700系新幹線電車

登録日:2017/08/31 Thu 22:47:13
更新日:2025/03/08 Sat 21:25:33
所要時間:約 5 分で読めます




700系新幹線電車とはJR東海JR西日本が開発した新幹線電車で、東海道山陽新幹線の車両としては第4世代の車両に相当する。
JR東海は16両60編成、JR西日本は16両15編成、8両16編成を投入した。

概要

老朽化した0系100系の置き換え用に開発された。

シンプルに0系・100系を置き換えるのであれば最高速度が270km/hの300系、最高速度300km/hの500系を増備すればいいだけなのだが、300系は
  • 車体鋼体が薄く、床下のエアコンから車内の送風口へ冷気や暖気を送っている間に外気で暖められたり、冷やされたりしてエアコンの効きが悪い
  • GTO素子のVVVFインバータを採用しており、加減速時の磁励音が非常に大きい。要するにうるさい。
  • 最高速度で走行している時の揺れが大きい
などの課題があり、一方の500系も
  • 軽量性優先で車体にアルミハニカムパネル構造を採用したため、車両価格が非常に高額
  • チューブ状の車体のため、車内の居住性が若干犠牲になっている
  • 座席数が300系と異なる他、1・16号車の運転台後方に客用扉がないため乗降に時間がかかる
などの課題があった。

そこで、JR東海・西日本の両社は最高速度を300系より高め、居住性・乗り心地を改善し、運用しやすくするために汎用性を高めた700系を開発することとなった。

ちなみに開発当時の仮称はN300系だった。登場当初はJR東海所有車のみ「New Generation Train」という愛称があり、車内で発売されていたテレホンカードに愛称が書かれていた。

編成記号はJR東海分がC、JR西日本の16両がB、8両がE。

構造

車体は新幹線で標準化されたアルミニウム合金製とし、防音材を挟み込んだダブルスキン構造とした。先頭形状はトンネル微気圧波をなるべく短い長さでなるべく小さくするため、エアロストリーム形状を採用。このため、700系は「カモノハシ」の通称がある。なお、E編成の先頭側部に「Rail Star」、B編成の先頭側部には500系のような「JR700」のロゴがそれぞれ付けられている。

行先表示器はC編成が巻取り式なのに対し、B・E編成は3色LED式としている。ちなみに指定席表示器はC編成が液晶表示機で、B・E編成は3色LED。台車は軽量なボルスタレス式だが、C編成が300系で実績のあるウイングバネ式、B・E編成が500系で実績のある軸梁式を採用している。

電動車のユニット構成も見直され、付随車1両に電動車3両で構成されるようになった。制御装置はIGBT素子を採用したVVVFインバータとし、加減速時の騒音をカットした。
ユニット構成は500系と同じ4両1ユニットとしたが、1ユニットに1両モーターを積まないトレーラー車(T車)を連結し、両先頭車がT車になるようユニットは背中合わせで連結される。
VVVF制御装置は1ユニットに3台搭載され、2両のモーター車に分散して搭載する。

パンタグラフはシングルアームパンタグラフとし、カバーは碍子の部分だけを覆う小さなものに、その横に遮音板を設置した。屋根上の高圧引き通し線はユニット同士の連結部は大型の碍子の先端同士をケーブルで接続するケーブルヘッド、ユニット内の連結部はケーブルとコネクターで直接つなぐ直ジョイントとした。

最高速度は東海道区間では270km/h、山陽区間では285km/hとされた。

重さは300系とほとんど変わらない。強いて言えば700系のほうが3トン軽い。

300系で苦情の相次いだ乗り心地と空調の効きの悪さについては改良型の制振装置や空気ばねの搭載、連結部への車間ダンパ設置、断熱効果の高いアルミダブルスキン採用、空調ダクトの短縮などで改善した。

量産先行車

量産に先立って製造されたC0編成は1997年秋に完成した。
試運転は16両フル編成だけでなく、E編成の開発に必要なデータ収集を兼ねて8両でも実施された。
その後は量産化改造を受けて2013年の廃車まで営業運転に使われ続けた。
300系のJ0編成と異なり、量産車と大きな違いは少ない…といっても設備面は見直されているし、地味に乗務ドアの形状が違ったり鼻先が70cm短かったりする。
また、パンタグラフも当初は300Xに似た大型のカバーを装備していたが、これ自体が騒音源であることが分かり途中で500系のものを改良したタイプに改められた*1

廃車後、1号車の723-9001は保存され、リニア・鉄道館に展示されている。
また、細かい違いはあるが地味なためか模型化に恵まれていない。一方、プラレールはいち早く製品化したのでC0編成がモデルとなり、2002年にパンタグラフだけは量産仕様になったがその後も乗務ドアに試作車の特徴が残ったまま2014年まで販売されていた*2

車内設備

普通車は3列+2列、グリーン車は2列+2列のリクライニングシートが並ぶ。内装はC編成とB編成で異なり、C編成の座席モケットの柄は水色なのに対し、B編成は濃い紺色になっている。
E編成は全車両普通車だが、3列+2列の車両とグリーン車と同じ2+2配置になっている車両に分かれ、更に個室設備がある車両もある。ただし個室は防犯上の問題でひかりレールスター以外の列車では利用できない。

C編成の後期の車両とB・E編成には各車両両端の座席にコンセントと縦長のテーブルを設けている。コンセントの数はC編成は1両で4個、B・E編成は1両で10個。

なお、E編成には旅行ルートや時刻表を調べ、更に印刷できるタッチパネル案内機「旅指南」が設置されていたが、2008年3月14日に撤去されている。

運転席の座席には500系と同様、長時間の着席に伴う腰痛を予防する為、レカロ製のセミバケットシートを採用。スポーツカーのシートで有名なメーカーだけあって、運転士はちょっとしたスポーツカー気分を味わえる。

形式

  • 723
博多向きの制御付随車で、C・B・E編成の1号車。

  • 724
東京向きの制御付随車で、C・B編成の16号車、E編成の8号車。

  • 725
普通席を備える中間電動車で、C・B編成では4・5・12・13号車に、E編成では2・7号車に連結。

  • 726
普通席を備える中間電動車で、C・B編成では3・6・11・14号車に、E編成では3・6号車に連結。

  • 727
普通席を備える中間電動車で、C・B編成では2・7・15号車に、E編成では4・5号車に連結。

  • 717・718
C・B編成にのみ連結されるグリーン席を備える中間電動車で、717形は10号車に、718形は8号車に連結。

  • 719
グリーン席を備える中間付随車で、C・B編成の9号車に連結。

運用

C・B編成

東海道・山陽新幹線で16両編成で運行されるのぞみ・ひかり・こだまに充当され、デビュー当初はのぞみへ重点的に投入された。これにより、300系をひかり・こだま運用へと追いやった。
N700系デビュー後も主力の座を守っていたが、増備が続くに連れてひかり・こだま運用が増え、300系を置き換えていった。
末期はこだま・ひかり運用が主体のために東海道新幹線内で完結するひかり・こだま運用に入るB編成も多く存在した。
2019年12月1日を最後に東海道新幹線での定期運用は消滅。2020年3月までC編成使用の団体列車や臨時列車が設定され、さよなら運転も予定されていたが、憎きウイルスの影響によりさよなら運転は中止となってしまった。
なおC編成全廃後もJR西日本所有のB4編成が臨時用として1本残され、2020年5月には全般検査も受けたものの、翌年2月に廃車された。

なお、東海所有編成は品川駅開業から2005年9月まで先頭車の車体中央部のラインを分断する形で「AMBITIOUS JAPAN!」のロゴを貼り付け、一部車両のドア横に円形の「AMBITIOUS JAPAN!」ステッカーが貼付された。
本来は2003年末で終わる予定だったのだが、予想外の反響の高さと新幹線40周年、愛知万博開催によって延長が決まり、2005年9月まで実施された。
前述した700系引退に際してはリニア・鉄道館の保存車にも期間限定でラッピングが復活している。

新幹線の場合、通過する自治体が非常に多く、各自治体の屋外広告物条例の許可の兼ね合いもあって長期間に渡る車体広告の掲出というのが難しい。


E編成

山陽新幹線内で完結するひかり・こだまに充当され、ひかり運用時は特に「ひかりレールスター」と呼ばれた。ひかりレールスターは九州新幹線全通後はさくら・みずほに置き換えられる形で激減し、現在はこだま運用が主体となっている。
突発的なダイヤ乱れ発生時にはのぞみの運用を代走することもある。誰が言ったか「のぞみレールスター」
今後の予定として、2025年春から「ONE PIECE」とコラボしたラッピング車両が3編成登場することが発表されている。

去就

700系は安定的な性能と乗り心地で好評を博した車両ではあったが、2011年7月にC4編成が量産車として最初に廃車された。ただこの廃車は西日本に譲渡されるC編成の修理部品を確保するという意味合いが強かった。
その後2011年度内にJR西日本が保有する300系を置き換えるためにC編成9本が譲渡された。この9編成には先述のC4編成が含まれている。
JR西日本籍のC編成はJRマークの色、車内チャイム、車内ステッカー、パンタグラフ遮音板の色が東海籍のC編成と異なっていた。西日本のC編成は製造年の古い初期車ばかりのため、2017年までに姿を消している。

C編成9本の譲渡後特に動きはなかったが、N700Aの投入開始によって本格的にC編成の置き換えがスタート。2013年にC1・C2・C3・C5編成が廃車となり、2019年12月1日を最後にすべての定期運用を終了。
JR西日本のB編成は2018年より廃車がスタート。B7編成がB編成の廃車第1号となり、2020年3月に定期運行を終了。前述の通り、2021年2月に最後に残ったB4編成が廃車され、16両の700系が姿を消した。

なおE編成については廃車の予定が無いどころか、和式トイレの洋式化改造やフリーWi-Fiの設置改造を行ってもうちょっと活躍が続く予定。N700Sの8両バージョンが出る頃になったら流石に廃車になると思われるが、それがいつになるやら・・・。

派生車両

  • 700T形
台湾高速鉄道の車両。騒音基準が日本と異なるため、そんなに複雑な先頭形状じゃなくとも300km/h運転ができる。
12両編成となっている他、先頭形状も700系と違う形に変更されている。
また、運転席のマスコンが500系と同じ横軸ツインレバー式となっている。

  • 800系
九州新幹線用の車両。最高速度は260km/hと低いが、その分勾配登坂性能が強化されている。
全編成が6両編成でグリーン車はない。車内は水戸岡デザイン全開。一応山陽新幹線の博多から先へも乗り入れることが出来るのだが、営業運転は鹿児島中央から博多までとなっている。

  • 923形
お馴染み、ドクターイエロー。7両編成と短く、軌道検測車以外全部の車両が電動車となっている。1両だけ屋根が白く塗られている。
営業用の700系と異なり、最高速度が285km/hとなっている山陽新幹線内でも270km/hでの運転を行っている。
東海車のT4編成、西日本車のT5編成が存在するが、2027年度までに全廃予定。


追記、修正はTOKIOの「AMBITIOUS JAPAN」を聴きながらお願いします。


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最終更新:2025年03月08日 21:25

*1 5号車と12号車で異なるカバーを装備して試験走行している映像も残っている。

*2 923形やE編成も当初同じ仕様で製品化されている。