WWE Vengeance 2002

登録日:2024/03/14 Thu 03:05:00
更新日:2024/10/06 Sun 07:01:10
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WWE Vengeance 2002 は2002年7月に行われたWWEのプロレス興業、PPV(特番)である。

この特番はWWEが日本商戦に本格参入するきっかけとしてゲーム会社のユークスがDVDとVHSを日本国内で初めて発売させたことで知られている。なお、同年3月開催のレッスルマニアX8も同時発売した。これ以降ユークスはWWEが毎月開催しているPPVのDVDを発売するようになる。2002年当時、テレビ東京にてスマックダウンのダイジェスト番組「Afterburn」が深夜帯に放送されており、これを踏まえたうえでの日本市場開拓であった。

PPV VENGEANCE の歴史


この名前で開催されたPPVは全部で8回。初回は2001年12月。本来「アルマゲドン」という名のPPVを予定していたが、同年9月の同時多発テロ事件の影響を加味して名称を急遽変更して第1回大会が開催。クリス・ジェリコが一夜にして2大スーパースター、ストンコとロックを倒して初代WWF統一王者に君臨する彼にとっては思い出深い大会となる。そして今回が2回目の開催である。
なお、第3回は翌年7月にスマックダウン単独開催で実施。第4~6回は2004年からRAW単独興業として3年間行われた。2008年、第7回大会で「Night Of Champions」という副題がつけられ以降は「王座戦、もしくは王者同士の試合」を開催するPPVに変更され消滅した。第8回は2011年に「Bragging Rights」に代わる形で復活開催されたが、それ以降はこの冠でPPVは開催されていない。

2002年上期のWWE


レッスルマニア終了後、増えすぎたレスラーの出番を整理確保するためにRAWとSmackDownの2リーグ制を導入し、レスラーをどちらかの番組に所属させる2ブランド方式を採用した。現在の原型である。例外として、WWF統一王者と女子王者はどちらにも属さず必要に応じてどちらの番組でも王座戦やノンタイトル戦に出場する権利があった。
また、選手の選出にあたってRAWはリック・フレアー、スマックダウンはビンスがドラフト方式により選手を指名、振り分けることにした。

この時点での振り分け(上位10組まで、以下略)
スマックダウン RAW 備考
1巡目 ザ・ロック ジ・アンダーテイカー スマックダウンが先攻
2巡目 カート・アングル nWo(スコット・ホールケビン・ナッシュ、X-PAC) RAWが一気に3人指名
3巡目 クリス・ベノワ ケイン ベノワは欠場中
4巡目 ハルク・ホーガン ロブ・ヴァン・ダム IC王座はRAW専属とする
5巡目 ビリー&チャック ブッカーT タッグ王座がスマックダウン専属

4月・5月とこの流れでそれぞれ番組は進むが、5月5日に団体名称が「WWF」から「WWE」に変更、その前後でnWoメンバー、スコット・ホールの不祥事、ケビン・ナッシュの大怪我、ストンコのバックレ事件*1などゴタゴタが続いてRAWの主要メンバーの離脱が相次ぎRAWにテコ入れを実施せざるを得ない状況となる。そこで、ビンスはフレアーを現役選手一本に絞らせ、両番組にGM制を設置。選手には番組内で「容赦なき攻撃性を発揮しろ」と怒鳴りつけて番組の活性化に取り組む。ってか怒鳴られた選手ってとばっちり受けただけ?

RAWは新GMにかつてのWCW副社長エリック・ビショフが就任。スマックダウンGMにはビンスの娘ステファニーが就任。それぞれ予想をはるかに超える人選であり世間は騒然した。先にお披露目されたビショフは歓声と怒号の混ざる中、「スマックダウンから選手を大量に引き抜いて(移籍させて)RAWを再建する」と豪語。まずはじめにスマックダウン所属だったトリプルHに接近する。一方の後手を引く形となったステフは元夫HHH*2の流出を阻止すべく、正攻法でHHHと交渉に臨もうとするが・・・

データ


開催 2002年7月21日
会場 ミシガン州デトロイト  ジョー・ルイス・アリーナ  観客動員12000人
テーマソング  トラスト・カンパニー「Downfall」

試合



  • ダークマッチ(前座番組heat内での試合)
ゴールダスト vs スティーブン・リチャーズ


  • エリミネーション式テーブルマッチ
ババ=レイ&スパイク・ダッドリー vs エディ・ゲレロクリス・ベノワ


  • クルーザー級王座戦
ジェイミー・ノーブル(/wニディア) vs ビリー・キッドマン

  • 欧州王座戦
ジェフ・ハーディ vs ウィリアム・リーガル

  • シングル戦
クリス・ジェリコ vs ジョン・シナ



  • IC王座戦
ロブ・ヴァン・ダム vs ブロック・レスナー(/wポール・ヘイマン)



  • ノーDQ戦(反則裁定なし)
ブッカーT vs ビッグ・ショー



  • タッグ王座戦
ハリウッド・ハルク・ホーガンエッジ vs クリスチャン&ランス・ストーム


  • トリプルHの選択
RAW移籍 or スマックダウン残留


  • 統一王座戦(トリプルスレッドマッチ)

以上、画像出典 WWE Vengeance 2002


試合背景及び結果
+ ...
ダークマッチ
スティーブンにも魅せ処はあったが、ゴールダストが難なく勝利。試合終了後、実況席のキングとJRのところにSD実況コンビのマイケル・コールとタズが押し寄せ、「自分らにも実況させてくれ」と直談判。結果として本編の前半部分を任せてもらうことになる。彼らは実況としてPPV初出場を果たすこととなる。どっちかといえば、試合よりこっちのほうがheatのメイン扱い。

第1試合 テーブル戦
首のケガにより1年半もの休場を余儀なくされたベノワの本格復帰戦。なお、ベノワはドラフトでスマックダウン所属になったはずだが結局RAWに登場した。まずはエディがスパイクにテーブル葬されて脱落、そのスパイクはベノワに退場させられる。最後はババ・ボムでベノワが敗退。負けはしたが、ベノワはインタビューにて「無事に復帰できてよかった」とコメントしている。

第2試合 クルーザー級王座戦
前月特番で王者奪取したジェイミー・ノーブルの初防衛戦。ニディアがいい感じに試合に介入し、王者ノーブル危なげなく勝利。以降この2人は田舎っぺバカップルコンビになってストーリー展開していく。

第3試合 欧州王座戦
PPV直前のRAWでリーガルから王座を奪ったジェフに対してリーガルが号泣して再戦権を行使。急遽決まった試合でてマッチカード画像が間に合わず。リーガルはジェフの返り討ちにあってジェフが王座防衛、またしても号泣。ジェフはアンダーテイカーとのハシゴ戦以降、評価爆上がり状態。試合終了後ホーガンに褒められるがホーガンはその後リック・フレアーと雑談。フレアーがホーガンをディスる。
なお、欧州王座は翌日のRAWにてIC王座と統合されて消滅。

第4試合 Y2J vs シナ
PPV当日に決定した(という設定の)記念すべきジョン・シナPPVデビュー戦。やはりマッチカード画像は間に合わず。本来ジェリコの相手は前月から遺恨が続いているエッジだったのだが、エッジがタッグ王者になったために別でタッグ王座戦が組まれてジェリコがあぶれる形になっていた*3。一方のシナは、デビューほやほやの新進気鋭。直前のSDでタッグ戦でジェリコからフォールを奪う金星を挙げる。そして、PPVでシングル戦が組まれ、またしてもシナが勝利する。ジェリコはこの頃から若手底上げポジションを買って出るようになる。
ちなみに、シナはheatにてリリアン・ガルシアのインタビューを受け、OVW時代の鉄板ネタを披露するもド滑りする。マイケル・コールとタズの実況はここでおしまい。

第5試合 IC王座戦
前月開催の「キング・オブ・ザ・リング」決勝戦と同一カード。今回はRVDの持つIC王座を賭けた試合になる。前回勝ったKOF覇者レスナーは当時無敗*4の怖いもの知らずだったが、必殺のF5をRVDにスイングDDTで返され初のフォール負けのピンチに。しかし、ヘイマンの乱入でレスナーの反則負け、RVD王座防衛。試合後、レスナーはRVDにF5で憂さ晴らし。

第6試合 ノーDQ戦
ともにRAWにてnWoのメンバーになるも、主要メンバーの相次ぐ離脱でユニットが強制終了させられ、なんやかんやこの2人でnWoを清算する遺恨戦が開催。試合はブッカーTが勝利。

第7試合 タッグ王座戦
子供のころからあこがれたホーガンとタッグ王者になり有頂天のエッジとそれをよく思わないかつてのパートナー、クリスチャン。クリスチャンはランス・ストームとテストと「嫌米軍団」というユニットを組んでアメリカの象徴たるホーガンを襲撃してきた。
試合は、予想通りテストが乱入。撃退するも、今度はエッジと遺恨があったジェリコも乱入してクリスチャン、ストーム組の勝利をアシスト。タッグ王座奪取。新王者は早々に会場を後にしてカナダへ帰国*5

HHHの選択
レッスルマニア終了時に統一王座を保持していたHHHは、ドラフト制当初どちらにも所属せず王座転落後はスマックダウンに出ていた。がGMにストーリー上の元妻(プライベートでは絶賛交際中の)ステファニーが就任するとステフのライバル的立ち位置のビショフから猛然とラブコールを受ける。最終的には元DXのメンバー、HBKの説得でRAW移籍が確定、ビショフは狂喜乱舞する。調子に乗ったビショフはほかにも様々なSDスーパースターを引き抜くことを画策…(次回PPVにつながる)

第8試合 統一王座戦
前月PPVでHHHの挑戦を退けたアンダーテイカーは、その試合に乱入したそれまで映画撮影で離脱していたロックの動向を良しとせず、次回PPVでの防衛戦相手に指名。しかし、PPV前のカート・アングルとSDで組まれた王座戦で疑惑の引き分け裁定を受ける。*6これにより、カートも挑戦者として認められ三つ巴戦となる。
結果は場外でダウン中のテイカーの隙をついてロック様がカートにフォール勝ち、ロックが新王者になる。


8月特番サマースラムに向けて


ビショフ、ステファニー両GMによる選手の引き抜き合戦が勃発*7。アティチュード路線は終了したものの、確実に新しい風が吹き始めた。またスマックダウンには「神秘の王」レイ・ミステリオが満を持して登場。ついでにアッティチュードならぬ「マッティチュード」マット・ハーディVer1.0も登場した。RAWではかつての看板スター、ショーン・マイケルズが実に4年のブランクを経て現役復帰を宣言。RAW、スマックダウンともに新たな一歩を踏み始め、番組同士の抗争もヒートアップしていく。また、8月10日にはスマックダウンメンバーがオーストラリアに遠征、実に団体史上25年ぶりの南半球上陸を果たした(グローバルワーニングツアー)。

テーマソング


今回テーマソングを担当したトラスト・カンパニーは、今作「Downfall」がデビュー作。PPVの翌々日に発売された。全米チャート最高91位。以降、ロイヤルランブル2003やバックラッシュ2005などでも楽曲がテーマソングに採用されている。DVDには「Downfall」のPVが収録されており、彼らの姿を見ることができる。PVは倉庫内でバンドが演奏するシーンと、ヴォーカルの兄ちゃんが街を闊歩すると街に強風が吹き荒れ、エキストラの顔が強風でゆがむというシーンの組み合わせである。ところでこのヴォーカルの兄ちゃんだが、黒地に胸に「japan」と書かれたTシャツを着用しており、このPPVでWWEが本気で日本市場本格参戦するぞということを物語っている。いや、知らんけど

余談


このPPVのポスターやテレビCMには当初ストンコが起用されていたが、例のバックレ事件により急遽メイン戦を戦うテイカー、ロック、カートに差し替えられることとなった。

追記、修正は容赦なき攻撃性を発揮してお願いします。

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最終更新:2024年10月06日 07:01

*1 当時元妻との離婚、DV等に関する訴訟などを抱えて、精神的に追い込まれていて興業を無断欠勤して団体を追われた

*2 この当時、ストーリー上では対立関係にあった

*3 なお、プライベートではバツイチになったエッジにジェリコ夫人が友達を紹介し、交際に発展したころである

*4 反則負けや相方がフォール負けのタッグ戦などはあったが、自らがフォールやギブアップで負けたことはない

*5 次の収録がカナダ開催だったから

*6 要約すると、カート・アングルがフォールして3カウントとったと同時にテイカーはカートに三角絞めでカートがギブアップ。互いに自分の勝利を主張するも引き分けとなる。

*7 実際のところはただの番組間移籍なのだが、引き抜き合戦という設定である