雫(Leaf)

登録日:2021/05/05 Wed 00:50:34
更新日:2025/03/26 Wed 12:18:43
所要時間:約 7 分で読めます





-狂気の扉が音を立てて開いていく…-



雫(しずく)は、1996年7月26日にLeafから発売されたアダルトゲーム。
今なお根強い人気を誇るLeafの代表作の1つ。


脚本:高橋龍也
原画:水無月徹
音楽:折戸伸治*1、石川真也、下川直哉
(いずれもオリジナル版)


【概要】

本作はサウンドノベル『弟切草』のように「シナリオを読ませる」ことに重点を置いて制作された。
一貫してダークな作風、水無月徹氏による原画と折戸伸治氏による楽曲が見事にマッチしており、高い評価を得た。
雰囲気に違わずシナリオは鬱展開バッドエンドのオンパレードであり、特にグッドエンドと見せかけて最後の最後で奈落に突き落とす通称「ハサミ」エンドは多くのユーザーに衝撃を与えた。

この手法でアダルトゲームを作るというのは前代未聞の試みだったためLeaf内でも賛否が分かれており、開発の条件として上層部が出したのは「開始5分でHシーンに到達できるようにせよ」というものだった。理由としては「ユーザーが性的な欲求を手軽に満たせるものでなければ、アダルトゲームの市場には送り出せない」という判断から。
その結果はというと、序盤で源一郎からの捜査依頼を断ることで即Hシーンに到達できるようになっており、内容は「主人公が虚無的な日常を続けた末に迎えた卒業式で、参加者全員が毒電波に支配され『仰げば尊し』を合唱しながら乱交に至る」という衝撃的なバッドエンドである。


【リメイク版】

2004年1月23日発売。
初版のみCD-ROMで、以降はDVD-ROMで販売されている。
旧作との変更点は以下。

  • 主人公以外がフルボイス化。中でも月島拓也を演じた田中大輔氏の狂気に満ちた迫真の演技はファンの間で語り草となっている。残念ながら本作以外に同氏の出演作は確認されていないが、声が非常によく似た声優がおり、その声優のMADが作られる際にはたびたびネタにされている。とりあえず、同声優の担当キャラが「SEX!」を筆頭に淫語を連発しまくるのはだいたい本作のせい。紳士の嗜みとしてここではリンクを張らないので、気になるなら各個人で調べられたし。
  • ソフ倫を通すため、月島兄妹が実兄妹から義兄妹に変更。事情が事情なので仕方ないと言えるが、「背徳感が無くなった」という意見も根強い*2
  • 原画が比呂菊之助氏に変更。2002年版『痕』とは違って絵師自体が変更されているため、旧作ファンからの反発は強かった。
  • クリア後のおまけシナリオが大幅に変更。旧作では本作のスタッフが異世界人と化してメインキャラたちと戦うというものだったが、リメイクではギャグ要素の強いハーレムルートものとなった*3

2009年に発売された『痕』のリメイクには本作のオリジナル版・リメイク版が同時収録されている(初回限定版のみ)。
内容はベタ移植だが、リメイク版にはSuara女史の歌うEDテーマ『MOON PHASE』が追加されている*4


【あらすじ】

ここ数日の間、僕は不思議などろりとした時間の中を漂っていた。

毎日同じ時間が同じ映像で繰り返されているような…そんな奇妙な錯覚を覚えている。
代わり映えのないくだらない毎日の連続。
やがていつの頃からか、僕はこの退屈な世界から、すべての音と色彩が失われてしまっていることに気付く。
僕はつまらない現実を離れ、徐々に狂気の世界へ足を踏み入れようとしていた…。

そんな僕のクラスで、ある日の授業中、ひとりの女生徒がおかしくなった。
彼女は機械のようなまっすぐな姿勢で席から立ち上がると、突然、大きな声で淫猥な言葉を叫びだし、
教師が無理矢理その口を押さえる頃には、彼女の顔は自らの爪が刻んだ生傷で血だらけになっていた。
クラス中の生徒達が息を飲んで見守るなか、鮮血の赤を見つめていた僕は、現実世界がゆっくりと色を取り戻していくのを感じていた…。
(公式サイトより引用)


【登場キャラクター】

  • 長瀬祐介(ながせ ゆうすけ)
本作の主人公。17歳。
退屈で虚無的な日常に飽き飽きしており、狂気に憧れて世界が破滅する妄想を抱いている。
大人しそうな外見から性に対しては淡泊かと思いきや、おまけシナリオでは沙織・瑞穂・香奈子3人を同時に手籠めにするという無節操振りを披露している。まあ、おまけシナリオ相手にいちいち突っ込むのも野暮な話ではあるが…

  • 月島瑠璃子(つきしま るりこ) CV:一宮桜
祐介の元クラスメイト。17歳。
神秘的…というより妖しい雰囲気の少女で、ハイライトのない目や電波が云々など全く噛み合わない言動が特徴。
一見すると言動そのままの電波キャラだが、彼女がこうなってしまった理由はきちんと描写されており、彼女のルートが事件の根幹に通じることもあって本作を象徴するキャラクターと言えよう。

祐介の同級生。17歳。バレーボール部に所属。
赤いロングヘアが特徴的な明るい性格の美少女。
事件に関わる「ある重要な事実」を目撃したのがきっかけで、源一郎に調査の同行を頼まれる。
当時のLeaf名物であった「ふきふきキャラ」の元祖。

  • 藍原瑞穂(あいはら みずほ) CV:立花舞
祐介の同級生。17歳。生徒会書記を務める。
茶髪のショートカットとメガネが特徴。内気で口数が少ない。
香奈子とは中学時代からの親友で、狂ってしまった彼女を救うため、調査への同行を申し出る。

  • 太田香奈子(おおた かなこ) CV:今井かおる
祐介のクラスメイト。17歳。生徒会副会長を務める。
ある日の授業中、突如として淫語を連呼しながら発狂し強制入院となる。
病院での検査や直前に書き残した日記から、毎日のように何者かと性行為に及んでいたことが判明し、それが発狂の原因ではと推察されるが…
おまけシナリオでは正気を取り戻しており、本来の性格は割と冷静・辛辣なものだと明らかとなった。

  • 長瀬源一郎(ながせ げんいちろう) CV:旭剛
祐介の叔父。国語教師。
教師が動くのは都合が悪いとして、今回の事件の真相究明を祐介に依頼する。
祐介共々、後にLeaf作品の常連となる「長瀬」の姓を持つキャラの元祖。

  • 月島拓也(つきしま たくや) CV:田中大輔 / 少年時代;和泉あやか
祐介の上級生。18歳。前生徒会長
一見すると温和な優等生だが、夜の学校にて人間を狂わせる「毒電波」を発し、香奈子を始めとする女生徒たちを洗脳していた全ての元凶。幼い頃に両親を亡くしており、妹である瑠璃子に狂気じみた愛情を抱いている。
リメイク版のおまけシナリオでは進行役を務めるが、立ち絵は闇堕ち時のものが使われており、完全にイってしまった顔で明るく朗らかに話を進める様はシュールというかカオス極まりない。
某動画サイトでは某ニュータイプによく似た声の彼が放つ演説が別方向で有名。やめないか!

  • 吉田由紀(よしだ ゆき) CV:秋月まい
生徒会役員。
緑色のショートカットの髪とボーイッシュな性格が特徴。

  • 桂木美和子(かつらぎ みわこ) CV:真琴のあ
生徒会役員。
三つ編みにした茶髪と垂れ目が特徴。優しく温和な性格。
由紀・美和子ともに登場シーンの大半が電波で洗脳された状態のため、まともなセリフはほとんどない。


【その後の展開】

本作の約半年後にビジュアルノベル第2作である『』が発売。本作のダークでオカルティックな雰囲気を継承しつつ、伝記譚的な要素を加えたストーリーや魅力あるキャラクターによってユーザーの心を掴み、Leafの人気を不動のものとした。

1996年11月22日には『痕』との合同ファンディスク『さおりんといっしょ!!』が発売されている。案内役はタイトル通り沙織が務める。

ToHeart』のとあるルートで登場する女生徒は、本作の沙織がモデルであることがスタッフによって明言されているほか、アニメ版第2期では祐介と瑞穂、香奈子に似たキャラクターが登場している。
アニメ『こみっくパーティーRevolution』にも拓也に似たキャラが登場。



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最終更新:2025年03月26日 12:18

*1 Leafの創立メンバーであったが「生計が立てられなかった」との理由で本作を最後に退社し、その後紆余曲折を経てKeyを設立。

*2 なお、本作発売の翌年にソフ倫は近親相姦を容認する旨を明言した。

*3 理由については明言されていないものの、旧作当時のスタッフの大半が既にLeafを退社していたため、「もういない人間を使って内輪ネタをやるのも変な話だから」との説が有力

*4 元はCD『AQUAPLUS VOCAL COLLECTION VOL.4』に収録されていた、劇中BGMに歌詞を付けた楽曲で、移植にあたっての書き下ろしというわけではない。