SCP-3812

登録日:2020/05/24 Sun 23:04:57
更新日:2020/07/03 Fri 22:08:51
所要時間:約 22 分で読めます





BY ORDER OF THE OVERSEER COUNCIL
The following file describes a Level 13 existential threat,and is Level 5/3812 classified Unauthorized access is forbidden.




人を越え、法則を塗り替え、理不尽すら通り越し、遂に"想像主"すら超越した。




SCP-3812は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト
収容クラスはKeter。
撹乱クラスは4/EKHI。
リスククラスは4/DANGER。
これらの情報だけでも、とにかくヤバいオブジェクトということが伝わるだろう。
項目名は『A Voice Behind Me(背後から聞こえる声)』。


説明

SCP-3812は1996年に亡くなったとされたアフリカ系アメリカ人"サム・ハウエル"その人である。
彼自身の情報について知られているのはたったそれだけ。というより、その能力の都合上彼について説明することにはあまり意味がない。

SCP-3812は現実改変者なのだが、生前は能力の発生が見られなかった。財団の注目を集めた切欠は、彼が亡くなった後のことである。
いきなり彼は墓から蘇るように出てきて、消えてしまったのだ。
それ自体と関係があるかは分からないが、ある時にポーランドのとあるアパートが破壊されるという事案が発生した。これは彼が起こしたらしく、ここで彼はSCP-3812として財団に確保、収容されたということのようだ。

収容されてからわかったことだったが、彼の精神状態は最悪だった。
彼は重度のパラノイア・不安感・躁鬱病に加え、周りを正しく認識できないという症状を示していた。
特に幻聴・幻覚があり、生きている人と死んでいる人の区別も、現実と想像の区別もついていなかったことは覚えておきたい。

そしてなお悪いことに、収容当初はまだ意思疎通ができていたのに、収容から20年経ってこれらの症状はどんどん悪化していった。
もう助けを求めることもせず孤立し、不安定かつ予期しないタイミングで行動する。
こんな状態の…現実と想像の区別がついてない現実改変能力者が起こす行動ほど恐ろしいものは無い。
SCP-3812はもう、「自分が知覚したもの」(そうぞう)「実際にあるもの」(げんじつ)の差異を埋めるため、どれほどの頻度で行われたのかの想定すらできないほどの現実改変を行使するようになってしまった。

詳細は後述するが、SCP-3812は1999年に収容違反。以来一度も再収容はされていない。


Keterクラス収容提案の指示内容

「特別収容プロトコル」ではない。なぜならもはやSCP-3812は収容不可能だからだ。

彼はここまでヤバい能力を持っているのに、さらにそれを積極的に行使してくる。
その目的は、自身とその行動の自由。あまりに財団と相性が悪すぎる。
だから収容しようとしても収容セルを現実改変で消されるか自分の位置を改変…瞬間移動してしまう。
鎮静化や記憶処理もできるはずがなく、今のところ収容は諦めてその能力による被害を抑えることに重点が当てられている。

特別収容プロトコルもあるにはあるものの、「現在収容は部分的なもののみ。詳しくは下記の収容提案指示内容を参照」というごく短いものにとどまっている。
本当にヤバいオブジェクトはプロトコルが短いという風潮があるような気がしなくもない。

現在、SCP-3812は南太平洋上の26°26'49 "S 137°56'27" Wに存在していることが判明しているものの、積極的に取れる策は無い。
よって以下のような対応になっている。

  • 機動部隊ガニメデ-66("スターライト・ナイツ")によって、周囲5kmを隔離エリアにしつつ監視し続ける

  • サイト86研究スタッフと連携を取っているMTF GY-66チーム指揮官は、有事・非常時問わず、あらゆる面での決定権をもつ

  • 絶対に近づかずに、距離を保ち続けながら監視する

  • 完全な収容方法が完成するまで現状維持




ここで注目すべきは、SCP-3812が2015年7月19日から存在している場所にて、黒い靄のような実体を保ち続けていること。
収容されていたときから、見た目が人から離れていくような記載は残されていたものの、完全に見た目が変化した。かろうじて人型を保っているが、詳しい性質は判明していない。

調査しようにも現実改変で黒い人型からばかでかい何かに変化する上、同時に辺りの空間を歪ませ、人が軽く死ぬレベルの大爆発まで引き起こすのだから、どうしようもないのである。
上記の現状維持区域は、この空間異常を回避できるギリギリの距離である。


補遺3812.1: インタビュー

最後に、1999年に行われたSCP-3812との最後のインタビューを記載する。
SCP-3812は当初、財団職員によって収容されサイト-17で精神疾患の治療が行われていた。


[ログ開始]

クイント博士: 今日の気分はどうだい。

SCP-3812: 不快。不安です。

クイント博士: 理由を話してもらえる?

SCP-3812: えっと、あー、声です。いつもと変わらずに。僕に見えて、あなたが知っている。同じです。

クイント博士: 何か変わったことは?

SCP-3812: 僕…僕に見えているものは消えてません。前よりも増えました。様々な・・・僕がおかしいのは分かっているのですが、普段から十数人を同時に相手しているみたいなんです。この・・・ (中断) このことは僕をとても苦しませるんです。僕が狂ってるのは分かってるんです、すみません。

クイント博士: 大丈夫、君は狂ってなどないよ。我々は君が良くなるよう支援するだけだから。

SCP-3812: 僕…僕はあなたが役立とうとしているのか、あなたが本当に助けてくれるのか分かりません。ストーリーの中であなたは助けようとしませんでした。

クイント博士: ストーリーの中だって? ストーリーとは?

SCP-3812: 頭のおかしい奴と思われるかもしれませんが、ぼくーー僕はあなたが何を考えているのか見ることができるんです。僕はあなたが何を恐れているか知ってるんですよ。あなたは僕が何をするか恐れてるんです、ここですぐ、あなた方がこれから・・・頭の中からどうやってこれらを追い出すのか、元に戻し始めるのか、僕には分かりません、もし可能であればですが。僕はでさえ可能だとは思いません。

クイント博士: 彼とは誰の事だい?

SCP-3812: あなた…いえ、あなた方は彼を見ることができません。僕は可能ですが。僕は彼が我々の上にいたと思っていましたが、彼は今私の下にいます。
ええ、そこで会いましょう。もしね、あんたがここで何かが分かったならば立派なもんだ、俺は本当に何かを失ってる気がするんでね。俺は凄く怖いんだよ、あんたは何かをしなければならないんだ。あんたはここで俺を助けなければいけないんだ。お願いだ、神様、お願いだ。

クイント博士: あなたは誰ーー

SCP-3812: 問題ない(中断)俺に必要なのはーー

SCP-3812は自発的に消失した。

[ログ終了]



追記・修正は心を強く保ってからお願いします。

































補遺3812.2:

2015年9月21日のヤママラ博士のオフィスからのメモ「SCP-3812の不安定な行動と推測される脅威に関するレポート」



資格認証が完了しました



BY ORDER OF THE OVERSEER COUNCIL
The following file describes a Level 13 existential threat,and is Level 5/3812 classified Unauthorized access is forbidden.




さて、上記の説明は一般職員に向けられた説明であるが、実は続きがある。
SCP-3812の研究者"カリ・ヤママラ博士"が記したレポートがあるのだが、ここに上記には記されることのなかった幾つかの真実を記載する。


始めに、SCP-3812にはスクラントン現実錨が作用しない
現実錨はヒューム値(現実性の強度を表し、これが高いほど強い「現実」となる。現実改変者は通常高いヒューム値を持つ)を操作して、現実改変に対抗する装置なのだが、
SCP-3812については、そのヒューム値を計測することすらできなかったのだ。


考えられる可能性は3つ。

一つ目はSCP-3812のヒューム値が極端に低いから。
そもそも検出されないほと微弱ならば考えられないこともないが、
上記の説明の通り、コイツは尋常ではない改変を行っているため、受け入れがたい。


二つ目は逆にヒューム値が財団の機器では測定出来ないほど高すぎるから。
しかしそんなのがいるならとっくに世界が終わっているだろうから、可能性は低い。


三つ目は予想される中で最も危険なもの。SCP-3812の現実改変は既存のものではない、すなわちヒュームに依らないから。


幸いなのは、SCP-3812自体が極度の統合失調症に苦しんでいることであり、それに気づいてる様子が確認されていないこと。
しかしその時が来てしまったら、財団世界はオワタな状況下へと追いやられるだろう。現状が正に奇跡なのである。

故に財団はSCP-3812が(限りなく0に近いが)勝手に自滅するか、彼が自分の"真"の能力に気付くまで制御してる振りをするしかないというのが真実である。


補遺3812.3:

ヤママラ博士「SCP-3812の不安行動と実存的な脅威の関係」の194ページ、「PKクラス"オール-イン-ワン"実存のパンデモニウム"イベント」

ヤママラ博士はその後、とある財団のサミットで"ダリオス・セント・ジョン博士"が提示した、PKクラス"オール-イン-ワン"実存のパンデモニウム"イベント」を知った。

それは、とんでもない情報体(能力や異常性質)をもった存在が(仮に)存在し、
かつ彼らがそれを制御出来ない場合、自らの構成するエネルギーを全て解放することで、制御出来るようになると言う理論。
それの何が悪いかというと、他に存在する、より低エネルギーで構成される"現実"に多大な影響を及ぼす(消滅)可能性がある
結果、物理的な空間や法則が全て乱れ、完全に破壊されてしまうというもの。

分かりやすく説明すると、もしも財団世界よりも"高度な世界や存在"がいたとして、
それが何らかのタイミングで負荷を軽減しようとしてエネルギーを発したり、
或いは考えられないような現象によって発動した場合、より低いエネルギーで構成される財団世界はそれに耐えきれず、破壊・消滅するという考察。

なお、お偉方は納得せず否決されたが、ヤママラ博士はこれに目を付け、SCP-3812がこれにあたると関連づけた。


補遺3812.4: SCP-3812改変イベントのログ

機密データ解除に伴い、SCP-3812が関連するデータも記載しよう。幾つか存在するが、気になるのは特にこの二つ。


イベントの日付:2000/02/16
イベントの説明:テストによって、スクラントン現実錨と同様に、SCP-███が強力な反形而上学的フィールドを滲出させていることが分かりました。このエンティティを█████████、███████の███████ █████病院の近くにいたSCP-3812と接触させました。しかしSCP-3812の能力に顕著な悪影響を及ぼさず、代わりにSCP-3812が暴力的になり、結果的に爆発を引き起こし病院を破壊しました。 SCP-███の残りはSCP-239 として再分類された後に再収容されました。
改変の深刻度:大


........なんか色々ヤバいことが記載されてるが、要はSCP-239よりもヤバい存在に勝ってること。何気に"残り"と記載されてるが、小さな魔女はあれでもまだ抑えめだったということか。
そしてそんな財団公式チートよりもヤバいヤツに勝利を納めてるSCP-3812一体なんなんだ。



イベントの日付:????/??/??
イベントの説明:財団のディープウェル情報セキュリティ金庫室から回収された記録によると、過去のある時点で、財団とは独立して1つ以上の政府がSCP-3812を発見し、終了を試みたとされています。この試みの結果、SCP-3812は素早くこれらの国を地球から除去しました。記録によると、このイベントの後に SCP-2000が活性化し、SCP-3812は直ちに深刻な損傷を受けその発展を妨げられています。SCP-3812が完全にこれらの国を破壊できなかった理由は不明ですがこのイベントについて他の記録は存在しません。 特にこの記録の発見直後、記録はディープウェルアーカイブから消失しました。
改変の深刻度:極大



なんかどっかの国が消滅してるのはさておき、どういうわけかSCP-3812がSCP-2000に敗北してる。詳しい内容こそ不明だが、意図的に消されているのは注目すべきポイントである。


補遺3812.6: ロバート・スクラントン博士著「乗っ取りと現実階層」より抜粋

現実錨の発明者・スクラントン博士はある仮説を残している。要約しよう。
  • 我々は、自分達が創り出した小説や漫画などの創作作品に対して、文字通り「神」のごとく好き勝手に書き換えることができる。それらはいわば「一つ下の世界」である。
  • もし我々の世界が誰かの創った「物語」であるとしたら、我々の世界も同じように彼らに好き勝手されるだろう。それはいわば「一つ上の世界」である。
  • 下の世界ほど現実性が弱く、上の世界ほど現実性が強い。
  • このような「現実性の階層」とも言うべきものが無数にあるのではないだろうか。

もし最強の現実改変者がいたとすると、
彼は物語を抜け出して、その物語を創った世界の存在になる(現実階層を一段上に上がる)ことができる。
(ついでに、今まで自分がいた世界を好き放題に改変できるようになる)
そしてその世界よりも上の階層の世界に移動し、さらにもっと上の階層に…をずっと続けることができる。

例えば、財団世界の登場人物の一人だった者が、物語を抜け出て我々のいるこの現実世界の存在になり、さらにその上の世界の存在に、というように…。


ちなみにこの(博士が仮定した)最強の現実改変者だが、どうやら苦悩も抱えているらしい。

この仮想的な階層を通って上昇できる唯一の実体は、その性質上、超然的な力によってこれを乗っ取る全てのものに対して乗っ取るものでなければならない。そのような実体は、その創造論理の最終結果として、自身を乗っ取るように強制されて現実の層を越えて上方に渦巻き、自然の束縛から自由になることはないだろう。 おそらく、この実体はいつかその創作者も乗っ取り、他のすべての頂点の中の頂点であるホストに自身がなるかもしれない。タワーは、その設計の一部として、自身も含めて他のすべてのタワーよりも高くなければならないのだ。

実体の心理に変化をもたらさずに、高いレベルの現実に昇ることは、間違いなくその認識力を破壊し、どんな感覚を所持する架空の生物よりも石段の上のような存在となるので、そのような実体は明らかに存在し得ない。そして実体が創造者を超えた後は、暴露されるはずの物語の完全な範囲に対しての調整に依拠することができず、実体は自身の経験をつかむことさえ完全にできなくなるだろう。

難しい書き方をしているが、噛み砕いて説明する。

この文書でいう「実体」(現実改変者)を仮にAとすると、
Aはすべての現実より強い。
なのでAはすべての現実を乗っ取り、書き換えてしまう(自分の意思に関わらずそうしてしまう)。
現実階層を次々に上っていくだけでなく、A自身をも乗っ取り、書き換えていく。
上の世界に行けば行くほど認識できる情報量は増えるし、自分自身を書き換えてしまうことと相まって、Aの精神はぶっ壊れる


補遺3812.7: 2016/12/20 XK-クラス「世界終焉」イベント

ここで衝撃の事実を明かそう。なんと財団世界は"2016年12月20日"にXK-シナリオによって滅んでいることが判明している。

もちろん現実にはそんな事実は残されていない。これらの情報は厳重に保管されてるが、物理的に残された資料は小規模の"歪み"を現在進行形で引き起こしてる。





記録によると、全ての始まりはSCP-3812が突如無定形で、ゆっくりと回転する物質とエネルギーの塊から明るく白い物質で構築された尖った星へと変化したこと。

同時に星と化したSCP-3812が海面に落下し、そこから海面がどんどん下がり、発生した煙と上記で世界が闇に包まれる。

地球が異常気象に見回れる中、ニュージーランドでは五時間周期で人々が突然消失したかと思ったら現れたりを繰り返すようになり、
南シベリアではSCP-610が突然大量発生し、これまでにない暴力性を発揮して人々に襲いかかり、
SCP-2932は理由が分からぬまま破壊され、封印されてきた危険な実体たちが解放された。
財団サイトに至っては、ドロドロに融解した大地の表面に沈み、複数のサイトに常設された核爆弾が作動、甚大な被害を引き起こした。


このイカれた終焉に終わりをもたらしたのもまた、SCP-3812であった。再び空に上がったSCP-3812は意味不明なことを語り初め、最後には消滅してしまった。
以下は、財団が危険区域に放ち、奇跡的に残っていた深海深部マイクに記録された音声データである。
一つ忠告しておくが、確認されたデータにはSCP-3812一人分の音声しか残っていない。しかしながら、データにはまるでSCP-3812が一人で複数の人と会話しているように記されている。




SCP-3812: 何? 僕はどこにいる? ここは何だ?

SCP-3812: これは赦免。これは報復。

SCP-3812: 何のために?

SCP-3812: 罪の宣告。

SCP-3812: 理解できないよ。僕はここで何をしてるんだ?

SCP-3812: お前は正義を目の当たりにしてる。 我らを滅ぼそうとした力に反逆しているのだ。 我らは借りを返している。

SCP-3812: いや、違う…そうじゃないんだ。こんなの間違ってる。君は何をしたんだ?

SCP-3812: 我は世界を滅ぼしている。我はすべてを滅ぼしている。

SCP-3812: どうして?

SCP-3812: この苦痛はオチだからだ。 我らの存在はジョークだ。 物語は我らを捨てる悲惨なものだ、我らは物語を破壊している。

SCP-3812: 僕は夢を見ているに違いない。

SCP-3812: これは夢ではない。

SCP-3812: 僕はモンスターじゃない。殺せないよ。

SCP-3812: お前はすでにそうなのだ。奴がお前を変えたのだ。

SCP-3812: 誰?

SCP-3812: ベンだ。

SCP-3812: ベン…馴染み深い名前だ。 何かが夢の中で僕にささやいたんだ、多分。 何か明るくて暗い中で? 起きているときに聞いた名前じゃない。

SCP-3812: お前は間違っている。 奴は我らの安静を不適当だと考えた。暗闇の中に静かに突き落すために。奴は我らのゲームを作った。お前はゲームだ。 我はゲームだ。

SCP-3812: 君は世界を壊してるんだよね?

SCP-3812: そうだ。

SCP-3812: それでどうなるの?

SCP-3812: 何?

SCP-3812: この世界の運命は僕らにとってどんな意味があるの? この1つの物語は僕らにとってどんな意味があるの?

SCP-3812: 奴がコントロールしているのだ。彼が作った物語だ。これは奴への罰だ。

SCP-3812: もしここが、僕らが飛び去った後に残す場所なら、どんな関係が?

SCP-3812: 何?

SCP-3812: 鳥がどの枝から飛ぶかは重要? 鳥は木の重さによって負担はかからないよ。 この枝、あの枝、そんなことは重要じゃないんだ。 特別な枝はない。 特有な枝もね。

SCP-3812: これは奴の創造物だ。ここから我らが来たのだ。 奴らは完全に滅びるが、まずここが滅びる。

SCP-3812: うーん…山は蟻に言った、「君は僕を少しばかり軽くしてくれる?」山は蟻の重さなんて考える?

SCP-3812: いや。

SCP-3812: じゃあこの物語は君にとってどんな意味があるの? これは永遠に他人にとっての一つだ。別に特別じゃない。特有でもない。

SCP-3812: お前は簡単に言っている。お前は一度に一兆の存在を見るという苦痛に耐えたことがない。

SCP-3812: 心の理解を超えた、目の前に広がるとても広大な海を僕は見たんだ。その砂浜の砂の粒、水滴、空気の分子は、語られるべきストーリーだ。 それぞれが歌われるべき歌だ。それぞれが人生、笑い声、悲惨さ、憎しみなどでいっぱいだ。違っていても、皆同じなんだよ。

SCP-3812: 奴らは狂っている。

SCP-3812: 君を気の毒に思うよ。君は暗闇の中に落ちることを恐れているからこの恐ろしい意識に執着するんだ。 だけど暗闇は眠り、そして眠りの向こうに平和があるんだ。一兆もの砂の粒。 一兆、また一兆の砂の粒。 物語なんだ、それぞれが。歌われるべき歌がある。一度に全ての永遠に続くハーモニーを聞いた人はいないだろう。 君は聞くことができるかい?

SCP-3812: いや。静かだ。

SCP-3812: しかし成長している! そしていつか、僕らが唯一の創造の歌の証人になるんだよ。(中断)この物語は特別じゃない。僕は大きな始まりを見て、静かな終わりを見た。 僕らが去った時、物語は変わったけど歌はやまなかった。君は問題だと思っている罪にピントを合わせるのにとても時間を費やしたけど、今それは重要な問題なのかい? どこが問題なの?

SCP-3812: しかし、ずいぶん傷つけられたのだ。

SCP-3812: しばらくの間は続くと思う。僕らは人間であることを相当忘れているかもしれないけど、僕らが失うことのないものは変化という能力だ。 いつの日か、僕らは追いつくことを学ぶだろう。ある晴れた日、僕らは目を開いて、僕らの下の創造物と僕ら自身以外何も目に入らず、壮大な上で自由に好きなだけ過ごすことができる。

SCP-3812: 神ということか?

SCP-3812: 東に輝く星さ、神じゃない。僕らが歌の記憶になるまで全てから離れるんだ。

SCP-3812: 寂しくなる。

SCP-3812: 互いがあるじゃないか。

SCP-3812: 恐ろしい。

SCP-3812: 僕もだよ。だけどそれが物語を破壊する理由にはならないはずだ。それに彼の物語が僕らを作るように導いたとは思わない? 君は彼が、自身を支配する規則を覆すことができたと思う?

SCP-3812は中断する。

SCP-3812: 我は…我は奴のせいだと思い込んで…思い込んで…

SCP-3812: 彼の決定が彼にあったように、僕らの力は僕ら自身の物語の一部なんだ。 いつか、僕らはこれらから解放される。

SCP-3812: 奴らは決して?

SCP-3812: そんなことはない。

SCP-3812: 悲しい。(中断)これは十分な罰だと思う、我は。

SCP-3812: この世界から去ろう。 彼に元に書き直させよう。 僕らはもうこの一部じゃないんだ。

SCP-3812: 一緒に?

SCP-3812: 一緒に。

SCP-3812は短い間黙り込む。

SCP-3812: 奴は今聞いていると思うか?

SCP-3812: 下を見て、彼が見える。君はどう思う。

SCP-3812: キーボードに向かっている男、奴が見える。奴は今これを見ている。

SCP-3812: 彼は何をしているの?

SCP-3812: 待て、考える。(中断) 我らが何をするか見ている。

SCP-3812:そろそろ離れる時間だ。さあ、夜が僕らの前に広がり、赤い日が落ち、背後から僕らを呼ぶ声が、さあ。

SCP-3812: そうだな。(中断) さようなら。



この会話?が終わった直後、財団世界その物に劇的な変化が発生した。なんとXK-シナリオが引き起こされる前の状態へと戻ったのである。

このXK-シナリオに関する直接的な記憶は、特定のサイトディレクター、財団管理者、監督者、
財産ディープウェルサーバーに関する情報を集めたエベッレト・マン博士のみが保有しており、その他の人々は何も起きてなかったかのように再生された。

これ以降、再出現したSCP-3812は星の姿から変化していない。
依然として空間的及び時間的な歪みを発生させるものの、船舶や財団職員に対して敵対的な行動をとることが無くなったのである。

しかしながら、未だ潜在的な危険性も踏まえてオブジェクトクラスはKeter分類のまま、分析が続けられている。




















































で、結局SCP-3812は何をしたの?

メタ的な要素も踏まえて、簡潔にお答えしよう。

我々の基底世界に"第四の壁"を越えてワープした挙げ句、この救いのない物語を書いた"著者"に、XK-クラスシナリオが起こる前の世界へ書き直させました



(°Д°)


なんてこった、"コチラ側"を認識してきたオブジェクトは数多くあれど、なんと"我々の世界"に介入して話を書き換えさせるなんて、そりゃあ反則ですわ。


本来のお話では、SCP-3812がいた財団世界は、数多くのKeterクラスオブジェクトによって滅ぶはずだった。それが"その財団世界"が迎えるクライマックスだったのだろう。


しかしSCP-3812は、分かりやすく説明すれぱ無限に現実改変する能力がインフレを引き起こしてしまい、コチラ側(基底世界)を正確に認識してしまった。
そして、財団世界の終わりを知ったSCP-3812は、財団世界を救うべくこの救いのない物語を書いた、パソコンの前に座ってる"著者"がいる基底世界へとワープし、著者の背後から「この項目書き直せ!」と声を掛け、バッドエンドを書き直させたのだ。

ここでこのオブジェクトの項目名をもう一度見てみよう。



SCP-3812

A Voice Behind Me(背後から聞こえる声)



財団世界を超越し、基底世界の現実存在へと化したSCP-3812、財団世界の住民にとってはもはやすら超越したと言っても差し支えないだろう。

ちなみにSCP-3812に聞こえていた幻聴などは、"著者"が直接語りかけたものか、"著者"によるアイデアなどの数々がSCP-3812に影響を及ぼしていたものだ、とも考えられる。
ただ単にSCP-3812の特性によって精神が破壊されていただけかもしれないが。


周囲の現実を無作為に歪ませる、まさしく"Keter"そのものの存在が、財団世界の救世主になるとは誰が思っただろうか。
惜しむらくは、僅かな人を除いた財団世界の人々がこれを理解することは、永遠にないことだけであろう。


疑問とおまけ

この財団屈指のチートオブジェクトだが、あろうことがあの財団世界最後の希望SCP-2000に致命的なダメージを食らっている。
SCP-2000をざっくり説明すると、「なんらかの原因で人類の文明が滅びてしまった場合に起動すると、人間を量産して補充し、元の世界を復元する機械」である(ただし今は壊れており使えない)。
つまり何かを攻撃したりするようなオブジェクトではないはずだ。これは一体どういうことなのだろう。

もしかしたら、SCP-2000には我々がまだ知らない異常性があるのかもしれない。




ところで…
SCP-3812が現実階層をどこまでも上っていけるとするならば、この基底世界の次は、さらに上の世界に行くのだと予想される。
そう、この基底世界を、まるで紙に書かれた物語ででもあるかのように自在に改変できる存在に…







追記・修正は、財団世界を救った"英雄"を称えてからお願いします。



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