ゴルダー(ウルトラ怪獣)

登録日:2016/07/06 Wed 21:45:47
更新日:2022/12/03 Sat 20:47:59
所要時間:約 9 分で読めます





ゴルダーとは、一峰大二の漫画版『ウルトラマン』に登場した怪獣である。
元々はTVシリーズの没脚本『怪獣用心棒』に登場予定だった怪獣で、肩書は「用心棒怪獣」。後年のこいつと同じである。

登場話は『ぼくら』(講談社)1967年8月号掲載の「怪獣ゴルダーの巻」。 時期的には既にTVシリーズの放送が終了した頃の掲載となった。
このエピソードは原稿紛失が原因で、長らく秋田書店の単行本・文庫版には収録されておらず、
1995年頃に翔泳社から刊行された完全版第2巻において、当時の雑誌を基に原稿を新規に書き下ろす形で収録されていた。
後に2018年10月にリリースされた「最終決定版」にて秋田書店の単行本としては初収録が叶っている。


◆概要

世界征服を目論む “ 地球人の ” 秘密結社「サン=ダスト団」が、組織の用心棒かつ守護神として保有する巨大怪獣。
外観で特に目を惹くのは、腕先から足のつま先まで全てを覆う巨大な翼。全身の3分の2以上が翼で構成されてるといっても過言ではない。
反面、頭部はコウモリとも翼竜とも異なる恐竜型怪獣のフォルムをしており、そのミスマッチさがある意味「怪獣」らしさを引きたてている。
シルエットだけなら『ウルトラセブン』のアイロス星人に似ているかもしれない。
カラー扉では体色は黄色に塗られている。

強大な翼で大空を自在に飛ぶことも可能だが、最大の武器はこの翼を使って発生させるゴルダー=ドリル
これはグビラのような実体武器ではなく、翼をはためかせて発生させた真空波を、ドリル状に尖端を収縮させ貫通力を上げたもので、
その威力はビル街や山岳をいとも簡単に貫き、灰塵へと変えるほどのものである。
また口から熱戦を発することもでき、サン=ダスト団が保有するレーザー光線銃のおよそ千倍の威力を持つ。
作中でも、数十mはあろうかというウルトラマンの鉄像をアイスキャンデーのように瞬時に溶かしていた。

反面、ゴルダー自体は常日頃から凶暴な怪獣という訳ではなく、
普段はサン=ダスト団の秘密基地に特に暴れまわることなく待機するなど、普通の人間勢力に御されるほどである。
しかし、特定の条件下におかれることで急激に凶暴化する性質を有しており、
サン=ダスト団の総統ヒラーはゴルダーを利用して世界情勢を荒らし、その隙に世界を掌握しようと目論んでいた。


◇『怪獣ゴルダーの巻/怪獣用心棒』あらすじ

某国・アリーナの町に、突如として怪獣ゴルダーが出現。
ゴルダー=ドリルと放射熱戦を武器に暴れまわるゴルダーにより、町の住民たちはただ逃げ惑うしかなく、アリーナの町はわずか3分間で壊滅。
その後ゴルダーは忽然と姿を消し、全世界総出の必死の捜索も空しく、その足取りは依然として謎のままであった……

時は流れ、アリーナの町が壊滅してから2年後。
地球のどこかに存在する無人島に築かれた、秘密結社「サン=ダスト団」の本拠地において、
組織のトップである総統ヒラーは多数の団員たちを前に、遂に待ちに待った世界征服の野望を実現する日が訪れたと宣言。
そのためには、地球の防衛を担っているウルトラマン、そして科学特捜隊の排除が必要不可欠とし、
組織の守護神ゴルダーの力を持ってすれば実現すると扇動、熱狂に包まれた団員たちの歓声が湧き起こる。

舞台は日本に移り、ハヤタ隊員、フジ隊員、ホシノ少年は、やけに霧の深い市街地をパトロールしていた。
1メートル先すらも容易に見えない濃霧の探索中、3人は大きなトランクを辛そうに運ぶ老人と遭遇。
目の前で倒れ込んだ老人を助けようとしたハヤタだったが、トランクを持つと同時に中に仕込まれていた手錠が彼を捕える。
驚く彼らの眼前で老人……否、サン=ダスト団の総統ヒラーは瞬時に変装を解くと、
自己紹介すると同時にウルトラマンと科学特捜隊に対し降伏を勧告。
ヒラーに喰いかかるホシノ少年だったが、既に濃霧の中、ヒラー配下の団員たちが銃を手に取り囲んでいた。
手も足も出ないフジとホシノ少年を前に、ヒラーはムラマツキャップ宛の書状を残し、
トランク内蔵のジェット装置を作動させると、ハヤタを連れ去って空高く消え去ってしまった……

科学特捜隊本部に戻ったホシノ少年たちからあらましを聞いたムラマツキャップは、
手紙に刻まれた紋章が、かつてアリーナの町を襲撃した怪獣ゴルダーを象ったものだと看破。
サン=ダスト団がゴルダーを利用して世界征服を目論んでいることに、科特隊の一行は危機を感じる。

一方、誘拐されたハヤタは、すでに彼がウルトラマンと一番関係が深いことまで調べ上げていたサン=ダスト団により
組織の本拠地に連行され、苛烈な拷問を受けていた。
ウルトラマンとの繋がりを頑として否定するハヤタの心を折るべく、ヒラーはゴルダーの力を誇示するデモンストレーションを開始。
特殊な鋼鉄で造られた原寸大サイズ(多分)のウルトラマン像を用意し、レーザー光線銃ですら傷一つつかないそれを
ヒラーの指示を受けたゴルダーは、口から吐いた熱線で原形をとどめないほどにまでドロドロに溶かしてしまう。
その直後、不審な電波が発信されているとの報を受けたヒラーは、その源であるハヤタの科特隊バッジを破壊するも
それに伴い仕込まれていた煙幕が作動。流石に地下の基地では煙たくて敵わず、すぐさま部下に換気するよう指示した。

その頃、ジェットビートルで電波を追っていたムラマツキャップらは、それが途絶えたのを知るや
バッジが破壊された時の煙幕を探知するスモークガン=ロケットを使用、見事サン=ダスト団の本拠地を割りだした。
ムラマツキャップらは団員に変装する事でハヤタを救出するが、時を同じくして何やら団員たちが騒ぎ始めている。
聞くと、今日この日は皆既日食が発生するとのことで、それに併せてゴルダーを放ち、世界中を破壊させるというのだ。
「皆既日食」。それこそが、普段はサン=ダスト団に従っているゴルダーを凶暴化させるスイッチだったのである。

その様子を傍らから伺っていたムラマツキャップは、かつてアリーナの町をゴルダーが襲った日も皆既日食があったと回想する。
すぐさま上空で待機しているジェットビートルに攻撃指示を出すも、ヒラーは恐れることなくゴルダーに迎え撃つよう命令。
地下の基地から現れたゴルダーにジェットビートルはロケット弾を仕掛けるも全く通用せず、逆に突風で返り討ちにされてしまう。
意気揚々と無人島から飛び立とうとするゴルダー。もしこのまま暴れ始めてしまえば、東京もまたアリーナの町と同じ運命だろう。
絶体絶命の危機、ハヤタはウルトラマンに変身。飛び立とうとしたゴルダーを制止する。

憤ったヒラーはゴルダーにウルトラマンを倒すよう命令。
ウルトラマンはゴルダーの放つ熱戦を避け続けて格闘戦を仕掛けるも、かわしきれなかった一撃で両脚を焼かれてしまう。
地面に転がりながらもスペシウム光線で熱戦を相殺するが、ゴルダーは攻撃方法を突風に切り替えウルトラマンを翻弄し、わき腹を削られる。
ウルトラマンは連発されるゴルダー=ドリルを寸断し、体勢を曲げることでドリルの向きを変え、ゴルダーへと反射した。
何とかゴルダーに一矢報いたウルトラマンだが、それと同時にカラータイマーが点滅を開始。
早期に決着を着けるべく、ウルトラマンは迫りくるゴルダーに対し、エネルギーを結集して作った巨大な八つ裂き光輪を発射。
八つ裂き光輪はゴルダー=ドリルを切り裂いて、ゴルダーの胸に直撃。
すかさずウルトラマンはスペシウム光線を八つ裂き光輪めがけて撃ち、そのエネルギーの爆発によってゴルダーを粉砕する。
それと同時に、ギリギリの勝利を収めたウルトラマンも、エネルギーを使い果たしてその姿を消すのだった。

ゴルダーの死をもって、自身の野望が潰えた事を悟ったヒラーは、基地の自爆装置を作動させて自決。
かくして爆発する無人島を目にした科学特捜隊は、サン=ダスト団の壊滅と事件の終焉を確信する。
が、今の彼らが何よりもすべきことは、爆発により辺り一面に降り注ぐ岩の破片から一刻も早く逃れることであった……


☆総括

ウルトラシリーズの中でも非常に珍しい、宇宙人でも地底人でもない「地球人の悪の組織」が登場する構成のシナリオ。
成田亨によってゴルダーのデザイン画が書かれていたにも関わらず*1
内容が災いしてか結局『ウルトラマン』本編では映像化されることなく没に終わる結果となってしまった。
まぁ実際問題、「『ウルトラマン』作中に、『仮面ライダー』のショッカーが現れる」ようなものと考えれば
その違和感のほどは十分ご理解できるだろうし、没になってしまったのは已む無しといったところか。
以降の作品でも、『ウルトラマンA』の久里虫太郎や、『ウルトラマンダイナ』のヤマザキ・ヒロユキのように、
個人単位の悪人が首謀者もしくは侵略者の協力者としてウルトラマンや防衛チームと敵対するケースは散見されるが、
このサン=ダスト団のような組織単位で「地球人の悪の組織」が出てくるケースは、映像作品ではあまり見られない。

余談だが、朝日ソノラマの雑誌『宇宙船』Vol.5(1981年刊行)にて、ウルトラシリーズの未発表シナリオを題材に
放送当時コミカライズを連載していた漫画家が一枚絵イラストを発表するという企画が開催されていたのだが、そこで一峰大二は『怪獣用心棒』のイラストを描いている。
(他は、楳図かずおの『ザ・ジャイアント』、井上英沖の『マンダスの島』、桑田次郎の『湖底の叫び声』というラインナップ)
こちらで描かれたゴルダーは、成田亨のデザインを基とした『ぼくら』連載版とは大分容姿が異なり、
腕に小さな皮膜が張っているだけで、どちらかといえば正統派の恐竜型怪獣に近いフォルムで描かれている。
また、サン=ダスト団のコスチュームも漫画版のいかにも現実の軍人や秘密結社を彷彿とさせるものと異なり、
奇抜なヘルメットとボディスーツに身を包んだ、昔の特撮作品に出てきそうな宇宙人染みたものになっている。
こちらのイラストも「最終決定版」下巻に収録されている。

一峰は後年『ウルトラセブン』最終章として「ゴードの巻」を描いており、宇宙人連合の怪獣傭兵の中にゴルダーも混じっている。
イカルス星人の台詞から察するに、以前ウルトラマンが倒した者を復活させた個体のようである。
こちらはウルトラセブンアイスラッガーで袈裟斬りにされ倒された。

そして、漫画版の初掲載より半世紀もの時を経た2018年10月。
秋田書店よりリリースされた「最終決定版」下巻に初収録された一峰大二の新作「烈風怪獣ゴルダーの逆襲の巻」において、
実に51年ぶりのウルトラマンに対するリターンマッチが繰り広げられる事となった。
かつてウルトラマンが戦ったゴルダーとは別個体で、サン=ダスト団には操られていない野生体であり、皆既日食とは関係なしに普段から凶暴性を発揮している点が以前の個体と異なっている。
仲間の恨みを晴らす為に科学特捜隊本部へと単身カチコミを敢行し、翼から巻き起こす突風で科特隊を翻弄する。
ウルトラマンとの戦いでは、突風を起こすために翼を広げた一瞬、無風になった隙を突かれ、八つ裂き光輪を牙に引っかけられてしまい、そこにスペシウム光線を撃たれてエネルギーの爆発で致命傷を負う……という、初代同様の末路を辿ることとなった。
なお、死に際に最後の力で岩を投げつけ、フジ隊員とホシノ少年の乗ったジェットビートルを撃墜するという往生際の悪さを見せるも、二人は無事ウルトラマンに救助されて事なきを得ている。


追記・修正は皆既日食の日を見計らってお願いします。

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最終更新:2022年12月03日 20:47

*1 なお、2018年現在デザイン画は現存しておらず、過去発行された成田亨の画集にも収録されていない。