アイドルホース(競走馬のぬいぐるみ)

登録日:2025/07/19 Sat 14:51:00
更新日:2025/08/12 Tue 11:59:58NEW!
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「競馬が好きな私は!」


アイドルホースとは、2012年から発売された競走馬をモデルにしたぬいぐるみの商品シリーズ名である。
株式会社中央競馬ピーアール・センター(略称:PRC)が制作し、全国のJRA競馬場やウインズ、ターフィー通販クラブで販売されている。

「アイドルホース」という言葉は、元々ハイセイコーやオグリキャップといった競走馬の枠を越えてアイドル的な人気を博した競走馬の称号であり、本シリーズの語源でもある。
本稿で注釈なく「アイドルホース」と記載した場合はぬいぐるみシリーズを指す。

+ 目次

【基本仕様】

画像出典:ターフィー通販クラブ「アイドルホース【アーモンドアイ/'20ジャパンカップ/9冠Ver】(Mサイズ)」商品詳細イメージ

アイドルホースの特徴としては、競走馬の勝利したレースと馬番を記したゼッケンを身に付けて、その時の姿かたちや馬具を再現したうえでデフォルメした外見になっている。

アイドルホースのサイズはSサイズ・Mサイズ・Lサイズ、受注生産限定の「でかもっち*1」の4種類でそれぞれ
  • Sサイズは全長約13cm(頭から尾先まで)×幅約8.5cm×奥行約15cm(脚から尾先まで)+かばん等に付けられるボールチェーン付き
  • Mサイズは全長約21cm(頭から尾先まで)×幅約17cm×奥行約21cm(脚から尾先まで)
  • Lサイズは全長約32cm(頭から尾先まで)×幅約21cm×奥行約27cm(脚から尾先まで)
  • でかもっちは全長約50cm(頭から尾先まで)×幅約60cm×胴回り82cm 重量約1.3kg

で統一されており、サイズが同じであればリアル黒王号だったキタサンブラックだろうがちっちゃすぎなメロディーレーンだろうが大きさは同じである。

毛色や顔や脚の白い部分の形や大きさ、メンコやシャドーロール、鼻革、バンテージなどの装着品といった競走馬ごとの個性が忠実に再現されており、1頭1頭異なる毛色をできるだけ再現するため、既成の生地見本に合うものがない場合は、色見本帳で探した色の生地を特別に作られるという徹底ぶりである。
J・GⅠ馬で初のアイドルホース制作となったオジュウチョウサンはトレードマークのチークピーシーズだけでなく、初めての試みとして装着品に大生垣そのものが付けられている。

【バリエーション】

競走馬によってはGⅠを複数勝利したことでアイドルホースのバージョンも複数制作されることもあり、アーモンドアイは2018年オークス、2018年秋華賞(ティアラ付き)、2018年ジャパンカップ(アイドルホース10周年展タグ付き)、2019年ドバイターフ、2019年天皇賞(秋)、2020年ジャパンカップ(9冠タグ付き)と数多くのバージョンが制作されている。
ゴールドシップが2012年有馬記念と2015年天皇賞(春)で芦毛の毛色が違うのに合わせてそれぞれ毛色を変えて制作されるといった、同じ競走馬でもゼッケン以外の違いを見比べるのも楽しみ方の一つだろう。
アーモンドアイのバージョンによってはティアラやタグが付いているように、ディープインパクトオルフェーヴルジェンティルドンナのアイドルホース10周年記念バージョンには三冠馬三冠牝馬の証である王冠・ティアラや赤マント(着脱可)、イクイノックスには2023年ドバイシーマクラシック2023年ジャパンカップでロンジンワールドベストレースホースランキング1位を記念したプレート*2といった、バージョンによっては記念品として馬具とは別にアイドルホースならではの装飾品が付くこともある。

ゼッケンに記され外見が参照されるレースはその競走馬が勝利したものに限られるのだが、「優駿」今昔名バイプレイヤー特集とのコラボで制作されたナイスネイチャは例外で勝利したレースではなく3年連続3着だった有馬記念のバージョンであり、さらにはSサイズは1回目の1991年第36回、Mサイズは2回目の1992年第37回、Lサイズは3回目の1993年第38回とサイズ毎に馬具やゼッケンが異なる特別仕様となっている。


【製品化の選定基準】

PRCによると「競走馬の選定に明確なルールは設けていない」とのことだが、現役馬にはラインナップから推測される基準がある。
推定されている基準は以下の通り。
  • 日本ダービー、オークス、有馬記念の勝ち馬
  • 「JRA主催の平地国際G1」と「海外主催の平地国際G1」を合計2勝以上した競走馬
  • 後述のアイドルホースオーディションで上位に選出された競走馬

この基準は絶対のものではなく、特に引退済み競走馬が製作される際は基準が適応されない。
上記の基準を満たさず製品化された例としては以下のものがある。

  • ジャパンカップの勝ち馬*3
  • GⅠ開催の周年記念*4
  • 競馬場開設の周年記念*5
  • 種牡馬実績を称えたスタリオンシリーズ*6
  • 世界記録など顕著な記録を残した馬(ソダシ*7、ウシュバテソーロ*8)
  • オジュウチョウサン*9

サラブレッド以外では、馬の博物館(神奈川県横浜市・根岸競馬記念公苑)にて繋養されている日本在来馬の「野間馬*10のミカン」、「北海道和種(道産子)*11のゆき」、「与那国馬*12のサンゴ」が製品化。
さらに馬として実在はしていないオリジナルキャラクターであるイチゴケーキチャンや、2014年の午年に限定販売された午年のアイドルホースも制作されている。

一方で、地方競馬のGⅠ級(いわゆるJpnⅠ)、大井競馬場開催の国際GⅠである東京大賞典、障害競走のJ・GⅠである中山グランドジャンプや中山大障害を合計2勝以上していても、JRA・海外GⅠを勝利していなければアイドルホースに選定されないようであり、これに該当する東京大賞典4連覇のオメガパフューム、J・GⅠ2勝以上のアップトゥデイトなどはアイドルホースが制作されていない。
地方主催がカウントされないのは、制作会社がJRAの子会社なので、選定基準にJRAかどうかが関わってくるのは仕方がないところがある。
障害馬に関しては障害レースの人気が低い*13ことによるものだろうか。障害の人気が増えれば変わる……かもしれない。

【非売品】

上記の条件に該当しない場合でもアイドルホースが現存している競走馬が存在する。
これは個人馬主や一口クラブからの特注で制作されて関係者に配布されたり、何かしらのイベントやキャンペーン用に製作されたりと、PRCに特注されて生産されたものである。

一例としては2022年1月に中山競馬場で開催された「2021年中山HEROウェブ抽選会」のイベント当選品として「2021年に中山のG1を勝利した延べ6頭(エフフォーリア×2・オジュウチョウサン・メイショウダッサイ・ピクシーナイト・キラーアビリティ)」のアイドルホースが制作された。
うちエフフォーリア2021年有馬記念仕様は一般販売されたが、皐月賞仕様はこのイベントの当選品のみ。
オジュウチョウサンも一般販売品が2019年中山GJ仕様に対してキャンペーン品は21年仕様。
メイショウダッサイ・ピクシーナイト・キラーアビリティのアイドルホースは一般販売されていないため、現存するのはこの当選品だけである。

このように限定品が存在するため、本シリーズは何種類出ているのかはPRC以外把握できない状態となっている。

【アイドルホースオーディション】

2021年に京都競馬場が改修中だった中で、京都競馬場の主催でWeb投票によるアイドルホースオーディションが開催。
これが好評だったため、第3回目となる2023年からは主催が京都競馬場からPRCに変更され継続開催している。

  • 2021-2022年
初期のノミネート基準は「これまで未制作、または過去に制作されていても現在販売されていないJRAの競走馬」。
予選(STEP1)の上位10頭が本戦(STEP2)に進み、本戦(STEP2)の第1位~第5位の5頭がアイドルホース(Mサイズのみ)に選定される。

投票期間中に一般販売されていた競走馬は対象外だった他、斑模様で独特の毛色が特徴的だったブチコはSTEP1で第9位にランクインしたものの毛色の再現が困難ということで残念ながら以降のオーディションも含めて除外となってしまい、現在は立体物のグッズは作れないものの、その埋め合わせか白毛一族の一員としてアイドルホースのイラストがグッズに描かれることはある。『お馬deキティちゃん』でブチコが作られてたのは何だったのか

  • 2023-2024年
ノミネート基準は「これまで未制作であるJRAの競走馬」に変更。また「現役馬部門」と「引退馬部門」に別れて開催されることになった。
また「現役馬」とは「オーディション開始時点でJRA所属」の意味で、「過去JRAにいたけど今は地方競馬所属の地方現役馬」は引退馬部門で受け入れる事になった。

それぞれの部門でWeb投票を行い、予選(STEP1)から現役馬上位5頭と引退馬上位3頭が本戦(STEP2)に進み、本戦(STEP2)の現役馬第1位・第2位と引退馬第1位の3頭がアイドルホース(Mサイズのみ)に選定される。

過去に一般販売された競走馬や今後に販売予定がある競走馬、毛色の再現が難しい馬実質ブチコ名指しは対象外であり、投票期間中や最終結果発表の時点で競走馬登録を抹消されていても開催当初時点で現役だった場合は現役馬部門として扱われる。

同時並行で「Mサイズのみ販売されているアイドルホース」を対象として「Sサイズ選抜オーディション」がスタート。
このオーディションは本戦のみであり、第1位の1頭が制作される。

  • 2025年
ノミネート基準に「JRAで最低1勝している」が条件として追加された。

過去のオーディション結果


+ 2021年
第1位 ヨシオ 19434票
第2位 メロディーレーン 14881票
第3位 キセキ 14661票
第4位 ライスシャワー 12898票
第5位 カレンブーケドール 10014票

+ 2022年
第1位 メイケイエール 40903票
第2位 ゴースト 32734票
第3位 ディープボンド 26068票
第4位 ヨカヨカ 25641票
第5位 ステイゴールド 24515票

+ 2023年
現役馬部門第1位 アフリカンゴールド 30,545票
現役馬部門第2位 ジャックドール 19,824票

引退馬部門第1位 リフレイム 19,797票

Sサイズ選抜第1位 メロディーレーン 6,865票

+ 2024年
現役馬部門第1位 マイネルファンロン 13,469票
現役馬部門第2位 ハヤヤッコ*14 10,215票

引退馬部門第1位 シルヴァーソニック 23,457票

Sサイズ選抜第1位 メイケイエール 3,975票


【余談】

【PRC以外の競走馬ぬいぐるみ】

「見たことあるぬいぐるみは違うポーズしてたような」という記憶をお持ちの方もいるかもしれない。
それはPRC以外も競走馬のぬいぐるみを扱っているため。著名なものとしては以下の例がある。

  • アバンティー社→エーアンドエム社製
座ってから前に伏せている感じの前傾姿勢を取っているものがアバンティー社ぬいぐるみの特徴。
「馬のぬいぐるみ」という点では実はこちらの方がはるかに早く製品化している。なんせオグリブームの際に売れたオグリぬいぐるみの製作会社こそアバンティー社である。なので「昔見た気がする」という記憶の場合ほぼこれだろう。
そのアバンティーがぬいぐるみ製作事業から撤退した後に事業継承をしたのがエーアンドエム社。
2021年ごろにはエーアンドエム社製品がゲーセンのプライズとして流通していた。
2024年にエーアンドエムの閉業が確認されたため、現在は新品でこちらの型を入手する方法はない。

  • エスケイジャパン製「サラブレッドコレクション」
2021年ごろからゲーセンのプライズ品として流通を開始したのがこのシリーズ。基本的なポーズの特徴は四つ足でしっかり立っている物が多い。
PRCはプライズに出していないので「ゲーセンで見た」という場合はほぼこの製品だろう。
アイドルホースシリーズと被らない馬を製品化することが多く、特にアイドルホース基準に引っ掛からない戦績の馬のファンはこちらにお世話になることが多い。

【福島競馬場ターフィーショップ】

福島競馬場のターフィーショップ前ディスプレイはアイドルホースを使ったディスプレイで特に有名。
編み物を使った仮装をしていたり、時事に合わせたテーマでアイドルホースたちを使ったディスプレイをしている。
一般ファンの撮影が多いため直接の画像掲載は避けるが、画像検索で見ていただけると様々な展示が出てくるので必見である。

【競馬が好きな私は!】

アイドルホースをはじめ競馬ファン向けのグッズを販売するターフィー通販クラブはアニメによるCMを制作している。ナレーション担当は松村夏紀。
内容としては、「競馬ファンの成人女性がグッズをお供に応援を行う」というものなのだが…


\競馬が好きな私は!/
画像出典:ターフィー通販クラブYouTubeチャンネル「ターフィー通販クラブCM」

アニメの絵柄こそファンシーな感じであるが、その実「競馬ファン女性が自宅や現場のみならず、競馬場に向かう電車の中で堂々とアイドルホースを膝に抱えて席に座るという極まった上級者っぷりを見せつける」という内容だったために、CMを見た競馬ファンは衝撃を受け「この女は『やべー女』」だとネタにし、最終的にそのままこの女性の通称が「やべー女」と化した。
なお、電車内で見せびらかされているアイドルホースはオルフェーヴルだったため、この女性が「オルフェーヴルの熱心なファンの代表」としても扱われることもあるという。なんという風評被害。
ちなみに公式での彼女の名称は「競馬が好きな私」となっている。
別バージョンのCMにも引き続き登場しており、さらにはアイドルホースオーディション2023の際には特設サイトに登場、挙げ句に彼女自体がアクリルスタンド・アクリルフォトフレームグッズになったこともある。


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最終更新:2025年08月12日 11:59

*1 実物にちゃんとアイドルホースのタグがついているためシリーズにカウントする。

*2 2023年ドバイシーマクラシックのバージョンは初回生産分のみ

*3 ヴェラアズールは2022年ジャパンカップでGⅠ初勝利となった時点でアイドルホース制作が決定したためかその半年後にはアイドルホースの一般発売が実現している。シュヴァルグランはアイドルホース10周年展を記念して、ジャパンカップ勝ち馬としてアーモンドアイ、エピファネイアと並んで10周年展タグ付きのアイドルホースが制作された。

*4 2013年第80回日本ダービーの記念としてトウカイテイオーのアイドルホースが制作された。10年後の2023年第90回日本ダービーでトウカイテイオーのアイドルホースがリニューアル制作されたタイミングで、トウカイテイオーの父であるシンボリルドルフのアイドルホースが初めて制作された。

*5 中京競馬場開設70周年を記念してキングヘイローのアイドルホースが制作された。

*6 第一弾としてキングカメハメハハーツクライ、第二弾としてドゥラメンテ、第三弾としてクロフネのアイドルホースが制作された。

*7 初G1の阪神ジュベナイルフィリーズ勝利の時点で製作が決定。「世界初の『白毛馬による国際G1勝利』」の付加価値によるものと思われる。最終的にG1を3勝したため特例がなくても権利は勝ち取っている。

*8 基準通りだとドバイワールドカップの1勝のみ、残りのG1は全て地方開催。製品化の際に「日本馬最高獲得賞金を記念したプレート付き」と賞金額を称えるプレートが付いているので、おそらくこれを理由に採用された。

*9 J・G1成績のみで基準を飛び越えてきた特例中の特例、製品ページには「中山グランドジャンプ4連覇を記念したアイドルホース」と記載。まず障害馬の製品化が史上初な上にJ・G14連覇は類例がなく、これから生まれるかわからない前人未踏の記録のせいで列記しようとすると単記にせざるを得ないのである。

*10 愛媛県今治市の指定文化財となっている日本在来馬の一種。野間馬はポニーに分類される小型で毛色は主に栗毛と鹿毛。

*11 北海道を中心に飼育されている日本在来馬の一種。北海道和種は日本在来馬の中では比較的大型(それでもサラブレッドよりは小型だが)で丈夫な体質と豊富な毛色が特徴。

*12 与那国町の天然記念物に指定されている日本在来種。与那国馬はポニーに分類される小型で毛色は主に鹿毛。

*13 同じ2025年4月開催の平地G1とJ・G1で馬券売上を比較すると、皐月賞が232億8937万7500円、中山GJで20億826万1900円と10倍以上の差がある。

*14 本オーディション終了時点重賞を2勝しており、2勝目の函館記念仕様で製作中にアルゼンチン共和国杯を勝利。これに伴い「開発途中の嬉しい仕様変更」としてアルゼンチン共和国杯の仕様でアイドルホースが制作されることになった。