登録日:2015/03/05 Thu 00:45:45
更新日:2025/03/07 Fri 13:16:46
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『マウンテンピーナッツ』とは『S-Fマガジン』2015年1月号に掲載された、
『
ウルトラマンギンガS』の外伝短編小説、および劇中に登場する過激な環境保護団体。
著者は『
玩具修理者』『大きな森の小さな密室』『
アリス殺し』等で有名な
小林泰三。
イラストは鷲尾直広。
円谷プロとS-Fマガジンのタイアップ企画による作品群共々、2015年7月23日発売の書籍『
多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー』に収録された。
■概要
ハッキリ言って
本作は非常にシリアスである。
元々小林氏は第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞するなど、ホラーやSF等で活躍する作家なため本作はその影響を受けている。
無印のどこかコメディ色の強い作風や、
ギンガSのアクション性や
ガンQの涙の様な話を本作に求めるとおそらく後悔する事になる。
内容も『
ウルトラマンコスモス』のアンチテーゼを『
ウルトラマンネクサス』の作風でやりました、といった感じでギンガの世界観からかなりかけ離れており、
本作のテーマがテーマなだけに、
マックスか
メビウスでやれば良かったのに、という声も少なからずある。
一方で、ギンガSで
ヒカルが言ったように
スパークドールズに善悪は無い、という事がある意味大事だったりと、ギンガに適しているとも言える。
本編は『ギンガS』の一年ほど前が舞台なのだが、所々原作と異なる設定がある。
『ギンガ』の地球は
シェパードンが出現するまで現地産の怪獣がおらず、
それ以外の怪獣やウルトラマン達は1000年前に
スパークドールズとして地球に飛来し、
無印の時点で認知されたのにもかかわらず、数年前から法的に自衛隊が怪獣と戦えるのか議論されていたり、
メテオールが都市伝説としてあったり、各国はメテオールを通して怪獣データベースを手に入れていたり、
友也……。
そもそもマウンテンピーナッツがメテオールを所持していたりと、
ギンガが登場する前から怪獣とウルトラマンが戦っていた雰囲気がある。
小林氏はツイッタ―で「千草が無事オーディションに合格し、アイドルデビューした後の物語です」と、
「君に会うために」の放送回で呟いており、作品自体も一応は『ギンガS』の前日談という形式をとってはいるものの、
後述するように、作中施設の立地、スパークドールズ化したウルトラマンの状態など映像作品との相違点は多く、
そのため本作は
パラレル、マルチバースの一つと解釈した方が正しいだろう。
小林氏はあとがきで、
「我々ウルトラマンは決して神では無い」「地球と言う星の異なる文明同士の争いに私は加担できない」、
ウルトラマンや
マックスが言うとおり、ウルトラマン達は有限の力を持つ異なる価値観を持った超人だ。
けれどそれが文明同士の争いに介入したら?
ウルトラマンが絶対的な善では無いのなら容認出来る事と出来ない事があるし、地球の支配者になるかもしれない。
選ばれた変身者が皆を守るために力を使う事を躊躇う必要はないが、それも結局の所個人の思い上がりな所もある。
絶対的な正義は存在しない以上、皆が満足できる正義は無い。だから軋轢の中でゆっくりと合意を形成するしかない。
ウルトラヒーローは真の勇者だから自らの行動を制限しているのだ。
と発言している(かなり意訳した)。
つまり本作は異なる価値観同士の対立や、
『マックス』で触れられた、ウルトラマンの同一の星の文明同士の争いへの対応等がテーマだったと思われる。
ただ短編という事もあって詰め込み過ぎな部分や、千草のキャラが少し違うような気がしてしまうのが本作の惜しい所。
またテレビシリーズのウルトラマン達には、地球人相手に力を使わない事を絶対視する描写は特に無く、殺さない範囲で力を行使する例もあったため、
小説内でのウルトラマンの頑なで融通の利かない態度に違和感を感じるという指摘もある。
サン=ダスト団
そして、敵役であるマウンテンピーナッツの描写が、価値観が違うだけの相手にしては
外道然としすぎている点、
そして彼らの露骨な外道行為を社会が取り締まる事ができないという不自然さも問題点として指摘されがちで、
著者が言わんとしていたテーマと、実際の小説の内容をそのまま同一視して作品を読み解くのはいささか危険かもしれない。
ちなみに『S-Fマガジン』初掲載時には、「降星町」が時々「星降町」と間違えて記載されていた。
語感が良いと言う罪は重い……。
■登場人物
本作のヒロイン。
『ギンガ』の一年後で『ギンガS』の一年前なのでまだアイドルでは無い。
そのためオーディションを受けようとバスに乗ろうとした事からマウンテンピーナッツに関わってしまう事に。
タロウに教わったため怪獣に結構詳しい。
手足が複雑骨折して筋肉が断裂しても泣き言一つ言わない、もの凄い鋼メンタルの持ち主。
皆ご存じ我らがヒーロー。本作では初代と地の文で呼称されている。
攻撃を受けた際には血が流れるのではなく、体内のエネルギーがプラズマとして噴出する。
千草にウルトラマンの力を種族内の争いに向けることは、ウルトラマンが宇宙の全てを支配する事と同義だと語る。
番外編「残された仲間」で千草を助けた後宇宙に帰ったと思われていたが、
千草の事を気に入ったのか人々に危機が迫ると千草の前にギンガライトスパークと共に現れ、ウルトライブして来たらしい。
つまり未だスパークドールズのまま。まぁギンガSでタロウも事実上そうだったが。
1000年の間、人形のままだったから一年くらい大した事ではないのだろう。
何故かタロウ同様、ウルトラマンの意識も残っており千草に語りかけてきた。
ギンガに意識だけでも解放されたのだろうか……。
本作では登場しない。
しかし千草が友達にはギンガやティガがいると独白した事から、
ウルトラマンと同じく今も健太に力を貸しているのかもしれない。
その場合、ティガの意識は一体、誰なのだろうか……。
『マウンテンピーナッツ』の日本支部総司令官。
環境を愛しており怪獣とは言え例外では無い。それを殺そうとするウルトラマンを敵と認識し攻撃してくる。
ある意味被害者と言えなくもないが、実質全ての元凶。少なくとも被害範囲を恐ろしいくらいに拡大させた。
その因果応報は身をもって受けることに。
テレスドンの弟。デットンというのは個獣名らしい。
作中最初にモンスライブされた怪獣で、この話がどういうものか読者に教えてくれた。
かつて「故郷は地球」に登場した悲しい復讐者。
本作で再びウルトラマンと戦う事になるが、意思はないのでどう思ったか不明。
ウルトラマンもジャミラに対して特に言及はしなかった。
原動は正体を知っており、怪獣とは言え人の心を残すジャミラに対する態度が外道だったため、
タロウに出自を教えてもらっていた千草ウルトラマンを辞めたいと思うほどに追いつめられてしまう。
良い意味でも悪い意味でも本作最大の功労者。子供番組では無く小説と言う媒体を利用して本編以上に暴れ回る。その姿はまさに水を得た魚。
特に再生能力の高さを生かしてウルトラマンと互角の戦いを繰り広げる。
本作の黒幕。ノスフェルにモンスライブして暴れた。
他二体も彼女のモンスライブだと思われるが、チブロイドかもしれないしエージェントの様に怪獣本人の意思があったのかもしれない。
後に写真集を出す事になるとは信じられないほどに恐ろしい数の人々を虐殺して来たが、目的が何だったのかは不明なままである。これが本作をより怖くしている。
実際のところ、本作を映像作品の正史と見做してしまうことの一番の問題が、後に味方になる彼女の処遇と心象である。
少なくともこちらの世界線の彼女は「マナ」にはならないのかもしれない。
一つは特徴の無い顔と、幼児が持っているクレヨンで画用紙に塗りたくったような髪をし、
布で覆われているが、見えている手足と顔はぬめぬめと脂ぎったスパークドールズ。
おそらくは小林氏のデビュー作『
玩具修理者』に出てきた玩具修理者本人。
もう一つはボロボロになった黄衣を纏った、痩せた肉体が垣間見えるスパークドールズ。
おそらくは
黄衣の王ではないかと推測されている。
どちらもどうして「ダークスパークウォーズ」に参加したかは定かではないが、多分ファンサービスで深い意味はないだろう。
環境保護NPGのイエローピーナッツとマウンテンコリーが合併した組織。
総勢一万人はいるらしい。日本を特に敵視している。
SRCや
TEAM EYESが怪獣と人の共存を目指していたのに対し、こちらは人を環境の一部に入れていないのか、
環境を守るという名目で人を殺す事に躊躇いを持たない。
環境保護の為にメテオールやスペシウム弾頭弾を装備した戦闘機を所有している。
この事はウルトラマンから、環境を大切にしていると言いいながら自分たちの戦闘行為で環境を壊していると指摘されている。
虫取りをしていた少年と助けようとした老人に硫酸入りのビンを投げつけるほど非常に過激で、
その行動をビデオに撮りスポンサーをしている番組でヒーロー行為に演出した映像を全世界に流したりしている。
この番組含む宣伝工作によって日本は世界的な環境破壊国として世界に認知されてしまい、払拭が簡単には出来なくなっている。
工作の結果、国際世論を味方にしているので傷害事件では警察は動けず、死亡事件に発展しても起訴猶予が限界と言う厄介な団体。
さらに彼らの活動は国際条約に基づいており機動隊も止めることは出来ず、国家でもテロリストでも無く、
あくまでも今回の目的は怪獣保護のためなので、自衛隊も交戦する事は許されず一方的に攻撃されてしまう。
とはいえ、本作で彼らが巻き起こした事態の規模を考えれば、その本性が国際社会に露呈するのも時間の問題だと思われるが……。
追記・修正は価値観の意味を履き違えず、お互いの価値観の相違を認め、合意を模索してゆく人がお願いします。
- 相談所の方にて異論もなかったのでリセットしました -- 名無しさん (2018-08-30 14:30:02)
- これ作者がコスモス嫌いでネクサスが好きってやつか -- 名無しさん (2018-11-08 20:06:48)
- 作者がネクサス好きっていうよりNプロの設定がところどころ小林泰三作品参考にしてる節がある -- 名無しさん (2019-05-29 04:40:45)
- 作者の書きたかったことは分かるんだが、正直あまりに露悪的に書き過ぎててリアリティ感じないんだよなあ。これを価値観の違いで済ませなきゃいけないんだったら、侵略してきた宇宙人の価値観だって認めなきゃいけないだろ -- 名無しさん (2019-05-29 06:38:29)
- ↑追記 第一、いくら世論を味方につけてるからってこれだけの武装をして殺傷している団体に対して何もできないなんてあり得ないし。刃物持って暴れてる奴をそいつの価値観を尊重するためにやらせるままにしろってか? -- 名無しさん (2019-05-29 06:48:30)
- ↑まあ趣味に偏った書き方するのは小説書いてる側の特権ではあるけど…ねえ -- 名無しさん (2019-05-29 07:58:31)
- 違反コメントを削除 -- 名無しさん (2020-03-05 14:55:46)
- Another Genesisや大怪獣ラッシュ辺りが円谷プロ公式サイドからの監修がほぼ入ってないも同然だったみたいだし、恐らくこの作品も同様なんじゃないかと推測。曲がりなりにも公式のスタッフが監修してたらワンゼロの扱いとか間違いなく許さないだろうし…… -- 名無しさん (2020-05-02 17:43:46)
- 余所でやってろと恨み言のひとつも呟きたくなるぐらいには不快、けど作品そのものはちょっと好き -- 名無しさん (2020-07-04 14:53:26)
- これ本当にウルトラマン…? -- 名無しさん (2020-07-04 15:13:04)
- ↑6アホヴィーガンやらアンティファからのBLMの暴れっぷりという現実が後から追いついてきたのが皮肉としか言いようがないと同時に、SFの予言力というモノを改めて感じてしまうのが我々アニヲタなのだよ。 -- 名無しさん (2020-07-04 15:30:29)
- 多くの細かい編集を考え無しで差し戻すような無計画な編集行為は止めてください。この項目は一個人のものではありません。 -- 名無しさん (2020-07-07 08:28:35)
- ↑二次創作である。というふうには明言されていないのでそのような記述は削除してください。 -- 名無しさん (2020-07-07 09:15:29)
- ギUPGでどうして神山みたいな思想の人物が実権を握ってしまったのか、その前日談と考えると非常に面白い。今回の事件が無ければビクトリウムキャノンなんか作られない牧歌的な世界が続いてたのだろう。 -- 名無しさん (2020-07-11 17:44:38)
- ↑4というか、どう見たって作者がホントにやりたかったことは「あの連中」に対するディスりなんだろうけど。イエローピーナッツのマウンテンコリーなんて露骨過ぎてそれ自体ギャグだし。まあ流石に連中だってここまでやれば捕まるだろう -- 名無しさん (2020-07-12 20:45:58)
- 名前の響きはスヌーピーのタイトルみたいに親しみやすいのにやってる事はケダモノそのものという… -- 名無しさん (2020-07-21 16:49:56)
- もしもウルトラマンレオだったら…と考えたが、よく考えたら彼は存在そのものが政治的な「亡国の王族」という立場上、L77星の内政干渉とみなされる危険性から余計に身動きが取れなくなることに気付いた(汗) -- 名無しさん (2021-04-27 01:13:00)
- 仮面ライダーの世界だとミラーモンスターやワームなどは保護の対象に入るけど、グロンギ、オルフェノク、ファンガイアは始末するってことか -- 名無しさん (2021-06-12 19:39:50)
- リアルの方の犬はガチギレ本邦による委員会脱会と圧力食らっていまの有様という、まあ実質バックアップやってたカンガルーの腹の内もわからんでもないのだが -- 名無しさん (2021-07-21 08:39:55)
- マウンテンピーナッツの行動が「国際規範に即している」「告発されない」は明らかに現実離れし過ぎてる -- 名無しさん (2022-01-04 00:02:06)
- ↑12 有名SF作家に「自分の作風で自由にウルトラマンを書いて下さい」って依頼する企画なんだから、他所でやれってのは筋違いだよ。他の作家はウルトラQ~セブンしか知らなかったけど、小林先生はネクサスやギンガのファンだったからギンガを題材にした感じだろう -- 名無しさん (2022-07-23 13:07:08)
- ウルトラマンデッカーに登場したシゲナガ・マキはマウンテンピーナッツとは別の意味で怪獣の存在意義を履き違えた地球人だと思う。たぶん思想的にお互い相容れない感じ -- 名無しさん (2022-09-19 12:57:04)
- 違反コメントを削除しました。 -- 名無しさん (2022-09-22 00:20:23)
- レッドマーン! 早く来てくれー! -- 名無しさん (2022-10-24 23:08:24)
- ハヌマーンならマウンテンピーナッツにも普通に立ち向かうだろうね -- 名無しさん (2023-04-21 10:00:27)
- 著作権保護のための対応のための編集を行いました -- 名無しさん (2023-08-30 21:44:04)
- 他人に対しては凄まじく攻撃的な癖に、自分達が怪獣の攻撃の対象になったら手のひら返す辺りえらく生々しいよね -- 名無しさん (2023-10-07 01:34:13)
- ↑ロストジャッジメントの主人公の言葉を借りれば「安全なところから人を追い詰めて、自分が何かされたときは盛大に泣き叫ぶ」という状況だと思う -- 名無しさん (2024-08-28 07:44:08)
- 戯画しすぎたグリーンピース……もといマウンテンピーナッツの色々な描写とかギンガとの空気の違いに戸惑うけど、「多々良島ふたたび」全体の中では、2番目に「ウルトラマンの小説」として認識しやすい作品だと思う。 -- 名無しさん (2024-10-02 08:27:08)
- 内容の割に挿絵は萌え絵っぽくてギャップがすごい -- 名無しさん (2024-11-21 06:32:50)
- 千草ちゃん最後に回収したスパークドールズはむっちゃ嫌な予感がするから使わない方がいいで -- 名無しさん (2024-11-27 16:09:01)
- 本当に怖いのはマウンテンピーナッツではなく、コイツらを「合法的な活動をする団体」として認識しているあの世界の常識。あの世界だとかの「オウム」も裁かれずに好き放題やるんだろうなって思う。正に狂気。 -- 名無しさん (2025-03-07 13:16:46)
最終更新:2025年03月07日 13:16