霊王(BLEACH)

登録日:2018/12/22 Sat 19:06:57
更新日:2025/02/06 Thu 09:40:13
所要時間:約 7 分で読めます





漫画『BLEACH』の登場人物。


 概要



尸魂界(ソウル・ソサエティ)の王。
表舞台に立つことはなく「王鍵」がなければ入ることのできない霊王宮に鎮座し、王属特務・零番隊が守護している。

外見はオールバックの男性で、黒目に✧型が収まったような瞳はよく見ると四つの瞳孔が別々の方向に向いた奇怪な形をしている。
その体からは四肢が失われており、全裸の体を水晶のようなもので包まれている。
にわかに「王」とが思いがたい、不自由さを象徴するような見た目である。

藍染曰く「あんなもの」、ユーハバッハ曰く「父」。
亡くなれば現世・虚圏・尸魂界は崩壊するとされる存在で、いわば霊王は世界の礎。
この世界の根幹に関わる重要な存在であり、藍染惣右介の反乱・ユーハバッハの侵攻の原因でもあるが、実際に登場したのは最終章『千年血戦篇』の終盤(68巻)。


 作中での活躍



零番隊を退けたユーハバッハに胸部を剣で突き刺され、護るために駆け付けた黒崎一護が剣を抜こうとするが、ユーハバッハが一護の滅却師の血に干渉した事で、そのまま両断されてしまう。
溢れた力が赤ん坊の形の奔流となり、目撃したユーグラム・ハッシュヴァルト「霊王の敵は死神達」と語るように滅却師を無視して死神だけを襲う。

浮竹十四郎がミミハギ様を通じて人柱となったことで世界の崩壊は喰い止められたが、そのミミハギ様も霊王本体ごとユーハバッハに吸収されてしまった。


ユーハバッハの台詞や、ペルニダ・パルンカジャスジェラルド・ヴァルキリーなどの滅却師を推測させる要素はあるが、ユーハバッハの死後も三界が存在している事から、何らかの形で事なきは得た模様。

しかし、正体は明らかにされないまま『BLEACH』本編の連載が終了した。
これは原作者の久保帯人師匠曰く「一護と死神達が紡ぐ戦いの物語という本筋からブレる」「読者から物語の裏側を想像する楽しみを奪ってしまう」という意図的なもの。






























最初から誰も 天に立ってなどいない


君も 僕も


神すらも(・・・・)



 真実



しかし、本編で描かなかった配慮を振り切ってでも書かせて欲しいと成田良悟先生が久保先生に無理を押し通した事で、設定の開示が実現。
ラストノベライズ『BLEACH Can't Fear Your Own World』にて、ついに霊王の正体が明かされた。




世界が生と死の境がなかった時代(三界に分かれる以前)に、虚が人間を喰らい始めたのをキッカケとするように誕生した『人・死神・滅却師・完現術者』その全てを持ち合わせたその存在は、虚を滅却し、世界の循環に戻していた。
よって完現術者は霊王の欠片が宿った者とわかった*1

しかし、生も死も同じであるが故に進化もなく、世界が緩やかに滅びへと向かうことは止めることは出来なかった。

後の世で五大貴族と呼ばれる祖先それぞれの

  • 停滞した世界を前進させるための新たな循環を求める
  • 心を持つ虚を滅却ではなく浄化する道を探る
  • 世界を盤石とするための規律を求める
  • 地獄となる世界を抑える蓋を求める
  • 滅却の力を自分達に向けられる可能性を恐れる

………という思惑が「世界を生と死に分離させる」ことで一致し、霊王の力を借りるために志波家が説得に向かう。
が、綱彌代家がその隙を狙って無抵抗だった霊王を水晶に封じ、更に前進と停止を司る両腕を斬り落として生も死もない状態に陥れる。
さらに臓腑を抉り取ることで力を削ぎ落とし、彼らにとって都合のよい、世界を留め続けるための人柱にした。

つまり、かつて世界を救っていた英雄を貶め、拘束し続けていた。


そんな死神の歴史(尸魂界)が血塗られたものなので、藍染とユーハバッハの行動も絶対悪ではない*2が、和尚によると意思表示こそ不可能なものの大局を動かす緩やかな流れとして存在している*3らしい。
力の奔流が死神にのみ向かっていった件から相応の憎しみがありそうだが、原作でも現状維持をしたがっている零番隊の面々は霊王の意思を汲んでいるような様子が少しだけ描かれていることと*4、未来を見通す力を持っていたとのことから、ユーハバッハの想像(世界を滅ぼしたい)ほどには現状の世界を憎んではいなかったとも推測される。

なお、ユーハバッハが霊王を剣で突き刺したにもかかわらず、わざわざ一護を操って真っ二つにし、トドメを刺させたのは、一護に嫌がらせを仕掛けて動揺を誘ったのではなく、あの時点のユーハバッハでは霊王を殺せなかったが故。
『人・死神・滅却師・完現術者』の4つの要素を併せ持つ当代の霊王を完全に殺せるのは、それと同等の要素を併せ持ち当代の霊王を超える資質を持つ者……すなわち『人・死神・滅却師・完現術者・虚』の5つの要素を併せ持つ一護だけだったから、わざわざ一護を誘導する手間をかけざるを得なかった。
ちなみに、虚を除く全ての種族の力を持つ霊王の瞳の数が四つ、全ての種族の力を持つ一護が不入参道での修行中の目に現れた瞳は五つだったことから、瞳の数はその者が持つ種族の力の数を表してると言われている。
また、千年前に兵主部に封印される際のユーハバッハの瞳の数は2つ(力を封印される際に二つの瞳が重なり合う形で1つになった)だったのに対し、本編の全知全能の時は3つだったので、ユーハバッハは千年の間に霊王のパーツを手に入れ、滅却師と人間の他に完現術者の力も手に入れた可能性がある。

霊王の死後も世界が存続している理由は、ユーハバッハが霊王の力を完全に引き継いでいたので、亡骸を霊王の代わりにできたからであるが、兵主部の本来の予定ではユーハバッハに敗れた一護を霊王に仕立て上げるつもりだった。
一護への悪意があったわけでもなく、当代霊王以上にこの世の礎として高い資質を持つ一護を霊王にしてしまえば、今度こそユーハバッハが手出しできなくなるので、一石二鳥でもあった。
とはいえ、兵主部も一護をそのような境遇に追いやることには思うところもあったようでもあり、ユーハバッハには霊王にしたてあげるのに申し分無い資質が備わっていたので、敗北した彼を利用する方針にシフトした次第である。


霊王宮を訪れたユーハバッハを見て、ハッシュヴァルトは「心中お察し致します」と述べたが、霊王とユーハバッハの具体的な関係や過去に何があったのかは不明。


 霊王の体



『BLEACH』作中には霊王本人だけでなく、霊王の体の一部とされる存在が登場している。
水晶に包まれた霊王は両手足などが欠損していたが本当に霊王の体なのか、何故回収しなかったのか不明点は多い。

  • ミミハギ様
「静止」を司るとされる「霊王の右腕」とされる神。
東流魂街七十六番地区「逆骨(さかほね)」に遥かな昔に落ちて来た霊王の右腕は、眼以外の全てを捧げたものに加護を与える力を持つ。
劇中では幼い頃に肺病で死にかけていた浮竹を救い、『千年血戦篇』にて彼が全身の臓腑を捧げる事で、浮竹は一時的ではあるが死亡した霊王の身代わりとなる事ができた。
結果として体の中で唯一死神側の味方についている。

外見は巨大な左腕の、星十字騎士団の滅却師。
「前進」を司る「霊王の左腕」と推測されており、涅マユリと戦い戦死した。

日番谷、剣八、白哉の連携に敗れた星十字騎士団の滅却師。
自前で能力を持っていたことから「霊王の心臓」と噂されている。

護廷十三隊十番隊副隊長の死神。
かつて「霊王の爪」を魂魄に宿していたが、流魂街で暮らしていた頃に藍染に奪われてしまった。


 霊王に関係、また知っている人物たち


霊王を守護して来た部隊。
特に死神の頭目でもある兵主部は霊王と個人的な付き合いがあった程。
彼らに付き従う神兵は滅却師との戦いの後に新兵が入ったのだが、霊王と尸魂界の歴史を零番隊から聞き、余りの凄惨さに絶句していた。

先代の護廷十三隊隊総隊長。
京楽や浮竹が霊王をある程度知っていたので、1000年間護廷の総隊長を務めていた彼も知っていただろう。
霊王と世界の成り立ちを知っていたなら彼が弟子たちに「世界の正義を蔑ろにして貫く個人の正義は無い」と語っていたのも頷ける話である。

元柳斎の愛弟子で、現在の総隊長。
霊王がどのような存在なのかは知っていたらしく*5、アニメでは一護が霊王宮に連れていかれた理由や零番隊がなにを狙っているのかも予測しており、原作でもそのために一護の友人たちにソウルチケットを渡していた。
滅却師との終戦後は霊王となったユーハバッハを見てある種の諦観と複雑さを滲ませながら一護がその役割を担わずに安堵をしていた。

霊王の右腕ミミハギ様を宿していた先代の十三番隊隊長。
右腕を宿していたので当然、霊王がどのような存在で、どのような状態にあるかも知っていただろう。*6
彼が霊王の右腕を宿していたのは藍染も知っていたらしく、尸魂界と訣別する時に、「誰も天には立っていない。僕も君も」と浮竹を明確に区別して呼んでいた。

元五番隊隊長で、後に尸魂界を離反した大罪人。現在は無間で投獄中。
霊王がどのような存在なのかを作中で一番最初に言及した。
彼が長年秘めてた激情を浦原にぶつけていた場面は正に世界の真実を知った者の末路を端的に顕している。
ちなみに浦原は藍染が霊王を見たと言及しているのだが、あくまで五番隊隊長止まりだった彼が霊王そのものを見てるとは思えないので、尸魂界に保管されている文献で霊王を知ったのだと思われる。

九番隊副隊長で、瀞霊廷通信編集。
霊王を直接観たことはないが、産絹彦禰と関わったことやかつての上司の宿敵でもある綱彌代時灘から世界の成り立ちを聞かされている。
これにより自身の見識と認識の浅さ、東仙要が反逆した理由も知り時灘に嘲弄されるのだが、それを跳ね除け死神の一人として大逆者である時灘を撃ち、彦禰も救った。
副隊長では唯一、霊王と尸魂界の成り立ちを知っているという結構危うい立場にある人物である。

帝国に囚われていたトレス・エスパーダだが滅却師が敗北したことで助け出された。
終戦後に(ユーハバッハに変わった)霊王を見たのだが、犠牲の上に世界は成り立っていると語っていた彼女ですら霊王の存在は想像外だったようで、
かつての主君だった藍染が何故尸魂界に牙を剥いたのかを理解していた。*7
ちなみにグリムジョー・ジャガージャックネリエル・トゥ・オーデルシュヴァンクも見たはずなのだが、特に興味もないのか言及無し。どっちも一護に会いたくてそれどころではなかったのかもしれない……

滅却師の始祖にして帝国の頭目。
作中では霊王を『父』と呼んでいたが、これは実際の父というわけではなく、滅却師の力の源流が霊王だからだと思われる。
また、アニメ版『千年血戦篇』でもユーハバッハは人間の母親の胎児から生まれた存在として描かれている。
様々な暗躍と戦争を引き起こし、最終的には目論見通り『今の霊王』を殺害(開放)するところまで成功した。
しかし彼に待ち受けていた末路はその代償ともいうべきもので、彼もまた世界の仕組みから逃れられなかったのである…。

お馴染みの現世四人と尸魂界であった彼らの親友(一護にとっては従兄)。
霊王を見たと言っても石田以外は本当に切羽詰まった状態だったので、特に言及はしていない。
アニメ版では霊王宮の修行を終えた一護が霊王について語っており、霊王が世界の楔であるというのは感覚的に掴んでいる模様*8

元護廷の隊長にして、浦原商会の店長と従業員。
浦原は霊王や零番隊のことを調べていたので、霊王のことは熟知していた*9が、霊王によって成り立っている今の世界の安定すら「危うい」と内心では思っている。
夜一は一護たちと共に直接霊王宮に乗り込んだので霊王を見ている。後にそれを指摘された時は苦虫を噛み潰したような顔を露わにした。

ペルニダが正体現した際に即座に霊王の左腕と看破していた。
というのも過去に霊王に関する書物を秘密裏で読み漁っており、そこで霊王の右腕と左腕の性質を知る。

  • 銀城空吾
初代死神代行にしてXCUTIONのリーダーだった男。
霊王を見たことは無いが、彼が死神に反逆した経緯には多分にその存在が関わっている。
霊王にも成れる器の一人でもあるが、本人は「興味がない」と一蹴。

四大貴族の一つ綱彌代の現当主と彼に付き従う少年。
時灘は綱彌代家の歴史を調べることで霊王と三界の成り立ちを知った。また彦禰は時灘が創った人工的な霊王の器でもある。
最終的に霊王によって成り立っていた世界を唾棄しながら時灘は尸魂界に牙を剥くが護廷に敗北、彦禰も檜佐木により救出された。




























三界全てを見通し、


千年先をも慧眼の眼で見据え、


我ら滅却師の不遇さえ、


霊王『アドナイェウス』は見通していた。


見通してなお、滅却師を見棄てたのだ。



 アニメ版で判明した真実



アニメ「BLEACH 千年血戦篇 相剋譚」28話にて、霊王の真名が『アドナイェウス』であることがユーハバッハの口から語られた。

アドナイェウスの名称自体は、ユーハバッハの能力である聖別の詠唱文の中に含まれていたのが初出だったが、まさか、それが霊王の名であるとは、視聴者の誰もが思いもしなかっただろう。

因みに、名の由来と思われるアドナイとは、旧約聖書における唯一神YHVHの別名であり、『主』を意味する。

アニメでは補完として一護が修行の際にみた幻視、世界のシステムに憤るユーハバッハに兵主部が左腕に宿した霊王の力で見せた世界の真理にて「かつて霊王と呼ばれた者とその末路」が断片的にだが描写されていた。



「追記・修正をしようがするまいが、楔と成り得るモノが天に立ち、項目を今の形に抑え付けて下されば万事順風。世は全て事も無しというものよ」
「そう思いませぬかなユーハバッハ(霊王様)

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • BLEACH
  • 滅却師
  • 死神
  • 完現術者
  • 人間
  • 霊王
  • 封印
  • 水晶
  • 英雄
  • 人柱
  • 生贄
  • 尸魂界
  • 考察対象
  • アドナイェウス
  • Y・H・V・H
  • アドナイ
  • ネタバレ項目
  • ミミハギ様
最終更新:2025年02月06日 09:40

*1 本編の説明「妊娠中の母親が虚に襲われたことで力が宿った」は誤りで、実際は「力を持っていたため虚を引き寄せていた」

*2 ただしユーハバッハの思惑だと再び緩やかに滅びを待つ世界と化していた恐れが高い

*3 一護が霊王宮を訪れた事や、ミミハギ様とペルニダが霊王宮に帰還したこともその影響。

*4 自我が変わるほどではないが、霊王の力によって骨が変質し、どこかから霊力を調達すれば死から蘇生出来る程にまで存在が変貌しているため、彼らは霊王から何かを感じ取れてもおかしくはない

*5 本編や小説でも和尚と昔馴染みであるかのような会話をしている。また元柳斎や浮竹とも親交があるのだから知っていた筈である

*6 「霊王の身代わりになる」と原作で言っているので、霊王がほとんど「物」のような存在に成り果てていることも知っていた。

*7 それでもハリベルは個人的に尸魂界や死神に戦いを挑む気は全く無かったが。

*8 流石に霊王の過去や贄であることは知らない様子だった。

*9 零番隊の技術にも興味を持ち麒麟児の温泉も再現しようとしていた。また先代の十二番隊隊長だった曳舟が義魂と義骸の開発者なので、その影響もあるのか浦原もそれ関係の発明が多い。