オクシレイン大衆自由国 > 歴史 > 632年トローネ皇帝親善訪問会談

トローネ皇帝の乗った車列を待つ首都警護警察
機動隊員*1
632年トローネ皇帝親善訪問会談とは、632年に行われたユミル・イドゥアム連合帝国の国家元首たるトローネ・ヴィ・ユミル・イドラム皇帝がオクシレイン大衆自由国を訪問し、会談した出来事。


経緯

 転移者星間戦争が終結して間もなく、ユミル・イドゥアム連合帝国キルマリーナ共立国の大使館職員をスパイ容疑で拘束し、逆にキルマリーナ政府はは帝国政府の指摘を否定し、職員を返還するよう要求。間もなく保護された帝国側のスパイとされる人物に「独裁体制の真実」を公表させ、帝国政府に対する圧力を強めた。相互的な対立は先鋭化の一途を辿り、連合帝国側は黒丘同盟加盟国との完全国境閉鎖と外交途絶を宣言しようとした。
 しかし、国境閉鎖によって同盟国民の帰還が困難になることや外交途絶による事態の悪化を恐れたオクシレイン大衆自由国大統領センジュ・アン・アクセルン・ヴィン・アンニオの努力により、転移者戦争以来対立していた安保同盟黒丘同盟の間で結ばれた民間人及び外交使節に関する非常時保護条約の成立により、全面対立の危機は回避されることになった。
 共立公暦632年、ユミル・イドゥアム連合帝国の国家元首たるトローネ・ヴィ・ユミル・イドラム皇帝は全面対立を防いだことに対しての謝辞と相互交流のために近衛騎士団を伴ってオクシレインを訪問した。
 オクシレイン側はトローネ皇帝を来賓として扱い、ユミル・イドゥアム側もオクシレインとの対立を全面に出さずに気遣った外交儀礼を徹底した。また、オクシレイン警察庁(交通警察部宙域特殊機動警備隊)と近衛騎士団による親善実効演習も行われ、対立関係にある国家としては異例の緊張緩和ムードを生み出した。
 一方で連合帝国宙軍はオクシレインとの対立関係により、皇帝の訪問に同行しなかったほか、オクシレイン宙軍を管轄する軍事省はそれに対抗して、総統庁の命令に拒否権を発動するなど、完全に緊張が緩和していなかったことも特徴的である。

時系列

護衛計画決定

護衛計画を可決する両翼省庁合議委員会
「まったく、世話の焼ける大統領ね。私はあなたの親でもフエルでもないのだけど」

――サールメン・アン・オサールン・ヴィン・レンザイア
 トローネ皇帝の来訪が外交筋で伝えられると、即座に軍部及び警察庁による護衛計画が立案された。オクシレイン国内での反帝国勢力は反ラヴァンジェの一部過激派に繋がるものとして可能性は低いものの大いに警戒された。このときは対立するはずの統領庁と総統庁も一致団結して、計画立案を進めた。両翼省庁合議委員会では普段はギスギスした空気で行われる議会に花が咲いたように綻んだ顔が見られ、緊張緩和に向けた取り組みが政府全体として喜ばしかったことが見て取れる。
 632年X月X日に両翼省庁合議委員会によって最終護衛計画書が提出され、両翼双頭によって承認された。
 また、センジュ大統領は事前の秘密電話会談によって、キルマリーナ共立国とメイディルラング界域星間民主統合体の大統領に対して受け入れの表明と今回の説明を行っており、同盟内での不満を解消するために奔走していたが、過労を心配したサールメン大総統によって休暇を取らせるように命じられた検疫省は、統領庁側に属するにも関わらず拒否権を発動せずにセンジュ大統領に対する「検疫措置」を行い、彼に一週間の休暇を与えたという。

トローネ皇帝到着

 632年、トローネ皇帝と近衛騎士団を輸送した艦隊がオクシレイン宙域に進入。オクシレイン警察庁所管警護警察部の艦隊が艦隊を警護する。同時に警察庁所轄交通警察部所属宙域特殊機動警備隊の艦隊が周辺宙域の整理及び警戒を担当した。
 イェルサー星系の首都星イェルサーに到着後、警護警察部第11師団及び第12師団が警護任務を引き継いだ。宙域特殊機動警備隊は到着後も周辺宙域の警戒を続けた。
 大洋着水後、オクシレイン海軍第6艦隊による護衛・誘導により、モジル港に寄港。
 上陸したトローネ皇帝をオクシレイン大統領センジュ・アン・アクセルン・ヴィン・アンニオ、外務省大臣、軍事省事務次官が迎える。
 事前に手配されていた第11師団の機動部隊によってトローネ皇帝と近衛騎士団はプラン・ネルヴェサーまで警護された。


儀仗隊栄誉礼

 僕は車を降りると、トローネ皇帝陛下の手を取って席から降りるのを手伝った。彼女は当初僕の手を取るのを戸惑っていたが、そういう儀礼なのかと理解したのかやっと僕の手を取ってくれた。
 プラン・ネルヴェサーに付くまで、僕の心は張り裂けそうだった。隣に銀河の趨勢を統べる一因が座っているのである。正常心で居るほうが無理だ。しかし、しばらくして気付いたのは彼女がただの可愛いケモミミ少女ではないということだった。
 仕草から言動、意識までが国家元首らしく統べられているという感覚が僕の肌感覚をぴりぴりと刺激していた。そして理解したことは、彼女は「無理」をしているということだった。
 名誉令の儀式を終えた先のレッドカーペットには三軍将軍と警察庁長官が立っている。彼らの軍隊式敬礼に、トローネ陛下はどう答えるか決めかねているようであった。僕は口で教えようと思ったが、彼女の権威を削ぐことになると考え暫く見守ることにした。
 彼女は思案顔で軍事式敬礼を真似て手を額に合わせた。僕は彼女に恥をかかせまいと胸に手を合わせる文民式敬礼を笑顔で紹介した。彼女は即座にそれを理解して文民式敬礼に服した。

――『大統領の御伽噺』、センジュ・アン・アクセルン・ヴィン・アンニオ
 プラン・ネルヴェサーに到着したトローネ皇帝とアンニオ大統領は、オクシレイン陸軍儀仗隊による栄誉礼を受けた。また、大統領府までのレッドカーペットにおいて、陸軍将軍、海軍将軍、空軍将軍、警察庁長官による敬礼を受けた。
 オクシレイン陸軍祝砲儀礼隊による礼砲が発砲され、アンニオ大統領とトローネ皇帝はこれを観閲した。

昼食

 プラン・ネルヴェサー大統領府において、トローネ皇帝とアンニオ大統領が共に昼食を頂いた。近衛騎士団関係者とオクシレイン三軍幹部も同席し、交流を行った。昼食に際しては、大統領府の厨房を仕切るシェフで、通称“双頭の喉”と呼ばれる調理師が指揮を取って、完全栄養食となるように調整されたフルコースを提供した。
 JKA-001の前例から厨房の所在する棟の周辺は警護警察部によって厳重に警備され、虫の一匹さえ侵入を赦さない体制が整えられていた。

大総統府見学

 私は現れた白装のシュリントヴァント*2を前にして、すべき挨拶を思い出す。

「ようこそいらっいました。私こそオクシレイン大総統たるサールメンです。此度の来訪を心より歓迎いたします」

 トローネ皇帝は私の挨拶を聞いて、微笑みつつ手を差し出す。私は精一杯の笑顔を顔に作りながら、その手を取った。表情筋が固まりきった私にとって最大限の努力だったが、取った彼女の手はその意志が伝わるほどに暖かく、優しいものであった。

「大総統」

 握手を解き、いざ大総統府を案内するとなったとき、側近が声を掛ける。

「なんだ」
「“ようこそいらっしゃいました”が正しいイドゥアム語です。先程のはロフィルナ語では正しいのですが……」
「分かった、下がれ」

 すごすごと側近は下がる。私はパフォーマンスとはいえ、多少しか知らないイドゥアム語の知識で挨拶したのを少し後悔しながらも、彼女に私の能力を偽装できたかもしれないと前向きに考え、陛下のエスコートを続けたのだった。

――『大総統任務後記』、サールメン・アン・オサールン・ヴィン・レンザイア
 昼食後、トローネ皇帝は警護警察部第12師団による警護を受けながら、大総統府に移動し、サールメン大総統と接見した。サールメンに案内されたトローネ皇帝は、大総統府内の迎賓大館にてヒュエヴィッツォール首長たるヒュエヴィッツォーラン・アン・イェジャン・シユィアなど地方首長の儀礼挨拶を受けた。


様々な見解

ロアミーク・ヴィ・ゴルヴェドラス=アルソレーム(キルマリーナ共立国大統領)
「静粛に。本件をもって我が国が不利となる事象は確認しておりませんし、オクシレインとの関係に何ら影響を及ぼすこともないでしょう」
ゼルキレス・ヴィ・ローズフィラート(メイディルラング界域星間民主統合体大統領)
「引き続き経過を見守るが、個人的には論外だ。あのようなものと手を取り合うくらいなら血に飢えたロフィルナの蛮族どもを説得した方が良い」
「この度の親善会談の実現を心より祝福いたします。また、両国の民に永久の安寧が訪れますことを願っておりますわ」……以上、自らの胸に手を当てて微笑んだ。
 「両国の緊張緩和を歓迎し、我が国としても引き続き双方の関係構築に協力していく所存である」と表明。一方、友好関係の構築には一定の配慮を要することを補足しており、一部報道の過熱について次の通りに述べた。
「本件が裏切りであるかのように報じる向きも確認しているが、無論、そうした不安を煽らないように気を配らなければならないし、我々はこの二カ国の動向を注意深く見守るつもりだ」
ゾレイモス・ヴィ・ケレキラ=プルームダール(セトルラーム共立連邦首相)
「良いことだと思いますよ。私もくだらない政争に悩まされなくて済むからね」
 「いいか、お前達。力は全てを解決するし、これが裏切りであるにせよ、ポーズに過ぎないとしても筋肉が自らを裏切ることはないのである。だから皆も筋トレするんだぞ。でないと、いざという時に戦えないからな」
ナスーラ・ヴィ・ラッフィーア(ツォルマリア星域連合直轄領.企業有志連盟評議会議長)
「反対する理由がありましょうか?大いに期待しておりますし、喜ばしいことでしょう?」
メレザ・レクネール(後の文明共立機構最高評議会議長)
「時代は変わるものです。かつての帝国とセトルラームがそうであったように、この両国もまたその関係性を改められるものと信じております」
ナトリア・クックル(カルスナード教王国教王)
「一人の信仰者として、祈りを捧げましょう。豊穣なる両名に神の祝福を。魔の心を祓い清め給わりますように」
「国際社会の平和協調の目論みを帝国が能動的に実行した勇気ある事象ではないでしょうか?」
ヤフウェン・フャウ・ツォーンドヮット・ラントラム(ラヴァンジェ諸侯連合軍総司令官)
「いずれにせよ、荒事が起こればあたしたちは命令に従って動くだけだ。上の政治のことは知らん」
フレイブ・アン・ソーン・ヴィン・ファルゾールニグ(オクシレイン軍大佐)
「“裏切り”なんて強い言葉を使うべきではないのではないでしょうか?絆の本質は困難なときに明らかになるものです。幾星霜を経て確立した共立の国々が、親しき者たちの再邂逅程度で困難なときになるとは思いませんよ」
「これで公団がどうこう言う事はない、帝国が変わらぬ限り我々は今まで通りだ」
ツェイク・ザバーディン(ソルキア諸星域首長国連合最高議長)
「まずは記念すべき第一歩といったところでしょうか。何事も形から入り、互いの関係性を改めていくものです」

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最終更新:2024年03月22日 21:38

*1 https://huggingface.co/spaces/stabilityai/stable-diffusion

*2 ラヴァンジェに居るケモミミ種族の一つ。大総統としては、帝国への警戒が溶け切れて居なかったことがここに見られる