登録日:2025/03/23 (日) 00:05:00
更新日:2025/03/25 Tue 19:34:21
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2023年第25回ドバイシーマクラシックとは、2023年3月25日にアラブ首長国連邦・メイダン競馬場で開催された芝2410mのGⅠレースである……レース?
出走馬
枠 番 |
馬 番 |
馬名 |
性齢 |
騎手 |
調教国 |
人気 |
1 |
8 |
ウエストオーバー(Westover) |
牡4 |
R.ムーア |
イギリス |
4 |
2 |
9 |
ザグレイ(Zagrey) |
牡4 |
C.スミヨン |
フランス |
8 |
3 |
4 |
ロシアンエンペラー(Russian Emperor) |
騙6 |
A.サナ |
香港 |
9 |
4 |
10 |
ウインマリリン |
牝6 |
D.レーン |
日本 |
6 |
5 |
1 |
ボタニク(Botanik) |
騙5 |
M.バルザローナ |
フランス |
7 |
6 |
7 |
イクイノックス |
牡4 |
C.ルメール |
日本 |
1 |
7 |
6 |
シャフリヤール |
牡5 |
C.デムーロ |
日本 |
3 |
8 |
2 |
モスターダフ(Mostahdaf) |
牡5 |
J.クローリー |
イギリス |
5 |
9 |
5 |
セニョールトーバ(Senor Toba) |
騙5 |
L.デットーリ |
香港 |
10 |
10 |
3 |
レベルスロマンス(Rebel's Romance) |
騙5 |
W.ビュイック |
UAE |
2 |
※英表記無しは日本馬。枠番による帽子色等は無し。斤量は4歳56.5kg、5歳以上57kg、牝馬は2kg減。
【概要】
毎年3月末頃にドバイ…もとい、アラブ首長国連邦にて開催されるドバイワールドカップデー。本年は日本から計26頭が参戦、準メイン競走であるドバイシーマクラシック(以下SCに略表記)には日本馬3頭出走し海外馬含めて10頭立て。
GⅠ馬だけでも
- 一昨年の日本ダービー馬にして前年のドバイSC覇者シャフリヤール
- 春クラシック連続2着から秋天にて覚醒、有馬記念も制し年度代表馬となったイクイノックス
- 前年の愛ダービー馬ウエストオーバー
- 前年のBCターフ馬、2400mのGⅠ3連勝中のレベルスロマンス
- GⅠ戦線で惜敗と惨敗を繰り返しながらも2022年香港ヴァーズを制しGⅠ馬の仲間入りを果たした本レース唯一の牝馬ウインマリリン
- 香港のGⅠ2勝馬ロシアンエンペラー
と6頭も参戦。
単勝オッズは日本と海外双方でイクイノックスとレベルスロマンスのほぼ二強状態。
【レース】
※項目作成者の編集技量及び現地実況のヒアリング力が怪しいため、日本での実況(ラジオNIKKEI:大関隼)になります。ご了承下さい。
スタート~前半-併走開始-
全馬ほぼ揃ってのスタート。明確な逃げ馬不在とあってか馬群はある程度固まった状態に。
シャフリヤールが中団後ろ、レベルスロマンスがそれをマークする体勢となり、ウエストオーバーとザグレイはその前方、馬群のほぼ真ん中を進む形に。
一方イクイノックスは、ゲートを出るなり1コーナーでじわりと馬群から押し出されるようにハナを切るという、まさかの逃げを打ちだし、モスターダフとボタニクがそれに付いていくことに。
そしてウインマリリンが先団インコース、レベルスロマンスをマークするロシアンエンペラーの後ろについたセニョールトーバが最後方。
向こう正面に入る頃には各馬の位置がほぼ決まり、以降イクイノックスが58km/h前後、2馬身弱のリードをキープしながら馬群を引っ張ることになった。
「7番イクイノックス今日は、逃げました。リードを2馬身とっています。」
尚、ここからしばらくは後続位置取りのブレこそ多少あるものの、この状態が続くのであった。ぃやマジで実況も各馬の位置確認くらいしか言う事なかったし…
後半〜ラストスパート-巨人君臨-
「7番イクイノックス。ルメール騎手、逃げの手です。リードを1馬身とっています。」
3コーナーに差しかかると、1馬身程のリードで逃げていたイクイノックスが60km/h程にペースを上げたことで馬群が少し縦に伸びる。そのまま4コーナーから直線に向かう途中でレベルスロマンスが外から押し上げてきて先頭を捉える射程圏に、更にモスターダフとレベルスロマンスの間からザグレイが抜け出そうとしてくる。
「2番のモスターダフ2番手。3番手、内に構えてボタニク。」
「外から押し上げにかかってきたレベルスロマンス、更に間からはザグレイ!」
そしてレベルスロマンスの押し上げに反応してシャフリヤールも押し上げはじめる。
「中団外に持ち出すかシャフリヤール、4コーナーから直線!」
それを引き金に残りのほぼ全頭が直線で手綱を扱きヨーイドン。
……ほぼ全頭と書いたな。そう、1頭だけ、イレギュラーな動きを見せた奴がいた。
なんと序盤から先頭を走っていたイクイノックスが直線残り400m地点で後続を引き離しだしたのだ。それもステッキを振るい手綱を扱く他馬をノーステッキで。
他の馬はこれでもかと言わんばかりに追っているにもかかわらず、その差はどんどん開いていく。この間、ルメール騎手はノーステッキどころか手綱すらほとんど動かしていない。にもかかわらずその速度は65km/h台後半にまで加速しているのである。
「間もなく残り200!突き放したイクイノックス!4馬身、5馬身リード!!」
「2番手争い一気に広がって!!ウエストオーバー、内からモスターダフ!!その後ろにザグレイですが…!!」
そんな中、ウエストオーバーはシャフリヤール、レベルスロマンス等を交わし差を交わし詰めようとするがモスターダフ、ザグレイを抜くまでにしかならない。そしてルメール騎手は残り100m地点で思い切り後方確認していた…
「もう独走!!イクイノックス、6馬身リード…!!」
「2着8番ウエストオーバー、3着9番ザグレイです…!!」
そして最後はルメール騎手が首を撫でながら手綱を緩めていたにもかかわらず、2着ウエストオーバーに3馬身半差つけてゴール。それも一昨年ミシュリフが出したレースレコードを1秒も更新する勝ちタイム2:25.65というオマケ付きで。
「7番イクイノックス!!天皇賞、有馬記念に続いてGⅠ3連勝!!」
3着、4着はそれぞれ好位追走していたザグレイとモスターダフ、シャフリヤールはレベルスロマンスこそ抜いたが5着。
レベルスロマンスは伸びを欠いて7着、これが芝での初黒星となった。
【レース結果】
1着 イクイノックス 2:25.65
2着 ウエストオーバー 3.½
3着 ザグレイ 2.¼
4着 モスターダフ 1.¼
5着 シャフリヤール 1
6着 ウインマリリン 1.¼
7着 レベルスロマンス 1.¾
8着 ロシアンエンペラー クビ
9着 ボタニク 1.½
10着 セニョールトーバ ½
払い戻し
単勝 |
7 |
140円 |
1番人気 |
複勝 |
7 |
110円 |
1番人気 |
8 |
210円 |
2番人気 |
9 |
1,230円 |
5番人気 |
馬連 |
7-8 |
760円 |
1番人気 |
ワイド |
7-8 |
320円 |
1番人気 |
7-9 |
2,390円 |
3番人気 |
8-9 |
6,300円 |
7番人気 |
馬単 |
7→8 |
960円 |
1番人気 |
三連複 |
7-8-9 |
13,890円 |
2番人気 |
三連単 |
7→8→9 |
32,870円 |
2番人気 |
上述の通り、本レースに出走した馬に明確な逃げ馬がいなかったこともあって、道中緩めのペースになるのは予想がつくが、それまで中団以後に位置取って直線勝負に持ち込む差し馬であったイクイノックスが逃げるという
初見殺しめいた挙動を見せ、そこから馬なりで後続を引き離し、最後緩めたうえでレコード勝ちという他陣営からしたら恐怖を覚えるような展開となった。しかも緩めてようやく後続が差を縮められ、それでも尚届かなかったのだ。もし最後までペースを緩めなかった場合、どんなタイムが出てたのだろうか…
【その後】
1着のイクイノックスは海外遠征を断念した
父に代わって海外GⅠを制覇したことに。その後帰国し宝塚記念に出走、様々な不利要素を抱えながらも勝利しGⅠ4連勝。そして秋には
世界最強馬としての集大成を見せつけるのであった。
2着ウエストオーバーはその後サンクルー大賞勝利のほかコロネーションカップ、KG6世&QEステークス、
凱旋門賞を2着とGⅠ戦線で活躍。そして凱旋門賞を最後に引退・種牡馬入りした。
なお陣営は本レース後「イクイノックスの出るレースには出したくない(意訳)」と述べていたが、本馬の種牡馬としての舞台は日本というオチが待っていた。
3着ザグレイはウエストオーバーの勝ったサンクルー大賞で2着と健闘、次走のバーデン大賞でGⅠ初勝利。
4着モスターダフはPoWステークス、英インターナショナルステークスを連勝。この年のカルティエ賞最優秀古馬賞を受賞した。
5着シャフリヤールは札幌記念で喉の不調により11着と唯一掲示板を外すも、治療後は再び複数国のGⅠ戦線で奮闘。翌年のドバイSCではレベルスロマンスとのワンツーフィニッシュを飾っている。
7着レベルスロマンスはその後勝ちきれなかったり不調等で一時勝ちから遠ざかるも12月のリステッド競走で復活すると一気に連勝、ドバイSCで再びシャフリヤールと戦い見事勝利。それ以降も2400mのGⅠタイトルを積み重ねている。
8着ロシアンエンペラーはチャンピオンズ&チャターカップを連覇。相手は距離不適だったとはいえ後に多くのGⅠタイトルを積み重ねるロマンチックウォリアーだった。
…上記を見てもわかるように、このレースに出走した馬達のレベルが低かったなどでは決してなかった。むしろ出走馬の殆どはいずれもその後のGⅠで勝利または連対を果たしており、非常にレベルが高いメンバーであった。それらの馬達が全く歯が立たなかった事実が、世界最強馬イクイノックスの確固たる証拠の一つとなったのである。
【余談】
- レース後のインタビューにて木村哲也調教師は逃げ切り勝ちの展開に対して「僕も見たことないんでビックリしてます(笑)」と困惑気味に答えており、レースレコードについても「いい状態で出すことだけで精一杯」と想定外であったことも語った。
- このレースを見た人は軒並み喜び通り越して恐怖と畏怖を覚えたのか、レース動画のコメントやタグでは『恐怖映像』『公開調教』『金の貰える調教』といったものが付けられた。そりゃ併走トレーニングみたいな事して約4.5億円稼ぐ光景を見たら…ねぇ…
- 世界中に衝撃が走った本レースであるが、しかしこの数十分後のドバイワールドカップで、かの暴君の血を引く日本の馬が再び世界に衝撃をもたらすこととなる。
【戦友に捧ぐ】
ドバイSC、ルメール騎手、逃げ切り勝ち…、これ等を聞いてある競走馬を思い浮かべる者もいるだろう。そう、
ハーツクライだ。
遡ること16年前の第9回ドバイSCにて、(競馬場は違うが)ルメール騎手はハーツクライに騎乗し、逃げ切り勝ちを納めた。
そのハーツクライは本レースの2週間前に亡くなっており、ルメール騎手は同レースを同じレース運びで勝って、亡き戦友に勝利を捧げたのだ。
追記・修正は戦友に逃げ切りで勝利を捧げてからお願いします。
- 作成乙。イクイノックスの評価がG1を勝った強い馬から一気に怪物へと変わったレースだよね。 -- 名無しさん (2025-03-23 00:31:26)
- 「HERE'S THE TITAN OF THE WORLD'S TURF!」って現地実況も有名だよね。それくらい衝撃だったとともに、やっぱキタサンの仔だって実感させられた -- 名無しさん (2025-03-23 10:40:29)
- このレースで当時の世界一のレーティング手に入れたってのもあるが、比較対象が歴代の名馬達に変わった転機のレースでもある -- 名無しさん (2025-03-23 13:56:40)
- レース途中で画面が乱れた際、『イクイノックスの覇気により時空が歪みました』って言われてるの草 -- 名無しさん (2025-03-24 08:11:33)
最終更新:2025年03月25日 19:34