範馬勇一郎

登録日:2014/07/21 Mon 17:55:15
更新日:2024/05/04 Sat 20:30:12NEW!
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フフ……


変わらん



我が子相手に 手こずる我が子……



刃牙ちゃんや………

勝てるぜ お前……






範馬勇一郎はバキシリーズの登場人物。
初出は主人公・範馬刃牙とその父、“地上最強の生物”範馬勇次郎の宿命の対決を描くシリーズ第3部・『範馬刃牙』。


目次

◆概要◆


範馬勇次郎の父、即ち刃牙から見れば父方の祖父にあたる人物。
第284話『父、そして…』にてその影を見せ、続く第285話『息子 父 そして…』にてその全貌を顕した。
劇中ではすでに故人であり、範馬親子の闘いの最中に突如幽霊として出現するという驚愕の登場であった。

周囲が騒然とする中、非力ながら勇次郎に立ち向かい力尽きかけていた(何度目だ?)刃牙に上記の激励をかけ、再び消えていった。

生前・戦艦ミズーリ艦上での降伏文書調印をもって沖縄戦が終結後も小さな島で単身抵抗。
その圧倒的な武勇は現場の指揮官が本国へ原子爆弾の使用を打診したほどで、
結果的に旗艦アイオワを奪取・米軍海兵隊を退けたことから知る人ぞ知る伝説上の人物となっており、
御老公こと徳川光成は彼を『勇次郎の以前(まえ)に米国に勝った男』と評した。

後に主要キャラクターの1人『愚地独歩』の若かりし日を描いた公式スピンオフ作品『バキ外伝 拳刃』の第1話にもゲスト出演し、
存命時の彼を見ることができる。当時から武術界・ひいては社会的に『孤高の柔道家』として名の通った人物であったらしく、
独歩とは知己の関係であった(これにより独歩は3代に渡り範馬家の雄たちと付き合いがあることが判明した)。





◆人物像◆


圧倒的な質量の筋肉の鎧を身に纏う重量級の巨漢。勇次郎よりは色白かつ大柄で、
特に異常な肩幅の広さが劇中では何度も強調されている(祖父の幽霊に遭ったというのに刃牙の最初の感想は「肩幅広…ッッ」である)。
どこを見ているとも知れない眠そうな半眼・分厚い唇・寝技の多用で沸いた(潰れたように変形した)耳。
息子の勇次郎と比べると非常に穏やかで茫洋とした顔つきをしているが
時折り見せる人を喰ったような上目使いの表情は良く似ている。
長く伸ばした髪を頭の後ろで無造作に束ねており、出現時及び回想時の服装はパンツ一丁。
『拳刃』ではきちんと革靴にトレンチコート・帽子といった衣服を身に着けているので裸族ではない。


人外の力をその身に宿す範馬の血を引く者。
その背面には代々受け継がれる異形の筋肉が形成した『鬼の貌』を持つ。
以前から勇次郎の語る『巨凶・範馬の血』というキーワードは存在していたが、
それは突然変異的に生まれた勇次郎自身の強固な自負心から放たれたものという見方もあった。
しかし、彼の登場(とエジプト古代遺跡の壁画)により範馬家の力は勇次郎以前から連綿と受け継がれてきたものという設定が公式で明らかにされた。


その怪物的な武勇伝とは裏腹に、とても優しく温和な人物であったことが劇中随所から伝わってくる。

『拳刃』では金が必要になって当時最強のプロレス王・力剛山(モデルは力道山。なお、「力剛山」自体は刃牙シリーズ初期、マウント斗羽の回想*1ですでに登場している)との八百長試合を受け、
結果的に日本武術界の名に泥を塗るという勇次郎や刃牙では考えられない選択をしている。
このことは若き日の独歩には『底無しの鷹揚さ』と評されており、
あまり勝ち負けには拘らない性格であることがわかる。

一方でそれに憤った独歩が勝手に仇を討つと称して、地下闘技場力剛山を決闘で半殺しにし、
八百長であったことを公表させることで名誉を回復できた時は
『自分が本当は強ェってことがバレちまうのは嬉しいもんだ』と晴れやかな表情を見せていた。

勇次郎自身も「俺と父 範馬勇一郎はまったくの別人」「互いが対極に位置する」と断言。
生き方・人生観も正反対だというのだから、
恐らく家族を大切にし、自身の力に少なからぬ自負心を持ちながらも、
それを他者にぶつけ、傷つけてまで己が『地上最強』であることに執着してはいなかったようだ。
バキシリーズの闘士の中では珍しい価値観の持ち主であり、第2部あたりの刃牙にも少し似ている。

仏門に帰依した勇次郎の母親が我が子を恐れたのも、父である勇一郎とはあまりにもかけ離れたその暴力性にショックを受けたからだったとも考えられる。
彼の死について詳細は語られていないが、勇次郎と刃牙にかけた言葉から、我が子との親子喧嘩そのものは経験している様子。
勇次郎は彼のことを『教育熱心だった』とも語っている。



◆戦闘スタイル・実力◆


『拳刃』にて柔道家であることが明かされている。
勇次郎が自分とは使用(つか)技術(わざ)も』対極であると語ってはいたが、劇中で明らかになっている描写を見る限りでは、
技術も知識もなく己の肉体の威力を純粋に叩きつけるという本質そのものは大して変わらないように見える。
ただ、勇一郎が得意としていたのは投げ技で、単純に殴る・蹴るといった打撃を好む勇次郎との差異はその辺にあるのだろう。

対集団戦においてもその猛威は歴然。米軍の上陸部隊を相手に真っ向から素手で立ち向かい、
銃を撃つよりも早くただ腕力に任せて兵士の肉体をまるで野球ボールかコーラの瓶のような感覚で軽々と投擲し、
『投げた人を人にぶつける』ことで一投げで最低3人以上は死傷させている。

さらに233ミリの厚さを誇る軍艦の甲板に、どのような方法かは不明だが人間一人を『犬神家の一族』状態で逆さに突き刺し、
騒ぎに気付き甲板上に上がってきた2000人近い乗員を秘技『ドレス』によって壊滅状態まで追い込んだ。

+ 『ドレス』とはッッッ!
米軍旗艦『アイオワ』甲板上で範馬勇一郎の使った技術。
この名前は体験した米兵のつけた呼び名。現在に至るまで
生還した兵士に脳裏にトラウマとして焼き付くほどの脅威を齎した。

その正体は相手の身体の一部を掴んで超高速で旋回させる人間双節棍(にんげんヌンチャク)』。
あまりにも早く掛け手の周囲を振り回される受け手の『残像』
肉体を『覆い隠す』半透明の『衣服』に見えることから『ドレス』=『装い』の名がつけられたのだという。

掛けられたら最後、強烈な遠心力で血液が頭部に集中することで
航空業界における『レッドアイ』現象が誘発され、
顔中の穴から出血・にも多大なダメージが加わり自発的に脱出することは不可能となる。
それに加え受け手を武器化する勇一郎のスタイルゆえに外部からの攻撃を遮断する
肉の盾『受け手の身長分のリーチを持った打撃武器として集団戦闘でも猛威を発揮したのだと考えられる。
また、無尽蔵の体力を持つ範馬一族が使う場合、敵が多いほど容易に『武器のリロード』が利くことになる。

この技の使用には人一人を軽々と吊り下げ振り回すという規格外の腕力が必須。
それだけならバキワールド最強の筋力を持つと目されるビスケット・オリバもやってのけたが
ドレスはそれに加えて人体を武器に見立て巧みに操るだけの細やかな技量をも要求される。
まさに地上最強の腕力といかなる技術も瞬時に吸収する格闘センスとを兼ね備えた
巨凶・範馬一族にしか実現不可能な秘技である。

『秘伝』『極意』『奥義』といった勿体ぶった技術全般を弱者の工夫と軽蔑する勇次郎も
この技は例外的に『たった一つだけ渋々ながらも俺が誇りたくなる技術(わざ)がある』と称している。

従軍経験があるのかは不明だが、サバイバルにも長けていたらしく、
沖縄本島北東約12キロメートルに位置する周囲1キロメートルにも満たない地図にも載らないような孤島で
延べ1000tにも及ぶ弾薬による攻撃を受け島が焦土と化しても無傷で生存していた。
この辺りはベトナム戦争にて米軍の偏執的な爆撃も掻い潜った若き日の勇次郎を想起させる逸話である。

一方でタフネスにおいては力剛山との八百長試合で空手チョップやストンピングなどによって普通にボコボコにされたように見える程度には負傷しており、
肉体の材質そのものが有機生命体とは異なるとすら思える勇次郎に比べるとまだ人類の範疇には留まっている感がある。
尤も、実際のところ力剛山のクリーンヒットでも大きく後を引くようなダメージは一切受けていなかったため
やはり範馬の血異常な耐久力・回復力は有しており、
容易に避けることが可能な攻撃でも効かないから避けないという選択はまさにグラップラー。
若き日の独歩は勇一郎のそうした大雑把さが大好きだと本人に伝えている。

『拳刃』では独歩の手と顔を見て、かなりの経験を積んだ実力者だと判断するシーンがあり、格闘技の知識も豊富だったことがうかがえる。
また独歩の実力を試すために、目にもとまらぬ速さで服の襟首を掴むという芸当を見せている。




◆余談◆


★モデルとなったのは史上最強の柔道家と称される木村政彦
連載当時作者・板垣恵介も激推ししていたベストセラー「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」の内容に
強い影響を受けていると見られるシーンが範馬刃牙・拳刃ともに散見される(広い肩幅・力剛山との闘いなど)。
また、そこから考えるに『拳刃』における『金が必要だった』というのは病気の妻を救うための医療費であった可能性が高い。


★初登場は次回へのヒキとなるラストページで半透明(霊体)の後姿だけが映るというものだったが、
それと前後してエジプトのピラミッド内部で遺跡発掘隊が『背中に鬼の貌の浮かんだ男の壁画』を発見するという
本筋とは関係の無い極めてどーでもいいミステリアスかつスペクタクルなシーンが描かれており、
彼の正体を『遥か太古の範馬一族の祖先の霊ではないか?』と推理する読者もいた。
…実際に祖先の霊ではあったが、思いのほか近縁ではある。

★彼の登場により、刃牙ワールドには幽霊が存在すること、
彼らは生前の記憶を有し、自発的に生者にコンタクトを取ることが可能なことという新事実が明らかにされた
(単なる集団幻覚にしては勇一郎を知らない刃牙やピクルさえもその存在を感じ取っている)。
…この霊魂の存在の証明が第4部・『刃牙道』において大きなキーとなることになるのだが…

★勇一郎と勇次郎の強さ議論に関してだが、
  • 勇次郎が唐突に人外の強さを手に入れる以前はもっとマイルドだった
  • 人外となった後も宮本武蔵の「無刀」、郭海皇の「消力」といった攻撃を避けていた*2
  • 勇一郎が力剛山に八百長としてリングの上でボコられるのも木村政彦のエピソードへのオマージュ的な要素が強い
  • 勇一郎の戦時中の描写は、力剛山にボコられた際の耐久性と明らかに矛盾している*3
等から、実際の強さは作者板垣のさじ加減によって変動するので、「どっちが強いか」という議論は現段階だと答えがない。

★バキ道では、強さも含めキャラクター性が似ている大関・巨鯨が登場した。





追記・修正は単身で米軍に勝ってからお願いします。

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最終更新:2024年05月04日 20:30

*1 「グラップラー刃牙」四巻

*2 武蔵は、勇次郎を技に追い込む程のパワーを持つピクルに力勝ちする程の怪力を持つ。

*3 周囲1km程度という小さな島に、様々な種類の弾薬を1000t使用される状況において、飛散する岩石なども含めた破壊を避けきるのは不可能に近い話であり、実際に島は原型をなくしてしまっていた。そして、八百長試合や独歩の攻撃で負傷する肉体レベルだと、その状況下において裸一貫にて無傷というのは不可能に思える。