登録日:2011/05/04(水) 19:57:36
更新日:2025/03/09 Sun 18:49:06
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EML(
Electron Magnetic Launcher)とは電磁加速砲、つまり電気や磁力で弾を飛ばす砲のこと。
SFモノのアニメや映画や
ゲームに登場することの多い兵器だが、現実でも実用化への研究が進められている。
概要
上記の通り、「電気や磁力で実弾を飛ばす砲」。
人によっては
とある科学の超電磁砲のイメージに引っ張られて勘違いされがちだが、弾丸に金属等でできた実弾を用いているもののみを指す。
すなわち、レーザーやビームを発射する光線兵器や、電気エネルギーの塊をぶっ放すようなのはEMLに
含まない。
また電磁力で弾丸を発射するので、通常の銃と違って『火薬』を用いない。
火薬を使った場合、理論上の弾の最大速度は「燃焼ガスの膨張速度」となるが、EMLならそれをはるかに超える速度を実現できる。
『
レールガン』を例に出すと、火薬を使った場合の弾丸の速度は秒速2kmに対し、現在の技術では約五倍もの
秒速10km
ちなみにこれはあくまで現在の技術力の限界で、理論上では
亜光速までの加速が可能である。
EMLに使用される弾丸は、プラスチックなどの小さく、軽く、丈夫なものほど適している。
このあたりは火薬を使った銃とは違った方向性かも。
また、火薬銃ほどには弾丸……すなわち飛ばす物体への負担をかけない為、武器としての銃のみならず、物資を遠くに飛ばす発射台(いわゆるマスドライバー)としての用途もある。
EMLに属する銃あれこれ
【レールガン】 railgun
言わずと知れた「EMLの花形」。
そなえられた二本の長い電極にそれぞれ+、ーの電気を流し、その電極の間に電気を通す金属製の弾丸を配置すると磁界が形成される。すると弾丸に移動しようとする力がはたらくので、この力で弾丸を飛ばす……そういう装置である。
まあ要するに、学校で習った「フレミング左手の法則」を応用した銃である。
構造上エネルギーの消費効率が良く、火薬銃と違って理論上亜光速まで弾のスピードを上げられるのがメリット。
一方で発射後にものすごい高熱を放つため、砲身を頑丈に作らないといけない&連射ができないのがデメリット。
また、電力もかなりの量が必要になる。
上記の理由から小型化が難しく、作ろうとなるとどうしてもバカデカい給電設備と長くて頑丈砲身が必要になる。実際、考案されたのは1900年代と古いものの、当初は発電所をまるまる2基必要とする事からしばらく実用化されなかったくらいである。
近年では自衛隊が実現へ向けて力を注いでおり、2023年には世界で初めて
射撃試験に成功した。
兵器としての用途もあるが、実験用の加速器だとか、宇宙にモノを飛ばすマスドライバーだとか、研究・宇宙開発目的の用途も多い。
【コイルガン】 Coilgun
通電したコイルで磁力を発生→弾丸を加速→発射
という仕組み。
上のレールガンは電流と磁界の作用による「電磁力」で弾を加速したのに対し、こちらは磁石とかでお馴染み「磁力」を利用した銃。電流による磁場を利用している点だけは共通しているが、構造は全くことなる。
仕組みとしては、銃身内に巻いた導線=コイルを配置し、通電することによって電磁石となったコイルが弾丸を引き寄せ加速。
通過の瞬間に電磁石をオフにすることで引き留めてしまうのを防ぎ、そのまま発射する。
磁力のみを利用する性質上発射時に音をほとんど出さず、弾丸が浮いたまま加速することで発射に際し大きな熱を伴わないため
レールガンなどと比べて射撃による砲身の傷みが格段に少ない。
一方で、電気抵抗などの関係から出せる弾速には限度があり、磁力で加速するために弾を鉄などの磁性体で作る制約が加わる。また、上に書いた通り「大電流を瞬間的に流す」があるため電流を遮断もしくは消費し尽くすタイミングを精確に計算しなければ上手く飛ばず、コイルそのものが壊れやすいのも難点。そのためここで挙げるEMLの中で最も構造が複雑かつ繊細なので作るのが難しい。
「作るのが難しい」と書いたがそんなコイルガンを本当に作ってしまう猛者はいる。某笑顔動画にもけっこう上がってるので、EMLとしては比較的メジャーな部類。
というか、レールガンと違って小型化しやすい関係上、ホームセンターで買える部品を用いて家で作ることができてしまうのである。簡単ですとは言えないが。
現代では自作すると警察のお世話になるので、画面越しに見るだけで留めておこう。銃刀法違反、ダメ絶対
一つのコイルを用いた(シングルコイル)音速突破は難しいものの、コイルの数を増やしたマルチコイル方式にすれば格段に威力が増す。
これは他のEMLには取れない方式のため、複雑な計算過程さえクリアすれば威力の簡易な増強を望めるという点で、コイルガンの利点に成りうる。
ちなみに、かつては銃刀法の対象外であったが現在は銃器として認められており、所持が禁止されている。
【サーマルガン】 Thermalgun
磁力を用いず、電熱や電熱化学反応によって弾丸を発射する銃器。
ところで、普通の火薬銃器の仕組みはご存知だろうか。あれらは、弾丸の後ろなどに仕込まれた火薬に着火して爆発させ、その爆風で弾丸を飛ばす仕組みになっている。
で、サーマルガンというのは、その『火薬』を『プラズマ』というもので代用した銃なのである。
代表的なのは、
バレル内で金属線などをプラズマ化→体積が膨張→圧力で弾丸を加速→射出
というもの。
簡単な話、火薬の燃焼ガスをプラズマ膨張に置き換えただけというもの。理論上の最大速度は「プラズマの膨張速度」となる。
EMLの中では制作が簡単で、手の平サイズの砲身でもスチール缶程度なら破裂する威力。
ただし、パワーだけを求めるならば
レールガンなどに乗り換えた方が効率的である。
将来戦車などに搭載する予定で各国の軍・企業が研究を続けていることでも知られている。
【ディスクランチャー】 Disclauncher
渦巻き状態のコイルの上に円盤状の物体を載せ、コイルに通電させて発射する。
命中精度は悪いものの、加工次第では兵器に成りうる。
早い話が、未来手裏剣。
威力は破壊力が高い順に、
レールガン>サーマルガン>コイルガン>ディスクランチャー
となる。
何としてでも対象を破壊したいならレールガン、手軽に威力を出したいならサーマルガン、音を消してこっそりやりたいならコイルガンを使うとよい。
ディスクランチャー?えーと…一人フリスビーなんかどう?
EMLと間違われやすいモノ
列車砲
「レール」の乗った「ガン」ということでたまに間違われるのだが、
まったくの別物。
列車に載せて使う大砲、あるいは、薬室をたくさん並べた特殊な大砲「ムカデ砲」のことをこう呼ぶ。
解説は
大砲の項目で。
□主な使用キャラクター
自由自在に電気を操る能力を持つ女子中学生。スロット用のコインを弾丸に電磁加速して放つ。
一応「レールガン」と言っているが、詳しい原理は語っていないため本当にレールガンなのかは不明。
「オリハルコン」と呼ばれる金属で出来た拳銃を自らの生体電流を利用して「レールガン」として使用する。
オリハルコンの特性で威力を強化しているだけで銃の構造自体は普通の炸薬式なのでEMLというかは微妙。
作中における重要な存在、人間の意識を搭乗させる戦闘用アンドロイド『刀』。
その中で八千代芹の駆る「鶴丸」、五形の駆る「童子切」の銘を持つ二体は最終兵装と呼ばれる武装にEMLを用いており、
この前者は「弾丸のように射出する"腕"」、後者は「爆発的な加速を生み出す"脚"」としてEMLの射ち出す力を利用している。
ゲーム二作目以降、実体弾装備の上位品として「ガウスガン」「ガウスライフル」が登場。
射程・威力ともに優れた長距離兵器で、特に狙撃に向いている。『2』『4』の者は特殊な専用弾薬を使用する。口径はわずか2mm。
『3』『MV』に登場した物は弾薬としてエネルギー銃用の電池を使用するが、これは電流を通す際に使用しているだけで、弾薬自体は銃身の右側のカートリッジに収まっているようである。
作中世界では常温超電導物質「サクラダイト」が産出されており、それを利用した電磁力の応用が現実より進んでいる。
このためコイルガンが一般的な小火器として普及している。作中で登場する拳銃は基本的にコイルガンである。
電子を自在に操る雷撃能力『蒼き雷霆』を持つ第七波動能力者。
「電磁加速銃」というレールガンから「避雷針」と呼ばれる針のような特殊弾を敵に撃ち込みロックオン、自らの雷撃を避雷針へ誘導して攻撃する。
追記・修正は、第一宇宙速度を突破してからお願いします。
- こんなかで、一番影が薄いサーマルガン… -- 名無しさん (2014-03-12 18:14:56)
- 項目に合成人間ガン無視でトレインが載ってるあたりが草不可避 -- 名無しさん (2014-09-14 23:28:17)
- 使い捨てカメラのコンデンサでコイルガン作ってる人いたな -- 名無しさん (2016-09-06 18:50:18)
- 引っかかるのは銃刀法じゃなくて軽犯罪法だし、それも持ち運んだ時のみのはずです。 -- 名無しさん (2023-02-27 15:46:52)
最終更新:2025年03月09日 18:49