コムギ(HUNTER×HUNTER)

登録日:2012/02/04 Sat 23:17:24
更新日:2025/03/01 Sat 20:51:03
所要時間:約 7 分で読めます





メルエム様

ワダす…今…とっても幸せです

不束者ですが お供させてください


週刊少年ジャンプで絶賛連載中の漫画『HUNTER×HUNTER』に登場するキャラクター。


概要

出身地である東ゴルトー発祥の盤上遊戯『軍儀(グンギ)』の世界チャンピオンに君臨する盲目*1の少女。
チャンピオンとしては3代目であり、現在5連覇中。
尚、発祥地である東ゴルトーの代表選手は過去15年から続く世界大会において一度も敗北したことが無く、現役における絶対の最強選手である。

ボサボサ頭に太眉毛、常に鼻水が垂れている*2というお世辞にも美少女とはいえない容姿で訛りのあるしゃべり方をする。
学は無いが、軍儀に関してのみ類まれなる頭脳と記憶力・集中力を発揮する*3

そしてキメラアント編において、誰も予想も出来なかった完全なる異分子(イレギュラー)であり
王や護衛軍はおろか、ゴン達も彼女に振り回されてしまったと言える。

※以下ネタバレ含む




キメラアントの王が選別まで暇をつぶすために招かれた。
他にも将棋チェス、囲碁などのプロも招かれていたが、王は数えるほどの敗北で急速に学習し直ぐに実力を圧倒。次々と打ち負かしていってしまう。

しかし、東ゴルドー発祥のゲーム「軍儀」だけはそうは行かなかった。
当代チャンピオンとして招かれたコムギの実力は全くの底なしであり、何局打っても一向に勝ち筋が見えてこない。
軍儀に至るまでの他ゲームの対戦の中、王は既に「相手の癖を読み取り、敵の嫌がる手を狙い続ける」というある種の本質的な嗅覚までものにしていたが、コムギ相手には嫌がる手以前に癖を見つけることすら出来なかったのである。

停滞した状況に王は2つのオリジナル戦法を編み出し、「互いの選択肢を大幅に増やして強引に癖を引き出す」という作戦で勝利を掴もうとするが、つかの間の動揺を引き出しただけでこちらも失敗。
この王が考案した互いの選択肢を増やす独特の展開は、彼女が10年程前に既に編み出しており、「互いの実力が試される」ということで大流行までしているのだが、その一年後に考案者である彼女自身が完全な攻略法を見つけ出して一切の価値が完全に消滅した「負け確」の戦法であった。

それを知っていたにもかかわらず動揺を見せたコムギに王は憤慨する。
軍儀史にまったく新しい爪跡を残し、自らその爪跡を消し去った過去をもつ彼女の目の前で、事情を知らない王が自身と全く同じ戦法を編み出した驚きと歓喜(死んだ我が子が蘇ったようだと表現する程)。
そしてその奇跡的な偶然を即白紙へ戻すことへの葛藤が迷いを生んだと語るコムギに王は閉口するしかなく、同時にコムギは「王を憤慨させても殺害されなかった初めての人間」となる。

過去彼女が「孤孤狸固(ココリコ)」として生み出し、今対局で王が「離隠(ハナレガクシ)」として復活させた盤面。
そしてそこからつながる「中中将(ナカチュウジョウ)」の流れは2人の物語において再び重要な役目を果たす事になる。


幾度目かの勝負時、王はコムギの呼吸(癖)を引き出すべく、1つの賭けを提案する。

次の対局で勝てば望む褒美を与えるが、負けた場合は左腕を貰う
欲と恐怖の2方向から精神的な揺さぶりをかけるのが狙いである。

しかし絶対者から提案された不条理極まりない条件に対し彼女の反応はあまりにも薄くズレており、それどころか敗北時の対象を左腕から「自身がいつも賭けているもの」への変更を要求するという動揺の無さを見せ付ける。
予想外の反応に若干の困惑を見せる王が聞き返したコムギの提示する条件…
即ち「いつも賭けているもの」とは他でもない「コムギ自身の命」であった。

盲目の枷を負って貧困層に生まれた彼女が稼ぎ頭として家族を養っていけるのは「軍儀選手としての地位があるから」だが…
国内のプロ収入は極めて少なく、世界王者になって初めて多額の報奨金を得られる都合上「不敗」が前提にして絶対の条件であり、軍儀の敗北はそのまま彼女が家族最大の負債になることを意味している。
盲目の身には軍儀以外の選択肢が存在せず、軍儀こそが自身の存在価値そのものであるが故、プロを目指したそのときから「負けたら死ぬ」と既に誓っていたのである。

「負けたらゴミになる自分の命を総帥様(王)に渡すのは大変な失礼なのでは?」などと見当違いのところで悩むコムギは勝利時の褒美の希望も特に無く、王の目論見は完全に崩れ去った。
最初から命を天秤にかけていた相手に対して、覚悟の足りなさ(コムギが「王の死」を望んだ場合を一切考えていなかった)を恥じた王は賭けを取り下げ、その詫びに自らの左手を引き千切る。

中断を宣言する側近(プフ)を殴り飛ばし、その場で処刑してでも対局を続けようとする王であるが、コムギは治るまで打たないと対局を拒否。
仕方なく王は治療を受けながらの対局で手を打ち、この負傷が本編でも大きな影響を及ぼすことになる。
また、この一件は王の内面に大きく影響を与え、「一切の休憩は無し」と発言した自身の言葉を覆してでも休憩を提案するなどの変化が少しずつ露になってくる。





ある日、いつものように軍儀を終え、自室に戻ろうとするコムギを王が呼び止めた。
彼女は名前を尋ねられた。
コムギが自分の名前を告げ、逆に王の名前を問うて来た。

しかし、ここで王は気づいてしまった。

『自分の名前を知らない…。』

『自分の名前は何という?』

それに気づいた王は自分を見失い始め、

『自分は何のために生まれてきたのか?』
と疑問を抱くようになる(この疑問は、後々まで尾を引くことになる)。


日が変わり選別の直前、宮殿内にあるコムギの部屋にカラスが侵入し、彼女を激しくつつきまわる。
しかし、目の見えない彼女には避けることができず、早朝なので迷惑をかけてはいけないとじっと堪えていた。

そこに王がやってきて、カラスを駆除する。
実はこのとき王はコムギを用済み*4と思い、殺そうとしていたのだが、襲われている彼女を見て助けてしまう。
そして傷だらけの彼女の手を握り、大事な客人だから困ったときはすぐに話せと言ってしまう。
ついさっきまで殺そうとしていた人間に対し、真逆の対応をとってしまった自分に王は戸惑う。

しかしそんなことを知らないコムギは、その言葉に号泣する。
軍儀のためだけに生き、家族には『負ければゴミ』と言われ続けた彼女にとって、そんなに優しい言葉をかけてもらったのは生まれて初めてだった…


しかし、そんなコムギに悲劇が訪れる。

王を殺害するためにネテロと共にやって来たゼノの『龍星群(ドラゴンダイブ)』による無差別攻撃の巻き添えを喰らい、腹を貫かれる重傷を負ってしまうのだ。
ここに至り、王はもはや迷いも無く、ピトーを呼び寄せてコムギの治療を命じる。
キメラ=アント討伐隊のネテロとゼノも現場に到着していたが、コムギという人間に対する慈愛溢れる扱いに、本来ならば隙あらば襲い掛からねばならなかった立場の2人も思わず手を止めて成り行きを見守るほどだった。

そうしてピトーの『玩具修理者(ドクターブライス)』により一命を取り留めるが、
討伐隊に人質にされ、討伐隊がキメラアントに捕らえられてしまった際の交換材料にされてしまう。
一方でシャウアプフからは貧者の薔薇の衝撃で記憶喪失になり冷酷無比な性格に戻った王が以前の状態に戻るのを良しとせず、記憶復活のトリガーと成りうる彼女を殺すべく命を狙われる事になる。
コムギは両陣営にとってのキーパーソンとして否応にもなく戦いの渦に飲み込まれていく...



そして終戦後、ネテロからメルエムという自らの名を聞き出した王がパームから聞いたコムギの居場所を訪れ、彼女をたたき起こす。

久しぶりにメルエムとの軍儀を楽しむコムギだったが、彼から残酷な真実を告げられる。
メルエムは敵との戦いで受けた毒により、数時間で命が尽きてしまう状態だった。

死ぬ前の時間をコムギと過ごすことを望んだメルエムだが、自分の受けた毒は周りにも伝染してしまうため、彼女に逃げるように促す―


しかし彼女は逃げなかった。

最期の瞬間まで彼のそばに居ることを望んだのだった。

そこでメルエムは悟った。

自分の生まれてきた意味を。

彼女に出逢うこと―

それこそ彼の生まれた理由だったと。


そして彼女もまた...


ワダすは きっと この日のために生まれて来ますた・・・!




彼女は、もう目も見えなくなった彼の手を握りながら最期を看取る。
メルエムの最期の願いとして「名前を呼んでくれないか」と乞われ、それまで一貫して「総帥様」と呼んでいたコムギだったが、お互いに最期の言葉だと悟り、


「おやすみなさい… メルエム…」


こうしてメルエムはコムギに抱かれて死んだ。
明確な死亡描写は無いが、恐らく彼女も直後に死亡したと思われる。

なおこのときコムギは初めてメルエムの身体に触れ、彼が異形の者であることに気づいているはずだが、最後まで彼の傍に居続けた。




軍儀を打つ中で王の内面を激しく揺さぶり、彼を変え、護衛軍を変え、最後には物語の結末を誰も予想しなかったものに変えた、
キメラアント編のキーキャラクターと言えよう。
彼女との対戦によって、王はただでさえ高かった読み合いのレベルを更なる次元に引き上げてしまい
ネテロが繰り出す百式観音の無限に等しい攻撃の組み合わせから正解を導き出してしまったので
もしも彼女が存在しなければ、ネテロは王を完封し続けて持久戦で勝利するといったifもあり得たかも知れない。*5



追記・修正は軍儀王になってからお願いすます。

へば。

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最終更新:2025年03月01日 20:51

*1 対局中のみ開眼する。当然目は見えないので読み駒をしてもらう必要がある

*2 重篤で口を閉じると息が出来なくて失神してしまう。王との初対面で黙れと言われていきなりやらかした

*3 軍儀の実力は今なお成長途中である。更に作中では「覚醒」とも評される、限定的ながら念能力に目覚めているような描写もある

*4 そもそもコムギを呼んだのは選別までの暇つぶしだった

*5 コムギとの出会いがなければメルエムは人間を見下した暴虐の王のままなので、その下等生物に羽虫が叩き潰されるようにやられるといった状況が続いたのならば、怒りでオーラの流れが乱れ、その瞬間に致命打をくらって敗北する結末も絶対にないとは言えないだろう。