登録日:2017/08/31 Thu 22:47:13
更新日:2025/10/01 Wed 07:09:09
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概要
シンプルに0系・100系を置き換えるのであれば最高速度が270km/hの
300系、最高速度300km/hの
500系を増備すればいいだけなのだが、300系は
- 車体鋼体が薄く、床下のエアコンから車内の送風口へ冷気や暖気を送っている間に外気で暖められたり、冷やされたりしてエアコンの効きが悪い
- GTO素子のVVVFインバータを採用しており、加減速時の磁励音が非常に大きい。要するにうるさい。
- 最高速度で走行している時の揺れが大きい
などの課題があり、一方の500系も
- 軽量性優先で車体にアルミハニカムパネル構造を採用したため、車両価格が非常に高額
- チューブ状の車体のため、車内の居住性が若干犠牲になっている
- 座席数が300系と異なる他、1・16号車の運転台後方に客用扉がないため乗降に時間がかかる
などの課題があった。
そこで、JR東海・西日本の両社は最高速度を300系より高め、居住性・乗り心地を改善し、運用しやすくするために汎用性を高めた700系を開発することとなった。
ちなみに開発当時の仮称はN300系だった。登場当初はJR東海所有車のみ「New Generation Train」という愛称があり、車内で発売されていたテレホンカードに愛称が書かれていた。
東海保有車両が0番台(C編成)、西日本保有車両が3000番台(B編成)、7000番台(E編成)を名乗る。
車両解説
7000番台については別途解説する。
車体
新幹線で標準化されたアルミニウム合金製とし、防音材を挟み込んだダブルスキン構造とした。先頭形状はトンネル微気圧波をなるべく短い長さでなるべく小さくするため、エアロストリーム形状を採用。このため、700系は「カモノハシ」の通称がある。
重さは300系とほとんど変わらない。強いて言えば700系のほうが3トン軽い。
塗装は300系とほぼ同じだが、300系では窓直後にあった細帯が太帯の下になっている。B編成の先頭側部には500系のような「JR700」のロゴがある。
行先表示器は東海車が巻取り式なのに対し、西日本車は3色LED式としている。台車は軽量なボルスタレス式だが、東海車が300系で実績のあるウイングバネ式、西日本車が500系で実績のある軸梁式を採用している。
機構
電動車のユニット構成も見直され、付随車1両に電動車3両で構成されるようになった。制御装置はIGBT素子を採用したVVVFインバータとし、加減速時の騒音をカットした。
ユニット構成は500系と同じ4両1ユニットとしたが、1ユニットに1両
モーターを積まないトレーラー車(T車)を連結し、両先頭車がT車になるようユニットは背中合わせで連結される。
VVVF制御装置は1ユニットに3台搭載され、2両のモーター車に分散して搭載する。
パンタグラフはシングルアームパンタグラフとし、カバーは碍子の部分だけを覆う小さなものに、その横に遮音板を設置した。屋根上の高圧引き通し線はユニット同士の連結部は大型の碍子の先端同士をケーブルで接続するケーブルヘッド、ユニット内の連結部はケーブルとコネクターで直接つなぐ直ジョイントとした。
最高速度は東海道区間では270km/h、山陽区間では285km/hとされた。
300系で苦情の相次いだ乗り心地と空調の効きの悪さについては改良型の制振装置や空気ばねの搭載、連結部への車間ダンパ設置、断熱効果の高いアルミダブルスキン採用、空調ダクトの短縮などで改善した。
内装
普通車は3列+2列、グリーン車は2列+2列のリクライニングシートが並ぶ。内装は東海車と西日本車で異なり、前者は座席モケットの柄は水色なのに対し、後者は濃い紺色になっている。
東海車の後期製造分と西日本車には各車両両端の座席にコンセントと縦長のテーブルを設けている。
運転席の座席には500系と同様、長時間の着席に伴う腰痛を予防する為、レカロ製のセミバケットシートを採用。スポーツカーのシートで有名なメーカーだけあって、運転士はちょっとしたスポーツカー気分を味わえる。
バリエーション
新大阪~博多間の「ひかり」用として導入されたグループ。
塗装も500系によく似たもので、窓下に黄色い帯が入り、先頭側部に「Rail Star」のロゴが入る。
車内は全席普通車だが、指定席車は0系「ウエストひかり」同様2+2配置になっている。
また、8号車の新大阪寄りには個室設備があり、当初は防犯上の問題でひかりレールスター以外の列車では利用できなかった(現在は「こだま」専業になったこともあり利用可能)。
他には旅行ルートや時刻表を調べ、更に印刷できるタッチパネル案内機「旅指南」が設置されていたが、2008年3月14日に撤去されている。
量産に先立って製造されたC0編成は1997年秋に完成した。
試運転は16両フル編成だけでなく、E編成の開発に必要なデータ収集を兼ねて8両でも実施された。
その後は量産化改造を受けて2013年の廃車まで営業運転に使われ続けた。
300系のJ0編成と異なり、量産車と大きな違いは少ない…といっても設備面は見直されているし、地味に乗務ドアの形状が違ったり鼻先が70cm短かったりする。
また、パンタグラフも当初は300Xに似た大型のカバーを装備していたが、これ自体が騒音源であることが分かり途中で500系のものを改良したタイプに改められた。
廃車後、1号車の723-9001は保存され、
リニア・鉄道館に展示されている。
また、細かい違いはあるが地味なためか模型化に恵まれていない。一方、
プラレールはいち早く製品化したのでC0編成がモデルとなり、2002年にパンタグラフだけは量産仕様になったがその後も乗務ドアに試作車の特徴が残ったまま2014年まで販売されていた。
100系に次いで、例によってお金の無いJR西日本向けにC編成が一部譲渡されている。
2011年からJR西日本が保有する300系を置き換えるためにC編成9本が譲渡された。
JR西日本籍のC編成はJRマークの色、車内チャイム、車内ステッカー、パンタグラフ遮音板の色が東海籍のC編成と異なっていた。2017年までに全て引退となった。
形式
博多向きの制御付随車で、C・B・E編成の1号車。
東京向きの制御付随車で、C・B編成の16号車、E編成の8号車。
普通席を備える中間電動車で、C・B編成では4・5・12・13号車に、E編成では2・7号車に連結。
普通席を備える中間電動車で、C・B編成では3・6・11・14号車に、E編成では3・6号車に連結。
普通席を備える中間電動車で、C・B編成では2・7・15号車に、E編成では4・5号車に連結。
C・B編成にのみ連結されるグリーン席を備える中間電動車で、717形は10号車に、718形は8号車に連結。
グリーン席を備える中間付随車で、C・B編成の9号車に連結。
運用
16両編成
デビュー当初はのぞみへ重点的に投入され、300系をひかり・こだま運用へと追いやった。
N700系デビュー後も主力の座を守っていたが、増備が続くに連れてひかり・こだま運用が増え、300系を置き換えていった。
末期はこだま・ひかり運用が主体のために
東海道新幹線内で完結するひかり・こだま運用に入るB編成も多く存在した。
C編成9本の譲渡後特に動きはなかったが、
N700Aの投入開始によって本格的にC編成の置き換えがスタート。2013年にC1・C2・C3・C5編成が廃車となり、2019年12月1日を最後にすべての定期運用を終了。
JR西日本のB編成は2018年より廃車がスタート。B7編成がB編成の廃車第1号となり、2020年3月に定期運行を終了。前述の通り、2021年2月に最後に残ったB4編成が廃車され、16両の700系が姿を消した。
2020年3月までC編成使用の団体列車や臨時列車が設定され、さよなら運転も予定されていたが、憎きウイルスの影響によりさよなら運転は中止となってしまった。
なおC編成全廃後もJR西日本所有のB4編成が臨時用として1本残され、2020年5月には全般検査も受けたものの、翌年2月に廃車された。
なお、東海所有編成は
品川駅開業から2005年9月まで先頭車の車体中央部のラインを分断する形で「AMBITIOUS JAPAN!」のロゴを貼り付け、一部車両のドア横に円形の「AMBITIOUS JAPAN!」ステッカーが貼付された。
本来は2003年末で終わる予定だったのだが、予想外の反響の高さと新幹線40周年、愛知万博開催によって延長が決まり、2005年9月まで実施された。
前述した700系引退に際してはリニア・鉄道館の保存車にも期間限定でラッピングが復活している。
新幹線の場合、通過する自治体が非常に多く、各自治体の屋外広告物条例の許可の兼ね合いもあって長期間に渡る車体広告の掲出というのが難しい。
7000番台
山陽新幹線内で完結するひかり・こだまに充当され、ひかり運用時は特に「ひかりレールスター」と呼ばれた。ひかりレールスターは
九州新幹線全通後はさくら・みずほに置き換えられる形で激減し、現在はこだま運用が主体となっている。
突発的なダイヤ乱れ発生時にはのぞみの運用を代走することもある。誰が言ったか「のぞみレールスター」。
2025年に山陽新幹線全線開業50周年を記念して「
ONE PIECE」とコラボした特別編成3本が登場することが発表され、第1弾として車体を水色にラッピングした「せとうちブルー号」が登場し、同年4月12日から運行開始。
第2弾で「
トニートニー・チョッパー号」、第3弾で「
モンキー・D・ルフィ号」が登場しており、内装や車内放送も作品とコラボしたものとなっている。
派生車両
台湾高速鉄道の車両。騒音基準が日本と異なるため、そんなに複雑な先頭形状じゃなくとも300km/h運転ができる。
12両編成となっている他、先頭形状も700系と違う形に変更されている。
また、運転席のマスコンが500系と同じ横軸ツインレバー式となっている。
九州新幹線用の車両。最高速度は260km/hと低いが、その分勾配登坂性能が強化されている。
全編成が6両編成でグリーン車はない。車内は水戸岡デザイン全開。博多から先へも乗り入れることが可能で実際試運転も行ったが、残念ながら定期運用は実現していない。
お馴染み、
ドクターイエロー。7両編成と短く、軌道検測車以外全部の車両が電動車となっている。1両だけ屋根が白く塗られている。
営業用の700系と異なり、最高速度が285km/hとなっている
山陽新幹線内でも270km/hでの運転を行っている。
東海車のT4編成、西日本車のT5編成が存在するが、2027年度までに全廃予定。
追記、修正は
TOKIOの「AMBITIOUS JAPAN」を聴きながらお願いします。
- のろま -- 名無しさん (2017-09-01 07:25:10)
- 違う!乗り心地を追求したのだ! -- 名無しさん (2017-09-01 22:05:40)
- コロナウイルスのせいで最終運行日前に殺されてしまった…… -- 名無しさん (2020-03-04 09:53:38)
- 今の東海道新幹線この形式ばっかで代わり映えしないのがちょっと残念 -- 名無しさん (2020-12-29 01:22:32)
- 地味〜に、「史上初のAWDじゃない新幹線」である。 -- 名無しさん (2025-03-08 21:25:33)
最終更新:2025年10月01日 07:09