山岡士郎

登録日:2024/07/06 Sat 00:31:00
更新日:2025/01/31 Fri 12:29:29
所要時間:約 10 分で読めます






一番良いと思うフォアグラを用意して貰いましょう

それより遥かに美味いものを味あわせてあげますよ



山岡(やまおか)士郎(しろう)とは、漫画美味しんぼ』の登場人物。




【配役】

CV:井上和彦/千葉繁(パイロット版)
演:唐沢寿明/松岡昌宏(テレビドラマ版)、佐藤浩市(実写映画版)


【概要】

言わずと知れた料理漫画の金字塔『美味しんぼ』の主人公。
料理・グルメ漫画では珍しく、主に料理の企画・立案を担当する立ち位置のキャラクター。
行く先々でライバルの美食家・ツンデレ親父海原雄山が立ち塞がり、幾多の親子対決を通して大きく成長する。

東西新聞文化部に務める記者で、年齢は登場時で27歳。一応大学は卒業しているが、三流大学の上、浪人と留年を重ねたとのこと。
常時ヨレヨレの黒スーツに白ワイシャツ、サスペンダーに緩めすぎた黒ネクタイを着用し、一種のトレードマークとなっている。
平時はクビにならないのが不思議なほど働く気力が無く、資料室で昼寝や競馬で時間を潰し、上司のトミー富井副部長から頻繁に怒鳴られている社内で有名なダメ社員。
社内ニート同然で文化部一同から呆れられていたが、東西新聞100周年記念の究極のメニュー立ち上げに伴い鋭敏な味覚を認められ、共に試験を突破した同僚の栗田ゆう子と携わる。
次第に競馬を辞め本格的に究極のメニューに取り組むようになったが、遅刻と欠勤の回数は東西新聞始まって以来とも言われ、居眠り常習犯として文化部の問題児、時に優れた食の知識で東西新聞を救う救世主として働いている。
共に仕事をした二木まり子には「一見鈍に見えるが物事の根っこを掴んでいる」と称され、こと食に関わると別人のように真価と行動力を発揮。
当初究極のメニューでは一年を通し春夏秋冬に合わせて公開する予定を立てていたが、帝都新聞の至高のメニュー立ち上げに伴い予定変更を余儀なくされ、定期的に海原雄山と料理勝負を繰り広げた。関連紙の東西グラフが手掛ける世界味巡りや、二都グループのレストラン経営にも協力。
中国華僑の周大人や角丸副総理といった政財界の重鎮とも独自のコネクションを抱え、彼らに助力すると共に時に影響力を借りる持ちつ持たれつの関係で、何度か国際問題を解決に導いている。



【性格】

良く言えば正直者、悪く言えばデリカシーが欠如し、歯に絹着せぬ言動が特徴。
相手の社会的立場に頓着せず、大原社主といった目上の人間にも敬意を払わず無神経な態度を取る。
連載初期は料理以外には無頓着で社会人失格なほど態度が悪い。
記事冒頭のフォアグラについての発言はアニメ版準拠であり、原作では
一番うまいフォワ・グラを用意しなっ!それよりはるかに美味いものを食わせてやる!
と口調を取り繕うことすらしていない。
それでも時が経つに連れて落ち着き戯けた様子も見せるようになった。
暴走族を貶す内容を堂々と書き文化部に殴り込まれた事もあるが、登場する富豪には権力や財力に媚びず己を突き通す反骨精神を気に入られている。
PCの好みはMac派で、あまりにも偏ったWindowsのこき下ろし方は有名。そしてMicrosoftをガチギレさせた。
馬券の購入は辞めたものの、競馬新聞を読んでは予想に励んで中継を食い入るように凝視し、野球やボクシングといったスポーツ観戦を好む。
大変な酒好きで宴会では周囲と一緒に悪酔いしてはどんちゃん騒ぎに興じている。

ぐうたらで面倒臭がりだが、頼まれると困っている人を放っておけない人情家。
コンサルタントとして目を見張るものがあり、主にゆう子経由で持ち込まれる困り事を料理を通して解決し、他人の人生を左右した回数は計り知れない。
雄山を彷彿とさせる相手の被害者には特に同情的で、料亭に訪れた気難しい客(他ならぬ雄山)の対処に自ら調理場に立ち、陶人の茶器が事故で破損し女中に対して怒り狂う二木会長を鎮めるため一計を案ずるなど、理不尽な場面に遭遇すると助け舟を出す。

他人の恋路に関心は薄いが相談に乗っている内に面倒を見てしまい、発破をかける等自分なりに幸せな方向へ導いている。
その高い問題解決能力やコミュニケーション能力、及び普段とのギャップによって、劇中ではゆう子を筆頭に元同僚の信子や仕事仲間のまり子など好意を寄せる女性も少なくなかったが、ゆう子曰く「超」の上に「極」が付くほどの鈍感だったことや、両親の歪んだ結婚生活を目の当たりにし、自分も同じような家庭を築いてしまうのではないかという不安感ゆえ恋愛や結婚に関心を示さずのらりくらりと躱していた。
しかし、団社長や近城カメラマンにアタックされるゆう子を見て傷心するようになったことから、ようやく自身も彼女に惚れていると認識。覚悟を決めてゆう子にプロポーズして子供にも恵まれた。

意外と子供好きで危機と見るや味方する事も多く、一緒に戯れて羽付きといった昔ながらの遊びに興じている。
行く先々のゲストキャラに慕われる才能があり、その人物の職業が状況の打開に繋がる事も多い。
美食倶楽部時代も含めて全国各地に幅広い人脈を抱え、料理勝負や人助けの際に多大な助力を受ける。
政治家からホームレスまで誰とでも人付き合いしているが、まり子の叔母・輝子のようなペースを崩すほど強引な者は苦手。

ジャズ愛好家で行きつけのジャズバーがあり、若い頃はジャズ喫茶にも通っていた。
その思い出の店の一つソルトピーナッツが潰れそうになっていると知った時は奔走し、周囲の助けもあって見事に客足を戻すことに成功している。
またジャズ以外でもジャニス・イアンの曲について熱く語ったこともある。


【食について】

ことに関しては病的なまでに強い拘りを持つ。
父親の海原雄山から鋭い味覚、嗅覚を受け継ぎ、食に関するあらゆる英才教育を叩き込まれた。
料理の腕前は本職顔負けで、独身時代は汚いペントハウス住まいだったにもかかわらず、調理場だけは清潔に保ち自前の包丁を始め調理器具を取り揃えていた。
和洋中は勿論、科学、栄養学を始め関連する知識も豊富で、優れた発想で飲食店を立て直し、時には偏食や衰弱、結果的に記憶喪失や認知症まで治した事も。うつ病のエピソードは忘れてあげましょう。
究極のメニューにはプロデューサーのような立ち位置で携わり、料理勝負の調理は主に信頼を寄せる料理人・岡星精一に任せている。

驕り高ぶった食通・美食家を嫌悪し、出鱈目な知識自慢や欠点のある料理には一言言わずにはいられないトラブルメーカー、クレーマー気質。
ただし立ち食い蕎麦屋や縁起物の食品、安さを売りにしている店などの 味以外のことを主眼にした食品や店 に対して味を理由に文句を付けることはせず、基本的には店や料理人、その料理を勧めてきた同席者の態度があまりにも傲慢だったりした際の戒め的なケースがほとんどである。
逆に料理人に素質・成長の見込みがある場合は、発破をかける意味で痛烈なダメ出しをすることがある。

農薬、除草剤、化学調味料等には特に敏感で*1、人工的で安価な大量生産品を好まない傾向がある。
時に拘りは日常生活にも及び、新婚当初ゆう子が作った朝食に連日ダメ出しを行い激怒させた。*2
「1週間待ってください。本物の〇〇をお見せしますよ」というフレーズは有名。
正義感が強く我慢ならない性格から食通や料理人と揉めてしまうも、相手の予測を超えた料理や本物の食材によって言い負かし、多くの場合心を入れ替えさせ改心に持ち込んでいる。

究極対至高の料理対決では雄山への対抗心から正常な判断力を失い、結果的に自身が以前雄山に勝利した方法で完敗するという事が何度かあり、なかなか勝負を通して成長する事ができない。
食へのスタンスは雄山と同様に作者の思想が反映され、長期連載により真逆の主張に転じている事がある。




【家族関係】

至高のメニューを担当し、幾度となく士郎の前に立ち塞がるライバル・海原雄山は実の父親。

現在の名字である「山岡」は母方の旧姓。本来は海原家の跡継ぎであり美食倶楽部の若。
美食倶楽部では「若」「士郎様」と慕われ、中川を中心に士郎の帰還を心待ちにしている。
士郎の優れた味覚や嗅覚、センスは雄山譲りであり、幼少期から多大な期待をもって食の英才教育を叩き込まれた。
雄山と比べると劣ることは避けられないものの、美食倶楽部の料理人たちより明らかに実力は一段上手で、彼らの相談に乗ることもしばしば。
能力・性格共に嫌悪する雄山と共通点が多く、両者と親しい知人にも何度か指摘されている。
初期は雄山に勝る場面も多かったが、中期以降は後一歩及ばず助け舟を出されたり、勝ちを譲って貰うなど譲歩した勝利や引き分け、完全敗北が増加。
結婚披露宴時点での士郎の発言では34戦6勝13敗15分と負け越し、概ね士郎2割雄山4割引き分け4割に落ち着いている。

雄山との確執は死去した実母・とし子の存在が強く影響している。
美食と芸術の犠牲になった母を亡くした結果雄山と決裂し、実家に保存していた焼き物を破壊して絶縁。母方の山岡姓を名乗っているのもそれゆえ。
病弱だったとし子は寝込む事が増えても雄山への奉仕を優先し、夫婦仲を理解できないまま蔑ろにされてしまった士郎は雄山への恨みを募らせて現在に至っている。
連載が続くにつれて夫婦仲が良好であったエピソードが明かされたが、長年の確執が原因で素直に受け入れることは難しかった。
母親の不幸な顛末や理解し難い夫婦関係は自身の結婚観にも影響を与え、妻を得ても愛する者を不幸にして子孫を自分と同じ境遇に置くだけという強迫観念に取り憑かれ、時間を共に過ごし惹かれていたゆう子との結婚を無意識に遠ざける要因となった。

山岡と雄山両者を慕う周囲からは復縁を強く望まれ、様々な働きかけがされていた。
しかし、これが山岡に寄り添う気配を見せず雄山への理解ばかり求める内容であったことには批判も多い。
山岡が頑なであったのは確かだが、被害者に近い山岡の立場や長期の確執を無視して正論ばかり叩きつける周囲の態度は、かえって山岡の心を傷つけたのではないかという指摘もある。
まあ正論の叩きつけは山岡も割と普段やっていることではあるが

なお栗田も山岡姓なので士郎は戸籍も山岡姓なのだが、親と絶縁したというだけでは戸籍上の名字は変えられないため、どういう経緯か理由は未だ不明。
母の実家に養子に入るなどの手もあるのだが、実家の関係者が出てきたことは一度もない。
一応、我が国の改名が許可される理由の1つに「通称名を長年使用している」というものがあり、父親との確執もあって「山岡」姓を通称としてずっと名乗っていた士郎はその基準に当てはめる事が出来る。
他、親が著名人の場合でも変えることも可能であり、それほどにまで父親と同じ名前を名乗りたくなかったのだろう。


【関係人物】

美食倶楽部を経営する著名な文化人で、士郎の父親兼ライバル
母・とし子の死去が引き金となって絶縁し、料理対決を通して長年の溝を埋め最終的に和解する。
士郎の前に雄山が立ち塞がる事を陶人はライオンの子育てに例えている。
作劇上偶然とは思えないほど外出先の遭遇率が高い事は本人たちも気にしている模様。

  • 栗田(山岡)ゆう子
究極のメニューを担当する文化部の同僚。
士郎と共に究極のメニューに抜擢され女房役を務める。
専門知識を持たず大部分を頼っているが、携わっている内に才覚が磨かれ雄山が認める腕前を発揮したことも。
人情噺ではゲストキャラを連れて士郎に協力を求めるのが口癖。
恋愛関係では近城や団社長にアプローチを受けても乗り気になれず、煮え切らない士郎が紆余曲折を経て結婚を申し込みようやく結ばれた。
長男の陽士、長女の遊美の双子、次女の遊璃の3児に恵まれる。
正式には「山岡ゆう子」になっているが、職場では利便性から旧姓で通している。

  • 谷村秀夫
東西新聞文化部の部長。
文化部では随一の真面目人間で、大原社主や小泉局長をも正論で捩じ伏せる人格者。
優しく文化部の面々を見守りつつも、時にお調子者の士郎と富井副部長が悩みの種。
社内では究極のメニューの責任者を務め、小泉局長に進展しない事を追求されクビを切られかけたが士郎の計略で事なきを得た。
本編開始前の時点で山岡が海原雄山の息子だと知っていたのは彼だけであり、第1話で「やはり大したものだ」と言っている以上
おそらく彼が山岡の素性を知って入社させたものと思われる。

  • 富井富雄
東西新聞文化部の副部長。
劇中でも飛び抜けたお調子者であり、言わずと知れた『美味しんぼ』屈指のトラブルメーカー。何度もクビ寸前、果ては国際問題をやらかして士郎に救われている。
士郎とはお互いに迷惑を掛け合う関係だが、酒の席では楽しそうに騒いでいる。

  • 花村(三谷)典子/田畑(荒川)絹江
文化部の同僚達。ゆう子と合わせて文化部花の三人娘とも。
士郎とゆう子にとっての小姑ポジションで、二人の仲を気にかけつつもゆう子の結婚相手には近城や団社長といった将来性があったり裕福だったりという面々を推していた。
なお両名とも士郎がきっかけで、後に各々の夫となる三谷、荒川との交流が始まり、結果的に結婚披露宴まで面倒を見ている。

  • 大原大蔵
東西新聞の社主。
東西新聞100周年記念の一大事業「究極のメニュー」を立ち上げ、適性テストの末に士郎とゆう子を抜擢。
連載初期は相応の風格をもった人物だったが徐々に威厳が低下していき、士郎に業務命令として私的な要求を申し付ける暴君となった。

  • 岡星精一
士郎が頼りにする優れた料理人。
銀座を知り尽くしたホームレスの辰さんに腕利きとして紹介され、京極の接待を担当し士郎の馴染みの店となる。
究極対至高の料理勝負では究極側の料理人として数多くの調理を担当した。
不幸属性を憂い失踪した妻の冬美と再会し士郎たちの後押しでヨリを戻すが、原作後期に真面目な性分からうつ病を患ってしまう。
ここの巻末に関しては実は言ってない台詞(架空人物)の項目に詳しく載っている。

  • 唐山陶人
雄山の師匠で人間国宝の陶芸家。
弟子の一人息子である士郎を孫同然に可愛がり、雄山との関係に気を揉んでいる。
士郎も祖父のように慕い、学生時代には陶人宅に入り浸っていた。

  • 京極万太郎
京都の億万長者。
東西新聞が接待に失敗した際引き受けた士郎と出会い、土佐の丸干しを使ったシンプルな定食を見事に磨き上げた手腕に感服し馴染みの関係に。
同時に以前見かけた海原雄山の息子である事を指摘し、雄山に報告した事を機に親子対決の幕が開かれた。
究極対至高の料理対決には審査員として携わり、美食のため士郎と雄山を敢えて焚きつける事がある。
富井副部長のドジで入院した際に快気祝いとして双方に鮎の天ぷらを所望し、かの有名な「山岡さんの鮎はカスや」を発言した当事者。

  • 中川得夫
美食倶楽部の主任。
跡取りの士郎を「士郎さん」と慕い、雄山との和解や美食倶楽部への帰還を願っている。

  • 中川チヨ
美食倶楽部の仲居で中川の妻。
体の弱かったとし子に代わって乳を与えた経験があり、士郎にとってお節介な肝っ玉母ちゃん的存在で頭が上がらない。

  • 二木(近城)まり子
東西新聞の関連紙・東西グラフの記者。
実は二都グループのご令嬢。
新企画「世界味巡り」で士郎に協力を打診し、食への情熱と才能に惚れ込み婿に迎えようと画策。
登場後は一時サブヒロインを担うも、同時期にゆう子に好意を寄せていたカメラマン・近城勇と結婚し、山岡夫妻と合同で結婚披露宴を取り行った。

  • 海原とし子
海原雄山の妻で士郎の母親。旧姓は「山岡」。
夫婦関係を士郎に伝えようと苦心していたが、どう見てもDVのやり取りは到底理解されず反抗され、体が弱かったため亡くなっている。
一応士郎が大学に行くあたりまでは存命だった様子。
士郎には長きに渡り苦しんだ無念の母親という記憶が残り、その死が雄山と和解できない最大の原因として重くのしかかっている。


【余談】

  • テレビアニメで山岡を演じた井上和彦は自伝本に関するインタビューで難しかった役柄の一例として挙げ、ヒーロー役が多かった時期に二日酔いのダメ社員を演じるのに苦労した旨を語り、ディレクターの喋り方にヒントを得たと述べている。



山岡さん、追記・修正はなんとかならないんですか

なんとかって言われてもねえ…。
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最終更新:2025年01月31日 12:29

*1 例えば化学調味料に関しては隠し味程度に使うのならまだしもなどと発言しており、大量・過剰使用には特に否定的ではあるが「流星一番亭」のラーメンのようなタイプには理解を示している描写も見られる。

*2 料理下手だった訳ではなく仕上げ方や具材の数など好みの問題