フェッチランド/Fetch Land(MtG)

登録日:2012/01/30 Mon 18:00:33
更新日:2025/03/20 Thu 08:55:49
所要時間:約 15 分で読めます




フェッチランド、直訳すると「 取ってくる土地 」とは、TCG元祖であるマジック・ザ・ギャザリングに存在する、特殊土地のサイクルである。


概要

自身を生け贄に捧げることによって、ライブラリーから特定の土地カードを戦場に出す能力を持つ土地を指す。
土地から出したマナをコストにそのマナの色に対応したカードを使うマジックでは、その土地が出せるマナの色は非常に重要で、2色のマナを出せる土地は多色化に貢献するため非常に便利である。

ミラージュ版(1996年発売)

氾濫原/Flood Plain
土地
氾濫原はタップ状態で戦場に出る。
(T)、氾濫原を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから平地カード1枚かカード1枚を探し、それを戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。

以下4種、同系能力のサイクル

湿原の大河/Bad River
岩山のタール坑/Rocky Tar Pit
山峡/Mountain Valley
草原/Grasslands

以上5種はすべてアンコモン。
文字通り、ライブラリーから土地を「取ってくる」土地である。
タップインであるとはいえ、取ってこれる土地が友好2色であるのでこれが2色土地のサイクルであることがわかる。
また、この「島」などと言うのはカード名ではなく基本土地タイプを意味しており、基本土地タイプを持った特殊土地…例えば、あのデュアルランドもサーチ可能。

「ラヴニカへの回帰」が発売される前にショックランドの再録が熱望された理由のひとつが、フェッチランドから持ってこれる代用デュアルランドとしての需要である。


…あれ?これ…2色地形じゃなくね…?

例えば、ならば…

バッドランドタイサバンナ山島バイユープラトー熱帯の島

をサーチ可能…アレ…?

もはや5色地形である。
ミラージュのフェッチランドは、デュアルランドと一緒に使える環境ではよく使われた。簡単に色をタッチでき、墓地を肥やし、ライブラリーを圧縮しつつ切り直せるのだから。
しかしそれ自身がタップインなため、アグレッシブなビートダウンではあまり見られなかった。




オンスロートで僅かなライフコストの代わりにアンタップインのものが登場。アグレッシブなデッキでも採用できるようになった。

オンスロート版(2002年発売)

Polluted Delta / 汚染された三角州
土地
(T)、1点のライフを支払う,汚染された三角州を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーからカード1枚かカード1枚を探し、それを戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。

溢れかえる岸辺/Flooded Strand
汚染された三角州/Polluted Delta
血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire
樹木茂る山麓/Wooded Foothills
吹きさらしの荒野/Windswept Heath

これらはアンタップインの2色土地ゆえにレアであり、デュアルランドやショックランドと共に使える環境では…それこそ見ない時が無いくらいに使われた。
また、スタンダードでは1つ前のオデッセイ・ブロックが墓地をテーマとしていたことも追い風だった。

だが、人々はオンスロート仕様フェッチランドの対抗色版を欲した。
そしてそれは「土地」をテーマとした*1とあるブロックにて現れる。

ゼンディカー版(2009年発売)

湿地の干潟/Marsh Flats
沸騰する小湖/Scalding Tarn
新緑の地下墓地/Verdant Catacombs
乾燥台地/Arid Mesa
霧深い雨林/Misty Rainforest

能力はオンスロート版とまったく同じで、対応する土地タイプが対抗色のものに置き換わっている。対抗色のデッキならすんなり入る。

普通フェッチランドと言えば、使用実績からオンスロート版とゼンディカー版を指し、ミラージュ版は旧フェッチや元祖フェッチと呼ばれたりする。
また、他にもいくつか亜種が存在する。

その他の派生種

Thawing Glaciers (融けゆく氷河)
土地
Thawing Glaciersはタップ状態で戦場に出る。
(1),(T):あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚探し、そのカードをタップ状態で戦場に出す。その後、ライブラリーを切り直す。
次のクリンナップ・ステップの開始時に、Thawing Glaciersをオーナーの手札に戻す。

フェッチランドの祖先とも言えるカード。アイスエイジ収録のレア。
これ自身がタップインで、能力の発動にマナ・コストを要求し、出てくる土地もタップインではあるが、このカードを生け贄にせず代わりに使用後に手札に戻すため何度でも使えるのがフェッチランドとの最大の差別化点。ちなみに終了フェイズ内のクリンナップ・ステップに手札に戻すため、ターン中にアンタップする手段があれば1ターンに複数回効果を使うこともできる。
カウンターポスト】などのコントロールデッキのマナ基盤として活躍した。


堆石堤 / Terminal Moraine
土地
(T):(◇)を加える。
(2),(T),堆石堤を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚探し、それをタップ状態で戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。

『プレーンシフト』で登場。アンコモン。
『イニストラードを覆う影』では同型再版の《ねじれ地帯》がコモンで登場し、『指輪物語:中つ国の伝承』では起動が1マナ軽くなった上位互換の《ホビット庄の段々畑》、『イクサラン:失われし洞窟』では加えて洞窟タイプを得た《有望な鉱脈》が登場した。

能力の発動にマナ・コストを要求する点や基本土地しかサーチできずタップインである点は《Thawing Glaciers》とも共通する。

クローサの境界 / Krosan Verge
土地
クローサの境界はタップ状態で戦場に出る。
(T):(◇)を加える。
(2),(T),クローサの境界を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから、・カード1枚と平地・カードを1枚探し、それらをタップ状態で戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。

ジャッジメントで登場。アンコモン。
亜種の中では珍しい特殊土地をサーチできるカード。これ自身がタップ状態で出てくる、起動に2マナ必要、取ってくる土地もタップ状態で出る、とやや悠長ではあるがアドバンテージを得られる独自の強みがある。フェッチランドの中でも異端児と言える。

バントの全景 / Bant Panorama
土地
(T):(◇)を加える。
(1)、(T)、バントの全景を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから基本森カード1枚か基本平地カード1枚か基本島カード1枚を探し、それをタップ状態で戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。

アラーラの断片で登場。
同様の能力を持つエスパーの全景、グリクシスの全景、ジャンドの全景、ナヤの全景と合わせて全景サイクルと呼ばれ、弧三色のサイクルをなす。コモン。

広漠なる変幻地 / Terramorphic Expanse
土地
(T)、広漠なる変幻地を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚探し、それをタップ状態で戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。

時のらせんで登場。コモン。
エルドラージ覚醒では同型再版の《進化する未開地/Evolving Wilds》が同じくコモンで登場した。進化する未開地はその後もたびたび再録されスタンダードの常連に。コモンであるため、上位互換の《脱出トンネル/Escape Tunnel》が登場するまではPauperでもよく見かけるカードであった。

Maze's End / 迷路の終わり
土地
迷路の終わりはタップ状態で戦場に出る。
(T):(◇)を加える。
(3),(T),迷路の終わりをオーナーの手札に戻す:あなたのライブラリーから門(Gate)カードを1枚探し、それを戦場に出し、その後ライブラリーを切り直す。あなたが異なる名前の門を10個以上コントロールしているなら、あなたはこのゲームに勝利する。

ドラゴンの迷路で登場。レア。
門専用の《Thawing Glaciers》とも言うべきカード。起動コストは(3)と最も重いが、なんとこれ自身に特殊勝利効果が付いている。カード・デザイン上はタップイン2色土地の「ギルド門」サイクルを参照する前提だが、後に登場した門カードでも問題なくサーチでき、特殊勝利のカウントに使用することができる。
初出の際には特殊勝利を狙った5色重コントロールデッキ【メイズエンド】のキーカードとして使用された。ロマンデッキに見えてブロック構築ではそれなりの結果を残している。

虹色の眺望 / Prismatic Vista
土地
(T)、1点のライフを支払う,虹色の眺望を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚探して戦場に出し、その後あなたのライブラリーを切り直す。

モダンホライゾンで登場。レア。
1点のライフを代償にサーチ先がアンタップインになった広漠なる変幻地とも言うべき土地。モダンホライゾンのレアだけあって亜種の中では最強クラス。ただし、モダン以下の環境でしか使えないため、オンスロート版とゼンディカー版が強力なライバルとして立ちはだかる。

寓話の小道 / Fabled Passage
土地
(T)、寓話の小道を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚探し、それをタップ状態で戦場に出し、その後あなたのライブラリーを切り直す。その後、あなたが土地を4つ以上コントロールしているなら、その土地をアンタップする。

エルドレインの王権で登場。レア。
条件を満たせばサーチした土地をアンタップできる。広漠なる変幻地の上位互換であり、中盤以降のテンポ・アドバンテージに大きく差が出る。スタンダードで使える(使えた)亜種の中では最強と言っていい性能を誇る。
登場時のスタンダード環境では多色デッキならば大抵のデッキに採用されており、採用率は極めて高い。色基盤の安定に加え、墓地肥やしや上陸能力を2回誘発できるという強みがあり、2大パワークリーチャーである《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《創造の座、オムナス》との相性が非常に良い。オムナスが禁止にされる前は、禁止候補にこのカードを挙げる意見すら聞かれたほどであった。
スタンダードよりも多色土地の選択肢が豊富なヒストリックやパイオニアでも採用実績があり、特にヒストリックにおいては《渦まく知識》との相性の良さが高く評価されている。しかしながら、最終的には大半の青いデッキに投入されるほどになってしまったため、《渦まく知識》は禁止となった。

常夜会一家の店先/Obscura Storefront
土地
常夜会一家の店先が戦場に出たとき、これを生け贄に捧げる。そうしたとき、あなたのライブラリーから基本であり平地(Plains)や島(Island)や沼(Swamp)であるカード1枚を探し、タップ状態で戦場に出す。その後、ライブラリーを切り直し、あなたは1点のライフを得る。

ニューカペナの街角で登場。コモン。
持ってこられるのが弧3色のいずれかの基本土地限定でタップインだがライフ1点回復のおまけ付き。同様の能力を持つ貴顕廊一家の劇場、土建組一家の監督所、舞台座一家の中庭、斡旋屋一家の潜伏先と合わせてサイクルを形成している。
また、他のフェッチランドが起動型能力で生贄に捧げるのに対し、このサイクルは戦場に出た時に誘発する能力(ETB能力)である。そのためこれ自体がタップインで出された場合や、起動型能力の使用に制限が課せられた状況であっても機能する。一方で上陸を好きなタイミングで誘発させることが出来ないという欠点も存在する。
長らくリミテ用と見なされていたカードだが、これらの性質をフル活用したランプデッキ【世界魂ランプ】のキーカードとして活躍した。

安息地帯/Tranquil Landscape
土地
(T):(◇)を加える。
(T),安息地帯を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから基本であり森(Forest)や平地(Plains)や島(Island)であるカード1枚を探し、タップ状態で戦場に出す。その後、ライブラリーを切り直す。
サイクリング(緑)(白)(青)((緑)(白)(青),このカードを捨てる:カード1枚を引く。)

モダンホライゾン3で登場。コモン。
弧3色と楔3色の両方で地帯サイクルをなす。全景サイクルと比べると、サーチにマナが不要でサイクリングがついているため、上位互換になる。モダンホライゾン3には、エルドラージ系の無色マナを要求するカードが多数収録されているため、リミテッドでは敢えてサーチせずに無色マナ源として利用するもの有効。


与えた影響について

原則、オンスロート版とゼンディカー版の話。(以下区別時は友好色、対抗色フェッチと称する)

フェッチランドという俗称で呼ばれるカードはこのオンスロート・ゼンディカーの10種であることが圧倒的に多い。

これらフェッチランドは、基本土地タイプを持つ多色地形カード*2の使える環境*3で、とんでもない採用率を誇る。
アンタップインの2色地形であることも重要だが、何より
  • デュアルランドなどの「基本土地タイプを持つ2色地形」との相性が抜群で、簡単にデッキを多色化できる

  • 「手札と相談して必要な色を持ってくる」事が可能なので、事故率の軽減に役に立つ

  • 基本土地に化けることで、特殊地形対策を回避できる

  • シャッフル手段になる*4

  • 上陸*5とのシナジーが大きい

  • 墓地肥やしができる
という利点が大きいため、多色デッキはおろか単色デッキですら多用され、デッキ内の土地の半分がフェッチランド、ということも珍しくない。
一時期のレガシーでは「土地構成が、同じデュアルランド4枚+基本土地3枚+フェッチランド10枚の17枚」などというデッキすら存在した*6
(ただしライブラリー圧縮については、1枚2枚では効果が薄く無視するべき。何らかの手段で使い回すなど大きく圧縮できるのならば話は別であるが。)

例えば、赤単バーンなら
  • 上陸*7と強化される火力呪文がある

  • インスタントタイミングで上陸を達成できるため、上記の呪文を相手ターンに唱えられる

  • 墓地を燃料に火力を撃つクリーチャーがいる
ためにフェッチを積む。
もちろん、この赤単バーンに優秀なクリーチャーのタルモゴイフを入れたい!と思ったとき、赤絡みのフェッチ*8が10枚程入っているなら、基本の山を数枚タイガ*9に変えるだけで、簡単に緑をタッチできてしまうのだ。
デュアルランドの数を水増ししているようなものである。

さて、ここまでべた褒めしてきたフェッチランド、当たり前だが弱点もある。
  • ライブラリーサーチ禁止・制限…マナの出ない土地=紙切れになる

  • 起動型能力の打ち消し…例えば、《もみ消し》が僅か1マナの土地破壊呪文になる
とくに2つ目に上げたもみ消しはレガシー環境でそこそこ見るカード。便利だからとむやみやたらにフェッチを入れたら痛い目を見るハメになる。
1つ目もエイヴンの思考検閲者や《疑念の影》など人気のあるカードもある。
そのため、ライブラリーの切り直しも墓地肥やしも上陸も無縁な単色デッキ(エルフ白ウィニーなど)には非推奨。
もちろん、他の色を加えるなら推奨するが*10

また、たった1点とはいえ、このライフコストも案外バカにならない。
この1点のせいで負ける事だって十分に有り得るし、何回も起動すればその分だけダメージを受ける。
特に、アンタップインのショックランドをサーチする場合は、そちらと合わせて3点ダメージになる。
1ターン目にこの動きをする事は「17点スタート」などと言われ、色が安定する代わりに赤単に焼かれやすくなったりする。
もしフェッチショックインから《思考囲い》を唱えて相手がバーンだったら絶望である。15点スタート…


ちなみにオンスロート版は同エキスパンションのトップレア。色にもよるが、古いため2000〜3000円と少し割高。
ゼンディカー版は比較的新しいため1600円前後とお求めやすい。
レガシーやモダンに参入するならば、是非手にとっていただきたい。


――という時代もあったのだが、パックの絶版により供給がないまま、プレイヤー・コレクターは増えていった為、今や友好色フェッチは安いもので5000円オーバー、青黒の汚染された三角州や青白の溢れかえる岸部は9000円越え。

対抗色フェッチも一時はイベントデッキ(定価2500円)に入っていた時代もあり、スタン当時(4~5年前)は1000円前後*11だったのに青赤の沸騰する小湖は9000円代。青緑の霧深い雨林も8000円、最も使われていないフェッチランドと揶揄されてきた赤白の乾燥台地も4500円となっており、完全にデュアルランドのような値段になってしまった。

まるでバブルのような土地の高騰である。

その後タルキール覇王譚で友好色フェッチが再録され、そちらについては再び値段は落ち着いてきた。タルキール覇王譚自体が相当数剥かれたようで*122019年も値段は安定している。一枚1500~2500円程度はするが。

後に対抗色フェッチもモダンマスターズ2017に再録。その前にもZendikar Expeditionにサイクル全体で収録されている。まあマスターピースシリーズは出なさすぎて値下げには影響しなかったが。
その後モダンホライゾン2でも再録されたことで、現在は友好色と同程度に落ち着いてきている。まあ青絡みである青赤と緑青はそれでも4000円近くするが……

ちなみに、モダン以下では当たり前の光景となっている「フェッチを切って基本土地タイプを持つ二色土地を出す」光景だが、これがスタンダードでも一時期実現していたことがある。それがタルキール覇王譚でのオンスフェッチ再録と、戦乱のゼンディカーでのバトルランドの登場時である。
ちなみにこれは偶然ではなくWotCが狙って行ったことである。

そして結果どうなったかというと…


世紀の多色環境になりました。


まあ予想できた結果ではあった。
スタンダードでは異例ともいえる5が安定運用可能な環境が出来上がったのである。
流石に5色デッキが環境を席巻するほど跋扈していたわけではないが、4色デッキは最早当然というレベルでトーナメントシーンにゴロゴロいた。
またこの超多色環境期に存在した赤タッチ緑の「アタルカ・レッド」が土地の半分以上をフェッチランドにしていたのも興味深い点だろう。
多色デッキのさらなる多色化に貢献する一方、2色であっても色の安定化には大きく寄与し、さらに探査*13関連のカードが使いやすくなるなどといった理由から赤単に近い2色デッキでもフェッチは大いに採用の余地があったのである。

これはスタンダードのデッキの幅が広がったという点では良い方向なのだが、逆にパワーが高くなりすぎてスタンダードへの敷居を上げるという効果も生んでしまった。
あとシャッフルが増えすぎて時間がかかるとか面倒くさいとか不正疑惑で揉めるとか…そのためスタン環境でフェッチランドと基本土地タイプを持つ二色地形の共存は失敗だったと断定している。

この時代のデッキアーキタイプの通称の分かりにくさときたら語り草で、「マルドゥブルー」「ダークジェスカイ」と言われてもまずどの色の組み合わせなのかがなかなか出てこなかった上、「どっちもデッキなのに名前が違うけど具体的にどこが違うんですか?」という質問にめいめいが違った答えを返すというひどい有様だった。
大体は3色のカードの採用についてだったが、プレイヤーとデッキ解説者ですら同じデッキを違うアーキタイプ名で説明することもあり混迷を深めていたのである。
今でこそ「マルドゥ」「ジェスカイ」といえばどの色か分かるプレイヤーが多いと思われるが、当時はタルキール氏族名が楔3色名称として定着し始めた時期だったので「楔3色名称に飛んでいる1色を加える」というのがまだ直感的に分かりにくいプレイヤーが多かった。
実際Team Cygamesの市川ユウキは自作のアブザンレッドに「ナヤブラック」という(当時の人間には)分かりやすいデッキ名をつけて殴りこんでいた。
なお2024年現在でも4色デッキの各組合せの通称的なものは存在していない。弟分のデュエルマスターズに「(文明名)抜き4C」という(比較的通りの良い)4色デッキの通称があるのとは対照的とも言える。

パイオニアでの友好色フェッチの禁止措置やヒストリックでの未収録は、こういった容易な多色環境を防ぎ、「フェッチとそれで持ってこれるアンタップイン可能な土地」という土地の固定化を防ぐことで、下環境との差別化を図る目的がある。
あとモダンとレガシーで出禁になっている某シャーマンの活躍を防ぐためという説もある。

しかしフェッチランドがカードプールにあったスタンダードが必ずしも壊れているかというとそういうわけでもない。
たとえば旧ゼンディカー期(対抗色フェッチ)の時代は「アンタップインの2色地形として使う」「上陸の誘発回数を増やす」という非常にまっとうな使い方で用いられた。
緑単だと思っていたエルフデッキから突然《島》が出てきて《統一された意思》のカウンターで奇襲されるというギミックなど、戦略に奇襲性を与えるためにも使われている。
他にも《精神を刻む者、ジェイス》の±0能力や《思案》でよどんだデッキトップをシャッフルし、常に新鮮な手札を維持するという目的でも多用され、当時の環境での青の躍進に一役買った。
このギミックは強烈で、後に大会上位8人が神ジェイスを4枚ずつ採用する「32ジェイス事件」につながっていく。やっぱり壊れてるじゃないか

ライブラリー、戦場、ライフ、墓地と1枚で様々な領域に作用するため、モダン、エターナル環境への理解度はフェッチランドへの理解度に比例すると言っても過言ではない。
真髄の針に代表される起動能力禁止カードが土地破壊としても機能するという欠点はあるが、これだけ利点があればその程度可愛いもの。フェッチを先に置いておけばそこまで強くは制約受けないし。

一方でライブラリーに自然に手を触れたり、シャッフル中に視線が動いてしまうため積み込みのような不正手段を非常に介入させやすい点には注意。フェッチ環境のモダンやレガシーではときたま見受けられる。プレイヤーが不正を指摘されるきっかけもシャッフル中、つまりフェッチランドの処理中であることはしばしばある。
このようにシャッフル自体がカードゲーム的に結構な負担になる*14ことからシャッフル撲滅を謳っている開発事情に加え、上述の中古価格の高騰問題や再録の難しさもあってWotCにはかなりの悩みのタネのようである。

「もしフェッチランドで持ってこられるものが基本土地しかなかったら?」という単純な二色土地の用途のみを追求したカードは、後に両面ランド(小道サイクル)として実現している。
モードを持つ両面カード(MDFC)という特性上、戦場に出す際に色を決めなければならないという点ではあるが、アンタップイン出せるため1ターン目からテンポは失わないため二色のアグロ(ビートダウン)からでも扱いやすい。フェッチランドが存在しないヒストリック、パイオニアでは1ターン目から確実にアンタップインで出せる二色土地は貴重なこともあって*15、待望のアンタップ二色土地でもあり多色デッキでは多数投入されている。
シャッフルの手間が必要ないため初心者にも優しいし、MTGAでプレイすると両面カード特有のプレイ感の悪さもないと至れり尽くせり。もちろん不正の介入もない。

このようにフェッチランドは成功した土地だが、いくつかの教訓も残している。
その教訓から生まれた土地は強さではフェッチに遠く及ばないが、こういう細やかな部分が結構配慮されているのである。


Tsudoi of Aniwota / アニヲタの集い
土地
(T)、1点のライフを支払う,アニヲタの集いを生け贄に捧げる:あなたのライブラリーからアイン鯖カード1枚かツヴァイ鯖カード1枚を探し、それを戦場に出す。その後あなたはあなたのライブラリーを切り直しながら、この項目を追記・修正する。

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最終更新:2025年03月20日 08:55

*1 土地を出せば能力が誘発するカードが多いなど

*2 つまりはデュアルランドやショックランド

*3 モダンとエターナル(レガシーとヴィンテージ)が主

*4 例えば、精神を刻むもの、ジェイスの第二能力及び、それと同じ効果の渦まく知識というカードと相性がいい

*5 戦場に出ている時に土地が出る、もしくは土地を出したターンに効果を発揮する能力

*6 主に墓地肥やしとデッキシャッフル目的

*7 このターンに戦場に置かれた土地の枚数分得をするという能力を持つカード郡。フェッチを置く→起動して別の土地を置くで、1ターンに2度誘発させることが可能。

*8 樹木茂る山林である必要性は別に無い

*9 モダンなら踏み鳴らされる地

*10 エルフは黒や青をタッチする型も多い。

*11 エターナル需要で青絡みだけは2000円前後だった。

*12 2018年末時点で覇王譚の未開封ボックスが5000円台で投げ売られている状況である。フェッチで値上がることを見越して溜め込まれていたものが放出でもされたのだろうか…

*13 墓地のカードを追放することで(◇)分のマナ支払いに充てられる

*14 たとえば「対戦相手のデッキをシャッフルする際に、うっかり内容を見てしまわないようにデッキから目線を外す」という国際的なマナーがある。また初心者がやりがちな「土地事故を防ぐために土地と呪文を分けて『均等になるように』シャッフルする」というのも「不充分な切り直し」という違反行為に該当する。どちらもカジュアルにプレイしている層は割とやりがちで、他にもデッキを崩したりカードやスリーブに傷がついたり……こういったところに起因するトラブルのことを「負担」と呼んでいる。

*15 ショックランド、ファストランドの二種類のみ、尚ファストランドは対抗色サイクルのみ