レールガン

登録日:2011/06/08(水) 10:43:03
更新日:2021/06/25 Fri 21:19:25
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レールガン[電磁投射砲]とは


火薬ではなく電磁力で弾体を加速・発射する大砲。
EMLの一種であり、日本語では「電磁投射砲」と呼ばれる。大事なことなので二度言うが、

『電磁投射砲』である


原理


基本原理は1900年頃から既に分かっていた。


    ←発射先
━━━━━━━┳━←━┓+の電極
  《┏━━━┫≡  ↑
 《《┃ 弾 ↓≡  □←電源
  《┗━━━┫≡  ↑
━━━━━━━┻━→━┛-の電極

その根本理論は高校物理で習う、『フレミングの左手の法則』であり、電磁力で物体を加速する装置。
二本並べた電極(レール)の間に弾(導体)を挟み、そこに電流が流れると磁界が生じ、弾を流れる電流の磁界とレールを流れる電流の磁界が反発力を産み、弾が加速する。
導体と弾*1を分ける場合もある…というか、多くはそうする。

こう書くと複雑そうに見えるが、例えば銅の丸棒を3本用意し、二本を平行に並べ、

┃┃

その上にもう一本を置いて橋をかけ「H」型にする。

H

この最初に置いた左右の二本の間に十分な電流を流すと、真ん中に置いた一本が前後どちらかに転がっていく(方向は電流の向きで決まる)。
実際にやると火事やら感電やら色々危ないので注意が必要だが、銅の棒3本と電源で構成された装置で成立する至極シンプルな原理が元となっている。

理論上、弾はレールと電力が続く限りどこまでも(相対性理論により亜光速まで)加速可能。
そのため火薬の爆発力を用いる従来の砲よりも高速で弾丸を撃ち出せることになる。
更に火薬や燃料の場合に比べて問題になる薬莢やら文字通り爆発することによる爆発的廃熱などの問題*2を抑えることも望める。
弾そのものの小型化やら軽量化なども図れるだろう…などと銃身が長くなりがちな短所さえ除けば何だか至れり尽くせりに見える。

また、火薬(爆発)による推力と違って工夫せずとも弾の回転や速度を安定させることが出来るので施条(ライフリング)も不要。
(※ただし、発射後のことを考えると弾の形状は工夫する必要がある)



歴史

もちろん、そんな美味しい話を各国が放っておくはずもなく特にWW2の際、ドイツ・日本で研究されていた。
…しかし対空砲一個につき、発電所が二個必要との結果が出て挫折。
ついでに摩擦や電流を流した時の熱(ジュール熱)などで超音速発射すら出来なかったとの説すら…。

要は大量の電気を喰うので、最近になってようやく実用化の目処が立ち始めた。
実用化には小型かつ高出力電源装置が必須なので、本体と電源両方の開発が必要。
現在だと特に電源の開発が難航している模様で、まだまだ効率が良いものとは言い難いだろう。

他にも


弾が高速になると磁場が弾に追いつかなくなって…
表皮効果で抵抗値が爆上がりして…
レールが摩擦と熱で磨り減って…
大電流で熱が…

等々、フィクションに追い付くには山ほどの困難が立ち塞がっている。
熱問題に関しては通常の銃においても今でも完全に解決しているとは言えない部分であり、仮に初発が良くても連射性はどうなのか?という辺りも問題と言えるだろう。


アメリカ海軍は既に船に載っけて発射実験成功させており、AGSの後継として2020年には実用化させたいらしい。噂ではマッハ7で砲弾を発射できるとかなんとか。

その実験内容はYouTubeにあるので是非。

兵器化はできていないが、衝突実験用の装置としてなら実用化の例はある。

また兵器・装置として実用的なものを作るのが難しいというだけで原理自体は旧いものであるため、性能や実用性を無視すれば個人携行サイズで動作するものを、個人宅で作ることも可能である。
こちらも動画サイト等で実際に作ってみた人達の作品を拝むことができる。



用途


平和利用

宇宙開発では実用化されており、人工衛星等のスペースデブリ対策の実験用に、研究施設に据付けられたものが存在する。

将来的にはロケットの代わりに宇宙ステーションに物資を送る、宇宙空間に設置して宇宙船や探査機を他の星へ向けて発射するカタパルト/マスドライバーとしても期待されているとか。


兵器として

先述の通り、主に兵器としての研究が有名。
劣化ウラン弾×レールガンの組み合わせで驚異的な威力を発揮することは想像に難くないが、幸か不幸か実用化はされていない。
まあ劣化ウランは製造・運用側には結構大きな長所があるものの、使用後に問題を残すのでなるべく別の物で頑張ってくださいと言わざるを得ない。
威力が高まれば高まる程飛散が激しくなるので尚更やばい。

SDI(スターウォーズ構想…運動エネルギーによる弾道ミサイル迎撃システムとして)
戦車砲
艦砲
高射砲
対隕石砲
最終的には携行火器にも?

などなど。

SFのせいで凄まじい威力を持つ未来の超兵器のイメージがあるが、現実の最大のメリットはミサイル等と比較して弾が安くて高威力なことにある。
磁力にさえ反応すればどんなものでも飛ばせるので、早い話、銃弾は砲身に収まるサイズの鉄のカタマリでOK。
炸薬を用いない運動エネルギー弾(鉄芯)などの加速にも応用できる。
夢のない話である。やはり兵器などフィクションの中だけで十分だ…



混同されがちなもの

  • ごく稀に列車砲とも間違われるが、列車砲は「Railway Gun」となる。この項目に詳しくあるが、あっちは字義通り列車に大砲を乗っけたもの。
  • 漫画やアニメ的表現からレーザーやビームと誤解されることもあるが、弾はあくまでも実弾である。途中でビームになったりもしない*3


ガウス砲

コイルガンとも呼ばれる。詳しくはEMLの項目で。

ガウス砲のレールガンとの違い
  • 弾に電気が流れない
  • 初速がゆっくりなので地球上では兵器に向いてない
  • 使用する電気が少ない
  • 家で作れる
  • 日本だと銃刀法違反にならn(※威力次第。殺傷できる威力があるものだと銃刀法にひっかかる)


リニアモーター


リニア(ここでは砲とする)のレールガンとの違い
  • 弾にも電磁石が必要
  • 砲身と弾の磁極を頻繁に切り替える
  • 弾に電磁石をいれるので兵器には不向き。



フィクションでの例

ガンと付くだけあって主に武器として採用されることが多い。
近代軍事ものでは大抵凄まじい威力だが、SFやロボットものではエネルギー弾を発射したり必殺兵器だったり豆鉄砲扱いだったりと扱いにバラつきがある。
射程が長い傾向にあるとは思われる。
たまに「レールガンなのに弱いってのはおかしいのでは?」という意見も見られるが、
レールガンはあくまでも弾を発射する方法に過ぎないので、既存の火砲と同等の性能で設計されているのなら何らおかしくはない。

一応兵器ではなく純然たる加速装置としてのカタパルトだとか加速させ続けてワープだとかの応用を見せる時も有る。


個人携行型



兵器搭載型



固定砲台



その他

多分レールガンという単語を一般人の間でも有名にした作品。そもそもレールガンかどうか怪しい事例。詳細は項目参照。
ここでは「超電磁砲(レールガン)」となっており、流行りすぎたためか一部メディアですらこっちの当て字を使ってしまった例があるほど。
片手でレールガン……?と疑問を抱かざるを得ないが、一応二本の電極を空中に擬似的に作って弾丸に接触させ続ければ可能…なのだろうか?
明らかにコイルガン(こっちは「妹達」の一人が使っている)やプラズマガンと称した方が描写に合っていると思われる。

こちらは「電磁抜刀(レールガン)」。明らかにレールガンとは言えないでしょうという事例。
詳細は項目を参照のこと。かっこよければいいんだよ!というノリだと思われる。
ファンタジーとして見るならあながち間違いとは言えない。

こちらは「電磁銃(レールガン)」。
ある事情から特異な帯電体質となり、オリハルコン製の鈍器を帯電させることで出来るようになった帯電させただけではレールガンにはなりませんよね?という事例。
しかしながらこのオリハルコンというのは凄い金属であり、そのせいでどうにか出来てしまった(他の金属では無理かもしれない)という可能性もある。
少なくともレールガンを実装する上での副次的な問題はトレインの超人っぷりとこの金属ならば問題にならない。

顎と腹部の間に磁場を発生させて攻撃エネルギーを撃ち出す「プチレールガン」を幼虫時代に使用。
25mのモスラ幼虫の何が「プチ」なのか、もはやレールガンと名前が同じだけの何か別の武器ではないのかという事例。
  • アーマードコアシリーズや『ジュブナイル』のガンゲリオンもエネルギー弾を発射する。






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最終更新:2021年06月25日 21:19

*1 「投射物」または「プロジェクタイル」とも呼ばれる

*2 火薬などは使い勝手こそ良いものの短所も多く、古くから動作不良・事故・有害性にそれらを乗り越えるための改良などの逸話は数え切れない。

*3 但し、「プラズマ化した(してしまった)弾頭を発射している」「レールガンの技術を利用したレーザー砲である」なら、実弾ではないレールガンも全く不自然ではない

*4 その名の通り、弾頭の撃発に火薬、加速に電磁力を使用したハイブリッド式。複合方式としたのは撃発にまで電磁力を使用すると砲身が負荷に耐え切れずに溶け落ちるためである