六番目の小夜子

登録日:2021/07/29 Thu 02:29:41
更新日:2023/07/29 Sat 20:03:05
所要時間:約 32分で読めます







六番目の小夜子』は恩田陸の小説。及びそれを原作としたドラマ。

3年おきに「サヨコ」という奇妙なゲームが行われるとある学校の物語。

2000年にNHKの『愛の詩』枠でドラマ化されている。原作とは全くの別物レベルで改変されていることで有名。
しかしこっちはこっちで評価が高い。








皆さんは、この花瓶を見たことがあるでしょうか


【原作版】


恩田陸のデビュー作。

舞台は3年おきに「サヨコ」が行われる地方の進学校。
「6番目のサヨコ」となる年、転校してきたのはサヨコと同じ名を持つ美少女・津村沙世子であった。
紆余曲折の末にこの年のサヨコになってしまった少年・関根秋。彼は時に彼女と腹の探り合いをしたり、時に共に青春を謳歌したりと奇妙な関係を築くことになる。
物語は『』『』『』『』及びエピローグの『再び、春』の5章構成。『夏』が異様に短い。

割と奇異な経緯で出版されている。
まず第三回ファンタジーノベル大賞候補になるも落選。
その後ファンタジー・ノベルシリーズの一冊として出版される*1。しかしこのシリーズ自体が速攻で打ち切り食らったためあえなく絶版に。なんと発刊から2年でシリーズ終了し、結局13冊しか出なかった
その後恩田陸人気が高まったことで1998年にふたたび単行本化。さらに2000年に文庫化された。
ちなみにハードカバー版は綾辻行人の解説付きであるのに対し、文庫版は恩田陸のあとがき付き。どちらを買うかはあなた次第。

ストーリーとしての特徴は、メチャクチャ難解であるということ。もうちょっと言うと、謎がかなり残る作風。
本作にはオカルト要素が色濃くあるのだが、そこら辺についてはほぼ説明されない。ぶっちゃけ沙世子は明らかに不思議な能力を持っているように見えるがその辺りは最後まで不明。
正確には一応クライマックスで謎解きはされるのだが、解かれていないという部分も多い。
だがオカルト要素のある独特な青春小説という点では安定して評価が高い。

のちに本作の前日譚で『図書室の海』という短編が出された。


◇あらすじ


とある地方の高校。ここでは3年ごとに「サヨコ」と呼ばれる奇妙なゲームが行われていた。
そうして「六番目の小夜子」となる年。この学校に謎の美少女・津村沙世子が転校してきた。
「サヨコ」の年に転校してきた「沙世子」に周囲は少なからず衝撃を受ける。

しかし沙世子の気さくな人柄に生徒たちは徐々に彼女に親しんでいく。
そんな中、沙世子の周りでは奇妙としか思えない事件が頻発していた。

意図せず「六番目の小夜子」になってしまった主人公・関根秋は彼女と時に腹を探りあい、時に共に青春を謳歌する。


本作のテーマは多分「学校という閉鎖空間



◇「サヨコ」



舞台となる高校で行われているゲーム
学校七不思議のようなものであり生徒間の知名度はまちまち。
しかし「安易に名前を出してはいけないもの」という共通認識がある。

15年前の文化祭で行われた「小夜子」という劇と、その3年後に起きた事件が原因となった。
15年前の文化祭にて「小夜子」というひとり芝居が行われた。文化祭の演し物がギリギリまで決まらず、校内で募集をかけたところ匿名で送られた脚本だった。この年は大学合格率が非常に高く「小夜子の年は縁起がいい」というジンクスが何となく生まれる。
それから3年後。また演し物が決まらず「小夜子」の再演をすることとなった。高い競争率の中から今年の主演が決まる。しかしその少女は事故で亡くなり、劇は行われなかった。その年は大学合格率が低く「小夜子を中止するべきではない」と考えられるようになった。


これらが重なり「サヨコ」は3年ごとに行われるゲームとなる。

先代のサヨコからとある「」をもらった生徒がサヨコになり、高校三年生の始業式からスタート。
ルールはシンプル。
・サヨコは決して正体をバラしてはいけない
・鍵を使い戸棚の中の花瓶を教室に飾る
・文化祭で行われる芝居の内容を考える
・すべてが終わったら次のサヨコに鍵を送る

「鍵」は二階奥にある戸棚のもので中には花瓶が入っている。それを教室に飾るのが最初の仕事。

またサヨコは文化祭実行委員と正体を隠しつつ芝居の段取りを決める(文化祭実行委員にはサヨコ用のマニュアルがある)。文化祭実行委員へ、どのようなサヨコをやるかというメッセージは前述の花瓶を使って行われる。
新しい「小夜子」の劇を作る場合は花瓶に赤い花を生ける
過去の「小夜子」の再演をするならば空の花瓶を
そして役割を放棄するなら花瓶を飾らないというようになる

そうして芝居についての準備が進められていき、文化祭の日に何らかの「小夜子」が上演される。

こうしてすべてが終わり次のサヨコに鍵が受け継がれることとなる。だが3年おきにやるということは、サヨコが高校三年生であるのに対し、次のサヨコは現在中学三年生。そのために鍵を中継ぎするためだけの「渡すだけのサヨコ」が存在する。サヨコが下級生の誰かを「渡すだけのサヨコ」に選び終了。
「渡すだけのサヨコ」は時期を見計らって次のサヨコに鍵を渡す。
『図書室の海』は「渡すだけのサヨコ」になってしまった関根夏の物語である。


言ってしまえばだれか一人が役目を放棄しようとするだけであっさりと終わってしまうこのゲーム。しかし実際には15年間脈々と続いてきた。まるで、何かの意図が働いているようだが……。

以下、歴代のサヨコ

最初の小夜子
ほぼ上述の通り。この時とある少女が「小夜子」というひとり芝居をしたことが全ての始まりとなった。

二番目の小夜子
それから3年が経ち、「小夜子」を再演しようということになる。オーディションの結果イメージにぴったりの少女が主役に選ばれた。しかし交通事故で亡くなりこの年の小夜子は欠番に。
なお亡くなった少女の名は津村「沙世子(サヨコ)」である。学校の隅に彼女の死を悼む碑が置かれている。

三番目の小夜子
主人公・関根秋の兄がサヨコとなった。初の男の小夜子である。この時には文化祭実行委員も絡んだマニュアルが作成されていた。
彼は考えた末に新しい芝居として「とある男子生徒が過去の小夜子を回想する」というひとり芝居を作る。
結果は上々。さらにその年の大学合格率は一、二を争うほど良かった。

四番目の小夜子
ある意味最悪の小夜子
選ばれたのはよりによってこういう行事を好まない気の強い女子だった。生徒総会で「こんなバカバカしいことはやめるべきだ」と主張し何もしなかった。
小夜子の祟りにあたったのか、その後大学受験直前に原因不明の高熱を出し浪人してしまう。しかも次の年も同じ時期にまた高熱に。今ではもうノイローゼになっているとか。
なお「何もしない」と宣言した以上、彼女は鍵を下級生に渡していないはずである。しかし何故かサヨコは未だに続いている……。

五番目の小夜子
別名『無言のサヨコ』。赤い花を生けたがその後何もしなかった。
一番空気。


そうして、六番目の小夜子がはじまる……


◇登場人物


◆関根秋
主人公である高校三年生。代理『六番目の小夜子』。写真部に所属している。日本人離れしたガタイの良さにメガネという番長みたいなビジュアルの男。
兄と姉がサヨコに関わっている。そのためサヨコについてそれなりの知識を持つ。しかし本編開始時はあまり興味を持っていなかった。しかし本人の意思ではないとはいえ「小夜子」になってしまい、何より沙世子本人に興味を抱いたことでそれらについて調べるようになる。

作中ではあまり触れられていないがかなりの完璧超人。腐れ縁の由紀夫曰く「ホントに頭が良くて、見た目もかっこいいし、性格だって少々ジジくさいけど男らしいし、スポーツもできる」。本当に完璧超人である。実力テストでは総合1位、さらに全国模試では30位以内であるらしい。
ついでに家は代々法曹界で名をはせてきたエリート。もう一度由紀夫の言葉を借りるなら「世の中不公平」。

趣味は人間観察。写真部に入っているのもそのためのようだ。人がいっぱいいて何かをしているのを撮るのが好きであるらしい。相手が写真を撮られていると気が付かず、自分が被写体の外側の世界にいる感覚を気に入っているとか。
しかしこれについて「他人と一線を引きたい秋の弱さ」であると沙世子に指摘されている。図星なのか思うところがあるのか、その後は被写体と向き合い特定の個人と写真を撮るようにしている。自分なりに自己分析をした結果「他人が自分の中に踏み込んでくるのが怖い」が彼の答え。



◆津村沙世子
ヒロイン。そしてもうひとりの『六番目の小夜子』。神戸の有名進学校から秋たちの学校に転校してきた。何故か本物の「六番目の小夜子」のものとは違う、もうひとつの鍵を所有している。いつもはその鍵をペンダントにして胸にかけている。
美人で頭がよくついでにスポーツも得意という隙が無さすぎる少女。
容姿は黒髪ストレート。本当に美人であるらしく、初めてクラスに顔を見せた時にはほぼ全生徒がざわついていた。その後もおっかけが出たり靴箱に大量の手紙が入れられたり学校中で高い人気を誇る。
成績についても実力テストは全教科5位以内で総合2位とハイレベル。

さらに性格もよく、気さくで面倒見がいい人柄からそちら方面でも人気が高い。彼女を疑っている秋すら『話していて面白い女の子』ということは認めている。
また高校生とは思えないほどに高い処世術を持つ。その力を用いて、美人で天才というある意味近づきにくそうなスペックながらも周囲にうまく溶け込んでいる。彼女に敵意を持つ人物も気が付けば沙世子のペースに乗せられいつの間にか仲良くなっている。

こんな完璧超人であるが同時に謎も多くかなりミステリアス。というかオカルトな力を持っているかと思うような言動もしばしば。
  • そもそも高校三年生という時期に有名進学校から転校してきた
  • 校庭の隅にある「二番目の小夜子」の碑を見て何故か笑っている
  • 彼女に手を出そうとした不良たちが突然野良犬に襲われる
  • 沙世子を倒そうとした本物の「六番目の小夜子」が逆に返り討ちに遭い、それから不可解な幻覚に悩ませられるようになる
などなど。秋の目からすると、普段の言動も怪しい言動もどちらも演技ではない様に見えるようだが……。

天才だが、実は「天才ゆえに何をやっても退屈」という悩みを抱えている。


◆唐沢由紀夫
秋の友人。彼とは小学校から同じ学校だったが、高校ではついに三年間同じクラスとなった。バスケ部に所属している。サヨコについては殆ど知らなかった。
ちょっとアホの子が入っているが明るく素直な少年。細かいことはあまり気にしない方。クラスからは、にぎやかな言動も相まってバカキャラとして愛されている。成績はよく進学校入れたな、と言いたくなるほどのものらしい。
その反面野生の勘というか時々恐ろしく鋭い意見も見せる。そこは秋も認めている。作中で初めて「サヨコは裏で誰かがコントロールしなければ成立しない」と気が付いた。
同じクラスの雅子とは事実上相思相愛の仲。入学当初からお互いに憧れており、間違いなく気はあったのだがなんとなくそこから関係を進めずにいた。快活な由紀夫におっとり優しい雅子とお似合いのバカップルである。彼女に手編みのマフラーをプレゼントされたときには、嬉しさのあまり泣きかけていた。末永くお幸せに


◆花宮雅子
沙世子の親友。そして由紀夫の彼女(?)。女子バスケ部所属。愛称は「まあ」。
おっとりとした優しい少女。秋や由紀夫など野郎たちにはぽわぽわした温かい雰囲気の女の子らしい女の子として扱われている。かわいい。非常にかわいらしい
美人で性格のいい沙世子のことを気に入っており、真っ先に友達になった。完璧超人な沙世子のことが心の底から大好き。登場人物たちの中で最も沙世子と時間を共にしたのは多分彼女。
彼女もまた由紀夫に惹かれている。始業式のクラス発表で彼と同じクラスと分かった時には小さく喜んでいた。それを親友の容子にからかわれているなど、付き合っていないだけで周囲からはほぼ公認の仲。最近は彼と共に同じ大学に行くのが夢。しかし由紀夫の方の学力が足りていない。
この物語は秋、沙世子、由紀夫、雅子の4人が中心となっている。


◆沢木容子
雅子の親友で同じく女子バスケ部に所属している。結構勝ち気な性格。
あんまり物語にはかかわらない。


◆設楽正浩
文化祭実行委員長。秋とも仲がいい。
兄もサヨコの年に文化祭実行委員長と務めていたということもあり、彼自身もサヨコについてかなり詳しい。中盤以降は秋と共にサヨコについて調べていくようになる。


◆加藤彰彦
秋たちと同じクラスのガリ勉。秋曰く「地味で社交性がなく冴えないが、その割に自意識過剰で自尊心が強い」タイプ。言い換えると陰湿で神経質。

その正体は本来の「六番目の小夜子」
詳しい事情は分からないが、描写の端々を見るに、本人なりに今年のサヨコであることで選ばれた人間だと思っていたらしい。そのためもう一人の小夜子である沙世子に強い敵対心を抱いている。なんとか彼女を倒そうとするが返り討ちに遭いスタンド攻撃じみた不可解な幻覚を見るようになる。その結果持病の喘息を再発し入院する。彼が持っていた鍵は秋に託された。


◆黒川貞雄
秋たちのクラスの担任。この学校に10年以上勤めている古株。
いっつも表情がほぼ変わらず何を考えているか分からない不思議な男。一部の生徒からは煙たがられている。
しかし何を考えているのか分からないだけで、案外いい人っぽい。ごくまれに冗談を言ったり、忘年会の際には自分が参加しないのに生徒のために金を出してやったり。


◆溝口祐一
秋のクラスメイト。柔道部の主将でありコロコロした体型。
変人であり何故かいつも敬語口調で話している。天然なのかふざけているのか、黒川先生の小指に赤い糸を結ぼうとするなど変な言動が多い。
学園祭では客全員で歌うことをメインとした「うたごえ喫茶」を企画した。本人曰く3年間暖めていた企画。
家は料亭であり、冬はそこでクラスの忘年会が行われることになる。


◆関根多佳雄
秋の父親で裁判官。というか秋の家は代々裁判官の出らしい。
いつもゆっくりと丁寧な話し方をする妙に存在感のある男。
沙世子のことを相談した秋に「転校生は民話によくある『姿を変えた訪問者』に似ているところがある」と説明した。
同作者の「象と耳鳴り」という短編集では探偵役として主役を務めている(なお本作とは全く繋がりはない)。


◆佐野美香子
秋の隣のクラスの少女。『冬』に登場するある意味ヤンデレ。
真面目で物静かだが内向的なタイプ。ただし美少女であるためモテていたらしい。一年生の時から秋に片思いをしていたが、その性格から言い出せずにいた。
卒業直前になり意を決し告白しようとするものの、彼の近くにいる沙世子に敵意を抱く。……が社交的な沙世子にあっさり懐柔され、彼女に懐いていく。そして知らず知らずの彼女の思い通りに動くようにコントロールされていった



◇ストーリー





始業式の日、「六番目の小夜子」はルール通り花瓶に花を生けるため、朝早く登校していた。
そこで「彼女」はひとりの少女と出会う。その少女は「あなたも花を生けに来たの?」と言った。

その日の秋たちのクラスのホームルームでは転校生が入ることになった。彼女の名前は津村沙世子。
見たことがないほどの美貌に、何をやらせても天才的、しかも性格もきさくという非の打ちどころのなさ。彼女はすぐに学校中に馴染み、人気者となった。
あまりの人気に他校の不良に狙われてしまったほど。

だがその裏で沙世子の周りでは奇妙なことが起きるようになっていった。
ある日、学校の隅にある小さな碑を見て不気味に笑う沙世子が見かけられたり。
またある日は彼女の元に「かぎをかえせ」という不可解な手紙が届いたりと。
ついには、沙世子たちの教室が大きく荒らされるという事件にまで発展した


一連の出来事を引き起こしていたのは、本来の「六番目の小夜子」である加藤だった*2。彼は何故かもうひとつのサヨコの鍵を所有している沙世子がいる限り、ゲームは失敗すると考えていた。
彼はある日沙世子の提案で、彼女と直接話すことになる。
対面した沙世子が言い出したのはサヨコと全く関係ないことだった。それは自分が転校生であることについて。彼女は転校生であるというだけで周囲から奇異の目で見られることを嫌っていた本当は普通の女の子に過ぎないのに

そんなことを言っていた沙世子だったがふと話題を変えた。今話しているここは、昔事故で3人が亡くなった場所であると。この場所こそ、12年前「二番目の小夜子」こと津村沙世子が亡くなった場所だった


そう、六番目の小夜子はあたしよ

わざわざ帰ってきたのよ。あなたの役目はもう終わったのよ



それから加藤は逃げるように家に帰った。部屋に戻り何とか心を落ち着かせようとする加藤。
そんな彼が見たのは窓の外から、沙世子に似た長髪の少女がじっと自分を見つめている光景だった


それから少しして、加藤は持病の喘息をぶり返して入院してしまった。彼が今年のサヨコであると推理していた秋は、もうゲームオーバーかと少し落胆する。

そんな時加藤の母親が会いに来た。秋に渡したいものがあるらしい。それはサヨコの鍵であった。加藤はうわごとのように「モドッテキタンダ、ヒヲミテ」と呟いているらしい。

「ヒヲミテ」が「碑を見て」だと気が付いた秋。急いで学校の隅にある碑を見に行く。
そこには「津村 沙世子 享年 十七」と記されていた。




夏になり秋たちにとっての受験勉強は本格的に始まっていた。
秋、沙世子、由紀夫、雅子の4人はいつの間にか仲良くなり、共に行動するようになっていた。

秋が珍しく休みを取れたある日のこと、父も家に戻っていた。
ふと気まぐれで父に沙世子の話をするとそれは『お客さん』によく似ていると言われる。民間伝承によくある、よそものを怖れる物語と転校生は類似点があると。
父は沙世子に興味を持ち、是非家に連れてきてほしいと言い出す。考えた末にいつもの4人で遊ぶということになった。

夕方までは海でピクニックをして、その後は秋の家で食事会をするという段取りに。
海辺で何となく話していた秋と沙世子は、秋の写真についての話となる。沙世子の「怖いの?」という言葉に秋は何も返すことができなかった。


夕方になり秋の家に行く前にそれぞれの用事で一旦別れることとなる。
その中で雅子と沙世子は甘いものの買い出しへ行くことになった。
そんな中沙世子たちは、春に彼女を狙っていた不良たちと出会ってしまう。

一触即発の空気。沙世子は雅子を逃がすように、彼女と離れて不良たちとどこかへ行ってしまった

雅子が見えないところまでくると、沙世子は人が変わったような冷笑を浮かべた。



ほら、もうじき日が暮れるわ。日が暮れると、いろいろなものが出てくるわ。

いろいろな生き物が。

――ほら、聞こえない?



周囲に助けを呼び沙世子を探しに戻ってきた雅子。
彼女が見たのは、狂犬に襲われ血だらけになった不良たちだった

沙世子はそこから少し離れた場所で気絶していた。




多分この物語で一番のメインどころ。

文化祭実行委員長の設楽正浩のもとに一冊の手紙が届いていた。
それは文化祭で上演される「小夜子」の芝居のシナリオだった。タイトルはストレートに「六番目の小夜子」。直球過ぎて使えないと苦笑する設楽だったが、読み進めるうちに考えが変わっていく。


それから少しして、夏休みもほぼ終わるころ、秋と父は沙世子の家を訪ねていた。
彼女が不良に襲われた一件で沙世子に特に怪我はなかった。しかし元はと言えば彼女を家に誘った自分たちに原因があると考え謝罪に来たのだ。
彼女の両親は、ある意味沙世子の親とは思えないような平凡で温厚な人間だった。もちろん謝りに来た一件についてもあっさりと許してくれた。

秋は話の流れで沙世子の部屋にお邪魔することに。気さくで勝気な沙世子らしい(?)少し散らかったサバサバした部屋であった。
話し込んでいく中で、秋はやはり沙世子は魅力的な女の子であると感じる。


そうして二学期が始まり、秋たちは文化祭のクラスの出し物を決めることになった。
だが受験前ということで誰もやる気を出そうとしない。その状況で意気揚々と手を挙げたのは溝口祐一だった。彼は3年間あたためてきた「うたごえ喫茶」をやりたいと言う。
結局それ以外の案が出なかったということもあり、「うたごえ喫茶 みぞぐち」が秋たちのクラスの出し物となった。

文化祭の準備が進む中、実行委員から生徒へ不思議な通達が届いていた。
それは今年の芝居は全員参加してほしいというもの。全員が参加しなければ成立しない芝居であると設楽は言う。毎年数名が休んでしまうが、その数名が休むだけで芝居は不成立となる。
不可解であったが、それにより全員が芝居に興味を示していた。


そうして文化祭の日がやってきた。
芝居のために、全校生徒が休まずに体育館に訪れていた。そこで彼らはひとり一枚紙を渡される。そこには数字と短い言葉が書かれていた。
今年の芝居はいわゆる「呼びかけ」。小学校の卒業式などで行われる、ひとりひとりがワンセンテンスを喋り、最終的にひとつの文章を作るというものだった。これを今年の芝居でやろうというのだ。これこそが「全員いないと成立しない」理由であった。

体育館の電気が落とされる中、芝居は始まった。
芝居の内容はひとりの少女がここにいる生徒たちに何かを話しかけるというもの。


「これは、とても面白い花瓶です」
「今まで何人もの人たちが」
「この花瓶を合図として」
「教室に飾ってきました」
「それはなぜか、みなさんはご存じでしょうか」


話は「学校」というシステムそのものに変わっていった。教室という箱に閉じ込められた生徒たちについて。
このあたりから生徒たちの空気がおかしくなる。誰とも知らぬ少女が、自分たちの口を借りて、何か言ってはいけないような含みのあることを言おうとしている。
その状況にいつの間にか体育館はピリピリしていた。


「私はすっとここにいたのに」
「ずっとみんなを見ていたのに」
「そこで私は」
「私の代わりに」
「私の言いたいことを伝えてくれる」
「ある女の子を」
「皆さんに送ることにしたのです」
「その女の子の名前は」
サヨコと言います



明らかにマトモではないこの少女の存在と、ついに出てきてしまった「サヨコ」の名前。それにより生徒たちはもはやパニック状態になっていた。泣き出す女子生徒まで出てきている。だが集団催眠にかかったように誰も読むことをやめなかった。異様な空気が体育館を包む。


少女は自分がサヨコを送り出してきたもののように言い、歴代のサヨコを紹介した。

気が付くと舞台の上には4人の少女と1人の少年の後ろ姿があった。それは過去のサヨコたちに似ていた。


「私は」
「もう」
「我慢ができない」
「サヨコという」
「媒体を使っているだけでは」
「私はもう」
「もどかしい」
「私は」
「やはり」
「自分で」
「話さなければならないと」
「思い」
「やはり」
「決めた」
「私は」
「自分で」
「六番目のサヨコに」
「なることに」
「したのだ」
「そう」
「私なのだ」
「私がサヨコなのだ」
「私は」
「皆さんの前に」
「みんなのところに」
「やってきた」
「そう」
「来た」
「来た」
「来た」
「今」
「ここに」
「ここに」
ここに
そう

ここに!



ここで生徒たちが限界を迎えた。ほぼ全員がその場から逃げ出そうとする。
パニックの中で秋は舞台上で不可解なものを見た。舞台の上には6人目の少女が立っていた。それは沙世子によく似ていた




「六番目の小夜子」クライマックス。
……と言いたいところだけど、ここから先は多分読者によって解釈が異なる
多分建て主が書いたところでそれもひとつの解釈にしかならない。
是非、自分で読んで自分なりの「六番目の小夜子」について考えてみてください。

色々な意味で考察のし甲斐がある物語であることは保証する









彼らはその場所にうずくまり、『彼女』を待っているのだ。

ずっと前から。そして今も。

顔も知らず、名前も知らない、まだ見ぬ『彼女』を。

















“サヨコ”。

私たちの学校にはそういう名前の不思議な言い伝えがあった。



【ドラマ版】


NHKの『愛の詩』にて2000年の4月から6月まで計12話放送された。

栗山千明をはじめとしてキャスティングがやたら豪華。彼ら彼女らの若かりし頃を見るものとしても面白い。

『愛の詩』は小中学生が主人公の小説を、ドラマ向けに再構成して放映したドラマシリーズ。
元々恩田陸は、似たような趣旨の少年ドラマシリーズっぽいものを書きたくて、本作を書いたらしい。それだけにそのリメイクと言える愛の詩でドラマ化されて驚いたとか。


上述したように大胆な改変を行っている。まず舞台が中学校に変更。さらに主人公は秋から、本作オリジナルキャラである潮田玲へと変更になった
原作は秋が沙世子と腹の探り合いをしながら青春を謳歌する物語。対してドラマ版は玲と沙世子の「ふたりの小夜子」が協力してサヨコを成功させようとする物語。
正直原作と完全に一致している部分を探す方が難しい。まあ愛の詩ではよくあること。

だが原作と別物として見た場合高い人気を誇る。これも愛の詩ではよくあること。

というか愛の詩の中でも特に人気の高い作品
意地でもビデオ化しないことに定評のある愛の詩が、今作に限ってはなんと放映から一年後にビデオ化&円盤化を果たしている。ちなみにNHKドラマでは初となるDVD化。
またNHK各局で利用出来る「番組公開ライブラリー」に行けば全話無料で視聴出来るため(但し一回の利用時間には制限在り)、NHKが近くにあれば今でも比較的楽に網羅可能*3
ついでに再放送も多い。愛の詩枠での再放送や夏休み集中スペシャルも含めると5回も再放送している。この枠でここまでやってるのはこれくらい。
2021年7月31日から8月2日にかけてまた再放送することが決定した。


原作とは違った意味で不気味な雰囲気。というかホラー要素が強い。……大体あなたのせいですよ千明様。
特にオープニングとエンディングでは不気味な声の女性のコーラスが入っており怖さを倍増させる。「ダーメダダメダス」とか「イェー↑イェ↓ーイェーイェーイェーイェーイェーイェーイェー↑」がトラウマになっている人も多いんじゃないだろうか。

ただ雰囲気が不気味なだけで、ストーリー自体はサッパリしたものになっている。まあ子供向けに翻案されたものだしね。原作では謎が多かった「サヨコ」という存在についてもドラマなりの答えを出している。
しかし原作と同じくオカルト要素については一切謎解きされない。佐野日名子が演じる謎の少女の正体も未だに不明。



◇あらすじ


地方にある学校・西浜中学校では「サヨコ」という名前の不思議な言い伝えがあった。
三年に一度、サヨコと名のる生徒が選ばれて、三つの約束を果たす。それが成功すれば大いなる扉が開かれ、三年後にまた新しいサヨコが現れる。そう言われていた。

舞台は2000年4月の「六番目の小夜子」となる年。
サヨコに選ばれた主人公・潮田玲は始業式の朝、早速花瓶に花を生けようとしていた。
だが鍵を使い棚を開けた時にはもう花瓶はなかった。おかしいと思いつつも戻ると、何故か既に赤い花が生けられていた。そこで玲は長い髪の少女の後ろ姿を見る。

釈然としない気持ちのまま始まった始業式。そこで玲たちのクラスに新しい転校生が紹介される。
それは「津村沙世子」という美少女だった。
「サヨコ」という名前に、朝見かけたものとよく似た長髪。玲は彼女が何かかかわっているのではないかと疑問を抱く。

沙世子について調べれば調べるほど疑問は深くなっていった。しかし沙世子は意味深なことをいうばかりで何も明かしてくれない。

それでも玲は沙世子に真摯に接し、彼女の心を開くことに成功する。
そうして紆余曲折あった末、彼女たちは「ふたりの小夜子」としてサヨコに挑むこととなる。

だが上手くはいかなかった。
様々な方法で玲たちの邪魔をする「妨害者
玲でも沙世子でもない「偽物のサヨコ
一連の伝説の裏で糸を引く「黒幕

多くの脅威がふたりの小夜子に襲い掛かる。


◇登場人物


◆潮田玲
演:鈴木杏
ドラマオリジナルキャラクターにして主人公。女子バスケ部に所属。
本作の「六番目の小夜子」。本来のサヨコは秋であったが、彼から強奪に近い形で譲り受けた。
あまりに馴染みすぎていて、原作にいないことを驚く者は多い。

明るく前向きな少女。勝ち気でいつも幼なじみの秋を引っぱっている。何もしないよりは自分で行動し物事を変えていくことを好む。秋をはじめとして彼女の性格に惹かれる者は多い。秋から鍵を貰おうとしたのも、サヨコになりたかったのに選ばれなかったことにショックを受けるも、悩んだ末に「選ばれないなら自分から掴むしかない」と考えたため。
彼女の前向きさによって、原作とドラマは分岐したといってもいい。顕著なのがサヨコとの仲。
序盤の沙世子は原作と同じくミステリアスな人物だった。そんな中玲は「彼女を過去の小夜子と関係ない、ひとりの人間として向き合う」と決めて腹を割って話し合う。その結果沙世子は玲に心を開くこととなる。こうしてドラマ版はふたりの小夜子による物語となった。

明るい少女だが内心自分が「どこにでもいる普通の少女」であることに悩んでいる。それだけにサヨコの話を聞き心惹かれていき、自分がその物語を体験したいと考えた。
「凡人ゆえに小夜子に惹かれた玲」と「天才ゆえに沙世子に惹かれた沙世子」で実は対になっている。
撮影は2000年の年明けごろから。そのため演じた鈴木杏は当時ギリギリ小学六年生だった。熱演お疲れ様です。

家族構成は父・俊作(演:上杉祥三)、母・真弓(演:美保純)、弟・耕(演:伊藤隆大)。


◆津村沙世子
演:栗山千明
もうひとりの主人公。原作と同じく神戸からの転校生。ひと悶着あった末に玲と同じバスケ部に入る。
大体どっかしら設定が変わっているドラマ版では数少ない原作とほぼ同じキャラ。勉強スポーツ共に天才的であり、その上美人。あとミステリアス。
原作と唯一違うのは、中学生という難しい時期であるためどこか情緒不安定ということ
彼女も原作と同じく「転校生を理由に特別扱いされることを嫌う」「天才であるため人生にどこか退屈している」など悩みを持つ。原作の沙世子が割り切っていたのに対し、ドラマ版は折り合いをつけられず苦しんでいる。それらについて触れられると露骨に機嫌が悪くなる。
また原作のような処世術スキルもほぼない(中学生が持っていたら怖いが)。原作が疑われるような状況でのらりくらり躱していたのに対し、こっちでは真っ先に疑われることが多い。
序盤は原作のようなミステリアスな人物だったが、これは自分を周囲から守るためぶっきらぼうに振舞っていたもの。素はどこにでもいるような普通の明るい女の子である。
こんな経緯だけに沙世子を沙世子として向き合ってくれた玲のことを、かけがえのない友人だと思っている

千明様が演じられた沙世子は原作者お墨付きのハマり役。ドラマ見ると原作の沙世子も千明様で脳内補完されるから不思議。
年相応の少女とホラーチックな少女を見事に演じ分けた。というか、ホラーチックな演技がやたら上手い。ただでさえ目力が強いビジュアルなのに、目を見開いてにらみつける演技が多いため怖いったらありゃしねぇ! 原作と同じく碑を見て不気味に笑うシーンがあるのだが、ホラーもののクリーチャーかと思うくらい怖ろしい。
流石です、千明様。
最もその年末にはもっと怖ろしくなったのだが…


◆関根秋
演:山田孝之
玲にとって友達以上恋人未満な少年。原作とは別人な人その1
本来の「六番目の小夜子」であったが、玲の熱意に負け彼女に鍵を譲っている。玲と沙世子が今年のサヨコであると知る数少ない人物。
性格は原作と同じくクールで頭がいい。その頭脳で猪突猛進な危なっかしい玲のサポート役を担っている。過去のサヨコの情報収集は大抵彼がおこなう。
元々玲のひとつ上であったが病弱であり1年前に心臓の手術の関係で停学していた。そのため2度目の二年生生活を送ることに。その関係で両親は離婚しており弟とも別々の生活をしている(秋が母についていき、弟が父についていった)。

一見歳不相応に大人びてクールだが、実は作中で最も精神的に不安定
何でもない様に振舞っているが、停学や離婚の件について言葉にできない悩みを抱えている。
写真部に入っているが彼の写真はどれも人間が映っておらず風景だけ。これも彼のいびつさであるらしい。
また表向きは玲のストッパーであるが、自分と違い前向きな玲に依存しているところがある。そのため玲が自分から離れサヨコに興味を抱いているということに無意識ながらも恐怖を感じている。

それにしてもこの頃は線の細い美少年を演じていた山田孝之が、まさかウシジマくんになるとは……。


◆花宮雅子
演:松本まりか
玲のクラスメイトであり親友。女子バスケ部に所属している。原作とは別人な人その2。原作と同じく周囲からは「まあ」と呼ばれる。
おっとりとしていた原作とは真逆の勝ち気な女の子。どっちかと言えば原作の容子に似ている。あっちと違い由紀夫を尻に敷いているところがある。賑やかな性格のため玲とはかなりウマが合うようだ。バスケでも彼女とペアを組んでいる。
同時にしっかり者。秋とは違った意味で玲のストッパー役になっている。そこら辺から生徒たちからの信頼があるのか学級委員もやっている。まあ最終的には一緒にふざけることもあるが。
サバサバして見えるが意外とサヨコには興味があるらしい。その話題となると嬉々として噂を話し始める。……サヨコに何か思い入れがあるのか、それらを否定するようなことを言われるとヒステリックな態度を見せる。
松本まりかはこれでドラマデビューした。昂ると声が真矢になる。


◆溝口祐一
演:鳥居紀彦
玲のクラスメイト。ぶっちゃけ原作だとわき役だったのにメインキャラ化してしまった。原作とは別人な人その3
何を血迷ったのか、まさかのおネエキャラ。何故か女言葉で話し、いつも編み物をしている。もはや原作との類似点が欠片もねえ。中二でその性格って一体何が彼をそうさせたのか……。なお沙世子が転校してきたとき、その美貌に一番嫉妬していたのは彼である


◆唐沢由紀夫
演:勝地涼
秋の弟の中学二年生(秋とは別クラス)。「!?」と思ったかもしれないが、マジである。一旦原作の由紀夫は忘れろ。上述の「離婚の際父についていった秋の弟」とは彼のこと。名字が違うのは父の姓を名乗っているため。

原作と同じく快活で少しアホの子が入っている少年。周囲からいじられることもあるがそれも自分のキャラとしている。そんな細かいことを気にしない性格から少なからず因縁がある秋とも普通に仲がいい。また秋の母は花屋を経営しているのだが、離婚後も普通に手伝っていた。
雅子との仲は「まあフラグ立っている」くらいに収まっている。一応玲に仲をからかわれるくらいにはいちゃついているらしい。しかし雅子は隣のクラスの由紀夫より、同じクラスで席の近い溝口と話しているシーンの方が多いので……。
今見るとあの勝地涼が出演しているのはちょっと驚く。


◆黒川貞雄
演:村田雄浩
玲たちのクラスの担任。原作とは別人な人その5
何考えているか分からないと言われていた原作と違い、親しみやすい人柄になっている。
教師ではあるのだが微妙に威厳が足りず、玲たちにはちょっと軽んじられているところがある。……よく言えば親しまれているとも言う。珍しくまともなことを言った時には玲に「先生なのに先生っぽい」と言われていた。
だがやる時はやる男。玲に「現実の沙世子を見てやれ」とアドバイスをし、それが彼女の「沙世子と向き合う」という決断につながった。


◆加藤彰彦
演:山崎育三郎
玲のクラスメイト。神経質ながり勉。比較的原作に似ている人。こっちではサヨコとか関係ないただの一般人。
自分の成績を神経質に気にしており、天才肌の沙世子の登場に内心焦っていた。同じく成績の良い秋も敵視している。だが秋に不用意に「いい成績を取るために停学したのか?」とうっかり煽ったのが運の尽き。それに本気でコンプレックスを感じている秋に「じゃあ、やってみれば? 惨めな気持ちになるけど」とすごい怖い顔で言われ、それ以降は触れないようにしている。
序盤でうっかり玲と沙世子が今年のサヨコであることを知ってしまう。その後は原作通り沙世子のスタンド攻撃を食らって入院する。
しかしあちらとちがい終盤で戻ってくる。
この地味な眼鏡少年が今を時めくミュージカル界のプリンス山崎育三郎に変身するのだから凄い。


◆設楽正浩
演:内野謙太
中学三年生で文化祭実行委員長。去年の秋のクラスメイト。彼も割と原作に似ている。
原作と同じく文化祭関連で秋に情報提供する。
中の人が途中で骨折し、ギプスを巻いて撮影に臨んだのは割と有名。


◆唐沢多佳雄
演:古尾谷雅人
秋と由紀夫の父。原作とは別人な人その6。動物探し専門の探偵をやっている。
変人気味な原作と違い普通のおっちゃんである。


◆佐野美香子
演:一色紗英(中学時代:上原まゆみ)
中盤のゲストキャラ。玲たちのクラスへ教育実習生としてやってくる。原作とは別人の……というか、彼女は明確に別人
元々西浜中学校の卒業生だった。信条は「理由のない不思議なんて無い」。
在校生時代は「四番目の小夜子」に選ばれていた。しかしこの手のうわさを信じない彼女はサヨコを完全に無視していた。その結果この代では様々な不幸が起こる。……が、それを全て「サヨコを行わなかった美香子のせいだ」とバッシングを受けることになった。祟りとか関係ないものまで彼女のせいにされ、心を痛め一年停学することとなっている
つまり原作に設定のみ存在していた「ゲームを拒んだ四番目の小夜子」の設定を基に、佐野美香子の名前を付けたキャラ。原作だと四番目の小夜子に名前がなかったから仕方がない。


◆津村ゆりえ
演:冨士眞奈美
沙世子の祖母。沙世子は家でゆりえと一緒に暮らしている。おちゃらけた性格の明るいおばあちゃん。
謎の声域を持っており初老の男性からアニメ声の女の子まで自由自在に声を出すことができる。
その能力で元西浜中の音楽教師で元声優というすごい経歴を持っている。
その経歴を活かし、ドラマの方で「うたごえ喫茶」と作ることになった時の講師役を担った。
なお、別の声に関しては演者本人の声ではなく、初老の男性は岸野一彦、アニメ声の女の子は菊池志穂による吹替。


◇撮影あれこれ


撮影は2000年の1月から3月にかけて行われた。そのため中盤などは登場人物たちの息が白くなっている。特に鈴木杏は寒くて仕方がなかったらしくカイロをつけられるだけつけたとか。

撮影は千葉県木更津の太田中学校で行われた(学校近辺については東京で撮影している)。東京に近くてかつ海が見えて……などイメージに合うところ探したらここになったらしい。
基本的に作中の小道具はその学校の備品を借り出している。そのため玲たちが来ているジャージをよく見るとデカデカと「OHDA」と書いてある。まあこのためだけにジャージ作るわけにもいかなかったんだろうけどさ……。

現役バリバリの学校であるため、授業の合間を縫う形で撮影していたらしい。当たり前だけどかなり大変だったようだ。
DVDに収録されたメイキングでは、撮影中にチャイムが鳴ってしまい(この時点でNG確定)ヤケクソになって歌いだす千明様が拝めます。かわいい。

「ダーメダダメダス」をはじめとして劇中音楽を担当したのはアコーディオン奏者のcoba氏。ポケモン映画などにも参加している、かなり大物の作曲家。
ちなみに「ダーメダダメダス」は「Donminodominas」と歌っている。


ドラマ版も原作と同じく「六番目の小夜子」の芝居をするシーンがある。エキストラには実際の中学生を呼んだらしい。
リアリティを重視するため、彼らには何も伝えずにこの劇に臨ませたとか……。原作読んでりゃ何起きるか大体わかるだろは禁句。
それにしてもあんな不気味な劇をリアル中学生にやらせるって、本当に気分悪くなる子も出そうだけど、大丈夫だったんだろうか……。
劇中だと途中で中断したが、一応最後まで撮ったバージョンもある。だがそれはDVD全巻購入特典のCDという形なので聴くのは割と困難。




最後にドラマ版の最終回ラストシーンについて。
かなり意味深であるためいろいろ考察されているが、不吉な未来の暗示ではないと信じたい。






今年のサヨコは、二人いる

あなたとわたし わたしとあなた

私たちの前に、一枚の扉

私たちは開く どんなに暗く 苦しい夜も

どんなに寒く 悲しい朝も

二人手を取り合って!

私たちはいつも、あなたの横に

またどこかでお会いしましょう



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最終更新:2023年07月29日 20:03

*1 ちなみに本レーベル発で有名になった作品には他に『十二国記』の始まりとなる『魔性の子』がある。

*2 ここで正体が明かされるまで地の文では「彼女」と表記されていた。一応叙述トリック

*3 ちなみに「愛の詩」シリーズで他に配信されているのは2021年現在『ズッコケ三人組』(1・2全話と3の一部話、『双子探偵』とのクロスSP)・『双子探偵』・『幻のベンフレンド2001』と過去作を再編集放送した『僕んちのロングバケーション』・『続・たけしくんハイ!』のみ。