JR西日本207系電車

登録日:2025/04/25 Fri 13:20:08
更新日:2025/05/20 Tue 17:19:47
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JR西日本207系電車は、1991年に登場したJR西日本の通勤型電車である。

207系という形式は国鉄最末期に常磐緩行線向けとして900番台が導入されたが、本形式とは一切関係がない。


概要

当時建設が行われていた片福連絡線(現:JR東西線)および直通する各線(学研都市線JR宝塚線JR京都線JR神戸線)への対応及び老朽化した103系の置き換え用に導入された。

大和路線・京阪神快速電車に導入されていた近郊型電車の221系をベースに開発され、本形式も221系の設計思想が一部引き継がれている。

現在の運用はJR東西線および上述の直通線区と和田岬線だが、かつてはおおさか東線、大和路線、湖西線でも使用されていた。

車両解説

本項では落成当時の仕様について解説する。
通勤形のため従来と同じ20m4扉車だが、車内の快適性を向上させるため近郊型ばりの拡幅車体を採用したのが最大の特徴である。
車体はステンレス製で、落成当初は青の濃淡帯を側面に配し、正面部にも濃い青帯を配していた。
先頭部は大きくカーブした形状となっており、正面中央部には非常用の貫通扉が設置されている。

車内はロングシートだが、蛍光灯カバーが設置されたほか車内を広く見せるためにスタンションポールを省略した。
側面窓は車端部を除き固定式を採用し、妻面は開閉式の大型窓を導入した。この関係から連結部の貫通路は車体中心部からオフセットされて設置されているという珍しい構造となっている。
寒冷地での使用を考慮し、当時の通勤形では珍しかった半自動ドアスイッチも設置された。
これら内装の全体的な仕上がりは同時期の関西私鉄にも引けを取らないものとなっている。

制御方式はJR西日本の車両では初となるVVVFインバーターを採用し、駆動装置はこちらも国鉄・JR車両では初となるWN駆動が採用され、以降のJR西日本の電車では標準となった。

パンタグラフはJR東西線の剛体架線対策としてクモハ207・モハ207に2基設置されており、クモハは落成当初1基で運用されていたこともあったが、東西線開業前に全車が2基搭載となった。
なお、2基起動は東西線内のみで、それ以外の路線では1基のみを使用する。

番台別解説

  • 量産先行車
1991年1月に導入され、同年4月30日より営業運転を開始したプロトタイプ車で、本形式では唯一の7両固定編成だった。
番台区分には0番台だが、試作的要素が強いため「先行車」あるいは編成番号から「F1」と呼ばれることが多かった。
落成当初は乗降扉の窓ガラスの中央部分が黒く塗られ、遠目から見ると一枚窓のように見えるというデザインだったのが特徴。
マスコンはハンドルの形状も独特で計器類はタッチパネル式だった。
7両固定編成を組んでいたため、量産化改造後はもっぱらJR京都・神戸線で使用されており、学研都市線・JR東西線には全区間7両化された2010年以降入線するようになった。
2022年4月6日に廃車。

  • 0番台
1991年から1993年に増備されたグループで、落成当初から4+3両での7両編成となっている。
当初は学研都市線、1993年からJR宝塚線への導入が開始された。
主電動機出力は155kW。PTr-VVVF制御と電機子チョッパ制御を併用したタイプで製造された。
1996年のJR東西線開業に際し、同線内での出力対応と冗長性確保を目的に組成変更を実施。
後述する1000番台から中間車モハ207を組み込んだ編成も登場した。
1995年に降雪によるブレーキの不具合が確認されたため、耐寒・耐雪対応工事が行われた。
なお、0番台の2次車では片持ち式座席が採用されている。
このグループは落成当初、種別幕のデザインが現行のものと異なっていた。

なお、2005年4月に発生した福知山線脱線事故で大破したのは本番台のZ16編成で、現在は社員研修センターに部品が保存されている。

  • 1000番台
1994年から1997年に増備されたグループ。
JR京都・神戸線の103系置き換え用として大量増備が行われた。
VVVFはGTO素子を採用し、このメカは223系・281系にも採用された。
本区分番台から電動車のユニット方式が廃止され、クモハが登場している。
1次車は当初6+2両の編成を組み、閑散時は6両、ラッシュ時は8両で運行されていた。
2次車は0番台と同じ4+3両の編成で登場し、1996年から導入された3次車・4次車には前述した0番台組み換え用のモハ207形も増備され、最終的には207系は先行車を除き4+3両に統一された。

前述の事故では広報に本番台のS18編成が連結されており、事故の証拠として今後の裁判に使用される可能性があること、また事故を風化させない目的から除籍後、吹田市にある鉄道安全考動館に編成ごと保存されている。

  • 2000番台
2002年から学研都市線の輸送改善と103系置き換えのために増備されたグループ。
VVVFはIGBT素子を採用。2003年に増備された2次車ではEB装置が搭載された。
運転台の計器類もそれまでのLED点灯によるデジタル式から、アナログ式のものに変更されている。
内装ではバリアフリー対策が強化され、ドアチャイムと車いすスペースの設置がなされ、窓ガラスもUVカット式となった。
また、車体間転落防止幌の設置も行われた。
これらの新規設備は既存編成も追って改造が実施されている。

改造

  • 帯色の変更
2005年11月から車体塗装を321系と合わせたオレンジと紺帯、戸袋部に新たに紺色を配したものへ変更され、同時に座席モケットもそれまでのすみれ色から濃い緑色へと変更された。
この理由として、2005年4月に発生した福知山線脱線事故の被害者が本形式のトラウマを思い起こさせるとの理由が一部で報じられたが、JR西日本から公式な発表はない。
なお、この塗装はJR京都・神戸線で使用されていた205系のうち2011年春のダイヤ改正で再転入した編成に採用されていた。

  • 体質改善工事
2014年から実施。対象は2025年現在0番台・1000番台となっている。
外観は321系に合わせられ運転士側の窓を縮小、7両編成で先頭に立つ車両はヘッドライト・テールライト類がHID→LED式となり、フォグランプが追加された。また、車体の補強も実施されている。
LED行先方向幕はフルカラー化され、後年種別幕もLED化された。
内装は照明の蛍光灯カバー撤去&LED化が実施され、7人掛けの座席は6人掛けとなり、仕切り部と端部にはスタンションポールが設置された。
制御方式はIGBT-VVVF化され、車両異常挙動検知装置も設置された。
なお、工事メニューは一斉に実施されるわけではなく、時期によって内容が微妙に異なっている。

  • 和田岬線専用車
2023年に4両編成のT3・T18編成の先頭車を外し、6両編成に組み替えX1編成を名乗ることとなった。これは前任の103系R1編成が老朽化を誤魔化せなくなってきたため引退することになったのと、もともとこの103系が検査等でいなくなった際に207系の予備編成から3両を2つ引っこ抜いてつなげた6両編成を代走させていたため。
外された先頭車は2両化されY1編成に改番されたが、現在は休車となっている。
なお、和田岬線にはX1編成のほか、引き続き3両×2の6両編成を代走させる運用を行うことがある。

余談

  • 学研都市線の松井山手以東が4両まで対応だった時期には木津発着の列車に増解結運用があった。また1000番台投入直後には当時のJR京都・神戸線の各駅停車がラッシュ時は8両・非ラッシュ時は6両だったため、6両の基本編成と2両の増結編成が基本構成とされていた。ただし本当に初期のみ同じくホームの長さが対応していなかったため、6両側のサハを抜いた5+2の7両編成で運用されていた。
    現在は4+3の非貫通7両編成を構成しているが*1、これらの運用が解消されて7両に統一されてから登場した321系と違い(そのためこちらは逆に分割可能な編成が存在せず、すべてが貫通の7両編成)、デビュー当時には増解結をひんぱんに行っていた名残と言える。



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最終更新:2025年05月20日 17:19

*1 0番台のみ貫通7連の編成が先行量産車の1編成のみ存在したが、現在はすでに消滅済