ストロングゼロ

登録日:2018/01/24 Wed 15:54:37
更新日:2025/03/26 Wed 19:43:31
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当記事は飲酒を勧める物ではありません!!
また、20歳未満の飲酒は法律で禁じられています。


ストロングゼロは、株式会社サントリーによる福祉事業のひとつ……ではなく、缶酎ハイの商品である。

本項では他社のストロング系酎ハイや歴史についても触れる。




概要

アルコール度数は9%*1と国内向けの缶のリキュール類商品の中では高めの部類。
ビールでだいたい5%、普通の缶酎ハイが3〜6%くらいなので酒の弱い日本人向けの商品では高いことが分かるだろう。
マイナス196℃*2で瞬間凍結した果実を粉砕し、その味をそのまま味わえる一方で、糖質はゼロ、プリン体もゼロと「ゼロ」の名前に相応しいものとなっている。
元々「-196℃」シリーズは2005年の発売以来、アルコール度数9%未満の商品が主流だったのだが、2009年にキリン『氷結ストロング』シリーズに追随する形でコイツが発売された途端スマッシュヒット、いつの間にかこっちがメインになってしまった。

ライバル…もとい元祖言えるのがキリンの『氷結ストロング』シリーズと『麒麟特製サワーシリーズ』であり、これらのウォッカベースの高アルコール度数系缶酎ハイ商品ともども「ストロング系チューハイ」とも呼ばれる。
…が、ネット上ではピルクルだろうが「ヤクルト」と呼ばれるがごとく、ストロング系チューハイをさして「ストロングゼロ」と呼ぶことも多い。
実際氷結ストロングもその他の商品も糖質ゼロだしゼロって言って問題ない気はするが…。

ただし、糖類ゼロを目指すために甘味を人工甘味料に頼っているため人によってはダルあまという意見も。
サントリー側もその声を重く受け止めたのか、『ストロングゼロDRY』という甘くないストロングゼロも出た。

他社も同種の製品を続々と出している中でもストロングゼロがひときわ目立つ背景には、ストロング系のはしりというのもあるが、その後フレーバーを潤沢に用意していることなども挙げられるだろう。つまり飽きたら別の味を試すことも出来るわけである。
そこは先発のキリン氷結共々、ストロング系で争うようになってからブランディングが洗練されていくうち現在に至ったとも言える。
ストロングでゼロと言ってもあやつと呼ばれる偉大な男みんな大好きセブンの息子は関係ない。

とはいえ、これはつまりストロングゼロが非常に一般的な酒として認知された証でもあるので、一概に否定されるべきことでもないだろう。
それこそ、同業他社の類似商品(ストロング系チューハイ)すら指し示すようになったほどというのは非常に光栄であると思う。

そもそも、サントリー的なウリが「強い刺激を得られる酒」であり、ほろ酔いなどは別に商品(そのものズバリ『ほろよい』)を提供している。
また低価格の酒というのもウリだが、高級志向の人に向けてはサントリーはウイスキーをはじめいろいろな商品をかねてより出しており、
ストロングゼロは「いままでサントリーが手を付けていなかった市場」に乗り込んで「ゼロ」を売りにヒットし、ストロング系の代名詞となった優れた商品であることは誰もが認めることだろう。

ストロング系の仲間たち

  • サントリー『ストロングゼロ』 - 言わずと知れたストロング系の巨人。
  • キリン『氷結ストロング』 - 2008年登場の元祖。当初は果糖系だったがストゼロに追随した同社のロングセラー。
  • キリン『麒麟特製サワー』 - 旧称は『キリン・ザ・ストロング』と氷結上位種であり俗称「キリスト」と呼ばれていたが、上質志向にしてヒット。
  • キリン『ビターズ』 - ライムなどのキレと苦味を重視したストロング。
  • アサヒ『アサヒもぎたてまるごと搾り』- アサヒの主力商品。
  • アサヒ『ハイリキ ザ・スペシャル』 - ゼロ系じゃない果糖モノで2012年あたりにリリースするも短命に終わった。
  • タカラ『canチューハイ』
  • サンガリア『デカ酎』(ペットボトル商品)



歴史

誕生まで

まぁこんな強い酒なのに値段自体が低いアルコール度数のモノ*3と変わらない上、一缶できっちり酔えて、
現代日本人の孤独を埋める酒としては、ビールなどの宅飲みに比べて経済的。
収入が少ない人にも優しく、現代社会のストレスや貧困に苦しむ層が癒しを求めて飲用出来るホムンクルスみたいな酒が出来たのか…

それは国のせい、もとい酒税が絡んでくる。

元来日本における酒税法は税金が高められる傾向にあり、それを回避しようとイタチごっこが続いた歴史がある。
例として、原料を麦や麦芽以外の豆類穀物にしたり、別種のアルコールにする事でビールではなく発泡酒と称し租税回避した「第三のビール」が有名だろう。
無論その抜け穴を潰して来た国であるが、このストロング系には大手企業ならではの裏ワザがあった。
酸味料に香料・果汁分0.2%~3%以下の果汁エキスを漬け込んだウォッカに香料と言う、独自製法ではあるものの原価をソフトドリンクに近づけて売り出せたのだ。
加えて2010年当時、酒税法3条におけるビールで350ml77円、発泡酒で同46.99円のところ、チューハイなどの10度未満の発泡性の酒は
350mlあたり28円と言う激安税額であった。つまり、ヘタな酒より安い税額を武器として激安の酒を売り出すことが可能となり、
ストロング系がバカ売れする程利鞘もデカい、まさにストロングスタイルだったのだ。
おまけに第三のビール(新ジャンル)すら2020年に37.8円まで上がったのにチューハイはそのまま28円。そりゃブランディングに熱が入るわ。
と言うのが、ストロング系のプッシュとヒットの背景でもある。

しかし、メーカーが甘い汁もとい甘い酒啜って国が損をすると言う話を、国税庁のドブネズミ共が黙って見ている筈はなかった。
2023年10月に改正酒税法が可決され、2026年からビール・発泡酒・新ジャンル含め54.25円に引き上げられる中、遂に聖域であったチューハイにもメスが入り、
それまでの350mlあたり28円から35円に引き上げられたのだ。即ち、儲けも美味しくなくなると言う話になってしまったのであった。

健康への影響

そもそもが嗜好品なので本来は自己責任であるのだが、実は500ml缶商品でテキーラショット3.75杯分のアルコールを含む結構強い酒。
なので肝臓を始めとする身体にとってかなりやべーやつ
特に 日本人の場合アルコール分解酵素の量が世界でも例を見ないレベルで低いので常飲はおすすめできない
下戸の人は絶対に飲まない方が良いと言い切れ、1缶で飲み会1回分くらいの酔いを一気に得られるといえば分かるだろうか。
砂糖や糖質という現代人が節制したいものがゼロというのは確かに利点ではあるが、アルコールの分解には 糖分が必要 なのでたっぷりの人工甘味料で「甘さを感じて糖分を摂取したような錯覚」を脳が感じたまま糖分なしで度数が高いアルコールを飲むのは 肝臓へのダメージがでかい。

おまけに焼酎やウイスキー等と比べてアルコール特有のキツイ感覚も少なく、それなりに度数が高いにもかかわらず、平気な人はそれこそグビグビと飲めてしまう。
それ故にストロング系チューハイの中毒者も現れる事態にまで発展している。
くれぐれもほどほどにね!

海外でのドラッグのポジションが、日本ではまるまるストロングゼロになっているという指摘もある。
サントリーはごはんに合う缶酎ハイを目指していたはずなのに、どうしてこうなったと言う話ではあるが…経緯を見れば仕方が無いような。

あとエナジードリンク割りとかいう頭の悪い飲み方は危険
+ カフェインとお酒について
カフェインを酒と一緒に飲んだ時のリスクについては様々な意見があるが、一般的には「カフェインの覚醒効果により酔いが感じにくくなり、飲酒に歯止めがきかなくなる」と言われている。とはいえ大半のエナジードリンクのカフェイン量は缶コーヒーの半分程度で実はそこまで多くなく、大げさに騒ぐほどでもないという意見もある。なんにせよイッキ飲みは避け、量と節度を弁えれば安全なのは間違いない。

転換期へ

さて、こうしたリスクの高さもありながら人気を博していたストロング系だが、2010年代終盤から思わぬライバルが登場する。
その名は、「ノンアルコール飲料」。

ノンアル自体2000年代からビールを中心にシェアを伸ばしていたが、若年層を中心としたソバーキュリアス*4の普及やコロナ禍による健康志向の高まりから世界的に台頭するようになった。

この流れからノンアル~低アルコール飲料の新製品が大きく拡充し、日本ではビール程度しか無かったノンアルもハイボール・カクテル・ワインとジャンルが拡がり、今やスーパーの売り場に専用スペースができる程。
加えてノンアルコールのため酒税が1円もかからず、メーカー側も収益を上げやすいというメリットもあった。

中でもアサヒビールは改正酒税法施行と同時に発売された「スーパードライクリスタル」*5がヒットを記録。これを受けて最大70種類あったストロング系を次々と廃止し、セブンPBの「クリアクーラーSTRONGレモン&ライムサワー」を残し撤退。
また、沖縄の「オリオンビール」はチューハイのWATTA(ワッタ)において、9%製品の生産・販売を2020年1月で打ち切った。
これも依存や中毒といった健康被害を考慮して生産を中止したとのこと*6

2024年2月には厚生労働省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を発表。
これを受け、サッポロビールもストロング系の新製品を販売しない方針を示し、事実上の撤退となった。
実際、市場におけるストロング系の売り上げは2021年をピークに3年連続で低下傾向にある。

こうしてストロング系を発売するメーカーはPB製品を除くと元祖とも言える2社に絞られ、サントリーは2024年1月にストロングゼロのリニューアルを発表。
このリニューアルに合わせ、商品名も「ストロングゼロ」から「-196」へ変更することが発表された。
製品には「STRONG ZERO」のロゴは残るものの、文字のサイズは旧パッケージと比べるとかなり小さくなり、同年秋には度数4%系の製品も追加された。
サントリー側は「度数の問題ではない」というスタンスだが、2024年秋ごろに予定していたストロング系の新製品の発売を中止したことも明らかにしている。

RTD界を牽引してきたストロング系も「ノンアル」「低アル」というゲームチェンジャーの台頭で転換期を迎えたといえよう。



ストロングゼロ文学と飲む福祉

項目冒頭で『ストロングゼロは、株式会社サントリーによる福祉事業のひとつ』と書いたが、
実はストロングゼロは現在、日本人にとってひとつの福祉事業として扱われる傾向がある*7

まずなんと言っても、現代日本人(特に若者)は貧困層が増加しており、それ故にストレスを一気に忘れられる酒は、経済的であり精神的な安らぎとして機能する。*8
そして強い酒であるということは1本で一気に酔えるので、すっと寝ることもできるし、糖質ゼロのおかげで「アルコールを除けば」健康的なイメージもある。

そんなストロングゼロに救済を見出してた現代日本人は、いつしかTwitterなどで
ストロングゼロを「飲む福祉」などと例えるようになり、独特な文学をつぶやくようになった。
無論大半はネタであり、共感から生じる笑いを狙うものなのだが、テレビではなかなか見ない文脈に困惑しながらも高度な解説を試みる専門家も。
あまりの流行に、強烈なインパクトと中毒性を持つものをストロングゼロに例えるようにすらなった。以下はその一例。
なお海外ではストロングゼロよりもドラッグに例えられる傾向がある。

ポプテピピック(アニメ)

見るストロングゼロ。箸休めに油ギトギトのおつまみ『ボブネミミッミ』を突っ込んでくる、
元から出版社公認クソマンガなのにアニメ化してしまっているうえに人を選びまくるパロディ上等、
そして原作がクソな以上どうあがいてもクソなのにパペットアニメーションやドット絵、1話毎に担当声優変更(しかも大御所率が高い)など、
無駄にそこらのアニメより金の掛かることをしていることから狂気の沙汰と評され、しまいに「ストロングゼロ」に例えられた。

輝夜(かぐや)(ルナ)

ストロングゼロの擬人化。時のバーチャルYouTuber
「首絞めハム太郎」と形容される独特の声質とぶっ飛んだテンションに言語センス、そして着ている服の色味などからストロングゼロと関連付けられてしまうようになった。
輝夜月自身はストロングゼロ扱いに困惑している模様。
なお、海外では「コカインちゃん」「聴くマリファナ」と呼ばれている。

連ちゃんパパ

90年代半ばにパチンコ雑誌に掲載されていた漫画。
真面目な教師だった主人公が、パチンコをきっかけにどんどん堕落していき、パチンコのためにヤクザもドン引きするほどの悪行を重ねていくというもの。
胸糞展開のオンパレードながら、絵柄や描写がコミカルなために思いの外サラッと読めてしまう作品であり、知らず知らずその内に秘められた毒の強さにやられてしまう読者が続発。
これが「軽く飲めるのにアルコールが強烈に効く」ストロングゼロとオーバーラップし、「悪意のストロングゼロ」「読むストロングゼロ」と称されるようになった。

ここまではイメージがストゼロの作品
ここからはストゼロが物語の中心にいる作品

VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた

ハーメルン出身のなろう系?小説。公式略称「ぶいでん」。
書籍化された影響からか、現在ハーメルンでは通常検索では引っかからず「チラシの裏」という隔離スペースで連載中。
主戦場はカドカワ系列のカクヨムとなっている。

清楚キャラを演じていたが人気が伸び悩んでいたVtuber「心音淡雪」が、配信の切り損ねで私生活がそのまま流出。
ストゼロ*9をブチ込んで凄まじい本性が流れてしまう放送事故から人気が爆発するというライトノベル
淡雪がストゼロに対して求婚をかます程のストゼロ大大大好きウーマンであり、ストゼロが絡んだ際の暴走も見どころの一つ。
何故か富士見ファンタジア文庫から書籍化された。直後から有名声優が声を当てた第1話再現宣伝PV作るわリアルVTuberとコラボ配信するわと出版社からのプッシュが凄まじい
そして何を血迷ったのかアニメ化が決定してしまった。いや、色んな意味で大丈夫かこれ!?
なお、ストロング系チューハイのメーカーとのタイアップは見送られた模様。

人妻の唇は缶チューハイの味がして

ヤンマガweb限定連載。ストロング系チューハイと人妻との情事をテーマにしている。
コロナ後の世界でストレスから逃げるようにストロング系にハマっている人妻と大学生が、酒の力を借りて寂しさを埋めるように体を重ねていくという、漫画。
全ヒロインが事情は有れど人妻で、ストロング系にハマりそうな事情を重ねたヒロインばかりで、主人公はキャンパスライフが新型コロナで台無しになりストロング系にハマるという背景で、連載開始時はマスクを付けた漫画の少なかった時期なのだが、情事に挑む際以外はマスクを付けていて珍しかった。




海外からの評価

海外の訪日客からもストロングゼロは好評らしい。
まあよくよく考えれば、強い酒ということで、アルコールに強い外国人なら日本人以上にウケがいいだろう。しかも安い。
おまけにコンビニや量販店でも普通に手に入り、なによりフレーバーが多彩なのも外国人からすると嬉しいようだ。

更に、海外では路上飲酒が違法である国がかなり多い*10なのだが、日本ではそんな法律はないので、おまわりさんの目の前で飲酒することができるのも好評らしい*11
そんなところで飲むのに日本の他の酒はアルコール度数的に不満なようで、海外でも“Strong Zero is fucking amazing!”だの“ 飲むマリファナ ”とまで称されている。

しかし、先に挙げた縮小傾向や、諸外国でも低アル~ノンアル系の製品が台頭する中、飲むクールジャパンとも呼ばれるストロング系は今後どこへ行くのだろか?




お酒は二十歳になってから。ストロングゼロの肴にアニヲタWikiの追記・修正はいかがでしょうか?

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最終更新:2025年03月26日 19:43

*1 発売当初は8%。2014年にサントリー・キリン共々9%へ引き上げ

*2 窒素の沸点。要するに液体窒素のこと

*3 普通のスーパーなら350mlで税抜100円、500mlでも150円弱で買える。ちなみに弱いチューハイの代名詞である『ほろよい』シリーズとも大して値段が変わらない……。

*4 体質的には飲めるが、飲酒を個人の自由とするライフスタイルのこと。

*5 アルコール度数は3.5%と、5%のスーパードライよりも低い。

*6 度数4%のWATTAが一番売れているのでそちらを優先したとも語っている。

*7 ただし、これらは多分にジョークを含む。本気で福祉と思い込んで飲み過ぎればアルコール依存症待ったなしである。何事もほどほどに。

*8 こうした貧困層の増加と度数の高い酒が流行する現象は、古くは産業革命時代のイギリス(ジンが流行)やロシア(ウォッカが国民的な酒として定着)などでも存在する。

*9 商標登録に配慮してか商品名は使わず一貫してストゼロ表記……だったが、略称もグレーゾーンになったのか、途中からスト○○→ガチゼロと呼ぶようになっている。

*10 アメリカの大多数の地域、スペイン、フランスの一部地域、イスラム原理主義国などが有名。特にアメリカではニューヨークやロサンゼルスのように、車の中に見えるようにアルコールを置いてもご法度。韓国ですら飲酒して騒いだら罰金になる。

*11 路上飲酒関連で違法な法律が存在しないのはオーストリア・ブラジル・キューバ・デンマーク・中国・シンガポールぐらい。もちろん、飲酒後に車両を運転したり、飲み終わった缶を路上に捨てる行為は法律違反である。