1人の女性を愛した2人の男。
その娘は世界の命運を握り、男の内の1人もまた世界の命運を握る者だった。
残る男は極普通の人間だった。それでも男は女性を愛した。
ただ純粋に、彼女の幸せを願った。
彼女にはどちらかを選ぶことは出来なかった。
どちらも本当に自分のことを思ってくれていた。
そして彼女にとってもまた、2人は特別な存在となっていた。
時間を重ねる中で
2人の男もまた互いの存在・彼女への思いを認め合い、
いつしか3人は深い絆で結ばれていたのだった。
世界の崩壊が止まった世界。
しかし今だ平和と呼べるものではなかった。
それでもまだ見ぬ未来を、平和な未来を人々は心に願っていた。
そんな中、1つの邪心が動き出す。
それに感化されるように世界に散らばった邪心は集まり、
それは忽ち強大な存在へと変化を遂げていった。
彼らの手は当然のように1人の女性と男性へ向けられた。
数多の戦乱の末、ついに彼女は敵の手に捕われてしまう。
男達は彼女を救うべく敵の陣へと踏み込んでいく。
しかしそこには強大な敵が待ち構えていた。
男の内の1人は決心する。
「ここは俺がやる。お前は先に行け」
そう、それは極普通の人間。
「しかし・・・」
「最高のシーンを譲ってやるって言ってんだ。
友の言うことは有り難く聞いておくもんだぜ」
1度はライバルだった相手。
しかし長い月日の中で
彼は彼女を任せるに足る信頼を築いたのだ。
「お前を失ったら世界はどうなる?」
…主人公は最初から決まっていた。
「迷ってる時間はねぇんだよ!」
…このままでは彼女を失ってしまうのだ。
「っく・・・すまん!」
「それでいい・・・
さて、デカぶつさんのお相手をするとしますか・・・」
死ぬ気は更々無かった。
しかし力の差は歴然だった。
「まだ終わるわけにはいかねぇ・・・」
…それでも時間稼ぎとしては十分なはずだ。
見る見るボロ雑巾のような姿になっていく男。
「・・・所詮俺はかませ犬ってか・・・
最初から相場は決まってたってのにな・・・」
自分の代わりがいるわけではない。
それでも彼と彼女を失ってはいけなかった。
彼がいれば彼女は幸せになれる。
自分がこの世からいなくなったとしても
彼女の心に自分がいてくれるのなら、きっと自分は幸せだろう。
男はそう思ったのだ。
例えこれが運命と呼ばれようとも
彼らと過ごした日々を…彼女を愛した事実を……私は誇りながら逝こう
ありきたりと言えばありきたり。
しかし故に人間らしい。
幾万の道の中で例え誰かと同じ道を歩んだとしても
それはその者自身が選び、歩んだ道なのだ。
最終更新:2011年09月27日 22:37