「機装兵 エインセル」


[ショートストーリー]
テスト用の黄色に塗られた機装兵……。ソルダートの系譜と見られるスマートな機体が、退避する研究開発員たちから離れる様に移動すると、背面の魔導スラスターに火を入れる。その瞬間、爆音が響いた。そして操手の悲鳴も……。
『たあああぁぁぁすけてえええぇぇぇ……!!』
黄色の機装兵は、信じ難い速度で前方斜め上にカッ飛ぶ。すさまじいまでの跳躍力。いや、きちんと操手が制御できてさえいれば、それは「飛翔」とか「飛行」とか言っても良い代物であったかも知れない。そう、操手が制御できてさえいれば。アレでもホルン社の社内では、かなりの技量を持つ試験操手なのだが。
……プスン。
そしてテスト機は、かなり上空まで飛びあがった時点で緊急用のブレーカーが落ち、稼働停止した。だが一度ついた勢いは止まらない。それ以前に、上空で稼働停止しては危険もいいところだと思うのだが。
テスト機は、その勢いのまま放物線を描き、実機試験用の演習場領域を越えて遥か向こうの市街戦テスト用の廃屋群へと落着。土煙が上がり、一瞬後に「どーん!」と落下音が聞こえる。研究開発員は、唖然として呟いた。
テスト機は、その勢いのまま放物線を描き、実機試験用の演習場領域を越えて遥か向こうの市街戦テスト用の廃屋群へと落着。土煙が上がり、一瞬後に「どーん!」と落下音が聞こえる。研究開発員は、唖然として呟いた。
「……ウチはカルマッド装兵工房じゃないぞ?」
「……火が出てないから、アレはイグナイト型とは違いますって。爆散もしてないですし。」
「……大出力型魔導スラスターを、左右片側4基ずつ計8基搭載するのは、無理がありましたね。」
「……企画書が出て来た時点で、修正を入れるべきだったな。おまえら、始末書な。わたしも書くから。」
「……現実逃避はともかく。操手、生きてますかね?」
「……生きてたら、病院に見舞いに行きましょう。桃缶の詰め合わせ持って。」
「……火が出てないから、アレはイグナイト型とは違いますって。爆散もしてないですし。」
「……大出力型魔導スラスターを、左右片側4基ずつ計8基搭載するのは、無理がありましたね。」
「……企画書が出て来た時点で、修正を入れるべきだったな。おまえら、始末書な。わたしも書くから。」
「……現実逃避はともかく。操手、生きてますかね?」
「……生きてたら、病院に見舞いに行きましょう。桃缶の詰め合わせ持って。」
操手は生きていた。テスト機も中破はしたが、修復可能なレベルでなんとかなっていた。その後この機体は、魔導スラスターを通常型のものを片側2基、計4基に設計を改められて、完成の運びとなる。
[解説]
原型機に比べ軽量化されており、背部に魔導スラスター4基を搭載することによって、機動性が大幅に向上している。
反面操縦には練度が必要な為、この機体は熟練者向けとして、あくまで少数生産に留まっている。
反面操縦には練度が必要な為、この機体は熟練者向けとして、あくまで少数生産に留まっている。
魔導スラスターによるピーキーな操縦性と、魔力を早期に消耗してしまい魔力切れを起こす危険性から、軍用にはあまり向いているとは言えない。
そのため聖王国軍での調達機数はさほど多く無いが、聖王国内の冒険者などにはそこそこ売れている模様。
また自由都市同盟にも輸出されている。
そのため聖王国軍での調達機数はさほど多く無いが、聖王国内の冒険者などにはそこそこ売れている模様。
また自由都市同盟にも輸出されている。
添付ファイル