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福井鉄道F10形電車

登録日:2023/03/31 Fri 10:18:17
更新日:2026/08/04 Tue 18:50:33
所要時間:約 10 分で読めます





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福井鉄道F10形電車とは、福井鉄道が保有する路面電車である。
RETRAM(レトラム)」の愛称を持つ。
本項では、原型であるシュトゥットガルト市電GT4形および土佐電気鉄道735形についても解説を行う。

概要

ドイツ語の車体広告が目を引く日本の鉄道車両とは思えぬ欧風な外観が特徴。これは外国の車両を模してデザインされたものではなく正真正銘ドイツから輸入された中古電車だからである

元々はドイツのシュトゥットガルト市電で使用されていた「GT4形」という車両で、その後高知県の土佐電気鉄道(現:とさでん交通)が購入し、そこから更に土佐電気鉄道から福井鉄道が購入したものである。導入にかかる費用は全て福井県が負担している。

来歴

福井鉄道移籍まで

GT4形はエスリンゲン機械製造で製造され、シュトゥットガルト・シュタットバーン(シュトゥットガルト市電)の車両として開発されたもので、1959年5月27日より運行を開始。1965年までに350編成も導入された。福井鉄道へ移った車両はGT4形でも比較的若い車両である。

シュトゥットガルト市電の起終点駅はループ線になっており、折り返す時にはループを通って編成丸ごと方向転換する方式だったため運転台はパンタグラフのある車両にのみ設置され、ドアも進行方向右側*2にのみ設置されている。前面部の造形は前後で同じ。

シュトゥットガルトは丘陵地帯の都市であり、勾配や急カーブも多かったことから台車はボギー式であるが車体中央部に1つだけ台車を配し*3、台車同士をサブフレームで連結する連接構造となった。車内から連結部を見ると丸型の間接部で接続されていることが分かる。イメージとしてはドアに付いている蝶板のような仕組み。
これにより車体がカーブ内側に張り出しすぎることを防いでいる。

シュトゥットガルト市電では1985年からの改軌(1,000mm→1,435mm)や新型車両への置き換えにより2007年までに定期運用からは離脱。一部編成はドイツ国内の別都市やルーマニアの鉄道事業者へ譲渡行われた。
シュトゥットガルトに残った編成は市電博物館で動態保存され、改軌されずに残った21・23系統で保存運転が行われている。

現在福井鉄道に在籍する車両は土佐電気鉄道が1989年に開業85周年を迎えることから行われた「世界の路面電車を走らせる」という事業の一環として購入したもの。
GT4形は前述の通り片側にしか運転台が無く、このままでは日本での運行に適しないことから714・735の2つの編成の内運転台がある車両のみで編成を組み直している。1つの車両においてドアは片側にしか無いが、片方の先頭車が逆向きになった関係上進行方向前側の車両ではドアが右に、後側の車両ではドアが左に来るようになったためドアの増設は行われなかった*4
他にも軌間の1,067mm化(改軌)、前面連結器の撤去なども行われたが外観は広告含めほぼドイツ時代のものを保っている。
形式名は「735形」となった。
1990年8月8日より運行を開始したが、故障の多さから2005年を最後に運用を離脱し長らく車庫に留置されていた。運用離脱後の保存状態は悪く、車体には錆が目立っていた。

福井鉄道への譲渡

車庫の肥やしとなっていた735形に目を付けたのが福井県。県は本車を観光資源とすべく2013年12月に車両購入費200万円、輸送・修理費7,600万円の計7,800万円を全額県予算で購入。
福井鉄道での形式名は「F10形」となり、公募で決められた「RETRAM(レトラム)」の愛称も付与された。愛称は「レトロ」+「トラム(路面電車)」から。
譲渡における整備は京王電鉄系列の鉄道車両整備会社である京王重機整備が担当。

解説

主要諸元

形式名 F10形
製造所 エスリンゲン機械製造
改造所 京王重機整備
編成 2車体連接
車両番号 735-A(たけふ新側)・735-B(田原町側)
軌間 1,067mm
電気方式 架空電車線方式 直流600V
編成重量 19.4t
全長 18,180mm
全高 3,710mm
主電動機出力 100kw×2基
駆動方式 車体装架直角カルダン駆動方式
最高速度 65km/h

外観

下部分が黄色で上部分が白いという塗装は製造時からのもので、前面部のドイツ国旗は土佐電気鉄道時代に付けられたもの。
また大型のパンタグラフがよく目立つ。
乗降扉の「SSB」の文字はシュトゥットガルト・シュタットバーンの略称。

方向幕は運転席窓上にある小さなものと側面にあるものを使用。ドイツ時代に系統番号を表示するのに使われたもので、福井鉄道では種別と行先を表示している。
その下にはドイツ時代に行先を表示していた方向幕がある。福井鉄道でもシュトゥットガルト時代の行先を(演出として)表示していたが現在は「福鉄 レトラム号」と表示されている。
側面方向幕は種別と行先を個別で表示可能。
尚方向幕は手回し式である。

一際目を引く「MÖBEL CENTER Wössner DIE BESTE GEWOHNHEIT」の広告だが、これは直訳すれば「MÖBEL CENTER(家具センター) Wössner(ヴェスナー) DIE BESTE GEWOHNHEIT(最高の習慣)」となる。つまりこれは家具店の広告なのである。最後のキャッチフレーズは意訳すれば「最高の暮らしを提供」と言ったところか。
2021年末に潰れたようだが。

内装

こちらもドイツ時代からほぼ変わらず。
シート配置は片側が1人がけ、もう片側が2人がけのクロスシート。ただし先頭部が細いという構造上運転台後ろの席のみロングシート。
吊り革にリングは無く、パイプから吊り下がるベルトを直接掴む文字通りの吊り革。しかしこの吊り革はパイプに通してあるだけで金具で固定されていないため横にスライドしてしまう。

方向幕は普通車外にのみ表示するのが一般的だが本車は車内表示も兼ねているのが特徴。これも日本では見られない特徴と言える。
路線図や降車ボタンなど当時から残る車内の案内は勿論ドイツ語。その他ドイツ語の単語紹介のステッカーも追加されている。

連結部分は前述の構造上大きく屈折するようになっているため丸型の関節部が客室同士を繋いでいる。そのため連結部分に壁は無く開放感がある。

福井鉄道導入にあたり福鉄名物のドアステップも追加。車両特性上電動式のものを搭載出来なかったためかドアステップは手動式のものになり、展開や格納は車掌が行う。
また後に運賃・停車駅表示のための液晶モニターも追加されている。ここだけハイテク感が出ている。

そして冷暖房は非搭載。何といっても1965年製ですから。代わりに後付けの扇風機はある。

機器類

こちらも製造当初から据え置き
日本の古い路面電車と言えば爆音が特徴の吊り掛け駆動方式が有名だが、直角カルダン駆動方式を採用しているため吊り掛け程のモーター音は出ない。
また勾配路線用形式だけあり電動機出力も路面電車としては強めの100kw×2の200kwとなっている。

運用

2014年4月12日に福井駅前(現:福井駅)での記念式典を行った後、営業運転を開始した。当初は福井駅前~田原町間のみの運用だったが、翌年度以降は福武線全線で運用を開始している。えちぜん鉄道への乗り入れ運転は行わない。

福武線は普段はワンマン運転を行うがF10形は運賃箱や自動放送を搭載していないため車掌が乗務し、旅客案内や乗車券の確認等は車掌が行っている。その関係上運転席後ろのドアは締切で、連結部近くのドアのみを使用する。

本形式は臨時列車扱いで休日の急行列車として運用される。
乗車には予約や別料金は不要で、乗車券のみで乗ることが可能。
また、貸切運転でも使用される。
車内では記念スタンプの押印も可能なためスタンプ帳も持っていこう。

そしてF10形の運行上の問題は何と言ってもその故障の多さスペランカーかってレベルで弱い。
まぁ製造から60年近く経っている上海外産という特異な事情もあるため致し方無い。
不具合が発生すると修復にしばらく時間がかかってしまい、運行予定日でも運休となる。更にそのシーズン中での復旧が不可能な場合はそのままそのシーズンの運転を打ち切ることになる。
そのため運行期間中であっても前日ぐらいに確認しておかないといざ行ったら故障中で泣きを見る羽目になってしまう。

長らく冷房装置が非搭載のため、運行期間は春期(3~5月)と秋期(10~11月)に限定されていた。
その後、北陸新幹線福井県延伸による利用客増加を見込んで冷房装置搭載が決定。
改造を実施して2024年10月から運用に復帰した。
改修費用は何と1億9,000万円で、2/3が県、残りが国の負担となる。

イメージキャラクター

2019年スマートフォンゲーム『駅メモ! -ステーションメモリーズ!-』には本車をモデルとした「でんこ」のリト=フォン=シュトゥットガルトが登場。古い物好きのドイツ人少女で、「春と秋が好き」「故障が多いので沢山絆創膏を貼っている」などF10形らしいキャラクターとなっている。ただ性能はドイツ人仲間のシャルロッテ*5の派生。

その後2022年にはリトの後に実装された北府ゆめの共々福井鉄道公認キャラクター化。
同時にえちぜん鉄道でも田原町つばさ勝山ていらの公認キャラクター化が行われており、2022年3月25日~11月30日まで福井鉄道・えちぜん鉄道沿線を巡るゲーム内イベントが行われた。クリアすれば彼女らの制服衣装が獲得出来た。
期間中F10形及びF1000形第一編成にリトとゆめののヘッドマーク(ステッカータイプ)が掲出された*6
やはりこの期間中F10は故障したが。



追記・修正はドイツから高知経由で福井に来た人にお願いします。

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最終更新:2026年08月04日 18:50
添付ファイル

*1 項目作成者撮影。

*2 日本とは異なり自動車や路面電車は右側通行。

*3 ボギー台車を採用する車両は一般的に車両の端に2つ台車が設置される。

*4 日本以外の譲渡先でも両側にドアが必要な路線において同様の改造がされた。

*5 こちらは元ハノーバー市電の広島電鉄200形。

*6 尚ゆめのはF1000形の第四編成である。