雉川盛一

登録日:2018/01/29 (月) 08:54:42
更新日:2024/12/09 Mon 11:44:51
所要時間:約 3 分で読めます








お味見を、お願いします





うむ……香りはよし


ズズ



うむ、スープもよし


パンッ
ズー――ッ



む!



この麺、おかしい。麺の箱についてる日付を確かめろ



え!

ああっ、しまった! これは明日の日付け!



馬鹿者――――!

明日使うべき麺を、今日お出ししてしまったのかー!



申し訳ありませんっ。何かの手違いで……





画像出展:美味しんぼ 38巻 原作:雁屋哲 作画:花咲アキラ 小学館 1993年





雉川盛一とは『美味しんぼ』に登場する人物。40歳。
あのコラ画像で有名なラーメン三銃士も登場する第38巻「ラーメン戦争」に登場する。
事実上ラーメン戦争のラスボスポジションなのだが、あっちとの知名度は天地の差がある


【概要】

大人気のラーメンチェーン『流星組』の組長(社長)。
ラーメンには並々ならぬ情熱と愛情を注いでおり、ラーメンに命をかける決心をしている。
彼の社長室の奥には調理場が備わっており、そこでラーメンの研究も行っている。

強気な性格ではあるが職人気質というだけであり、人格に難がある人ではなく、普通にいい人である。
それ故か、部下からの信望も厚い様子。


【経歴】

元々大きな料亭の跡取り息子だったが、それに飽き足らず跡継ぎを弟に譲ってアメリカへと渡る。
そしてそのアメリカでは当時弱小だった「クジャン・バーガー」というハンバーガー・チェーン店に入り、
たちまち全米二位のハンバーガー・チェーンに育て上げてしまった*1

しかし3年前、業績が最高潮に達したとき、オーナーに「クジャン・バーガー」をクビにさせられてしまう。
オーナーが彼をクビにしたのは、彼がやりすぎてしまったため。
あまりの彼の能力と勢いにオーナーは自分の地位も奪われるとおびえたのである。

クビにされた後、彼は何としても仇を討たなければ気が済まないと思い、最初はクジャン・バーガーを潰す新たなハンバーガー・チェーンを作ろうとも考えた。
だが、ふと「個人的な恨みで事業をするなど小さいこと、人間もっと大きく生きていかなければならない」と思いなおす。

そこで考えたのがハンバーガーではなく、自分の好きなラーメンのチェーン店だった。

彼は元々ハンバーガーではなくラーメンが大好きであり、並々ならぬ情熱を注いでいた。
休暇や業務で日本に帰ってくるたびに美味しいと評判のラーメン店を片っ端から回ったり、ラーメンの起源を求めて中国や東南アジア各国に出掛けたりもしていた。
そして彼は今度は逆に日本でラーメン・チェーン店を作り、日本でラーメン・チェーン店のノウハウを鍛え上げた後アメリカへ進出しようと『流星組』を立ち上げたのである。


【流星組】

彼が経営しているラーメン・チェーン店。これは会社名であり、店舗の名前は「流星一番亭」

特殊な営業方式をとっており、移動店舗車両による屋台とそれによる既成店への圧力による屈服で傘下に入れた店舗での営業を行っている。
これは既存店を利用した方が新規で店舗を作るより安上がりなのと、まずいラーメンしか作れない店を潰すか流星組でやり直してもらうためである。
この方式のため、本部の利益は通常のチェーン店と比べるとすさまじく、後述のサービスが可能となっていると言える。
この行為自体は自由競争の社会なので特に問題があるわけではないが、「その店を堕とすまでの間の屋台では美味しいラーメンを提供するが、傘下に入れてしまうとその店では屋台の時のような美味しいラーメンは食べられない」という悪いうわさがラーメン業界に広がっていた。

しかし組長が直々に味を見に来たり直々にラーメンを調理することがあり、何かミスをすると上述のように滅茶苦茶怒られる。
とはいえこの場合、客にとっては
  • 無料にしてもらえる
  • 半額割引券がもらえる
ほぼメリットしかないイベント。また(金銀軒との勝負の場での描写だったが)組長がいる場合、売り切れの場合も次回半額券がもらえる様子。
ついでに本人も料亭の息子なだけに一流の料理人であり、部下がミスをした場合は自らの手で作りなおしたりもする。

そのため、当初は悪印象から始まり日本ラーメン総合開発研究所で上述のうわさを聞いた山岡「一旦店を自分のものにしてしまえば手を抜いても評判だけでもうけが出るから構わないと計算している」と推測していた。
だがいざ、組長である雉川と出会ったことで評価を一変し、流星組と本気で真剣勝負をすることを決意した他、最終的には「強引なやり方だが、正々堂々味で勝負するんだからいやみはないよな」と発言している。

確かに強引なやり方ではあるし、一部の店員に問題はあるかもしれないが、雉川組長の信念は本物だし、社員も生き生きと仕事してると上述した悪い噂はやはり当初の山岡の推測とは違う可能性が高い。
案外、潰された店側の手抜きやネガティブ・キャンペーンやらなんやらで業界には悪い方向にうわさが広がっていたのかもしれない。
また、元の店舗が「まずいラーメンしか作れない店」なので手抜き以前にそもそも屋台より力量が劣っているので味が落ちている可能性も否定できない。
雉川も経営者として優秀とはいえ、新しいスタイルであるやり方で成長中の段階であるため、この手の問題が起きているのはある意味で仕方ないと言える。

雉川もうまいラーメンを作り上げた金銀軒を「良い競争相手が出来て励みになる」と認めており、別のラーメン店を標的にすることにした。
※上述したようにまずいラーメン店を潰すのが目的なので、日本ラーメン業界を流星組で染め上げるなどの野望を抱いているわけではない

料理漫画でもわりと珍しい、味の勝負では最後まで負けていなかった人物と言える。
というか下手な化学調味料の使い方をしたらボロクソな評価を受けることもある*2『美味しんぼ』でも数少ない、山岡士郎海原雄山(彼自身はラーメンを低劣な食べ物扱いしているが)から一定の評価を受けたラーメンを作っていることになる*3


ラーメン

一巻丸々使用した話とはいえ、主軸が金銀軒な以上、メニューの詳細までは判明してはいないが、本編の描写からわかるのは以下の通り。

1日2日寝かせるとちょうど良くなるタイプの麺。
本社での描写を見る限り白鳥製粉のカナダ産特上小麦粉を使用している様子。
組長が視察に来る日に使う麺の日にちを間違えると上述したように怒られる。

  • スープ
だしの基本は鶏。歳を取った鶏の内臓を取り除いて丸ごとじっくり煮込んだもの。
それに加えてムロアジを干して作ったアジブシを加え、隠し味にナムプラーを入れることで独特の香り・味の奥深さを出している。
そして更なるグルタミン酸の補強に化学調味料を入れている。

通常のラーメンの場合はメンマ、ネギ、チャーシュー海苔、とオーソドックス。

このほか、チャーシューメンやタンメンなど、大方のラーメンのメニューはあると思われる。
また店では出していないが、作中では社長室の奥の調理場で作った西洋人…特にアメリカ人向けの試作ラーメンも登場している。もちろん雉川組長の手作り。
こちらは麺が若干太目、熟成させない打ち立て、かん水は入っていない。
スープは魚の出汁を使用せずに奥行きのある味を出そうとしていた*4



【主なセリフ】


「ラーメンは不思議な魅力を持っている。一度取りつかれると逃れ難い」

「これだけ素晴らしい食べ物は世界中に広めてやりたい。そのためにも、日本でもっと強力なチェーン展開をして基礎固めをする」

「まずいラーメンしか作れないような店は、どしどし潰すか流星組の傘下に入れてやり直してもらう」

「私はラーメンに命をかける決心をした。誰にも邪魔はさせない」

「何をしようとそちらの勝手だが……獅子はネズミを相手にする時にも、全力を出すという。私も手加減はしない、そのつもりでかかって来るがいい」


「むう……見事な麺だ。かん水を使わないから素材の香りが自然に立つ
私は勇気がなかったな。かん水の匂いに慣らされた日本人が好いてくれるか自信がなかった……これでいいんじゃないか!」

「旨かった。いい競争相手が出来て励みになる」



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  • 流星一番亭
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最終更新:2024年12月09日 11:44

*1 作中では日本にも上陸しているほど

*2 実際、「ラーメン戦争」でも大量使用・過剰使用を批判するパートがある

*3 まあ、この頃の雄山は初期の露骨なクレーマー気質は大分なくなってきている方ではあるが。

*4 この試作品は周りは美味しいと評価したが、本人は満足のいく出来ではなかった様子