曽山一寿

登録日:2019/06/02 (日) 22:45:09
更新日:2025/01/12 Sun 10:52:57
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曽山 一寿(そやま・かずとし)は、日本の漫画家である。
「園山和斗」という別名義で作品を掲載した経験もある。既婚者で一児の父。


●目次

□プロフィール

生年月日:1978年9月24日
出身地:東京都


□概要

月刊コロコロコミックを代表する漫画家の1人。 主にギャグ漫画を得意とする。
代表作は『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』シリーズ。

なお、コロコロ関連の雑誌での活動が基本的だが、ジャンプSQ.等の雑誌での執筆経験もある。


◇参考文献

  • でんぢゃらすじーさんシリーズでの記述
  • マンバ通信『コロコロコミックを愛し、コロコロコミックに愛された男 曽山一寿インタビュー』 伊藤 ガビン
  • コロコロオンライン
  • コロコロアニキ
  • コミックナタリー 「スーパーマリオくん」特集、沢田ユキオインタビュー


□来歴

◇少年時代

基本的に絵を描く事を好んでいたが、幼い頃は世の中の「漫画家」と言う存在は藤子不二雄しかいないと勘違いしていた。

小学校1年の頃、沢田ユキオがわんぱっくコミックで連載していた『スーパーマリオブラザーズ2』に衝撃を受ける。
そこから藤子不二雄以外の漫画家の存在を認識し、『ドラゴンボール』などの作品の影響を受ける。
この時期に漫画家の道への決意を固め、当時のコロコロのギャグ漫画に心惹かれたことから、コロコロコミックの作家になると決めていた。

高校生の時期でもコロコロを買い続けていたが、コロコロの漫画をつまらないと感じつつあった。
自身の才能を自画自賛しつつあった曽山は「自身の漫画を載せないコロコロ編集部は馬鹿」と思い始めていた(本人曰く「おかしくなっていた」)。
高校1年になってから藤子不二雄賞に挑むも一次審査は通過したが落選し、それ以降は編集部への持ち込み路線にシフトするが15回程不採用が続いた。

漫画家の次に目指していた夢は役者であり、高校卒業してから18から19歳の2年間劇団に所属して役者活動もしていた。
全国の小学校で劇を行っており、漫画の持ち込みも並行して行っていたが、実を結ぶことはなかった。

コロコロに持ち込みを続けていたある日、当時の担当から「おまえはもう来なくていいから。他所にもっていけ」と突き放される。
その台詞に恐怖を覚えた曽山は、コロコロではなく競合誌のコミックボンボンに目を付け、コロコロ編集部でボロクソに言われた漫画をそのまま持ち込んだ。
すると、ボンボン編集部からは対照的に大絶賛された末に活動を勧められた曽山は、2年間ボンボンでアシスタントなどの下積み生活を送ることを決める。

ボンボンでの活動の最中、ついにボンボンでアニメのコミカライズの話が舞い込むが、その時期に自身に見切りをつけた担当はコロコロにいないのではと推測。
そのため、もう一度コロコロに挑みに向かった結果、2000年に『ぼくのおじいちゃん』で第47回小学館新人コミック大賞児童部門佳作を受賞。

コロコロでの活動とボンボンでの連載の並行は不可能とされたため、曽山はコロコロで活動する事を決意し、ボンボンからは抜ける事となった。


◇『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』連載へ

「天才病」に掛かった際に執筆した『店』という漫画があり、曽山的には内容は面白くなかったがその漫画で描いたおじいちゃんの顔だけは良かったと感じる。

その「おじいちゃん」のデザインは、後のでんぢゃらすじーさんのじーさんの元となった。
実質的なパイロット版である『ぼくのおじいちゃん』が漫画賞に入選すると、2001年に『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』の読み切り版が別冊コロコロコミックと月刊コロコロコミックに1話ずつ掲載された。

読み切り版はアンケート人気が高かったが、その時は「既に描き終えた作品」として連載に乗り気ではなかった。
しかし、担当編集の「君はコロコロのダウンタウンになりなさい」というアドバイスを貰って、月刊コロコロコミックでの連載がついにスタートしたのだった。

幼少期からの夢を叶えた曽山だったが、本人は連載開始直後暫くドッキリに掛かった気分だったとの事。


□作風

じーさんの作風から分かるように、ハチャメチャで何でもアリの不条理ギャグを得意としている。
基本的にギャグ漫画家は才能が枯渇しやすいといわれる*1が、氏は同じ主人公のまま20年以上も「じーさん」の連載を続けているバケモノじみた存在である。

単純明快で、子供の頃に見て面白かったけれど大人が見ても楽しい」という、ドリフ的なギャグ漫画の理想図を描いているようだ。

ウケたネタの再利用などには迷いはなく、積極的に活用している。
でんぢゃらすリーマンでは使い回しが多いことを自虐ネタとして用いている。

基本の作風はギャグに振り切っているが、時折挟まれる大長編での教訓は普通に人生について考えさせられる含蓄のあるものも多く、「大人になって読み返したら感動した」などの意見も。この教訓それ自体については茶化しやおふざけもなく真面目に語っており、それでいながら説教臭くなく子供でもわかりやすい内容になっている。


破天荒で画期的な試みも多い。漫画内はもちろん、時には読者や他の漫画をも巻き込んで様々なネタを展開している。以下、その一例。

  • 主要キャラクターの容姿や名前変更を読者投票で決める*2
  • 読者の実写写真をそのまま漫画に出して1エピソードを作る
  • 「じーさん」作中で「わざぼー」の単行本売上の壊滅的不振を題材にしたネタ
  • ページ番号を物語のギミックに利用した「おっかねぇメーター」
  • わずか4ページでいきなりマンガを終わらせ、作品ページの後ろにある読者投稿コーナーを始めてしまう。かと思えば直後に孫のツッコミとともに続きを再開する*3
  • 扉絵を利用し、別作家の作品のキャラクターを最終ページから続く形で爆破する*4
  • じーさんおもしろ顔コンテストの優勝賞品が「作者が可能な範囲で*5願いを叶える」、そして優勝者が「トロフィーが欲しい」と書いてきたため実際に自腹で巨大トロフィーをプレゼントする*6

特にウンコネタには強い拘りがある
子供の頃から「ウンコを出していればいいと思っている漫画」と「ウンコの使いどころが分かっている漫画」を区別していた。
曽山自身も理由は不明だが大人になってからウンコを漏らしてしまい、じーさんの作中でも(わざわざ全セリフを「うんこ」にした漫画を描いた末に)それを告白した。

一方で画力は本人は「漫画家の中でも下」との自認を持っており、特にメカ作画はかなり苦手だと公言している。*7
そのため、よりによってロボット物であるゾイドのギャグ漫画を任された結果として執筆した『機獣ぎゃぐわーるど ぞいどっ!!』は、ゾイドファンの間でも怪作扱いされている。

じーさんでは定期的にタイトルを変更してリニューアルを図っているが、これは巻数が長くなると単行本が買いにくくなるのを配慮してとの事。限られたお小遣いでやりくりしているであろうコロコロの読者にとってはありがたい話だろう。


□人物

  • 本人
時に狂気すら感じるような突飛な作風で知られるが、本人は漫画や自身のファンに対しては真摯に向き合っており、誠実な人柄がうかがえる。

また、天然な性格であり「気が付けばそこに落ちてた輪ゴムで30分遊び続ける」「漫画家仲間と心霊スポットに行った際、『おやつはいくらまでですか?』とよくわからない質問をする」「歯医者の予約を取った際『曽山様ですか?』と聞かれ『はい、曽山様です』と答える」「耳掃除が大好きで毎日しているのにもかかわらず、耳くそのたまりすぎで耳が聞こえなくなった」*8

一方で、アンケート結果を他のコロコロ作家よりも特に重視しているとの自負があり、子供達に流行の作品などのチェックなども欠かさずに行うなど、研究熱心な面も窺える。 

嫉妬深い所もあり、同じコロコロの漫画や漫画に対しての対抗心を燃やすことがある。

ブログやTwitter、Threadsなどを行っており、短い漫画を投稿している。さすがは「じーさん」の作者だと思わされるような逸話に事欠かない。

  • 『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』への入れ込み
爆走兄弟のアニメ版については、じーさんのアニメを除いて世界で一番好きなアニメと評している。
その思い入れとアニソンが好きなこともあり、自身の結婚式で主題歌の「ウイニング・ラン~風になりたい~」を流した。
本人は涙を流す程の爽快感を味わったようだが、隣にいた妻はその空気にかなりドン引きしていた模様。
ちなみに、同作は後のコロコロ7代目編集長である佐上靖之氏(通称「サガミネーター」)が携わっていたことでも知られるが、曽山は彼がコロコロを退いた後も漫画内で言及するなど、彼へのリスペクト(?)ともとれる姿勢を示している。

  • 読者へのサイン
兵庫県の読者より、「サインくれ」という題名で葉書一面に「くれ」の文字で埋め尽くされているという不愛想かつ狂気的な手紙が届く。
それを受け、「くれ」の総数238回に応じて本当に238枚のサインをこの読者一人に送り付けた(このエピソードを紹介した際の孫曰く「ほとんどいやがらせ」、本人も後に「死ぬかと思った」と述懐)。
このエピソードはかなり話題となり、わずか2週間後にはサイン催促のファンレターが殺到するという事態に陥った。
他にもオリジナルベイブレードの考案が何故か彼の元に届いたり、ファンレターの宛名が「そやま」「ソヤマ」「曽山」とほぼ全部呼び捨てだったりとファンレターのネタには事欠かない。

  • コロコロの購入歴と読む雑誌
コロコロコミックを購入したのは小学校3年生の時期からだが、高校生の時に一度だけ読み逃した経験がある。
読み逃した理由は高校生でも読む自身への恥ずかしさからだったが、それに裏切りのような罪悪感を覚え始め、以降は欠かさず購入する事を決心した。
また、現在はコロコロ関連雑誌以外には四大週刊少年雑誌(ジャンプマガジンサンデーチャンピオン)を基本的に読むことにしている。


◇交友関係

  • 沢田ユキオ
コロコロで『スーパーマリオくん』の連載を30年以上続けている大物漫画家。
幼き頃の曽山が漫画家を目指すキッカケとなった憧れの存在(曽山曰く「心の師匠」)であり、漫画家となった現在でも沢田のような長期連載作家としての地位を目指している。
曽山は沢田の人生初のサイン会に参加しており、この事実は後に曽山が直接沢田に伝えている。
沢田は新人賞において曽山の作品を見た時はその作風に衝撃的だったようで、2019年の時点の新人賞について「曽山くんの時のような衝撃は少ない」とまで言い切っている。

同じくコロコロで長らく活動している漫画家の一人だが、曽山は「コロコロで一番おもしろい!」と表しており、倒すことが目標らしい。
漫画やアニメでもよくコラボしており(漫画内で自虐を交えて殴り合ったこともある)、一番曽山と縁の深い作家と言っても過言ではない。
「お前のマンション電波悪い」などの悪口が漫画内で挙がっていた為、少なくとも家に遊びに行くくらいは仲が良いと思われる。でも花火の誘いは断られた

  • 村瀬範行
同じくコロコロで『ケシカスくん』などを連載するギャグ漫画家。
コロコロの作家で小学館漫画賞を2回獲得するという目標を抱き、互いに切磋琢磨した関係である。
こちらも漫画でコラボしたことがある。

  • 永井ゆうじ
コロコロにて『ペンギンの問題』などで大ヒット経験を持つギャグ漫画家。
じーさんの人気を破られないと天狗状態になっていた時期の曽山にとって、数字的記録で自身を負かした『ペンギンの問題』は衝撃を与えた。
その事が現在でもコンプレックスになっており、以降は永井に勝つのが曽山の目標となっている。

  • 杉谷和彦
コロコロイチバンで活動している漫画家だが、曽山とは高校時代の同級生という関係性。
どちらがプロデビューするかを競うライバル関係だったが、杉谷が高校在学中にジャンプにプレゼント懸賞イラストが載った事で敗北感を味わい、より一層ライバル視を強くしている。

  • 久米田康治
かってに改蔵』22巻の読者コーナーにてイラストを送り、採用された際に久米田からは「手慣れていますね。」というコメントが飛び出た。
また、曽山はアニメ版『さよなら絶望先生』の6話エンドカードを手掛けた経験がある。

  • 秋本治
小学館漫画賞の際に初対面し、以降も手紙のやり取りで互いに交流を深める関係となった。
同じ学校に通っていた経験を持つ先輩後輩の関係でもあり、本郷学園2号館建て替えの際に共にメッセージを送っている。
曽山は『超こち亀』にて参加している他、こち亀162巻の単行本の巻末にコメントを寄せた。
こち亀本編でも、『がんばれ麗子の巻』で曽山一寿の名前が密かに登場していたりもする。
なお、じーさん作中に定期的に登場するキャラクター「運動ならなんでもおまかせ隊」の設定*9は、こち亀の日暮のパクリと公言されている。


□主な作品

◆連載作品

  • 探偵少年カゲマン
  • 絶体絶命でんぢゃらすじーさんシリーズ
  • でんぢゃらすリーマン
  • わざぼー
  • わざぼー最終章(ファイナルチャプター)わざぐぅ!
  • みかくにん ゆーほーくん
  • めるめるホメル(はみコロ内)
  • 神たま


◆読み切り作品

  • ガンガン面太君!!
  • 機獣ぎゃぐわーるど ぞいどっ!!
  • 野球戦士(ベースボールファイター)陸丸
  • 決勝で待ってるぜ!
  • ばか。
  • ヒ・キ・ガ・ネ
  • くちぶる
  • 世界一つまらないマンガ
  • Kちゃんは38さい


◆短編

  • おやさい戦士 ともゆき
  • 学べ!! 天才太郎
  • ぼくのおじいちゃん


◆その他

  • 曽山一寿のでんぢゃらすじーさんだけじゃねえ!!



追記・修正は2354枚
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  • 神たま
  • じーさん
  • うんこ
  • 愛すべきバカ
  • 元ポケカスタッフ
最終更新:2025年01月12日 10:52

*1 ギャグは本人のセンス、時代の流行、ノリ・勢いなどに左右される部分が大きく、ストーリー漫画に比べて論理的に面白さを作り出すことが難しい

*2 本人曰く「取り返しがつかないことをしている気がする」

*3 登場人物に「単行本載せる時どうするんだよ」と突っ込まれ、実際の単行本には代わりに雑な4コマが掲載された

*4 コロコロ本誌にて、右側がバイクで颯爽と走り出そうとする『デュエル・マスターズ』の赤城山バサラのページ、左側が「じーさん」の扉絵でじーさんがバサラにバズーカを撃っているページになっている。単行本では再現困難なことから無関係なゲストキャラに置き換えられた。

*5 例:「優勝者が考えたキャラを漫画に出す」「一緒にデュエルをする」などは可能、「1000万円欲しい」「金玉を引きちぎってほしい」は不可能。

*6 じーさん・孫曰く「いらねぇ」、本人曰く「俺もいらねぇ」因みに結構良い値段したらしい。

*7 かなりの連載期間を誇るのに画力の向上が一切見られないと自身の作中でもネタにしている。

*8 余談だが現在では耳掃除、特に綿棒を用いた耳掃除は耳垢を奥へ押しやってしまい難聴になったり、耳を傷つけて外耳炎の原因になるため、頻繁に行うのは良くないとされている。

*9 2年に1度しか登場しない。