ワールドカップ予選

登録日:2012/03/12(月) 13:48:42
更新日:2024/12/25 Wed 23:32:42
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絶対に負けられない戦いがそこにはある



世界中のフットボールファンの、4年に1度の楽しみFIFAワールドカップ。
この大会に出れるのは厳しい予選を勝ち抜いた国だけ、この項目はそんなワールドカップ予選についての内容です。


●ルール

6大陸それぞれのサッカー連盟毎に行われる予選大会で、FIFAに加盟した各国サッカー協会それぞれの代表チームが地区代表の座を競う。概ね、最終予選の総当たり戦で最上位の1~2チーム×数組がワールドカップの本大会出場となる。
地区によってはそれに次ぐ成績のチーム同士でプレーオフが行われ、その勝者が残った出場権を獲得する場合もある。
また、一部の地区ではプレーオフの勝者など、惜しくも本戦進出に届かなかった次点チームが、別大陸連盟のチームと対戦して最後の枠を奪い合う「大陸間プレーオフ」が行われる。

各大陸の出場枠は前大会のワールドカップの成績によって調整されることがあるため、ワールドカップ本選の同大陸の成績は地味に注目しなくてはいけないポイント。
また開催国は本戦出場が確約されているため、同大陸の予選は出場枠がその分減らされるなどルールが調整される。

予選大会自体は、FIFAランキングの高い国からシード権が与えられる仕組み(大体最終予選か1つ前の予選から参加)。
逆にランキングが低い国はその分予選を多く勝つ必要があり、そして殆どの場合は予選リーグの上位が次のステップに行くシステム。

細かい仕様はたびたび変更されているが、当記事においては基本的に1998年フランス~2022年カタールの32枠体制と、2026年北米大会の48枠体制に則る。


●各大陸


〇ヨーロッパ/UEFA

サッカーの本場だけにレベルは軒並み高く、国の絶対数も多いため出場枠は最大比率。
予選参加チーム数も多い(2022年からは55チーム)のだが、予備予選のようなものや大陸間プレーオフ進出と言ったものはなく、シンプルに2ラウンド制の予選で出場可否が決まる。
なお、2022年からはUEFA EUROに引き続き、前シーズンにおけるUEFAネーションズリーグ(以下NL)の結果が組み込まれるようになり、ちょっと複雑になった。
2026では総数拡大に伴い出場枠が13から16に拡大されたが、他の地域に比べると元が多かった分変化が小さく、それに伴う予選グループの増加を除いては概ね2022年と変化なし。
  • まずは予選グループリーグ。4チームずつ(NL最上位チームの優先枠あり)か5チームずつの12グループに分けてのホーム&アウェー総当たり戦。首位突破した12チームが本戦出場確定。
  • その次のプレーオフはグループ2位の12チーム、加えて敗者復活枠としてNLの上位4チームが残る。この16チームが4組に分かれて、それぞれ一発勝負のトーナメントを生き残った4チームも本戦出場となる。

欧州5大リーグを国内に擁するスペインイタリアイングランドドイツフランス、そこにオランダを加えた6国が伝統のある列強国、
彼らほどの歴史はないが近年ではポルトガル*1、次いでベルギー*2は匹敵する評価を受けており、現在では8強といったところ。
ただ、評価こそ中堅止まりだがクロアチア*3が直近でこれらの国以上に目覚しい活躍をしており、いつの間にやら上位争いに名を連ねて9強とする意見も増えつつある。
その他実績を残したことのあるギリシャ*4・トルコ*5・チェコ*6・スウェーデン*7・デンマーク*8あたりが中堅、
近年は目立った成績を上げてないが、かつて強豪だったこともあるポーランド*9・ハンガリー*10あたりは古豪、
次にスロバキア・オーストリア・ノルウェー、クロアチア同様に旧ユーゴスラビアから分裂したセルビア・スロベニアなど、一応ワールドカップおよびEURO出場経験がある国は多数。
その下はアイスランド・ジョージア・ベラルーシ・北マケドニア・イスラエル*11など。
下と言ってもこのあたりでもチームに1人くらいは欧州5大リーグのクラブで主力を張る選手がいる。

組分けは成績上位から順に割り振っていくため、5大リーグの国同士が一堂に会する……というようなことにはさすがにならないが、
なにぶん数が多いうえに粒ぞろいで、ポット1下位とポット2上位でランキングが密着しているというのも当たり前、しかもリーグでの進出確定枠がそれぞれ1位だけ
強豪クラスが2国重なるような組はいくつかできるし、調子次第でさらにワンランク下の中堅がまくってくる番狂わせも大抵1組くらいは起こる。
そのうえでプレーオフトーナメントを2連勝できず強豪が予選敗退……といった展開もそこまで珍しくはなく、2018・2022でイタリアが二大会連続予選落ちというのも記憶に新しいかと思われる。
イタリアに引導を渡した北マケドニアはポット4とかなりランクが低い国だが、それもひっくり返せるぐらい実力は接近しているのである。


〇南米/CONMEBOL

ヨーロッパと並ぶサッカー大陸。
しかし10チームしかいない少数精鋭のため、大陸枠が4+αで固まった1998年以降は
ヨーロッパとは逆に1リーグに全国詰め込んでホーム&アウェイの総当たり戦を行っている。
そのため開催期間が長く、過去には2年くらいかかったこともある。
4位までが自動で本大会進出、5位は大陸間プレーオフ。

2026年からは形式は据え置きで6チームが自動で本大会出場、7位がプレーオフ。
実に過半数が進めるという破格の条件、欧州ですら3割未満まで絞られることを考えるととんでもない進出率である。

なんといってもブラジルアルゼンチンの2強。特にブラジルは1度たりとも本大会出場を逃したことがない。
だが両国とも何度かギリギリで予選通過したことがあった*12
次いでパラグアイが長らくNo.3だったが、W杯初代王者の誉れを持つ古豪ウルグアイが復活し入れ替わった。
近年では、元アルゼンチン代表監督のペケルマン体制以後のコロンビアがパラグアイやブラジルを蹴落とす勢いで目覚ましい復活を見せている。
現状はこの4チームが飛び抜けて強い。
一方のパラグアイはその後、ブラジル大会、ロシア大会、カタール大会と3大会連続で予選落ちしてしまっている。
パラグアイの次点にはエクアドル・チリ・ペルー、下のクラスにボリビア・ベネズエラといった感じ。特にベネズエラは南米国で唯一ワールドカップ本戦を経験できていない。

ただでさえ強豪がひしめきあっている上に、ボリビアやエクアドルなどのホームは標高3000mを超す高地という地球屈指の凄まじいアドバンテージが存在し、とりわけ対ボリビアのアウェイゲームはブラジルやアルゼンチンですら苦戦を強いられる超過酷環境となっている。

ちなみに、ガイアナ・スリナム・フランス領ギアナ*13は南米大陸北端に位置するが、カテゴリは下記の北中米カリブ扱い。



〇北中米カリブ/CONCACAF

予備予選リーグ&HAマッチの勝ち残り組+FIFAランキングの高いシードチームがリーグ戦で戦うシステム。
2022では一次予選が4チーム×6組の総当たりでそれぞれの1位が通過、その6チームが二次予選としてホーム&アウェイで戦い各勝者が最終予選進出。
最終予選はシード権を得ていたランキング上位5チーム+二次予選通過3チームの8国によるホーム&アウェイ総当りという形。
出場枠が「3.5」なので、大体は3位までが自動で予選通過であり、4位は大陸間プレーオフ。

2026年からは「6」枠+大陸間プレーオフが唯一2枠に。通例として用いられる「0.5枠」で説明しづらい。
ただし2026年では拡大した3枠がちょうど共同開催の3国に割り当てられることとなり、元と同じ3枠+プレーオフ2席を残った国のHAマッチ1回+総当たり2回で争う形になっている。
一次予選としてFIFAランキング下位同士のH&Aを勝ち残った2チームが決まり、それを含めた30チームが2次予選として6組の総当たり戦。
各グループの1~2位となった12チームでさらに3組のH&A総当たり戦。これを首位突破した3チームが本戦出場。
2位のうち、成績上位の2チームが大陸間プレーオフに回る。

実質はアメリカメキシコが自動進出枠の常連ともいうべき地区であり、
メキシコ>アメリカ>>>越えられない壁>その他の状態が続いていた。
……が、ロシア大会予選にてアメリカがまさかの敗退、パナマが初出場を決めるという波乱が起きた。
さらにカタール大会予選では、カナダが36年ぶり2度目の出場を決める快挙を成し遂げている。

この次にくる国はコスタリカ・ホンジュラスあたりで次にトリニダード・トバゴといった感じである。
ちなみに、フランス大会で日本に勝ったジャマイカはそれより下のレベル。



〇オセアニア/OFC

数も少ないしレベルも低いため、32枠体制における出場枠は「0.5」(82年まではアジアと混合されていた)。
例によってFIFAランキング下位から篩い分ける形式で、
一次予選は2組の総当たりH&A、グループ1~2位の4チームがトーナメントで勝負し、それで優勝したうえで必ず大陸間プレーオフを生き残らなければならないという、超絶高い壁が立ちふさがっていた。
なにせランキング最上位のニュージーランドですらFIFAランキング100位以下と辺境も良いところだったのである。
48枠体制からはようやく出場枠が「確定1+プレーオフ1」に。ちなみに今回は準優勝チームが大陸間プレーオフ行きとなる。


現在はニュージーランドの完全な1強。
かつてはオーストラリアとの2強だったのだが、プレーオフ地獄に嫌気が差したオーストラリアが2006年からアジア部門のAFCに移ることに成功したのでこうなった。
なお、この2国以外が出場を勝ち取った例は存在しない。

とはいえ、ニュージーランドも久しぶりに出た南アフリカ大会のメンバーに銀行員が本職の方がいたりするレベルである。
なおその南アフリカ大会ではグループリーグで敗退したものの、出場32カ国中唯一の無敗記録で、勝ち点はイタリアより上だった。



〇アフリカ/CAF

出場枠は「5」。こちらも順位の低い国から予選を戦い、高い国は一次予選シード+二次予選以降の組み合わせ優遇を得られる形式だった。
一次予選は一次予選参加組内でのランキング上位グループ対下位グループの直接勝負のH&A、二次予選は1グループ4チームの総当りH&A、三次予選は再び直接勝負のH&Aで勝者のみ本戦進出
直接出場枠が一切総当たり戦で競われないというのは(勝ってもプレーオフ権利しか得られなかったオセアニアを除くと)この地域だけであり、いくら組み合わせが上位5チームvs下位5チームとなっていても番狂わせがだいぶ起きやすい形式とされていた。

2026年からは出場枠が「9」+大陸間プレーオフが追加されて9.5枠になり、ヨーロッパに近いものへと大きく変更された。
6チームずつ9組のH&A総当たりで首位突破した9チームが進出確定。
グループ2位の場合は、その中の上位4チームが1つしかない大陸間プレーオフの切符を巡ってトーナメントを戦うことになる。
後述するようにチーム間の実力差が拮抗していることもあり、紛れやすい環境なことには変わりないと言える。


治安の悪さやギャラ問題といった別の意味で過酷な地区であるが、勢力図がコロコロ変わるのが特徴。
00年代前半まではカメルーン、ナイジェリアの2強だったが、
コートジボワール、ニャホニャホタマクローがかつてのお偉いさんだったガーナ、チュニジア、モロッコ、アルジェリア、南アフリカ、セネガル、エジプト……といった面子に上下関係をつけ難い群雄割拠
その時々の強い国はヨーロッパの主要リーグで活躍する選手も多く、またヨーロッパ育ちで二重国籍持ちの(強豪国での代表定着は難しい程度の)一流選手が流れてくるケースもしばしばあり、「欧州化」という表現もよく見られる。
その他の予選突破経験国としては他にアンゴラ、トーゴ、コンゴ民主共和国がある。

そのためワールドカップ出場国もコロコロ変わりドイツ大会ではアフリカ勢がチュニジア以外全て本大会初出場ということもあった。
2012年に行われたネイションズカップでは、W杯に出場した経験がまったくないザンビアが優勝したことも。

年によってはネイションズカップの予選も兼ねているため、南アフリカ大会予選には開催国の南アフリカが参加していた。


〇アジア/AFC

我らが日本がいる地区。
ヨーロッパと南米が基本H&A総当たり1巡勝負なのに対して、アジアでは北中米のようにその予選リーグを概ね2~3度繰り返す長丁場となる。
少数の上位層とそれ以外の差が数値以上に激しく、足切りの必要性が大きいためか。
2026年からは確定8枠+大陸間プレーオフ1枠の8.5枠に増加。立場が近かったアフリカとはプレーオフ枠が追加されたこともあって地味に差がついた。
一次予選はランキングの下位20チームがH&Aの直接対決。
二次予選が4チーム9組のH&A総当たりで、各組1~2位の18チームが最終予選(と翌年のアジアカップ本戦内定)へ。
最終予選も6チーム3組のH&A総当たり。各組1~2位の6チームが出場確定となる(ここまではグループの編成が変わっただけで上位の条件は同じ)。
3~4位はアジアプレーオフとして3チーム2組の一発総当たり戦でそれぞれ1位の2チームが出場確定となり、2位以内を逃しても挽回のチャンスが大きくなった。
そしてアジアプレーオフ2位が1席の大陸間プレーオフを賭けたH&A対決を行う。


実力的には90年代から力をつけた日本韓国、そしてOFCから移籍してきたオーストラリアの3強。
最近では選手人材の輩出量において日本が完全に圧倒しているため、もはや1強などと言われることもあるが、それを言い切るにはもう少し実績を積み上げる必要があるだろう。
次いでイランやサウジアラビア、
その下はイラク、ウズベキスタン、カタール、バーレーン、北朝鮮など。

東西で最大8時間という北米レベルの時差があり、東アジアと中東が同グループに組まれるのもザラにあるため時差や移動との戦いともなることも多数。ジョホールバルの歓喜もイランの選手が時差や移動で弱っていたのが一因と言われているなどこの手のエピソードは多い。日本の欧州クラブ組も他人事じゃなさそうだが
また、主に中国や韓国・中東勢を中心に異様な雰囲気のホーム/アウェイ、審判買収などの八百長疑惑、遅延行為、ラフプレーなど実力以外の部分でアレな点も目立つ(特に中国人サポーターはサッカー熱と真逆の代表チームのレベルの低さにはうんざりしてるとか…)。
他にもフセイン体制だった時のイラクとかは負けたら刑罰という狂った逸話も…(北朝鮮は在日組=Jリーガーには割と寛容)

一方で中東勢は、その実力などに比べて経済的には非常に優位な国々でもある。
近年は欧州リーグで活躍したスター選手を大量に招くなど、彼らがその財力をもって国内外リーグの交渉に力を入れていたことでも知られる。
その投資が自国チームに恩恵をもたらせるかは未知数だが、今後大きく勢力図が揺らぐ可能性を持った部分とは言えるだろう。

なお2018年以降は、W杯2次予選リーグがそのまま翌年のAFCアジアカップの予選も兼ねるようになっている。
カタール大会予選に開催国のカタールも参加していたのは、2023アジアカップ出場を賭けていたため。




各大陸のことを書いたがたかがサッカー、されどサッカー。
各大陸でサポーター・選手が暴徒と化し大問題になることは多々ある。
サポーターがスタジアムに乱入する例もあれば火炎瓶を投げてしまうなど危ないことは日常茶飯事。
その結果何らかの制裁が加えられるが中にはカメルーンのユニフォームの作りが原因で制裁を加えるかどうか議論になったことがある。



機会があれば他の国の映像や情報を調べてみるのも良いだろう。



追記・修正は本大会に出場してからお願いします。

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最終更新:2024年12月25日 23:32

*1 EURO2004準優勝、EURO2016優勝

*2 EURO80準優勝、ロシアW杯3位

*3 フランスW杯3位、ロシアW杯準優勝、カタールW杯3位

*4 EURO2004優勝

*5 日韓W杯3位

*6 EURO1996準優勝

*7 スウェーデンW杯準優勝、アメリカW杯3位

*8 EURO1992優勝

*9 西ドイツW杯3位

*10 スイスW杯準優勝

*11 第四次中東戦争の余波で周辺国と対戦を拒否されるようになり、紆余曲折の末に移籍した。この他ファンや選手サイドの意向が通ったカザフスタンもUEFA移籍加盟国。

*12 例としてはマラドーナ監督(2010)、サンパオリ監督(2018)のアルゼンチン

*13 FIFAに加盟していないためワールドカップには出場できないが、北中米カリブ海サッカー連盟会員ではあるため、ゴールドカップなど同連盟が主催する大会には出場が許されている。フランス代表のフローラン・マルダなどがここ出身

*14 66年北朝鮮のベスト8、02年韓国のベスト4だけ。前者は古すぎるし後者は疑惑の判定として不当に見られがち。

*15 32枠体制(98年~22年)でのアジア国代表の進出数は0→2→1→0→2→1→3。

*16 累計ではずっと多いが、同じ98~22年に絞ると1→1→1→1→2→0→2。