郭海皇

登録日:2014/08/02 Sat 11:11:35
更新日:2025/04/11 Fri 12:34:33
所要時間:約 11 分で読めます






生ま…れ…て、落ち、て、
百と、数十…余…年

五万日!

武を…継続けた

誰…より、も、永く!!!
誰…より、濃く!!!

こいつ(勇次郎)よりも!!!


(かく) 海皇(かいおう)とは、板垣恵介漫画作品・バキシリーズの登場人物の一人。

あの烈海王も含めた中国武術界現役最高峰の達人にして、超武術家…であるが、その実態は後述の活躍と独断専行により「史上最強の老害」の愛称(?)を持つスーパーじじぃである。

CV:緒方賢一(テレビアニメ第2作)

●目次

【来歴】

初登場はシリーズ第二部『バキ -BAKI-』の中国大擂台賽編。
ちなみに大擂台賽とは中国(?)全土の海王達の中で最も強い者が「海王」を改めて「海皇」となる、百年に一度の中国武術の大会のことである。
郭海皇はその大会の選手紹介の際に初めてその名が出た。(敬意を示すためかやたら長い…他のは出身と名前だけなのに…)


慣例とはいえ許されるのか

この最前線に加わりますッッ


百年経ったからまた来たよッッ


正真正銘本物ですッッ

齢 百と四十六ッッ


前ッッ大擂台祭覇者ッッ

ご起立くださいッッ

未だ健在ッッ 海王中の海王ッッ


郭 海皇その人ですッッ


そんな海皇と呼ばれるだけあって100年前の前大擂台賽の優勝者なんだ…ッて、146歳ッッ!?

年齢不詳の達人・渋川剛気とか御年百歳の劉海王ぐらいじゃ作者は満足しなかったようである。…なんでこんなところでインフレするんだろう…
ちなみに、最近新聞に載った世界最高齢はベトナムの121歳の女性なので、ぶっちぎりのギネス記録である。

次いで擂台賽での試合前に、あの地上最強の生物・範馬勇次郎を眼の前にして、

弱いのう…。君は

といきなりの爆弾発言。

つづけてこう言う。

「飢え…渇き…焦がれ…
足りないものに満ちあふれておる
「それを抑えられぬ…、イヤ抑えようともせぬ……」

弱い。
と。

…ここまで言って、よく当時のオーガに殺されずに済んだよ。

一応補足しておくと、郭海皇が「弱い」と言ったのは勇次郎の「心」
勇次郎の事を「日本の強き人」と言っている辺り、勇次郎の「力」自体は認めている。
だが、自分を律する、制御するのも「人間」としての「強さ」の一つならば、
野獣が人の皮を被ったも同然な、自分自身の破壊衝動を全く制御出来ず、相手を「食う(殺す)」事でしか自分を律せなかった今までの勇次郎は確かに「弱かった」
なので、郭海皇の言葉も全くの的外れでは無いのである。
と言うよりも、ほぼ初対面で勇次郎の「本質」を見抜いた郭海皇の洞察力はとんでもないものと言えるだろう。
勇次郎の方も、心の中ではどこかそんな自分に思うところがあったのか、この時点では一言も言い返さなかった。
後で煽ってるけどね。

そして郭海皇は言う。「君に見せてしんぜよう。人が人たる本当の強さ!!

そんなこんなで試合開始。
相手は、ムエタイ・サムワン海王。
ムエタイ。
ムエタイ。
大事なことなので二回言いました。
そう、作者公認のかませ犬・ムエタイ戦士である。なんかもうこの時点で結果が(ry
…大体、ムエタイと中国拳法になんの関係があるんだッ!?
…と、ツッコミたくなる気持ちは分かるが、サムワンの流派は中国拳法の師匠の指導の元、ムエタイをベースに中国拳法のテイストを加えた全く新しいハイブリッド拳法。コンセプト的には愚地克巳が目指している「近代空手*1」と同じである。
中国拳法と関係ない訳では無いので、「海王」の定義的にはセーフ。…なのかもしれない。*2
実際、香港の擂台賽で連続優勝経験もあり、体一つで柱を壊そうと思えば壊せるぐらいの実力と、勇次郎から「未熟ではあるが間違っていない」と認められた精神性もあったのだが…。

で、肝心の試合内容だが、簡易に書くとこうなる。

「シュッ」
バッ
ぷらん
ピシッ

…あれ、なんか変な異音が混じってないかね?


こうして、バキ史上最もみっともない醜態を晒した敗者の屍を乗り超え、郭海皇は堂々(?)の二回戦進出…、となるハズだった。

だが、範馬刃牙・勇次郎を始めとする海外の化け物たちの暴走と、自国の海王たちのあまりの不甲斐なさに郭海皇の怒りが爆発。
海王を認可する中国武術省の人間ら三名を全員整列させ揃って利き腕を出させた所を、長い釘のようなものを突き刺して手刀の一閃で纏めて手首から先を切り落とすという制裁を加えたうえで、
自分の息子・郭春成と、その親友の龍書文を新たに仲間に加えた。邪魔な毛海王は気絶させて排除して
「海皇の名を外に出してはならぬ」として中国連合軍を結成。海皇を決める神聖な大会5vs5中国vs日米マッチに作り替える。滅茶苦茶だッッ!

そのうえ日米勝ち残り組にも無理矢理承諾させるため、「中国連合軍の全勝」という言葉で挑発した。
この所業には、かの勇次郎もあの名言「気の毒すぎてとてもツッコめねェよ!」と1周して気に入り、烈も「今のあなたは最低ですッッッ」と苦言を呈したが、
当の本人は承諾したとわかるや「ヒャッハッハッハ!愉快愉快!受けおったかあのマヌケ共!」と嘲笑。
烈海王の痛烈な批判すら「えーよ(はぁと) それで」と呵呵大笑。

この、あまりといえばあまりにもな身勝手な独断専行により、郭海皇はファンから「史上最強の老害」という有難くない異名を頂戴することになる。
…まぁ、「強さとはワガママを押し通す力!」が作者板垣の信念(その象徴が勇次郎)なので、その法則に従っただけ、とも言えるが…

【ストーリーでの活躍】

○中国連合軍 vs 日米生き残り組



「断じて渡すな海皇の称号!」
「国手郭海皇が緊急チームを編成だァ!!」
「見栄も外聞もありませんッッ」
「勝てばいいのだッッ」

実況も酷い…
各選手は試合場で対戦相手と対峙。大将・郭海皇の相手は…範馬勇次郎
ここで勇次郎、さっきのお返しとばかりにひと言。意外と根に持つタイプ
「郭海皇よ… さきほど裏で俺にほざいたリッパなお言葉 そっくりそのままお返しするぜ」
「今のおまえは足りぬものに満ち満ちている」
という痛烈な返しをされる有様。

こうしてチーム戦が始まるが…

第一試合 龍書文vsビスケット・オリバ
かなり良い勝負をするものの、オリバの顔面頭突きで龍書文ノック・アウト。全勝の誓いが早一敗。
キレ気味に「残り4名4試合 儂が全部やるとまたも暴走しかけたが、郭春成の「一人一殺」「4人全員殺せば格好もつく」の言葉を了承。だが…

第二試合 郭春成vs範馬刃牙
「その間 実に2秒!!!」で春成敗北。わが子のあまりの不甲斐なさに、父は呆れ果てた…

三戦目、烈海王は寂海王相手に当然ながらも勝ち星を得て一矢報いるも、

四戦目、範海王はマホメド・アライJr.に優勢に見せかけて一方的に叩きのめされる。…この時点で中国連合軍負け越し決定。

だが、意気消沈した観客達のいる試合場に姿を現した勇次郎は「中国武術4000年の威信はそれでもなお地に墜ちぬッッッと観客に明言。
さらに、「いずれの障害にも屈せず完全を成した奇跡」「中国拳法そのもの」と対戦相手の郭海皇を称え、「ここで俺が敗れたなら先に挙げた3勝などなんの意味も持たぬッッッと宣言した。

開始めいッッッ

○究極の暴力 対 究極の武

いよいよ始まる郭海皇vs範馬勇次郎
地上最強の生物・範馬勇次郎の試合は、『グラップラー刃牙』での愚地独歩戦に次ぎ、作中まだ二度目である。(勇次郎による一方的な蹂躙は除く。)そのため否が応でも読者の期待は高まる。相手も文句なし、中国武術界最高峰の達人。
そうした試合ににふさわしく、本対決はバキ・シリーズ全編を通してのベストバウトの一つに数えられている。週刊チャンピオン紙上で開催された公式人気投票でも、ベストバウト第一位を獲得した。

さて、試合開始…だが、意外や意外、あの勇次郎が相手を車椅子に乗せ、押してやりながら話を聞くという珍しい姿から始まる。
勇次郎は問う。「おまえはここへ辿りつくために何を捨て、何を手に入れた」と。
これに郭海皇も応じる。

日本の強き人よ
中国武術史4000年-わたしほど力に憧れた者はおらぬ
身を焦すほど欲した力 その力を捨て去った時間じゃよ


百年前の大擂台賽優勝時、彼の身体は鋼に覆われており、高密度の筋肉を搭載。
単純な腕力なら比べずとも亜細亜一を自負できるバリバリの筋肉戦闘スタイルが誇りでもあった。
そして時期的にこの肉体をもって海皇の座についていることも想像に難くない。
だが、その筋肉スタイルで舐め切っていた武術家、それも強靭な肉体とは程遠い齢60を超える本物の武術家に敗北、理合に敗れる。
その後は悔しさのため鍛錬器具の一切を捨て、理合を手に入れる鍛錬に邁進。
誇りであった筋肉が日に日に骨から落ちることを歯噛みしながらも、
齢90にして、椀と箸に重量を覚えるようになったときその手に理が握られることになる。

これを受けて「剛に対し理合が挑む闘い」と評する勇次郎に対し、郭海皇は「力が武に挑む」「おまえがわしに挑む」と返す。
「究極の力対究極の理」「究極の剛対究極の技」そして「究極の暴力対究極の武」と評される闘いが始まった…

初弾、勇次郎の突き、そして蹴り(消しゴムほどの重さの眼鏡が壁にメリ込むほどの威力)に対して郭海皇は消力(シャオリー)で対抗。
さらに弱点とされる上からの打撃にもほぼ無傷(打たれても鼻血をだす程度)で対応してみせた。



だが、勇次郎は「しょせんはお遊び」と嘲笑。さらに「キサマの本能を呼び戻す」と宣言した。

海皇自らの仕掛けに対し、勇次郎は打拳一発で撃退。
毛髪一本を抜くことにより計らずも起こってしまう、あるかなしかの身体硬直。
その、文字通り毛ほどのタイミングを逃さずに打拳を放ったのである。
これには対戦相手の郭海皇も「天才じゃ…」と半ば呆れ気味。

しかし、郭海皇は勇次郎に対し「命拾いした」と言う。その言葉を裏付けるかの如く、勇次郎はパンチを避け、壁際まで追いつめられる。
勇次郎が躱したじじいパンチの威力は、試合場の壁に巨大なヒビを入れるほどの破壊力だった!!←「バケモノかよ…」

これもまた消力の一種であり、守りの消力転じて攻めの消力と呼ばれる。
この攻めの消力を利用し、郭海皇は100㌔を超える勇次郎を宙に浮かせ、打ちのめしていく。刃牙も「これほど強い男がいたのか…ッッッ」と驚愕する。が…

「えれェことが起こってるぜジジィ」

あり得ない…範馬勇次郎がッ 消力を駆使ってる!!!
なんとなんと、勇次郎までもが消力を披露。その場でマネたらしい。
このとき烈はなんともいえない表情に。「ワシの消力とおぬしの消力…どちらがホンモノ…」と楽しそうな海皇に対し、


心配するなジジィ 消力は2度と使わねェ
自慢気に技を披露するキサマをちょっとからかっただけのこと もともと俺の流儀じゃねェ


そのまま拳を固め、金属の如き力こぶを見せつつ地面に叩きつけ、試合場の床に郭海皇よりバカデカい穴を作ってみせた。

闘争とは力の解放だ 「力みなくして解放のカタルシスはありえねェ

脱力だの…消力だの…そんなものはおまえたち(=俺を除く総て)で共有したらいい

とまで言い放った。
技術を「闘争の不純物」とする勇次郎に対し、海皇は「技術こそが闘争の構成物質そのもの」と全否定。
だが、勇次郎の壁を利用した打撃に、消力が無効化される。

だがそこは海皇。並の人間なら一撃で倒れる攻撃をも押しのけ反撃にでる。


ちょうしこいてんじゃねェ 小僧ォッ

地上最強もまた生意気な小僧としてさらなる追い打ちをもって呼応する。


ちょうしこかせてもらうぜ!!!


勇次郎は切り札の鬼の貌を開放。通常と明らかに異なる筋肉の構成を見て、郭海皇は訂正する。
「お主が正しい」と。
ただの「地上最強」を騙るだけの、自惚れ屋の思い上がり者なら、制裁せねばならぬと思っていた。
しかし、この鬼の貌を見て、先の勇次郎の発言が思い上がりでないことを知る。
勇次郎を「天然戦闘形体」とし、その勇次郎との闘いを自ら

獅子(ライオン)
と評したのである。
勇次郎の鬼の貌パンチを顔面に受けた海皇はそのまま吹き飛び壁にめり込んだ。

それでもなお倒れていなかった郭海皇は拳法に見えぬほどのオリジナルの拳法(←烈海王「郭海皇がやっているのだ 中国拳法以外の何ものでもない」)を駆使して決死の反撃を試みるが、勇次郎は血まみれになりながらもノーガードでこれを受けきる。
「ジジィ…もう十分だろう…」
鼓膜を破り、「鬼の哭き貌」からの最大の必殺技、「鬼の一撃」を放つ、が…


バッ…バカかてめェェッ

と勇次郎らしくもないセリフと表情を浮かべると同時に放つのをやめ、戦闘が中断されたのであった。

○決着、そして…

決着は意外な形でついた。


「老衰です…」


ふざけんなァァッッッ

え。146歳だけどさ。なにもこんなときに…

闘争を食事に例える勇次郎にとってみれば、中国武術の最高峰・郭海皇は人生最上級の唯一無二の御馳走であった。
その最後の一口を喰い損ねてしまったのである。
あまりの悔しさ、無念に、歯を食いしばり、全身をわななかせる勇次郎。
なんとか落ち着きを取り戻し、呆然とする刃牙たちに負け惜しみを言うかのように「くたばっちめェやんの」と勇次郎は言うが、その表情はなんとも微妙。

これは…勝利なのか?

ともあれ、享年146歳。大往生でした。

追記・修正は146年生きてからお願いします。

































「武術の勝ち」


海王一同「わーーーーッッ」

担架で運ばれ、控室で海皇自力で蘇生。
控え室の全員が幽霊を見たかの如く絶叫。そりゃビビるわな。

「無理無理無理」「人と闘っとる気がせん」と苦笑まじりに試合の感想を語り、あまつさえ生きていたのかと言われれば「スゴイじゃろ?」と自慢げに言うが皆の関心はそこではない。
結局のところ敗北に変わりないじゃないか(意訳)と突っ込まられるも流石は海皇、「疑るかぁ!」と激怒しつつケロッと反論し返す。
心臓停止・瞳孔開放で、臨床学的には完璧に死亡が確認されていた。だがその結果、勇次郎は拳を、打たれていたら絶命は免れないであろう拳を止めたのである。
「死に勝る護身なし」と郭海皇は言う。「相手が死ねば勝負なし、故に負けもなし」と。←息子「ず…ずっる~…」

この無茶苦茶な理論には彼を信奉している海王たちもドン引きしていた。
…が、武とは元々野生からしたらズルき行為。卑怯となじられようとも、生き延びられればそれでよし。
「強さとはワガママを押し通す力!」を地で行く行為である。


なおこの結果を伝え聞いた勇次郎はたった一言、こう答えた。

「さすが海皇ということだ」と。


試合後、闘技場の兵どもが夢の跡を見ながら、珍しく賢者タイムの勇次郎。そこに郭海皇が登場。

「よき擂台賽じゃった」「ともに意識し…ともに尽くしあった」「のう範馬海皇
なんと、郭海皇は戦前あれほど固執した海皇の称号を、自ら差し出したのである。
「この郭海皇が認めているのだ 堂々と名乗りを上げたらよい」「誰にも文句は言わせん」
「この世でおぬしに文句をつける者など最初からおらんか」とも苦笑交じりで付け加えているが。

これに対し勇次郎は「たとえあんたを倒したとしても俺が名乗ることなど誰も納得するまいよ」と返す。(←郭海皇からは「倒しちゃおらんがの」とイヤミな一言。)
「気持ちだけもらっておくぜ」とその心意気に応えた。

そして「オーガよ」「100年経ったらまた闘ろうや」と別れの言葉。これには笑みを浮かべ、手を振って応えた。
いつまで生きる気なんだ、このジジィ。
郭海皇は羨望と嫉妬を込めて


ワシも…呼ばれてみたいのォ…
地上最強の生物…

と洩らし、これにて中国大擂台賽編は幕。

作者郭海皇の独断で迷走を極めた大擂台賽。遂にはその結着もあいまいなまま大会は幕を閉じた。
しかし帰路につく観客たちの、「その足取りは飽くまで軽く その表情は飽くまで満足気で」というのは読者にとっても同じであると信じたい。

また、先述の結果から郭海皇は、勇次郎が唯一勝てなかった(=食いきれなかった)相手とも評されている。
そして上記のように、今まで自分を律せなかった勇次郎が、この戦いをきっかけに変わり始めた。
少しずつではあるが、破壊衝動を抑えられるようになった。
「心」が「強くなった」のである。
それを考えれば、郭海皇は勇次郎にとって(恐らくは初めての)「師匠」であったとも言えるだろう。
両者の奇妙な友情を描いた余韻を残すラストエピソードも含め、地上最強の範馬勇次郎と究極の理合を体現した郭海皇、両者にふさわしい名勝負である。
間違っても「ボケタダケ~♪」とか「死ンダフリ~♪」とか言ってはいけないッッ!

というか少なからず受け流せなかった勇次郎の全力の攻撃を受けていた筈なのだが、決着後はかすり傷一つない無傷の姿で登場した。むしろ死闘を果たした後とは思えない程ピンピンしている
これが海皇の回復力か、はたまたああ見えてノーダメだったのか・・・謎は深まるばかりである。

【バキ以降のストーリーでの活躍】

大擂台賽編以降は戦闘行為を行っていないが、様々なキャラに技術を教える師匠ポジションとして時々登場する。

○範馬刃牙

第三部『範馬刃牙』でもピクル編にてチョイ役だが登場。
烈曰く、中国拳法においてマッハ突きを実践で会得している唯一の人物だという。
その為、愚地克巳に真のマッハ突きを教授する目的でわざわざ来日した。
ただのマッハ突きの改良版ではしゃぐ烈と克巳に釘を刺しつつ、「イメージは無限」という真・マッハ突きの要諦を伝えた。
その後の克巳×ピクル戦も観戦、正拳中段突きにもみんなと一緒に参加するなど、ノリノリである。
勇次郎との一戦のおかげか、このジジィもずいぶん丸くなったものだ…

ちなみに、この戦闘の最中にこのジジイは、

「もし許されるものなら 儂ゃ… 心臓を停止(とめ)てしまいたいよ………ッッ」

と発言している。
あくまで「この至上の時にずっと浸っていたい」という意味での比喩なのだろうが、上記の技術があるのでこのジジイの場合許されるとか関係なく止められるのである。
このシーンを読んで思わずツッコんだ読者の方も多いのではないだろうか。

○刃牙道

宮本武蔵と戦うことになった烈の前に来日。対武蔵対策として消力の伝授を行うことにする。
烈との特訓の末に伝授に成功したが、その現場に現れた本部に消力や中国を散々に煽られてコケにされる。
初対面となった本部の素性を一発で見抜きながら、穏やかな雰囲気で彼に異議を唱えるが、目は全く笑っていなかった。
烈を守護ろうとする本部と烈が戦闘に入ると、烈の身を案じて本部を不意打ちの殴打一発でKO。
本部には怒りを覚えていた一方で、初対面故に柔術使いとしては一生の恥ものの大失態を見せてしまった最大トーナメントの偏見がないのもあってか、純粋に実力は高く評価していた模様。

その後は烈と武蔵の試合を刃牙と共に観戦。驚き役や解説役に徹している最中で烈は激戦の末に死亡。
試合後は烈の死に後悔を覚える徳川にフォローの台詞を投げかけていた。
烈と武蔵の試合後にどこかでインタビューを受けたらしく、護身術を語ると同時に烈の死を受けて数珠を身に着けていた。

【戦力】

上述の通り、一部ファンから老害扱いされる問題の多い老人だが実力自体は文句なしに劇中最強クラスである。
普段の弱り切った老人のような姿とは裏腹に、
長く生きた年月の大半を費やす鍛錬によって会得した、ありとあらゆる中国武術の集大成とも言える、
強靭な肉体を一切必要としない『究極の理合』をその身に体現した超人。
刃牙の評した「キャリア140年の超武術家」の名は伊達ではない。
戦闘シーンは1回(正確にはサムワン戦も含めると実質2回)だけで技も非常に少ないが、それでもなお最強クラスの実力をはっきり見せつけている。
単独で軍隊も滅ぼす程の勇次郎と互角に戦えるというのは、言い換えれば彼自身の戦力も1000人分相当の実力を持っていることになる。

しかし何より恐ろしいのは最上位の格闘者とは思えないほどに狡猾すぎる精神性。
口八丁手八丁の出鱈目や詐術などお手の物。敵に勝つためならば傍から見ても正々堂々とは程遠い卑怯な技だって平気で使う様は、図太いを越えてもはや異常。
しかし、これの更に狡猾な手を使うのは誰であろう、我らが寂海王である。現に、涼しい顔で卑怯な手を使う仕草はありえないの一言に尽きる。

  • 消力(シャオリー)(守りの消力)
郭海皇の代名詞とも言うべき技。
護身術の要諦である「脱力」を、「己の体重をも消し去る程」のレベルで常時行い続けることで、敵のあらゆる攻撃を受け流しほぼ無力化する防御技。
いうだけなら簡単だが戦闘などの緊急事態に極限まで脱力し続けるのは困難。
「宙に浮くティッシュペーパーにカミソリを振り下ろすような心もとなさ」とも評され、かの超人・烈海王でさえが「今のわたしが真似るには若すぎる」と告白する超高難易度技法である。まあ後に真似するんだけど。
郭海皇の場合はあの勇次郎を相手に何食わぬ顔で平然と使用しており、初弾、勇次郎の突き、そして蹴り*3をほぼ無効化して見せている。
更に力を振り絞った勇次郎の、コンクリで出来た闘技場の床全面に亀裂を走らせ陥没させる程の豪打ですら無効化するなど、その防御性能は絶大。
春成の腕に乗るという芸当も作中で見せており、守りの消力は単に脱力しているだけでなく、恐らく軽功術も使用していると思われる。
攻撃を無効化するだけでなく、受け流し方次第では相手の打撃の勢いをそのまま利用してカウンター技に繋げる事も可能。

あくまで受け流す技術であるためか、烈海王曰く弱点は「頭上からの攻撃」。しかし郭は勇次郎の頭上からの攻撃をも軽く鼻血が出る程度で無力化した。
このほか、壁に挟まれたり空中への追撃など、体を自由に動かせない状況では効果を発揮しづらい。*4
他にも攻略法としては、消力を使う瞬間に髪の毛を一本引っこ抜くことで痛みへの反応を強制的に引き出すことで発動を妨害するという手段もあるが、これを成し遂げたのは勇次郎だけなので他の武術家が参考にできるのかは不明。
流石に鬼の貌を発現した勇次郎のような規格外レベルの放つ攻撃だと受け流しきれないが、それは最早人間が防ぐ領域ではないので弱点とは言わないだろう。
打撃ではなく物体を切る斬撃にも弱いらしく(それでも極めれば不可能ではない)、後に本部には対斬撃用の防御術としては「軽業」「曲芸まがい」と散々な評価を下されている。

一部読者からは「掴め」という感想が少なからず上がったが、武の頂たる郭海皇が何の対策も無いとは考え難い。
実際に作中での回想では合気の様な技も使っており、下手に掴めば柔にて投げ飛ばされる可能性が高く、そもそも守りの消力の極限の脱力は『攻めの消力』の予備動作でもある為、掴んだ瞬間に攻めの消力で迎撃される恐れもある。
高級技とされるだけあり、まさに攻守一体の妙技と言えよう。


  • 攻めの消力(シャオリー)
消力の応用技。
消力を扱うために必要な「極限の脱力」を攻撃に転用したもので、一見するとラッキーパンチよろしく老いた老人のフラフラとした緩慢すぎる情けない突きにしか見えない。
……が、命中の瞬間力を籠めることで一気に破壊力を増幅させた突きに変換する。弛緩と緊張の振り幅が打力の要。極端な弛緩と緊張こそがこの破壊力を生むのである。
その打ち込み方から言うなれば、究極の寸勁といった感じである。
その破壊力は巨大な壁に巨大なクレーターを作り半壊させるほどで、勇次郎すら命中しようとする間際まで技のトリックに気づかず、気付いた瞬間即座に回避行動を取っている。
当然拳だけでなく蹴りでもかますことが可能で、使用した際は防御を固めた勇次郎の巨体をコンクリの地面を抉りながら何mもノックバックする程の威力を発揮した。
バケモンだ。

なお勇次郎は鬼の貌を発現するまでこの攻めの消力による打撃は全て両腕や脚でのブロックを選択している時点でその威力は推し量れる。
刃牙道では本部を背後からの不意打ちで一撃にて失神させてもおり、並の闘士では軽い一撃ですら致命打になる模様
加えて、当てるその瞬間まで一切殺気も無い為実に厄介である。
ほぼ一撃必殺とも言える技で、海皇はこの一撃を確実に当てるため口八丁手八丁で勇次郎の警戒心を欺く老獪な手段を取っていた。実際勇次郎も含めて観客の誰もがこの技に気づきもしなかった辺り海皇の詐術も相当な練度に達している。

ちなみに郭海皇はサムワン戦後のインタビューにてキレイな目で「え?レンガ?割れるもんかねそんなの」と言い放っているがとんでもないウソつきである。*5
もっとも郭海皇の筋力事態は箸とお椀に重量を感じるレベルで貧弱*6なので武術(技)を使わなければ割れないのは事実だろう。ちょうどインタビュー時に武術の有用性を語っていたのそういう意味で割れないと言ったのかもしれない。
また、前述する通り海皇はマッハ突きをも体得しているが、この戦いで使わなかった辺り海皇の場合消力の打撃の方がマッハ突きより強い模様。
打ち込む際に独特な身体操作をしている事から、単に一気に力を込めるのではなく、発勁の技術も使っている可能性がある。

あまりにスローな打撃である為、読者から「避ければいいじゃん」「この隙に攻撃しろ」といった意見が少なからず出たが、この攻めの消力は中々のクセモノである。
極めて打撃速度が遅いのは極限まで脱力しているからであり、これは言い換えるならば『守りの消力』を展開している状態でもある。
その為、カウンターで攻撃しようにもまず通じないと思われる。
それどころか、脱力しているという事は何時でも行動を切り替えられる状態であり、下手に攻撃しようものならその隙を突いてカウンターで切って落される可能性があり、逆に回避しようとしても回避しようとしたのを察知されて逃げた先に打ち込まれたり、動きが固まった瞬間を打たれる恐れがある。
刃牙も初めて見た際にはただの非力なパンチとしか思っておらず、郭海皇の擬態もあって最早初見殺し技
仮にトーナメントで当たるはずだった刃牙が郭海皇と対戦していたらワンパンKOされた恐れもあり、読者の軽率な対応をしても同じくその即死級の打撃の餌食となり得る。
その刃牙もこれを見た瞬間「郭海皇は老人」の考えを捨て「キャリア140年の超武術家」と最大級の評価をした。
勇次郎が取った『距離を取る』『ブロックする』というのは実は理に適った対処法であったと言えよう。
ただし、勇次郎の規格外の肉体があったからこそブロックは意味を成せるものであり、並の者がブロックしようものなら手足の骨は粉々になりかねないだろう。

  • 死んだふり
勇次郎戦の最後の最後で開眼した技。
曰く「死に勝る護身なし」「相手が死ねば勝負なし、故に負けもなし」というあまりにあまりな(ある意味)究極の技巧。
心肺のみならずあらゆる生理現象をも完全に停止させ、医師すら完全に「死因:老衰」と断言されるレベルまで生命活動を停止させ、短時間の間完全な仮死状態となる。
いよいよ自らの負けの可能性が濃厚になった時、これにより引き分けにすらさせずに、勝負そのものを無理矢理なかったことにしてしまう究極の勝負リセット技である。
ただし使用したのは勇次郎との戦いのみ。

郭はこれで生き残った事を「武の勝利」としたが、春成や多くの読者からは不服の声が上がった。
しかし、生存競争という次元で戦う武術家にとって生存出来る事は再戦や闇討ちなどのチャンスへと繋げられ、相手がそれで死すればそのチャンスを与えてしまった相手の失態と言う他無い。
故に、見抜けず拳を止めて戦いを切り上げてしまった勇次郎の不覚(郭海皇の戦術勝ち)と言えよう。

  • 合気(?)
郭海皇の回想シーンで描かれた投げ技らしき技。
消力の追求を進め、齢90歳に達した頃に理合に開眼して身についた技であり、恐らく合気道にもある脱力により相手の力を抜いて投げるという技術に近しい技術と思われる。
作中では郭海皇よりも数倍の体躯を持つ巨漢を宙に舞わせていた。

  • 手刀
武術省の重鎮達の手首を切断するのに使用。
実力の乏しい海王を粗製濫造した武術省の重鎮3名に罰として利き手を鉄串の様な物で串刺しにした挙句、手刀で切断した。
腕3本を纏めて綺麗に切断するという切れ味であり、平然と行っている事から郭海皇にとっては取るに足らない基本技と思われる。
とんでもねェ。

  • マッハ突き
新技開発の為に協力する克巳と烈を指導するために来日した際試技として二人に披露した。
実戦でも問題なく使えるレベルなのはもちろんのこと「人間離れしたイメージ力によって体内の関節をいくらでも増やせるというご都合sy…荒業で
本来なら正拳突きに必要な稼働箇所の関節+背骨の骨節を正確に連動させねば放てないマッハ突きを棒立ちの姿勢からの手打ちで放てる。
その上その速度や精度、そしてなにより威力が克巳の使うそれよりもはるかに上回っており、試技では糸でぶらさげているだけの生卵を綺麗に下面だけ削ぎ飛ばす域に達している。*7
郭海皇に言わせれば、これこそが完全技であり、それまで克巳と烈がしていた工夫はまだ欲が浅いらしい。
また、克巳が完成させた全身の多関節化を見て「成った」と発言している事から、郭海皇も全身多関節化によるマッハ突きが使える可能性がある。
いよいよ妖怪である。

  • 剣術
消力を教える際に披露。武蔵を意識してか二刀流であり、使用した剣は青龍刀。
とはいえ筋力がないからあくまで試技レベル…、かと思えば剣を振り回す姿は、克巳からはスポーディーな躍動感溢れる剣技と評されている。
訓練として烈海王を何回か切りつけるが、4回目においてついに成功した消力によって威力を封じられた。
しかし、武蔵に対抗しての二刀流だったが、作中描写から察するに武蔵の刀より威力では大きく劣る模様。


【余談】

先述したとおり、息子の名は郭春成「儂が120歳の時の子」らしい。じぃちゃん、マジパねェ…
ただその強さは、まぁお察し。
一応勇次郎にも「狂獣・郭春成」と、その名は知られていたのだが…
もっとも、郭海皇の強さは後天的な鍛錬の結晶によるものであり、特別な才能によるものではない。
(物理的な意味で)モンスターペアレントと同格扱いするのは酷であろう。
\お前の父ちゃん妖怪ジジィ/


なお、このジジィの最大の被害者はフリチンにデコピンくらったサムワン海王でも勝負に「勝てなかった」範馬勇次郎でも迷走に付き合わされた読者でもなく、劉海王である。
もとは烈の師匠的なポジションだったのだが、勇次郎に顔面の皮膚を剥がされた挙句、そのままフェードアウト。烈の回想に出てくるシーンまで郭海皇に盗られてしまった。哀れな…

初登場時は車椅子に乗っていたが、勇次郎戦以降は使用しておらず普通に歩いており、それどころか急に現れたり、アクロバティックに活動している。
車椅子は擂台で他の相手達を欺く為だけに用意した擬態の為のものだったのかもしれない。
とんでもないタヌキである。




生ま……れ…て…落ち……て…
百と…数十…余…年
五万日!
…追記と…修正を…継続けた…
誰…より…も…
永く!!
…建て主よりも!!!


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • バキ
  • バキシリーズ
  • 中国拳法
  • 達人
  • 老師
  • 老人
  • 思い込み万能説
  • 海皇
  • 史上最強の老害
  • 死んだふり
  • 車椅子
  • サングラス
  • 消力
  • 柔よく剛を制す
  • お前のようなジジイがいるか
  • デコピン
  • 郭海皇
  • 武術の勝ち
  • 高性能じいちゃん
  • 妖怪
  • 緒方賢一
  • 武の理の権化
  • 武の体現者
  • 俺がルールだ!
  • 憎まれっ子世に憚る
  • 老害
  • 超武術家
  • 究極の武
  • チート
  • ある意味勇次郎の師匠
最終更新:2025年04月11日 12:34

*1 中国拳法や他流空手のいい所を取り入れ、進化させた空手。

*2 同時に、寂海王も中国での修行経験があるからOKであるらしい。

*3 消しゴムほどの重さの眼鏡が壁にメリ込むほどの威力

*4 ただし、鬼の貌を解放した勇次郎の規格外の打突でも壁に叩き付けられる事によるダメージは受けたが、打撃そのもののダメージは防げている模様

*5 これを考えると、サムワンのムスコさんへのダメージは相当だっただろう…。実際に、試合後もかなり痛がっていたし。「あのジジイ」とキレ漏らしていたのはあの口八丁手八丁ぶりにだろう。

*6 刃牙道ではしれっと刀剣(それも二刀流で)振り回していたが。

*7 そこからこぼれた中身はキャッチして食べた。ちなみに克巳は真似をしようとして失敗しまくった結果、かなりの量の卵を床に落としてしまったが、その後にスクランブルエッグにして食べたことが巻末のコメントで明らかになっている。