SL北びわこ号

登録日:2022/12/07 Wed 14:37:32
更新日:2022/12/09 Fri 00:47:44
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SL北びわこ号とは、かつてJR西日本琵琶湖線北陸本線経由で運行していた臨時列車である。

概要

山口線の「SLやまぐち号」に次ぐJR西日本第二の蒸気機関車牽引列車。
滋賀県湖北地域の観光振興と蒸気機関車の動態保存のために1995年8月19日より運行を開始した。運行範囲は米原~木ノ本。
人気の高い列車であったものの、2020年に新型コロナウィルス感染症の感染拡大によりの運行休止が発表。その後再度運行されることはなく2021年5月21日に客車の換気能力の不足と老朽化を理由に廃止が発表されてしまった。最後の運転は2019年11月10日だった。

アクセス

現代における蒸気機関車は煤煙や汽笛による騒音、後述の事故の影響といった問題から都市部での運行は出来ず、運行可能な路線は地方の路線に限られている。そのため蒸気機関車列車が運行される地域へは都市部からのアクセスが不便であることが多い。
しかし北びわこ号の場合米原駅は北陸本線の他東海道新幹線東海道本線とも接続しており、京阪神地区や愛知県などの都市部からのアクセスが良いのが特徴。
大阪駅から新快速利用で90分、京都駅から60分程度、名古屋駅から快速利用で70分程度。新幹線ならもっと早い。
日帰り旅行も余裕を持って可能である。

運行形態・利用方法

主に各月の日曜日や祝日、ゴールデンウィークなどに運行。月毎の運行日数は3回程だが、月や年によって増減する。また、季節に応じてヘッドマークのデザインも変更される。

後述するように通過駅が存続するが普通列車扱い。
全席指定席のため乗車には乗車券の他運転日の1ヶ月前の午前10月より発売が開始される指定席券(大人520円・小人260円)が必要。全国のみどりの窓口や主な旅行会社で購入可能。
全席普通席で、定員は424人。

停車駅は米原-長浜-虎姫-河毛-高月-木ノ本。湖北路を約40分かけて走破する。
初期は米原~長浜間で坂田・田村にも停車していたため本当に各駅停車だった。

運行開始~1997年11月24日は1・2・3・4号の2往復または3・4号のみの1往復を運行していた。木ノ本駅には転車台が無く機関車の方向転換が出来ないため上りの2・4号は逆機*1での牽引となっていた。しかし逆機では45km/hしか出せず、他の列車の運行に支障が出やすいため北陸本線の列車が増発された2003年11月8日より2・4号は廃止された。2・4号廃止以降列車は後から追いかけてくる別の機関車の牽引で米原駅へ回送される。
2018年からはD51 200の導入の影響で3号も廃止され、1日1本のみの運転となった。

使用車両

蒸気機関車

  • C56160
北びわこ号の初代メイン牽引機。
1939年4月20日に川崎車輌にてC56形のラストナンバー機として製造。
C56形は地方路線向けの客貨両用の小型テンダー機関車*2。地方路線向けであることからテンダー機関車でありながら小さな車体が特徴で、「ポニー」の愛称で親しまれている。また、C56形は入換運転時の後方の視界確保のため炭水車が斜めに切り取られているという特徴があり、テンダー機関車でありながら逆機運転にも比較的適している。

160号機は津山や鹿児島、横浜と各地を転々とし、その後は小海線飯山線七尾線などで活躍した。

無煙化の進行後は蒸気機関車動態保存用の車両基地である梅小路運転区に配属。
梅小路運転区配置後は、地方路線向け形式であり運行可能な路線を選ばないことからJR西日本エリアのみならず北海道や四国、北陸など日本各地へ出張した。中でも2013年のあおなみ線への出張は名古屋市という都市部での運行という異例の事態となり大きく話題になった。
北びわこ号運転開始後は主に北びわこ号の牽引を行っていたが時折やまぐち号を牽引することもあった。
機関車としては非力なので勾配の多い山口線などでの運転時にはディーゼル機関車による補助が必要だったが、北びわこ号の運転区間は平坦な地形が続くため単独で牽引出来た。

しかし2014年10時17日にこの小さな車体が仇となり新型の保安装置が搭載出来ないということや整備の都合上本線運用可能な機関車は2台のみにするという方針から後述のD51 200と入れ替わりで本線運用から離脱させることが発表された。最後の本線運用は2018年5月27日の北びわこ号牽引だった。

現在は京都鉄道博物館の展示運転列車である「SLスチーム号」の牽引を行っており、本線を全力で駆け抜けることは無いも今もその勇姿を見せてくれる。
本線運用からは引退したものの、現在に至るまで一度も廃車されたことが無い、文字通りの生涯現役。

尚現在の汽笛は鳴りが悪くなったことで一時期やまぐち号用に動態保存されていたC58 1のものに換装されている。

  • C571
やまぐち号のメイン牽引機だが、故障や整備でC56が運用出来ない時などに代わりに運用された。
1937年3月22日に川崎車輌でC57形のトップナンバー機として製造。
C57形は幹線向け高速列車用の中型テンダー機関車。その整った容姿から「貴婦人」の愛称で親しまれている。
かつては全国の特急・急行列車の先頭に立ち、お召し列車の牽引機に抜擢されることも多かった。

1号機は主に北関東や東北で活躍し、お召し列車の牽引を行ったこともある。
しかしやたらと災難に見舞われることが多く、1945年に宇都宮機関区で空襲による機銃掃射を受ける、1961年に羽越本線村上~間島間で土砂崩れに突っ込んで大破し2ヶ月事故現場に放置されるという目に遭っている。動態保存目的での梅小路への転属後も受難は続き、1976年に「京阪100年号」を牽引中に人身事故を起こす*3、1995年に車両基地で整備中に阪神淡路大震災に遭遇しジャッキから転落し破損するという目に遭っている。それでも修理を受け現在に至るまで生涯現役を貫き、その勇姿を今に伝えている。整備を続けてきた国鉄・JRの職員の方々には感謝する他無い。

流石に部品の老朽化などは否めず、一部部品は他の静態保存中のC57から移植したり新製したりし、2009年には炭水車そのものを新造した。

現在は2020年のやまぐち号牽引中のシリンダートラブルで自走不能になり修理を受けているが、修理完了の目処は立っていない。

  • D51200
北びわこ号の二代目メイン牽引機。
1939年4月20日に鉄道省浜松工場にて一般型のD51形の1台として製造。
D51形は幹線向け大型貨物用テンダー機関車。日本の機関車としては最も多く製造され、1115台も製造された。現在ではC最もメジャーな蒸気機関車であると言え、「デゴイチ」という愛称は鉄道ファンでなくとも一度は耳にしたことがあるだろう。

200号機は主に中京圏で活躍した。一時期米原機関区に配置されていたこともあり、保存運転前から米原ゆかりの機関車だった。
1945年には浜松で連合国軍による艦隊砲撃を受けた。C57 1共々戦火をくぐり抜け今も活躍する機関車である。
そして200号機というキリのいい数字であることからD51の一般型代表として梅小路で動態保存されることになった。動態保存こそされていたものの本線運用可能な整備はされず、梅小路蒸気機関車館(現:京都鉄道博物館)の開館後もスチーム号の牽引のみに留まっていた。
しかしその後前述の理由から本線運用可能な整備を受けることになり、不具合に見舞われながらも2017年11月25日よりやまぐち号の牽引機として約40年ぶりに本線復帰。ついでにやまぐち号用の新型客車35系もデビュー。
大型の機関車のためC56の問題点であった保安装置の取り付けは問題無く行えた。

2018年夏より北びわこ号の牽引機としてデビューする予定が山口から梅小路に帰る途中広島で豪雨に見舞われ、土砂崩れにより山陽本線が不通になり梅小路にも山口にも帰れなくなってしまった。その後部分復旧により山口に戻れたものの年内の北びわこ号デビューは出来ず、やまぐち号の牽引を行った*4
路線の復旧もあり2019年3月10日より北びわこ号の牽引を開始したがその年の内に列車自体が(事実上)廃止されてしまったため本機が北びわこ号を牽引した期間は結構短かった。運行が告知されていたが中止になった分の列車は本機が牽引する予定だった。

客車

  • 12系(・スハフ 12 129・オハ 12 341・オハ 12 345・オハ 12 346・オハ 12 352・スハフ 12 155)
北びわこ号運転開始から廃止まで一貫して使用された客車。
12系は大阪万博などへの波動輸送用に1970年より製造された急行用客車。スハフ12が発電機付きの緩急車、オハ12が中間車。
国鉄民営化以降の12系といえばジョイフルトレインや蒸気機関車列車用に原型が無くなるレベルに魔改造されたものが大半だったが、北びわこ号用のものは特に改造もされなかったため外装・内装共に製造当初の姿を完全に留めている青い車体にボックスシートと急行列車時代の姿を今に伝える希少な存在であり、ある意味機関車と同じぐらい価値のある車両であるむしろこっち目当てという人もいたのでは?
外装・内装共に原型を留める現役の12系は北びわこ号用のもの以外にはJR東日本の一部のオハ12のみ*5である。
スハフはJR東日本のものとは異なりJRのロゴが存在する。

北びわこ号運転時には編成の両端にスハフを連結し、その間にオハを3両連結する。行先表示器には「臨時」と表示されている。
ボックスシートなので乗り心地は昔ながらのもので、知らない誰かと向かい合わせということもよくある。

この中でオハ12 352のみ2022年に廃車されてしまった。
残りの車両は北びわこ号廃止以降も乗務員訓練に使用されている。

その他機関車

  • DD51形
  • EF65形
いずれも機関車と客車をそれぞれの車両基地⇔米原で回送したりや木ノ本から米原まで回送したりするために使用される。
旅客営業中は蒸気機関車が単体で牽引するため後から木ノ本まで単独で追いかけてくる。
運行開始からしばらくはDD51が使用され、2007年10月21日からはEF65が担当している。
2回だけトワイライトエクスプレス色のEF65 1124が担当したことがある。

サービス

北びわこ号運転日限定で米原駅の駅弁屋の井筒屋が限定デザインの「伊吹釜めし」を提供していた。
限定デザインもだが通常デザインも現在は販売を終了しているのが残念。

運行中も車内では車内販売が行われ、SLグッズを購入可能。他にも乗車記念証の配付や指定席への記念スタンプの押印、木ノ本駅でグッズと引き換え可能なアンケートや木ノ本駅周辺の観光マップも配付され、より良い旅の思い出作りのためのサービスが行われていた。

余談

琵琶湖を囲む路線である琵琶湖線・北陸本線近江塩津以南・湖西線が大都市近郊区間に含まれていた関係上北びわこ号は日本で唯一大回り乗車での利用が出来た蒸気機関車列車であり、最低でも1区間分の運賃と指定席券の料金を支払えば乗れた。
例えば米原駅をスタートとする場合彦根駅までのきっぷを買い、北びわこ号で木ノ本へ行く。そのまま近江塩津方面の列車に乗り、近江塩津で湖西線に乗り換える。そのまま山科駅まで行き、山科で琵琶湖線米原方面の列車に乗り換え、彦根で下車すればいい。

廃止後の2021年秋、京都鉄道博物館では期間限定でスチーム号の使用客車を12系2両に変更し、北びわこ号のヘッドマークを取り付けた特別仕様のスチーム号が運行された。牽引機はC56 160で、両数の少ない再現列車であるも、およそ3年ぶりとなるC56 160の北びわこ号牽引が実現した。最終日のみC622が牽引した。C62と12系という組み合わせも異例だった。


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最終更新:2022年12月09日 00:47

*1 炭水車を先頭にしてのバック走行。

*2 エンジンのある機関車本体と石炭と水を積んだ炭水車が別れている機関車。

*3 見物人が撮影のため線路内に立ち入ったのが原因。被害者は亡くなってしまった。そしてこの事故を受け国鉄は都市部での蒸気機関車列車の運行を諦めざるを得なくなった。

*4 この間北びわこ号はC57が担当。

*5 スハフも原型に見えるがトイレがリニューアルされている。