SCP-001-JP > 太陽技師の最後のメッセージ

登録日:2019/03/11 Mon 20:39:47
更新日:2025/03/23 Sun 09:00:24
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こんな惨劇はフィクションで十分だ。


太陽技師の最後のメッセージとは、シェアード・ワールド、SCP Foundationに登場するオブジェクトの1つであり、solvex氏によって執筆されたSCP-001-JPに関するTale形式の提言枠だった。
現在は本人による自主削除により報告書が存在しない。
オブジェクトクラスはKeter-potissimiSCP-2959でも使用された、『最大の懸念』などと訳されるクラスである。


わるいざいだん -確保・収容・支配-

このオブジェクトを解説する前に、前提としてこの報告書はカノンハブの一つである『わるいざいだん』に則って執筆されている。

わるいざいだんというのは読んで字のごとくSCiPを用いて人類を支配している悪い財団が存在する世界観を描いたもの。
しかしながら、財団はそもそも最初から必要悪として描かれている。Dクラス記憶処理などはその最たるものだ。
財団は正しいことを行うために時には悪いこともしなければならない、それに苦悩している姿が魅力的であるとも言えるだろう。

だが、このカノンにおいて財団は違う。よく財団は冷酷だが残酷ではない——などと言われるが、残酷になった姿と考えていいだろう。
O5は世界の支配者であり、サイト管理官はその地域も管理し、フィールドエージェントはオブジェクト収容だけでなく一般市民をスパイしている。ある日突然家の前にトラックが止まり、「今日からあなたはDクラスとして財団に奉仕しなさい」と宣告される。倫理委員会?ねぇよそんなもんといった具合である。

他に注意すべき点としてはDクラスは死刑囚だけでなく財団への忠誠度が低い者たちもガンガンぶち込まれること、そしてTaleによっては市民総エージェント制が導入され、SCiPとなるものや財団へ反旗を翻す人を密告すれば発見報酬がだされ、万一Keterでも見つけようもんなら一生遊んで暮らせるほどの賞金が付与されるという設定がある。これについてはTale『SCPがいっぱい』がわかりやすいだろう。

とまぁ邪悪でディストピアな世界を元にこの提言は作られている。取り敢えず脳内にパラノイアかなんかでも思い浮かべておけば分かりやすいだろう。


概要

さて、オブジェクトの説明に移ろう。
ナンバーはSCP-9592E-JP。これは後述の異常性により財団が混乱を極めたために仮に設定されたものだと思われる。
ではその異常性とはなんぞやというと、職員たちがある精神疾患を発症、全世界に感染していくものである。
その影響が凄まじいもので、「財団こそが最も素晴らしい組織であり、財団職員は選ばれし存在である」と非常に傲慢になり、サイト内で感染が広まるとその欲望を満たしたくなる、結果的に「わるいざいだん」が世界中に広まっていく現象である。ミーム汚染とも言えるだろう。


タイムライン

時は2017/7/4、最初の感染者であるチャック・T・ホール研究員が発症。この研究員は即座に収容された。

しかし5日後、ホール研究員と関わりのあった職員、収容に携わった職員が発症。3日後にはサイト-19の実に77%にも渡るパンデミックが発生した。これによりサイト-19は自己収容命令と接触禁止が言い渡される。

が、7/14に別のサイトで発症が確認され、ものの1ヶ月でサイト-04、サイト-25、サイト-44、サイト-78が制圧される。
本部もマズイと思ったのか臨時の機動部隊、オメガ-18「革命者たち」が結成される。

だが努力もむなしく9/9、全世界の財団関連施設のうち9%で連絡が根絶する。No.9とは関係ない。

その後も感染は広まり続け、インド共和国ニューデリーにおいて10/16に民間人からのDクラス雇用が発覚。警察や軍隊が出動するもアノマリーを装備した職員たちに無力化された。

これを引き金に5日後には523の地域で同事案が確認。この時点での侵食度は45%と思われている。財団の明日がそろそろヤバイ

11/3、ついにイタリア首相が暗殺され、次期首相がサイト-77の管理者に決定。
恐ろしいことに周辺国家は称賛の意を表している。

そして12/24、何の皮肉かクリスマスイブにイタリアをはじめとした13ヶ国が財団への恭順を示した。
流石に黙っていられなくなったのか、世界オカルト連合が武力行使を宣言。

そして来たるクリスマス当日。財団と世界オカルト連合間での全面戦争勃発。
これに乗じてオメガ-18も参戦するも敢え無く敗北。主要人物が処刑されてしまった。

12/28、感染していない職員を保護するためのセーフゾーンが作られる。

だが2018/1/1、実に160ヶ国の首長に財団関係者が就任。民間人の扱いに対する条約が締結されたがロクなものではないだろう。

月日は流れ4/22、エリア-05、エリア-06、サイト-99が陥落。

5/10、国連が財団への隷属を決定。これに伴い財団の勢力はますます増していくことになる。

5/16のエリア-56、5/26のサイト-13陥落を受けて、全世界の財団施設が制圧されたことが判明した。

そして7/9。セーフゾーンから50kmの地点で財団関係の集落が発見される。

二週間後には各種インフラが沈黙し、生存のためにアノマリー使用許可が発令。追い詰められてきてしまった。

8/1、セーフゾーンから10kmの地点で感染者を発見。さながらゾンビ物の映画である。

8/4。感染者がセーフゾーンに近づいてきた。場所が割れたものとみられる。

Xデー、2018/8/8。遂にSCP-9592E-JP罹患者がセーフゾーンに侵入。

ここでタイムラインは止まっている。


最後のメッセージ

ここまでの報告書は財団職員の1人である太陽(ふとし はる)技師によって書かれたものだと思われている。太陽技師は収容施設の設計などがメインの仕事であったのだが、ある日突然同じサイトにいた職員が発症し、命からがら逃げ出した結果運良く助かったのである。

だがセーフゾーンにも感染者が突入。逃げ込んだアノマリー保管庫で籠城しているも、破られるのは時間の問題だと技師は考えた。

逃げ込んでから3時間ほど立った時、O5より生存している全ての職員にクリアランス5を付与、Thaumielオブジェクトを始めとする全てのオブジェクトを用いて自体を回復せよとのメールが届く。
そのメールに添付されていたリストには、なるほど実現できれば何とかなりそうなものばかりが書いてあった。恐らくD.I.G計画だとかk-calの提言のコンピューターだとかを使えということが書いてあったのだろう。

太陽技師が逃げ込んだのは前述の通りアノマリー保管庫のため、何かないものかと探し始めた。
そこで見つかったのがSCP-3801。
ざっくり解説すると、このルーズリーフの束に何かしらを書いて破れば5分後に書いた内容がフィクションとして一般大衆に広まり、ミーム的影響を除去できるもの。

勿論上手くいくとは限らない。だが何か書かずにはいられない。そう思い太陽技師は遺書をルーズリーフに記し始める。この遺書がSCP-001-JP、太陽技師の最後のメッセージだ。

このメッセージは以下のような文で終わる。

ここでの仕事は主に施設補修であったがそんな私にも周りの状況は嫌でも耳に入った。やれあのサイトが侵された、やれあの国はもう滅んでる。そこまで高尚な考えなんか持っていなかったが、人類を守るということを忘れた財団の姿を見せ続けられるつらさは筆舌に尽くしがたいものだった。

それでもいつかは、いつかは何とかなると思って頑張ってきたが結局この有様だ。ついに所在がバレたか今扉をむちゃくちゃに叩かれている。破られるのも時間の問題だ。

今私が書いているこのルーズリーフは、書いたものをフィクションにするというオブジェクトだそうだ。だから私はこの事の顛末を記した。この腐りきった財団を全部物語にしてしまうために。
これでうまくいくかは分からない。だがやらないことよりはマシだ。

こんな惨劇はフィクションで十分だ。

セーフゾーン技術部所属: 太 陽

前述の通り、SCP-3801に書き込んだ内容はフィクションになる。
『わるいざいだん』に侵食された世界を、元の財団ごと収容することに成功した。だが、それは自分たちを物語として永遠に停止させることを意味するのだ。

こうしてSCP財団はフィクションとなり、我々一般大衆に広まり人気を博し、後に残ったのはただの破れたルーズリーフだけとなった。


財団にもう明日はない。
だからこそ、我々が筆を取り財団を腐らせることのないように、鮮度を保ち続けていかなければならないのだ。



SCP-001-JP

『太陽技師の最後のメッセージ』



余談

この報告書は2018年に行われたSCP財団日本支部5周年記念イベント、「ワルコン18」のTale部門にエントリーされたものである。


追記・修正は謙虚にお願いします。

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最終更新:2025年03月23日 09:00