CRAZYBUS

登録日:2020/11/18 (水曜日) 00:00:05
更新日:2024/06/10 Mon 15:17:53
所要時間:約 7 分で読めます




『CRAZYBUS』は2004年8月28日に発売された、セガジェネシス(海外版メガドライブ)専用ゲームソフト。
開発元はベネズエラのゲーム会社「TOM SCRIPTS LTDA.」

5種類のバスを選んで走行するゲーム…なのだが、
その実態は、知る人ぞ知るクソゲー
それどころかゲームとしてカテゴライズできるかすら疑問なほどの大問題児。
某チョコレート菓子よろしく「最後まで問題点たっぷり」なゲームである。
というか、事の真相(後述)からして元々はゲームですらない

一体どんな代物なのか、以下で解説する。


BGM/音楽

タイトル画面で流れるBGMは「ゲーム史上最低のBGM」と名高い。
なぜそれほどまでに嫌悪されているのかというと、音楽の体を成していないから。
何を考えたか一つ一つの電子音を完全ランダムで出力した結果、甲高くドギツイ不協和音が完成してしまったのだ。音量もかなりデカい。
ちなみに全ての音がランダムに発生するので、「全く同じタイトルBGM」は二つと存在しないはずである。
マトモに音楽と認識できないレベルなので、違いに気付く程に聞きこむのは困難だろうが。

動画サイトにはこのタイトルBGMの耐久動画が存在するが、軽い気持ちで再生するのはお勧めしない。
ただでさえ脳がやられかねないのに長く耳に入れてしまえば、脳も何もかも破壊され「とっておきのレクイエム」になりかねない。しかしなぜかやたら聞き込んでしまう中毒性もある。

バスセレクト画面のBGMは(有難いことに)うるさくないが、これはこれでやけに不安定な音で不安を煽る。

本ゲームに収録されているBGMは、この2つだけである。
バス走行時にはBGMが一切流れない。


グラフィック/画質

粗い。ビックリするくらい粗い。
「仮にも2000年代なのに、何でファミコン並みの画質のゲームが流通したんだ?」と、プレイした誰もが混乱するはず。
起動時に小学生がペイントで作ったような開発ロゴが表示されることや、
ブルースクリーンそっくりの青いローディング画面で脅かしにくることは、最早数ある論外の1つにすぎない。

その上後述するスコア等の文字が、バス写真の背景画面と同化してしまい本当に見にくい(特に車体が青い時)。
でもスコア機能が潰れたところで一切支障が無いのだから、このゲームは本当に醜い。


ゲーム性

このゲームの趣旨はバスを操作することだが、ゲーム中プレイヤーが行えるアクションは以下の3つ。

  • バスを前進させる(→ボタン)
  • バスを後退させる(←ボタン)
  • クラクションを鳴らす(Aボタン)

…以上。この3つだけ。
強いて言えば「タイトル画面に戻る」があるが、本当にそれだけ

バスなのに人を乗せて目的地までフルスピードで送り飛ばすなどのアクションは無く、運転ゲームでよくある「障害物を避ける」「競走する」といった要素も無い。
運転中は微妙な走行音以外何も音は無く(前述のBGMを流されるよりは一万倍マシだが)、バスの絵が左右に動く以外に画面の変化は全く無い。
加速や減速は不可能だが、必要性がそもそも無い。
こんな無い無い尽くしの有り様でできることはただ1つ、「2D画面でバスが前進or後退するところを眺める」だけである。

このゲームにも一応スコアの概念があるのだが、その中身はずばり「走行距離」。
つまりどれだけ長く前進させられるか(→ボタンを押し続けられるか)、それ以外問われていない。
しかもそのスコアすら、スタート地点から後退するとオーバーフローを起こして「最大値:65535」になるし、前進だけで「65535」のスコアまでたどり着いてもカウントが0に戻るだけ。
厳密に言えばスコアはX軸座標の位置(0~65535)であり、あるバージョンでは画面に堂々とその旨の記載がなされている
セーブ機能が無いためスコアは保存できないが、こんなものを保存する価値など無いので問題にはならない。

このゲームには「敵を倒す」「1位を目指す」「ハイスコアを更新する」等の、本来ゲームにあってしかるべき「目的、目標」が何も存在しない。
あの『Big Rigs』ですら「ゴール地点を目指す」という「目的、目標」があったため、RTAや大会を開催すれば盛り上がりを見せることが可能であった。
だがゲームから「目的、目標」が消えれば最後、残るものは「虚無感を漂わせる作業」のみである。

ちなみに操作可能なバスは5種類ある*1と書いたが、車体性能や評価は実プレイに何の影響も及ぼさない。要は純粋な水増しである。
…単なる水増しは、普通のゲームだったら問題視されるのに、このゲームの前ではかすんで見えてしまう。
むしろ評価点にすら見える……のは気のせいか。


この通り、苦痛を与えるBGMから目的が欠片も存在しないゲーム性まで、ゲームを構成する全要素が落第点な一品。それが『CRAZYBUS』である。

世間一般における知名度は低いが、あんまりな内容ゆえにプレイヤーからは、
「どうしてこんなゲームを売ってしまったのか」
「世界最悪のクソゲーはBig Rigsで決まりだと思っていたのに!?」
と散々な評価を下されており、そのせいでクソゲー界隈ではメジャーな存在となってしまった。


事の真相

なぜこれほどに完成度の低いゲームが開発されたのか?

実はこのゲームの正体は、
ベネズエラのゲーム開発者が自前のコンパイラ*2を試験する為に作った、テスト用プログラム」であった。
本来クソゲーを罵る際の常套句として使われる「最早ゲームですらない」だが、
『CRAZYBUS』に関しては本当に「ゲームですらなかった」のである。
後退しただけでオーバーフローする時点で、プログラムとしての完成度も低すぎるが。

このプログラムはネットで無料公開されていた(現在は終了)のだが、2000年代から妙に人気が出始め、遂には開発者に無断でパッケージ販売されてしまったのだ。
つまり、なぜか作者と無関係なメーカーがこのテスト用プログラムに値札を張り、わざわざパッケージデザインまで作って勝手に売ったというのが事の真相である。
本来なら許されないことだが、ソースコードに「Public Domain or WTFPL*3」という文言があるので、合法ではある模様。
なお、開発者本人はソフトの販売元から一切収益を得ていないことを後に明かしている。


余談

パッケージの裏

オリジナルのパッケージ裏には以下のような文言が記載されている。

これが「クレイジーバス」だ!
こいつは狂ったようにバスを運転出来るゲームだぜ!
バスがクレイジーなのか?君がクレイジーなのか?そんなことよりとにかく運転だ!
左から右へ、右から左へバスを運転出来るぞ!
クラクションだって鳴らせるぞ!
クレイジーですよこいつはァ…!

  • 5種類のバスを運転だ!
  • 素晴らしいバスの写真!
  • 止まること無き運転!
  • エチョ・エン・ベネズエラ!ベネズエラ!!!*4
  • バス!

改訂版の存在

こんな有り様だが、実は9回も改訂されている。
と言っても、車種が増えたり、メニュー画面が見やすくなったりする程度で、内容はほとんど一緒。
2010年には最新版となる「ver.2.0」が発売された。
おっかないロード画面が無くなりグラフィックもマシになったが、BGMとゲーム性の根本的な問題点は(相変わらず)ノータッチ。
CRAZYBUSをあくまでゲームとして扱っている事にまず驚くが。

許諾は取ったのか?

このゲームに登場するバスはベネズエラ国内で実在していたバスであり、ゲームの製品化に当たってバス会社に許諾をとっているという話が出回っていた。
実際には、ご丁寧にも起動画面に、
「THIS GAME IS NOT LICENSED AND/OR AFFILIATED WITH ANY OF THESE ORGANIZATIONS AND/OR COMPANIES.」*5
という注意書きがあるため、許諾を取っているという話はガセである。

当然、ゲームソフトそのものについても、開発・販売にあたってセガの現地法人のライセンスは得ていない。
パッケージやゲームカートリッジには正規のソフト同様セガのロゴや権利表記などが記載してあったため、その点についても誤解が広まることとなった。

「実は非公認である」という情報は2020年頃に拡散し、誤情報を長年掲載していた某レビューサイトは特に批判を浴びた。
確かに、「許諾を取っていません」という記載は(ネット上に数多くある)プレイ動画を一時停止して翻訳すれば簡単にわかるので、擁護するには正直無理がある。
しかし、『CRAZYBUS』を知る者やプレイした者のほとんどが、その程度の検証を怠り、嘘を信じていたということもまた事実であり、ネットユーザーのメディアリテラシーが問われる出来事だったと言えるだろう。

日本語版の存在

実はパッケージやステッカーなどが日本語訳されたバージョンが流通している。
ただしタイトルの「狂気バス」に始まり、売り文句は機械翻訳*6、(名前を勝手に使われた)セガの連絡先に至っては怪レい日本语とかなり残念な出来である。

AVGNのレビュー

クソゲーハンターとして名高いAVGNも、本ゲームを取り上げている。
数多のクソゲーで舌が肥えた筈の彼だが、あまりの虚無ぶりに無言で卒倒してしまうほど。
彼曰く、「壁を見てる方が、まだ楽しいぞ!」
後にAVGNが「Darkwing Duck」のエピソード内で公開した「クソ度計」では、本ゲームは
「ゲームとしての基準を満たさない・クソ度計にすら載せるべきではない」最悪のクソ赤信号判定*7を受けている。



その内容や辿った運命があまりにクレイジーであるため、ネット上では一部にカルト的なファンが発生。
遠く離れた日本では、バスの画像を差し替える方法を同人誌にして世に発表する者まで現れた。
そういう意味では「愛されるクソゲー」なのかもしれない。





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最終更新:2024年06月10日 15:17

*1 全て実在のバスで、車両選択画面では簡単な解説が読める

*2 プログラムのソースコードを、コンピュータが読める形式に変換するソフトウェア

*3 「WHAT THE FUCK YOU WANT TO PUBLIC LICENSE」の略で、「(商用利用だろうと改造だろうと)どうとでも好きにしやがれこの野郎・公衆利用許諾書」というような意味。ふざけた名前だがれっきとしたソフトウェアライセンスであり、実質パブリックドメインの完全互換

*4 スペイン語で「これはベネズエラ製だ!」という意味。何故スペイン語なのかは謎

*5 「このゲームはこれらの(バス)会社・組織等との提携やライセンスの取得が一切されていません」

*6 パッケージ裏の文言は「それは狂気である」「すばらしいバス」「楽しみ」

*7 同率の最底辺認定は、「配管工はネクタイを締めない・香港97・Desert Bus・Big Rigs」など錚々たる(?)面子。それ以下は特別枠の「ジーキル博士の彷魔ヶ刻」とシビアゾーン(命に関わる位のクソゲー中のクソゲー)でTiger社の電子ゲーム多数や「ダークキャッスル」、悪名高いメーカー未認可ゲーの「Action52・チーターマン2」とか