ドラグノフ式狙撃銃

登録日:2011/05/03(火) 12:23:19
更新日:2025/07/11 Fri 23:31:36
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性能

全長:1225mm
重量:4.31kg
使用弾:7.62×54R
装弾数:10+1
動作方式:ショートストローク式ガスピストン ターンロックボルト閉鎖



概要

1963年よりソ連軍に採用され、イジェフスク(イジュマッシュ/現カラシニコフ・コンツェルン)にて生産されている半自動狙撃銃。設計はエフゲニー・フョードロヴィチ・ドラグノフ。
正式名称は「Snayperskaya Vintovka Dragunova」(ドラグノフ式狙撃銃)でこの英字表記を略してSVD、又はドラグノフと呼ばれる事が多い。
操作系統がAK-47(マガジン、安全装置、閉鎖機構、着剣装置)やシモノフSKS(ボルトストップ、作動方式)を意識しているように見受けられるものの、それらとの互換性は全くない。
例によって部品点数を抑え、頑丈で信頼性が高く作られている。そして当時の西側とは異なる運用思想で開発されている。



運用、開発思想

1950年代、冷戦の始まりによって急速な機械化、近代化を推し進めていたソ連軍は機械化歩兵*1向きのより攻撃的な狙撃銃が必要となった。素早く動く歩兵の支援にはボルトアクション狙撃銃では不十分と判断。第二次大戦でのSVT-40等狙撃銃として転用された自動小銃の有効性も鑑みて、上記に見合う半自動狙撃銃を欲した。
それまでの狙撃銃は司令部直属の「遠くから敵の重要人物を狙撃する」ことに適応したものであったため、当時としては異例といえるものである。
なにはともあれ、M1891/30モシン狙撃小銃の後継として全軍のそれを置き換えた。
歩兵のAKの有効射程外を補う形で分隊ごとに一挺配備されている。

分隊支援火器(MINIMIなどの制圧支援ではなくM27 IAR等精密射撃に特化したほう)やDMR(Designated Marksman Rifle/選抜射手用ライフル)のはしりとも言える。



構造

外見はそのままAKを細長くしたような形。狙撃銃としては比較的軽く*2反動はそこそこ。
補助用のアイアンサイトや着剣装置など概ね歩兵と同じことができるようにはなっている。歩兵とともに移動し歩兵の支援をする都合、白兵戦に巻き込まれることもあると考えてのことであろう。
内部はショートストロークガスピストンにガスレギュレーター付き、ターンロックボルトと現代の自動銃のトレンドと同じもの。AKとは違い精密射撃が標準となるためであろうか。

公称上の射程距離は800m程度となっており、ほかの同時期の狙撃銃とそん色はない。
精度は自動銃ゆえにサブMOAとまではいかないが、マンターゲット相手には遠距離でも必要十分。
ただし1967年までは狙撃専用の弾薬が存在しなかったため、機関銃等向けの標準弾では100mで直径8~10cm以内への集弾(MOA換算で2.5~3.5程度)が適正とされた。
専用弾である7N1弾だと300mで10~12cm(MOA換算で1.15~1.38)となり、狙撃銃らしい値になる。
後継の7N14(99年製)では1.04~1.24MOAまで向上される。
最長狙撃記録がアフガン派兵時の1350mとされているが納得できる値であろう*3

ただし2025年現在サブMOAを達成している自動狙撃銃はそこそこ存在する。同時期のPSG-1(1972~)等とともにそろそろついていけない頃となってきた…ように思われる。

スコープ

標準的なスコープは同時に採用されたPSO-1。倍率は4倍でレティクルは逆V字。全長375mm。
初期型には赤外線検知フィルターが内蔵されていた(暗視装置といえる程度ではない)。敵や味方の赤外線照射を確認することができたが、パッシブ型*4暗視装置の台頭によりオミットされていった。
その他にも暗視装置付きのNSPU(-M)、NSPU-3などが存在。



現在

ロシア軍では2023年に後継のSVChに移行した。また、要人狙撃の必要性も増してきたためボルトアクション式のSV-98も開発されている。



派生モデル

  • SVDM
合板部品をポリマーフレームに置き換え、反動の軽減等を図った近代化モデル。

  • SVDS
折り畳み可能なストックに変更したモデル。全長1137mm、折り畳むと875mmとなる。

  • SVU(Ots-03)、SVU-A、SVU-AS
KBP社開発のブルパップモデル。サプレッサーも装着可能でSVU-Aらはフルオートに対応している。

  • Tigr(タイガー)シリーズ
民間用の猟銃に改修したもの。
西側への販売も視野に入れているのか7.62mmNATO弾に対応したモデルも販売されている。

そっくりさん

ソ連製の銃器では比較的後発なためか、対ソ国家関係の悪化のあおりを受けて「AKはライセンス生産させてもらえたけどSVDはダメだった」という国が多かった。
なんとかしてSVDと同等の思想で動ける銃を欲した結果、似たものを開発して運用した*5

  • 79式狙撃歩槍、85式狙撃歩槍
中国のノリンコ(中国北方工業公司)が中越戦争中にベトナム軍のSVDを鹵獲、リバースエンジニアリングによってコピーした(79式)とその発展型(85式)。

  • ツァスタバM91
ユーゴスラビアのツァスタバ社による発展型…のはずだが、内部構造がAKMと同様で精度は申し訳程度しかない。ハンドガードの形状で見分けられる。

  • PSL54
ルーマニア製。こちらはRPKベースで、バツ印の補強ついたマガジンとハンドガードの形状で見分けられる。



フィクション

緋弾のアリア(レキ)
GUNSLINGER GIRL(リコ。ビルの屋上から向いのビルの一室を狙う場面で登場。意外とリアリティな距離といえる)
Angelical Pendulum(テレネッツァ)
メタルギアソリッド(3、4、PO、PW)
狼/男たちの挽歌・最終章(ジェフリー)
Grand Theft Auto Vice City Stories(“レーザースナイパーライフル”の名前で作中に登場する)
サイコメトラーEIJI(『テロリストの挽歌』シリーズで使用された)
マクロスF(正確には違うが、ミハエル機の使用するライフルの名前が『ドラグノフ・アンチマテリアルスナイパーライフル』)
ウサビッチ(ボリス。実際にはまず無理な連射でキレネンコの投擲を見事迎撃)
バイオハザード5
Call of Duty(4MW、MW2、BO、MW3)
BLACK LAGOON (ホテル・モスクワ(ロシア人マフィア)ロアナプラ支部の幹部連中、通称「遊撃隊(ヴィソトニキ)」のメンバーが使用。ノベライズ1巻でバラライカの姉御も褒めちぎっている)

エアガンでは、主に海外メーカーのものが出回っている。特に、香港のRS(リアルソード)社から出ているものは異常な程の出来映え。その分、値も張るが…
値段に見合うクオリティーなので、是非とも一廷手に入れてみてはいかがだろうか?



余談

  • 呼称
「SVDドラグノフ狙撃銃」や「SVDドラグノフ」と呼ばれることがあるが、「馬に乗馬する」や「頭痛が痛い」と同じなので気をつけよう。
しかし「SVD」というと線形代数学における行列の分解の一手法でもあるらしい。誠に厄介である。
かといって「ドラグノフ」というと鉄拳6のキャラでもある。誠に(ry

  • 日本では
無論自衛隊警察では購入も採用もされていないと思われる。
猟銃としてはタイガーシリーズの所持が許可された実績があるが、容易には難しいだろう。*6*7



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最終更新:2025年07月11日 23:31

*1 兵員輸送車やヘリによる迅速な移動が可能な歩兵とその部隊

*2 M24で5kg程度

*3 1MOAの精度で約39.15cmの散布界となる。人間の胴体と同じ程度なので体のどこかには当たるが、バイタルのみを狙うとすればかなりの難易度となる

*4 いわゆる第二世代

*5 兵器をソ連色で近代化したので、それに合致する兵器でないとソ連側のドクトリンのアップデートを模倣できなくなる

*6 すべてライフル扱いなので 日本の猟銃所持資格保持+散弾銃を10年以上所持 の条件が必要

*7 装弾数5+1発が限度だが、マガジンを変えれば増やせるという理屈で所持が認められない事例もある。