。

+ 実は…
実はアカデミーに入った当初は成績が悪く、入学1週間で自主退学を検討しようかと思っていた。
そこをアリーシャに引き留められ、現在も活動を続けられていることから、彼女に対して深い尊敬の念を抱いている。

  • アリーシャ・ホーソーン
CV:(ウゾ・アドゥーバ/りょう)
バズ・ライトイヤーの上司であり友人。
アカデミーでバズの才能を見出し、バズをスペースレンジャーに仕立て上げた、バズにとっては恩師に当たる人物。
同性愛者であり、おなじく女性であるキコと結婚。子供を設けた。
どうやって子供を作ったのかは不明だが、未来の技術でなんとかなるのかもしれない。
バズに脱出のためのテスト飛行の任務を与え、バズは飛び続けていたが、飛行するたびに年老いていき、ついにはメッセージを遺し、この世を去った。


  • フェザリンガムスタン
CV:(ビル・ヘイダー/清水裕亮)
新人レンジャー。名前が複雑なため、バズからは「新人」と呼ばれてしまう。
瞳が潤んでいる。

  • カル・バーンサイド中佐
CV:(イザイア・ウィットロック・Jr/間宮康弘)
亡くなったアリーシャに代わり、新しく司令官となった人。
レーザーシールドを採用し、惑星に定住することを選択。バズに対し、テスト飛行の任務の中止を宣告する。
しかし。燃料の完成を知ったバズは、中止命令を無視して実験を強行してしまう。

+ ラストでは…
ザーグ壊滅後、当然バズに対して命令を無視したことを責めたが、ザーグを壊滅させた功績を無視することなく、
宇宙防衛隊を創設し、その任につかせることで不問とする。どうやらただの石頭ではなかったようだ。

  • ディアス航空士
CV:(エフレン・ラミレッツ/小松史法)
テスト飛行の航空機の整備士。
彼もバズがテスト飛行を続けるたびに老いていく。

  • ソックス
CV:(ピーター・ソーン/山内健司(かまいたち))
アリーシャがバズに贈った青くないネコ型ロボット。
癒し目的のはずなのだが、ぶっちゃけ言って突破要員。
長い時間をかけて、不完全だった燃料を完成させるわ、体内にいろんなものを仕込んでいるわと、バズたちの窮地を何度も救ってきた。

  • IVAN(アイヴァン)
CV:(メアリー・マクドナルド=ルイス/沢城みゆき
航空機に搭載されるナビゲーションシステム…なのだが、
ウザい
融通が利かない
おまけに接触が悪いと音声が出づらい
の3拍子でぶっちゃけコメディ要員。
それに機械の癖に妙に人間臭い。

  • イジー・ホーソーン
CV:(キキ・パーマー/今田美桜) 幼少期:(キーラ・ヘアーストン/御園紬)
アリーシャの孫。チーム3人の一人。
スペース・レンジャーとして活躍した祖母のアリーシャを深く尊敬し、自身もスペース・レンジャーになりたいと思っている。
頭の回転が速く、彼女の計画した作戦も、聞いた限りでは悪くはないのだが…。

+ 実は…
実は宇宙恐怖症という、スペース・レンジャーとしては致命的な欠点を抱えていた。
「どうやって作戦を実行するつもりだった」と問うバズに対して「私は地上勤務で」と言ったときは、さすがのバズも呆れていた。
このことは本人も自覚しており、祖母であるアリーシャに対して深いコンプレックスを抱いている。
とはいえ、前述のとおり頭の回転は速いので、それに対して技術が追い付いていないだけだと思われる。

  • モー・モリソン
CV:(タイカ・ワイティティ/三木眞一郎
チーム3人の一人。キャンプ感覚で入隊したらこんなことになったと語る、色々とんでもない人。
似たような例でダイエット目的で軍に入隊した女性隊員がいたような…
今作随一のトラブルメーカー。
イジーはモーのミスを「ちょっと失敗しただけ」と慰めるが…。
吹き替え版の中の人は別の世界では、コソ泥から王子になりあがった青年だった。

  • ダービー・スティール
CV:(デール・ソウルズ/磯辺万沙子)
チーム3人の一人。とある罪を犯し、仮釈放中であった高齢女性。
仮釈放中であるため武器は使えないと主張するが、バズにより許可が出される。
ただ、武器の扱いには慣れているので、「武器が使えない」の枷を解けば、3人の中で一番有能。

  • ザーグ
CV:(ジェームズ・ブローリン/銀河万丈
突如宇宙基地を攻撃してきた謎の勢力の親玉。
「スペース・レンジャー バズ・ライトイヤー」では悪の帝王という設定であったが、今作はかなり異なる設定となっている。
他作品ではバズを倒そうとしていたが、今作では「捕まえる」ことに躍起になっている。
そして(名乗ってないにもかかわらず)バズの名を呼び「一緒に来るんだ」と誘うなど、敵としてはかなり不可解な行動をとる。

+ その正体は…※最大のネタバレ注意
ザーグに連れ去られたバズ。「お前は誰だ」とザーグに問う。

「ああ、それが問題だ」

実はザーグ自体はただのマシンであり、中に人が入る構造になっていた。
そこに入っていたのは、バズが年老いたような姿の人。
バズの父親かと思いきや、首に賭けられているドッグタグは、バズ・ライトイヤーのモノと同一だった。
さらには一部損傷した状態のソックスもザーグのそばから出てきたのだ。

  • 老バズ
実はハイパースピードを達成した後、世界は分岐しており、このバズは本来のバズの世界線(便宜上こちらのバズは「バズ'」とする)。
バズと同じく不時着するが、そこにやってきたコマンダーの人たちはバズ'を捕まえようとしたので、バズ'は再び飛び立った。
できるだけ遠くの、できるだけ未来の場所へ旅立った結果、後のザーグ母艦となる船を発見。
そしてバズ'は考える。時間を進めることができるのなら、逆もできるのではないかと。
そうして数十年の試行錯誤を行った結果、時間を戻すことに成功した。
しかし、目的とする時間まで戻ろうとする途中で燃料を使い果たしてしまった。
そこでバズが戻ってくる時間まで(おそらく冷凍冬眠で)眠り続け、部下であるロボット達には
・バズが戻ってきたときに備え、近くに配置。航空機を発見後、回収する
・基地に攻撃を仕掛け、バズの追っ手を出せない状態にする
ことを命令した。
そして航空機が予定通り戻ってきたが、回収した時にはすでにバズが乗っていなかったことに気付いたことから物語は再び動き出す。
老バズはバズに対して「あの惑星に降りてはいけないと警告を出せば、これまでのことは起こらなくなる」と、バズに燃料を渡すよう催促するが…
ちなみに「ザーグ」の名前は、配下のロボットたちが「ザーグ」としか発音できないため、「ザーグ」と呼ばれている。

  • ソックス(損壊)
老バズのソックス。
一部壊れているため、時折喋りがおかしくなる。
実は内心では老バズの事を快く思っておらず、彼の野望を止めようとするバズに協力するが、
それを知った老バズによって破壊されてしまった。

  • ザイクロプス
ザーグ配下のロボット
モノアイ、腕部の三本爪、その真ん中のところから出るビームと、どこかの水泳部MSに似ている。
さらには赤い個体もいるが、決してあのロリコン専用ではない。そもそも2機いるし。
「ザーグ」という音をことあるごとに発する。実はそれしか喋れない。


装備一覧

スペース・レンジャー

  • ブラスター
バズではお馴染みの武装…ではない。序盤は銃のタイプで、後に腕に取り付けるタイプが出てきた。
ラストでスーツが一新された際、ブラスターがスーツに内蔵された。

  • ブレード
剣の形をしていて、ビームで刃の部分を形成する。

外から視認できなくなるSFとかでお馴染みのヤツ。
ただし、時間制限付き。

  • 降伏ボタン
左胸あたりにある大きく赤いボタンを押すと、体の周りに小さな風船上のモノが展開され、大きいボールのようになる。
この風船状のものは頑丈で、ちょっとやそっとの攻撃やビーム程度では壊れない。
本来は降伏のためのものではあるが、作中で降伏するために使われたことは一度もない。

+ ネタバレ注意
  • ウィング
終盤でバズが射出座席と共に脱出する際、バズの背中につけられたモノ。
ザーグを倒し、新たに防衛チームが組まれた際、スーツが一新され、最初のスーツにウイングが搭載された、
『トイ・ストーリー』に出てくるお馴染みのモノになった。

  • レーザーシールド
基地を覆うように半円状のレーザーを展開させることで、外敵を防ぐ。
「これで安全に暮らすことができる」とバーンサイド中佐は言っていたが、突如としてザーグのロボット群が押し寄せてきて…
+ ネタバレ注意
結局、ザーグ軍を壊滅させるまでにシールドが破れることはなかった。レーザーシールドは伊達ではなかったらしい。
あれ?バーンサイド中佐って有能じゃね?

ザーグ

  • ブラスター
ザーグでお馴染みのガトリング式ブラスター。

腕に鎖をつけている状態で射出し、掴んだものを引き寄せる。
ちぎれても手の部分は自分で戻ってきて、修復もできるようだ。

  • 瞬間移動装置
ザーグ母艦の格納庫に一瞬で送られる装置。
終盤ではこの機能を利用することになる。



追記・修正はハイパースピード到達に成功してからお願いします。

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+ 最後に
映画が終わり、スタッフクレジットおまけ映像と
ピクサー映画でお約束となった、「PIXAR」の「I」の文字を潰すルクソー*2がこっちを向きながら消灯するシーンで幕を閉じる。
…と思いきやその直後に、次回作を匂わせる映像が流れる。


最終更新:2025年02月03日 16:24

*1 ただし、公式設定で「テレビアニメ」と書かれていることに矛盾する。もしかしたらどちらもあったのかもしれない。

*2 ピクサーが1986年に制作した短編映画『ルクソーJr.』に登場する電気スタンド