精霊機 レネクー・アイザム
[解説]
聖華暦11年にカーライル王朝・聖王国にて開発された、精霊機の一機。聖華暦830年現在での記録上、数少ない『聖遺物・AI併用型』の精霊機である。
本来この機体は、第4期LEVの残骸から回収されたAIを装備した、『AI搭載型』の精霊機として建造される予定であった。しかしながらこれの建造に前後して、聖遺物を魔導炉に組み込んだ『精霊憑依型』の精霊機が幾つも造られる。
この機体の建造チームは、上から『AI搭載型』ではなく『精霊憑依型』への設計変更を強いられる。納期はもちろん延びない。残業代も出ない。切れた建造チームは、AI周りの設計をそのままに、同時に魔導炉に聖遺物を組み込むという荒業に出た。
そうして完成したのが、この『聖遺物・AI併用型』精霊機、『レネクー・アイザム』である。
本来この機体は、第4期LEVの残骸から回収されたAIを装備した、『AI搭載型』の精霊機として建造される予定であった。しかしながらこれの建造に前後して、聖遺物を魔導炉に組み込んだ『精霊憑依型』の精霊機が幾つも造られる。
この機体の建造チームは、上から『AI搭載型』ではなく『精霊憑依型』への設計変更を強いられる。納期はもちろん延びない。残業代も出ない。切れた建造チームは、AI周りの設計をそのままに、同時に魔導炉に聖遺物を組み込むという荒業に出た。
そうして完成したのが、この『聖遺物・AI併用型』精霊機、『レネクー・アイザム』である。
そして出来上がったこの精霊機であるが、おそるべき高性能を発揮した。第4期LEVから得られた人格型AIが機体制御をサポートし、能力的に余裕の出来た憑依精霊が機体能力強化を十全に行える様になったのである。
下手な幻装兵ですらも、この精霊機には敵わなかった。無論、機体本来の能力的には幻装兵の方が上だ。だが憑依精霊による機体強化のレベルが、他の精霊機とは違い過ぎたのである。これを知った聖王国上層部は、狂喜した。
下手な幻装兵ですらも、この精霊機には敵わなかった。無論、機体本来の能力的には幻装兵の方が上だ。だが憑依精霊による機体強化のレベルが、他の精霊機とは違い過ぎたのである。これを知った聖王国上層部は、狂喜した。
しかしながら、この機体にはあまりに大きな欠陥があった。……操手殺し、である。
この機体に憑依している精霊は、己の宿る聖遺物をぞんざいに扱われた事……つまり無理矢理に魔導炉に組み込まれたことを、恨みに思っていた。無論もともと善性の存在であったがため、むやみやたらと操手を殺す様なことはしない。
しかしながら、操手が憑依精霊の逆鱗に触れる様な行いをしたとき、たとえば騎士道精神にもとる行いをしたときや、上層部の命令だからと言って悪事に加担したときなど、精霊は激怒する。そして操手の脳に高圧電流を流し込み、殺傷してしまうのである。
憑依精霊にこれだけの事ができる余裕を与えたのが、並列して搭載されたAIの能力だと言うのは皮肉であろう。
しかしながら、操手が憑依精霊の逆鱗に触れる様な行いをしたとき、たとえば騎士道精神にもとる行いをしたときや、上層部の命令だからと言って悪事に加担したときなど、精霊は激怒する。そして操手の脳に高圧電流を流し込み、殺傷してしまうのである。
憑依精霊にこれだけの事ができる余裕を与えたのが、並列して搭載されたAIの能力だと言うのは皮肉であろう。
そしてこの機体は、操手たちから敬遠され、動態保存の状態で長きにわたり死蔵される事になる。そして後の世で精霊機が封印されたときには、精霊機『セイン・オオラ・ブラム』などと共に封印の第一陣となった。
ちなみにこの機体は、聖華暦830年代の今現在に於いても封印場所が判明している数少ない機体の一つである。聖都ヴァース・ランのはずれ、一般市民街の更に外側の、城壁沿いに建てられている古い教会の建物。その地下深くに、厳重に幾重もの封印を施されて、この機体と憑依精霊は眠っている。
ちなみにこの機体は、聖華暦830年代の今現在に於いても封印場所が判明している数少ない機体の一つである。聖都ヴァース・ランのはずれ、一般市民街の更に外側の、城壁沿いに建てられている古い教会の建物。その地下深くに、厳重に幾重もの封印を施されて、この機体と憑依精霊は眠っている。
なおこの機体が操手殺しだと言う事は伝承で遺されており、紛争や戦争の際にも持ち出されはしなかった。
[聖霊計画]
だがしかし、聖華暦837年12月。この機体は秘密裏に持ち出される事になる。三女神教神聖改革派……枢機卿派が、新たな精霊機の建造計画である『聖霊計画』を立てたのだ。この機体は手の届く現存する精霊機のサンプルとして、能力その他の調査のために持ち出されたのである。
そしてこの機体は聖王国の東部ぎりぎり、コシュタ・バルの北、ジェリコの南にある小さな集落、ボルダハルームに運ばれる。辺境の地で様々な試験をする間、この精霊機は噂に聞く操手殺したる様子を見せることも無く、操縦に従っていた。実験部隊……試験操手たちも随伴の機兵部隊も、研究員たちまでもが安堵して油断してしまう。
……伝承では、操手殺しだと言う事実ばかりが誇張されて伝わり、この精霊機が何故操手を殺したか、には触れられていなかったのだ。
そしてこの機体は聖王国の東部ぎりぎり、コシュタ・バルの北、ジェリコの南にある小さな集落、ボルダハルームに運ばれる。辺境の地で様々な試験をする間、この精霊機は噂に聞く操手殺したる様子を見せることも無く、操縦に従っていた。実験部隊……試験操手たちも随伴の機兵部隊も、研究員たちまでもが安堵して油断してしまう。
……伝承では、操手殺しだと言う事実ばかりが誇張されて伝わり、この精霊機が何故操手を殺したか、には触れられていなかったのだ。
事件は起きる。実験部隊は、枢機卿派の上層部からの命により、機密保持のためにボルダハルームの集落を皆殺しにしたのだ。
そしてそんな事を、精霊機『レネクー・アイザム』が……。それに宿る憑依精霊『カラクサ』が、許すわけが無かったのである。
そしてそんな事を、精霊機『レネクー・アイザム』が……。それに宿る憑依精霊『カラクサ』が、許すわけが無かったのである。
皆殺しになった集落ボルダハルームで、実験部隊の全ての随伴機兵、その操手、研究員たち、そして精霊機『レネクー・アイザム』の操手の死体が発見されたのは、翌年聖華暦838年の1月の事である。ボルダハルームの人々は全員が丁寧に埋葬されていたが、実験部隊の者たちは野ざらしにされていた。
なお、集落の人々が埋葬された墓の碑には、全員の名前が刻まれていたとの事。ただ一人、当時19歳の青年の名を除いて……。
なお、集落の人々が埋葬された墓の碑には、全員の名前が刻まれていたとの事。ただ一人、当時19歳の青年の名を除いて……。