アウレオルス=イザード

登録日:2010/09/09 Thu 02:19:18
更新日:2025/05/15 Thu 00:45:56
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とある魔術の禁書目録の登場人物。
初登場は二巻。


●目次

【概要】

緑髪のオールバックに白いスーツを着た長身の男性。

パラケルススの末裔である錬金術師かつ魔術師であり「元」ローマ聖教の「隠秘記録官(カウンセラリウス)」。
魔法名は「我が名誉は世界の為に(Honos628)
口調は最初に「○然、」と付く事が多い。

禁書世界における「錬金術」とはステイルが述べて曰く「学校の『国語』『数学』『理科』『社会』みたいなもの」であるらしく、魔術サイドにおける基礎教養として扱われる。
この関係から「錬金術師」であるアウレオルス本人は前線での戦闘適正が無く、戦場に立つ際には身体中を霊装や武装で固める傾向がある。
そのため、ステイルには「骨董屋(キュリオディーラー)」と皮肉めいた名称で呼ばれていた。

彼が就いていた「隠秘記録官」とは、教会のために魔術の主な傾向とその対策を魔導書として記す役職の事である。要は魔術の教科書作成者。
教会に所属しながら、魔導書を書く事を認められた特異な存在である。
イギリス清教側が敢えて「異端の知識」を使うことで対応しているのに比べ、こちらはあくまでローマ正教側の知識内での対応になるとはいえ、限定的ながら異端に触れることを許されているいわば「特例中の特例」とでも呼ぶべき役職。

彼は記録官の中でも最速で魔導書を書く事で有名であった。不眠不休なら薄い物で約3日、分厚い物なら約1ヶ月程で書き上げると言われている。
尤も、比較対象となる平均値が明示されていないので死に設定に近いが……。

アウレオルスはもともと寡黙で、不幸な人々を救う事を心よりを願う心優しい人物であった。
「隠秘記録官」になったのも魔女の驚異から人々を救う為。

しかしローマ正教はその魔導書を全て人々に伝授せず、改宗させるための「切り札」として使用していた。
彼は正教に不満を抱くようになり、より多くの人々を救うためという目的の元、極秘にイギリス清教への接触を図り、これに成功した。

そこで魔導書の「毒」に犯され一年ごとに記憶を消される運命にあるインデックスに出会い彼女のパートナー、つまり「先生役」となる事に。

彼は彼女を救おうと、どれほど失敗しても諦めず、数え切れない程の魔導書を書き続けたが、
その途中で「自分は『魔導書を提供する』という名目でただ一人の少女に会いたかった」事に気付いた。

インデックスを救うつもりが、逆に救われていたという事実に気付いた彼は、筆を進められなくなってしまう。
「この方法では誰も救われない」と考えたアウレオルスは、ローマ正教を離反。
全世界を敵に回してでもインデックスを救う事を決意し完全に堕ちるところまで堕ちる事に。

彼はインデックスを救う為に、三沢塾に監禁されている「吸血殺し(ディープブラッド)」の姫神秋沙に目を付け三沢塾を占拠。
「吸血殺し」の能力で吸血鬼を呼び出し、「どれだけ多くの記憶を取り入れても、決して自我を見失わん『術』」を会得し、
最悪インデックスを吸血鬼にしてでも救おうとする。

しかし全ての準備を終えたところで、インデックスが現在のパートナーである上条当麻により既に救われている事実を知る。
彼女を救う方法を探すために人里を離れていたせいで、彼にはその情報が届いていなかったのだ……

「既に救われている者を救う事など出来ない」

その苦労が全て徒労に終わり、自分を支えていた物が全て破壊された事でアウレオルスは発狂気味になる。
そして彼は、「黄金錬成(アルス=マグナ)」という魔術を用いて、半ば逆上に近い形で上条とステイルに襲いかかる。


黄金錬成(アルス=マグナ)

「黄金錬成」とはこの世界の全て物質を呪文として唱える事で発動する錬金術の到達地点とされる魔術であり、
この世界の全てをシミュレーションする事で神や悪魔を含めた世界の全てを自分の思った通りに使役し、歪めるという効果を持つ。
つまり何でも思った通りになるというチート中のチートのような魔術である。
こんな魔術がわずか二巻で登場したのだから驚きである*1

本来はその呪文の詠唱完了に数百年単位を要するため、事実上発動は不可能とされていたが、
アウレオルスは三沢塾の2000人もの生徒を『偽・聖歌隊(グレゴリオ・レプリカ)』により操り一斉に平唱させる事で効率を上げ、
僅か半日での発動を成功させている。

この魔術を使って姫神を「死ね」の一言で殺したり、ステイルさんを人体模型同然の姿にしたり等やりたい放題に暴れ回ったりしていた。
しかしこの魔術には欠点あり、本当に何でも思った通りにするため自分が不安に思った事等のマイナス要素までそのまま実現してしまう
つまり、アウレオルスが「コイツには勝てない」と少しでも思った時点で自滅が確定する
そしてアウレオルス自身もそれを重々理解してしまっているので、一度何らかの不安が生じると回り過ぎる頭が祟って「頭の中の不安を打ち消そうと考える」→「自分が不安を覚えてしまっていることを自覚する」→「頭の中の不安を打ち消そうと(ry
という負の無限ループであっさり自滅してしまう。
こう見るとメンタルがヘタレというよりも、メンタルを加速度的に悪化させるような術式を使ってしまっているという色が強い。というか事実全世界を敵に回せる胆力があるし。

アウレオルスはこの欠点を克服する為、世界を歪める際に鍼治療の要領でツボを刺激し不安を消し、
更に歪める内容を声に出して復唱する事で意思を固めている。

だがそれでも心の奥底のどこかで少しでも「無理だ」と思っている事は実行出来ない。
初見の相手に対しても、能力の原理解明ができていないとそれを即時無力化する「確信」が持てないので、間接的な死因誘発や敵能力の基点を外したピンポイント攻撃などでしか対応が効かない。

幻想殺し」を持つ上条を「死ね」の一言で殺せなかったのも、
インデックスを「黄金錬成」で直接救わなかったのもその為である。
そもそも異能の力であるため上条の「幻想殺し」の対象となってしまう(右手の干渉がない記憶操作くらいならば頭に触れられなければ問題ないが)。

何より作中でもステイルに何度か指摘されているが、アウレオルスの戦術面で最大の問題点は運用上の欠点が明確な術式を無調整そのままに使っていることにある。
旧約11巻のオルソラアニェーゼの対比あたりがわかりやすいが、思考という不安定なトリガーのまま手間のかかる術式を行使するよりも、手っ取り早く最低限の手順で発動し、かつ意図せぬ暴発のない安定した術式で戦う方が圧倒的にリスクが少ないのである。
「実戦向きではない」「ヤツは理系ではなく文系」というステイルの評がまさしく的確といえる。
イタリア語で喋っていれば普通に完封勝ちできたんじゃね?というのは禁句。日本で発動するなら日本語で唱えないといけなかったのかもしれない

結局はその欠点を上条とステイルに見抜かれ、
上条の右腕をぶった切られながらの壮絶なハッタリ(とステイルの援護)にビビりまくり、鍼治療の鍼を自ら踏み砕いたうえに自滅。
記憶を全て失いステイルの計らいで顔も変えられ全くの別人として野に放たれた。

ちなみにこの時上条の右腕があった場所から「竜王の顎(ドラゴンストライク)」という謎の物体が出現したが詳細は未だ不明。
二巻時点では彼の妄想による黄金錬成の産物と考えられていたが、後の話で否定された。

その哀れな負け方から、ファンの間ではヘタレキャラが定着し『ヘタレ錬金術師』通称『ヘタ錬』とか呼ばれたりしている。
作者によれば彼のコンセプトは『失敗した上条当麻』らしい。
実際全世界を敵に回し、そしてインデックスに心をへし折られるあたりは新約10巻の上条さんと極めて酷似している。

もし上条が一巻の終わりで失敗していたらこうなっていたであろう、というコンセプトで作られており言わば存在そのものが『バッドエンド』。
歪みこそしたが、インデックスを思う気持ちは本当だっただけに非常に哀れな人物である……

ちなみに後の新約禁書でオティヌスから、遠回しだが事実上の「インデックスと出会わなければ幸せだった」ことにされていた。
上条さんの心を折るためだけの世界とは言え、やはり哀れ……

アウレオウルス挫折道
  • 魔道書を十冊、二十冊書いてもインデックスが救えない現状に、自分の力に絶望する。
  • 自分の目標の魔法名を捻じ曲げて、吸血鬼を探すために地位と名誉を捨てて3年の間世界中を放浪する。
  • 何とか吸血殺しを見つけるも、科学サイドや魔術サイドから追われる中で三沢塾に篭城。(表情が作れないぐらい精神的に余裕が無くなる)
  • ステイルと上条から自分のこれまでの全てが無駄な行為だったと知らされる。(依然、科学サイドと魔術サイドから狙われている)
  • チートのはずの黄金練成を打ち消す幻想殺しを見る。
  • 幻想殺しを切り落として無力化したはずの状態から、絶対に当たると確信した攻撃が二発も外れる。
  • 精神安定の鍼を落とす。あまつさえ自分の足で踏み砕いてしまう。

……もうゴールしても良いよね。


【アウレオルス=ダミー】

上条がアウレオルスと戦う前に、彼の偽物であるアウレオルス=ダミーが現れた。
彼はアウレオルスに番人として作られた魔導人形であり、ステイルによれば「ケルト十字を基礎に作られたテレズマの塊」らしい。
また、アウレオルスと全く同じ人格を持っているため、当人も自分を本物のアウレオルスだと思っている。
ただし現在のアウレオルスの行動原理の根幹を成すインデックスに関する記憶がないため、「錬金術師アウレオルス=イザード」としての側面だけが表に強く出ており、言動は高慢かつ狭量。
それでも探求心旺盛な学者としての一面は備わっており、自分の魔術を無効化した幻想殺しを見た際は驚きこそしたものの「なんだそれは!? 面白い研究させろ!(要約)」と大喜びであった。

こちらは「瞬間錬金(リメン=マグナ)」という金の鏃を超速で繰り出し、
その鏃に触れた物全てを灼熱の黄金に変え、更にその黄金を操るというかなり強力な魔術を扱う。
人体も当然変換の対象なので、事実上鏃がちょっと体の一部に掠るだけで即死
鏃のついた鎖は射程10m、射出と巻き戻しを秒間6~10回程行えると制圧力も高い。術者の精神状態が揺らいでいても6回の射出・巻き戻しが可能であり、本体の使っている黄金錬成と異なりメンタル面の影響は比較的軽微。
しかし攻撃軌道が常に直線一本なので射出速度の割に見切られやすく、照準もダミー自身の目測に依存するため目くらましの類に弱い。
また、敵の位置次第では変換した黄金を自分が浴びて焼死するリスクも抱える上、先端の鏃以外には変換能力がないため、鎖側を捕まえられると攻撃手段そのものを完全に喪失するという弱点もある。

原理としては旧約1巻でインデックスが言及していた「純金の変換」によるものであり、本来なら7兆円のコストだの数年間の下準備だのという到底不釣り合いな労力を支払って、わずかな卑金属を黄金に変換する程度の魔術である。
それをここまで簡略・高速化していると考えると一応すごいことをやっているように見えなくもないのだが、ステイルによれば、
錬金術師の本分は未知の解明であり、既存の魔術をそのまま使うことに意味はない(要約)」
人間を溶かす結果だけが欲しいなら硫酸でも使えばいい。わざわざこの魔術を使ってまでやることではない(要約)」
と酷評を喰らっている。
これを現代風に例えれば「学者が論文にWikipediaの記述をそれっぽく要約しただけの文章を提出してきた」ようなもんであり、攻撃手段の魔術としてはともかく「錬金術」という学術分野においては失格以外の何物でもない。

そんな本質的な矛盾を抱えたままで色良い戦果を出せる訳もなく、最終的にはステイルに「自分は本物のアウレオルス=イザードじゃない」という事実を突き付けられヘタレ化し、
蜃気楼による奇襲で大ダメージを負い、更に上条さんにぶん殴られる。

挙句の果てには、姫神に「気付かなければ。アウレオルス=イザードでいられたのに」と言われ、
再びステイルに燃やされ、オリジナルのアウレオルスに「砕けろ」と言われて死滅した。

ある意味オリジナル以上に可愛そうな人(形)であった。アニメでは存在を抹消されたし……

本編での扱いは散々だったアウレオルスだが、「とある魔術のインデックちゅ」にてまさかの登場。三沢塾にではなく上条のいる高校に潜伏していた。
ちなみに顔や記憶は失っていない。



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最終更新:2025年05月15日 00:45

*1 この魔術と四巻の御使堕し関連の存在から、「とあるシリーズはインフレが激しい」という意見に対して「いや、四巻まででインフレ終わってるし」というネタがあるほど。実際、新約で本格登場した魔神や悪魔に関しても一巻ですでに明言されているレベルのため、インフレが序盤で終わっているという意見自体はそこまでおかしいわけでもないが……。もっとも代わりに登場人物全体のレベルがその最強クラスに合わせるようにインフレしているのは事実ではある。