ガラン(ウルトラ怪獣)

登録日:2023/07/22 Sat 13:10:48
更新日:2025/03/03 Mon 14:58:04
所要時間:約7分で読めます





人間を滅ぼすのは人間だ。

人間を滅ぼすには人間を利用することだ!


戦え久里虫太郎!!


破壊し尽くすのだガラン!!



ガランとは、特撮テレビドラマ『ウルトラマンA』に登場する超獣である。
この項目ではガランと関わりの深い久里虫太郎についても記載する。


【データ】

登場話:第4話「3億年超獣出現!」
別名:怪魚超獣
身長:85m
体重:6万t
出身地:異次元


【概要】

およそ3億年前、古生代デボン紀*1に生息していた古代魚を異次元人 ヤプールが改造した超獣。
鱗に覆われた緑色の体に胸鰭が変化したと思われる大きな手を持ち、体の各所にある鰭らしき部位も相まっていかにも魚の怪獣というデザインをしている。
頭部の大きな角や腹部の赤いトゲも印象的。

武器は口から吐くガランガス。これは触れたものを瞬く間に分解し、自分の体に吸収してしまうもの。
また、角から放つテレパシー光波は機械を狂わせ、思うように操作できなくしてしまう。
タックファルコンやタックアローといった戦闘機はもちろんのこと、それらに比べて構造が簡単なはずのTACガンにすら作用するためガランの前ではどんな防衛チームであろうと苦戦は免れないであろう。
劇中では陸上にしか現れなかったが、元が魚なだけあって水中戦も得意らしい。

最大の特徴は、人間・久里虫太郎の歪んだ精神によって操られ、彼の描く漫画の展開をなぞるように暴れ回るということ。
その容姿は久里が中学生の時に描いた怪獣ガランにそっくりである。
項目冒頭の台詞にもあるように、ヤプールが人間の邪悪な心に目をつけた結果ガランが恐るべき超獣として実体化したのだ。
しかしその目論見は最終的には裏目に出てしまったようで……?

ちなみにガランの原型となったのは先述のとおり3億年前に生息していた古代魚なのだが、劇中に登場したのは化石などではなくなんと冬眠状態で生きているもの。しかも石灰岩の中に埋もれていたことが明言されている。
その見た目もガランをそのまま小型化したような感じである。元々怪獣だったんじゃなかろうか。


【関連人物】

久里 虫太郎


『好きな人に会いたい』と思えば会える。

『嫌いな奴が死ねばいい』と思えばそいつはきっと死ぬ。


僕が一つのことを念じれば……それは必ず現実になるんだ。

演:清水紘治

ガランを操っていた張本人。
美川隊員の中学時代の同級生でもあり、彼女に片想いしていたが渡したラブレターを中身も見ずに突っ返されるなど全く意識されていなかったようだ。
絵や漫画が上手いのが取り柄の劣等生だったと自嘲しているが、それが高じて今や人気漫画家となっている。
名前の由来は恐らく『黒死館殺人事件』で知られる小説家の小栗虫太郎。 正体は確かに分かっていないが謎のままである。

一見物腰穏やかだが、その本性は偏執的で目的の為なら手段を選ばない。
美川隊員への執着は現代的にいえばストーカーヤンデレといって差し支えないだろう。
その歪んだ精神はヤプールに目をつけられるほどで、その誘惑に魂を売ってしまう。
美川隊員を自分の妻にするため、自宅で同窓会を開くと偽り睡眠薬を盛って監禁
そしてガランを操り、世界を破壊し尽くそうとした。

これまでの説明で異常な人間であることはわかってもらえるだろうが、劇中ではかわいいぬいぐるみをアーチェリーの的にしていたり、
あれほど好いていた美川隊員が逃げ出そうとすれば殺しにかかるなど狂気を感じさせる描写がこれでもかと盛り込まれている。
演じる清水氏の怪演も合わさり、下手をすれば超獣のガラン以上に恐ろしい。

極めつけに、美川隊員が閉じ込められていた屋根裏部屋にはかつて久里の求愛を拒み監禁された女性の成れの果てである白骨死体が無造作に放置されている。
時系列は明らかにされていないが、もしこの女性が久里がヤプールに魂を売る前に監禁されていたとしたら……背筋が凍る話である。

ちなみに美川隊員に送ったラブレターは保管しており、中身は「この絵をあなたにささげます。」という簡潔な手紙にガランのイラストが同封されたもの。
こんなロマンもへったくれもない恋文を送るとは、歪んだ性格は持って生まれたもののようだ……
まあ、少年が自分の唯一の特技の絵で求愛する事自体は仕方無いと言えるが……女子中学生や美川憲子個人が好む題材を選ばなかったのは流石に独善的である。


【劇中での活躍】

TACの護衛も虚しく、生物化学センターに輸送される途中ヤプールに奪われてしまった古代魚。
改造されて超獣ガランとなり、空を割って市街地に出現し、破壊行動を開始する。
駆けつけたTACの攻撃も意に介さず、テレパシー光波で兵器を機能停止させた後は消しゴムで消されたかのように姿を消してしまう。

一方、電波を通さない屋敷に監禁されていた美川隊員だったが、ブローチ型の小型爆弾を使って逃走を図る。
久里に見つかってあわや殺されかけるものの、ちょうど久里に彼女の行方の聞き込みをして帰るところだった吉村隊員が助けに入り脱出に成功する。


ガランよ、彼女を連れ戻せ……

邪魔する奴らはひとり残らず叩き潰せ……!


美川隊員に執着する久里は、彼女を奪還するべく再びガランを市街地に出現させる。
街を、人々を蹂躙するガランの姿を取り憑かれたように描き続ける久里。
その執念とヤプールの命令を受けて暴れまわるガランには、TACの攻撃も意味をなさない。
更にはテレパシー光波で北斗星司隊員の乗るタックアローを狂わせ、巨大な手で捕まえてしまう。

絶体絶命のピンチに、北斗のもとへ走る南隊員。
二人の指のウルトラリングが光を放ち、北斗はタックアローから脱出。
北斗と南のフライングタッチによって登場したウルトラマンエースとガランの戦いが始まった。

激しい格闘戦や、ガランの放つガランガスをエースが逆に吸収するなど一進一退の攻防を繰り広げる両者。
久里もガランを勝たせるため、鬼気迫る様子で漫画を描いていく。
そして戦いの中、エースのタイマーショットがガランの右腕を千切り飛ばした!


ア゛ア゛ア゛ァァァァァァァッ!? アァァァァァ……!


突如漫画を描く手を止め、絶叫する久里。
確かに久里の邪悪な精神はガランに力を与えていた。しかし、その副作用としてガランのダメージは久里の体にフィードバックされるようになっていた。
TACの豆鉄砲攻撃やエースの打撃程度の痛みなら漫画に熱中することで耐えられたのだろうが、腕を切断されるという尋常ではない痛みに生身の人間である久里が耐えられるはずもなかったのだ。

久里が漫画を描けなくなってしまったため、ガランの動きは明らかに鈍り、エースに一方的にやられてしまう。
いつしかガランの絵には火がつき、パンチレーザーを受けたガランの体もそれをなぞるかのように炎に包まれる。
痛みと体に燃え移った火にもだえ苦しむ久里と、対照的に倒れ伏し、動かなくなるガラン。
とどめのメタリウム光線がガランに命中すると、ガランも、そして久里の屋敷も大爆発するのだった。

かくして人の心の闇を利用したヤプールの策略と、それに手を貸した愚かな人間は炎の中に消えた。
美川隊員の手元に残ったガランの絵もライターで火を点けられ、灰となるのだった。


【余談】

  • ウルトラマンZ』に客演した際、エースは「痛みや恐怖を感じないのが超獣」という旨の発言をしているが、それを踏まえるとガランは久里というエネルギー源を得たことで超獣としての強みを失ってしまった失敗作と言える。


  • ヤプールは『メビウス』登場時、久里の面影を感じさせる黒衣の老人の姿に化身している。
    メタ的には先述のとおり清水氏が演じているというわけだが、公式サイト等では久里の姿をモデルにしたのではないかと推測されている。よっぽど彼の邪悪な精神が気に入ったのだろう。

  • 「邪悪な存在に心の闇を利用され、自身のデザインした怪獣を実体化させ暴れさせる」キャラは、後年の作品では『劇場版 ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』の戸井ゆきおがおり、ウルトラシリーズではないが『電光超人グリッドマン』の藤堂武史や『SSSS.GRIDMAN』の新条アカネも外せないだろう。
    ただ、彼らが最終的には改心して新たな一歩を踏み出せたのに対し、久里は地獄の苦しみを味わった挙げ句に命を落としている。
    人を監禁して死なせるという明確に一線を超えた描写があるためやむなしといったところか。


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最終更新:2025年03月03日 14:58

*1 正しくは約4億1600万年前から約3億5920万年前までを指す