ピースメイカー(ドラマ)

登録日:2022/10/16 (日) 20:48:28
更新日:2025/01/19 Sun 07:32:17
所要時間:約 12 分で読めます




『ピースメイカー(PEACEMAKER)』とは、2022年よりワーナー・ブラザースより配信されたインターネット動画配信用テレビドラマ。
2021年に公開されたDCコミックの映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』のスピンオフドラマである。
アメリカ本国ではワーナーの専門動画配信サービス「HBOMax」で配信され、日本では国内配信サービス「U-NEXT」にて独占配信された。
ただし、配信限定ではなく同年10月にはソフト化もされた。



概要


本作は、『ザ・スースク』で重要な役割を担ったクリストファー・スミス/ピースメイカーの主役ドラマである。
同作では単純に「狂気的なサイコパス」としての役割が強く、どちらかと言うと敵に近かったピースメイカーだが、本作ではその内面に迫っていく。

テーマとなるのは「有害な男性らしさ」。
映画では筋肉を強調し暴力を振りかざしていたピースメイカー。しかし、その根源は意外なところにあった。
彼と父親との関係に焦点を当て、押し付けられる「男性らしさ」にメスを入れている。
思わぬ彼の悩みに彼への印象が変わる視聴者も少なくなかったはずだ。

新しいチームメイトとの関係もまた、ピースメイカーの描写に必要不可欠だ。
彼の内面に触れ、解きほぐしていくアデバヨと、当初は彼に悪印象を持ち憎まれ口を叩き合いながらも「汚れ仕事」に悩んでいたハーコート。
「殺人」の仕事に対する彼らの考え方の変化にも注目すべきである。

また、新キャラとなるビジランテもまた良いスパイスとなっている。
ピースメイカーに付き纏って無邪気に人を殺しまくる、ある意味ピースメイカーの対極に位置する存在にしてムードメーカーにして癒し要員であり、魅力あるキャラクターとなった。

製作と全話脚本、1~3、6、8話の監督は『ザ・スースク』に引き続きジェームズ・ガン。
「エイリアン」は『スリザー』、「自警ヒーロー」と「狂気的な追っかけ」は『スーパー!』、「親子」は『ブライトバーン』、「チームメイト」は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』といったように、ある意味本作はガン監督の集大成とも言える作品である。




ストーリー


クリストファー・スミスは「平和の使者=ピースメイカー」を名乗る自称自警ヒーローである。
しかし、その実態は「アメリカの敵」となる人物を誰であろうと容赦なく殺すという殺戮者であった。
政府機関A.R.G.U.S.のアマンダ・ウォラーの命令でコルト・マルテーゼ島に傭兵集団タスクフォースXとして派遣されたスミスは、宇宙生物スターロを研究していたスターフィッシュ計画を暴露しようとした監視役のリック・フラッグ大佐を殺害。
そして、目撃者であるラットキャッチャー2を始末しようとしたが、ブラッドスポートに阻止され、瓦礫の下敷きになって消息不明となった。

それから5ヶ月後。
瀕死の重傷を負ったものの奇跡的に生還し救助されたスミスは、こっそり退院して自宅に戻ったが、アマンダの部下達に拘束され、新しい任務に就くよう命令される。
「バタフライ計画」なる計画の実行役となった彼は、嫌々ながら新しいチームメイトと作戦を進めることになった。
そこで彼は、チームメイトのアデバヨ、ハーコートやストーカー紛いのことをしてくるビジランテとの交流を深め、自身にとって絶対的存在だった父オーギーとの関係に疑問を抱き、「ピースメイカー」としての行いを葛藤し始める。

やがて明らかになるバタフライの全貌と、チームメイトの裏の顔。
果たして、スミスが「平和の使者」として取る道とは何か?





登場人物


  • クリストファー・スミス/ピースメイカー
演:ジョン・シナ/吹き替え:大塚明夫
武器・格闘のスペシャリストである「平和の使者」を名乗る自警者。
スースク本編のブラッドスポートとの一騎打ちに敗れ死亡したと思われたが、奇跡的に生還し我が家に帰ったが、アマンダの部下達に頭に残った爆弾インプラントをダシに再び新たな任務に就く羽目になる。
平和のためなら女子供だろうと殺すと断言しており、コルト・マルテーゼ島では制御不能の大暴れを繰り広げた。
しかし、本作ではいざ殺すとなるとそれ相応の理由を求めたり、武器に平和の象徴の鳩マークが描かれていないと殺せないと駄々をこねたりと、人間臭さを見せる。
母親が出て行った後、白人至上主義者の父親に育てられ、「アメリカの敵」を殺すよう鍛え上げられてきたという過去があり、別居中の父には逆らえず、彼に服従している。
だが、チームメイトで唯一自分を「いい奴」と言ってくれたアデバヨとの交流を通じて、父との関係を見つめなおすようになる。


  • レオタ・アデバヨ
演:ダニエル・ブルックス/吹き替え:斉藤貴美子
A.R.G.U.S.に新しく配属された雑務係の女性。
一番の下っ端ではあるが言いたいことは言う、さっぱりとした性格。
同性愛者であり、同じゴッサムシティ出身の女性キーヤと結婚している。
殺人にはあまり積極的ではなく、任務とは言えなるべく殺人を避けようとし、躊躇なく人を撃てるハーコートとはたまに衝突した。
何かと態度の悪いスミスに対しても分け隔てなく接し、彼の本質を見抜いて次第に彼の内側の殻を破り、信頼を得ていく。


  • エイドリアン・チェイス/ビジランテ
演:フレディ・ストローマ/吹き替え:前野智昭
巷で出没している自称自警ヒーロー。表の顔はダイナーの従業員で、冴えない眼鏡の青年。
ピースメイカーに馴れ馴れしく接し、「ズッ友」を自称しているが、当のピースメイカー=スミスからは疎まれている。
「正義のため」の大義名分で嬉々として殺人を行い、スミスすら躊躇する子供の殺人すらも平気で行い、ただの潜入任務ですら殺人前提でチェーンソーを持ち出す、顔を見た人質を皆殺しにしようとするなど、最早ただの殺人狂の域に達している。
一応正体は隠していたが、挙動不審な態度ですぐバレ、いつの間にやらチームに溶け込んでいた。
チーム入りしてからは空気の読めない言動でトラブルをすぐ運んできた。


  • エミリア・ハーコート
演:ジェニファー・ホランド/吹き替え:水樹奈々
A.R.G.U.S.のエージェントの一人。
映画『ザ・スースク』にも登場していたが、同作ではあまり目立たなかった。
歯に衣着せぬ物言いをし、何かと人当たりのキツい女性であり、スミスのことも当初は「クズ」と軽蔑していた。
任務のためなら殺人を厭わない仕事人間ではあるが、内心汚れ仕事には拒否感を抱き、上司のアマンダに反感を抱いている。
任務を共にするうちにチームメイトにも仲間意識が芽生え、スミスも少しは見直すようになる。


  • ジョン・エコノモス
演:スティーブ・エイジー/吹き替え:遠藤純一
A.R.G.U.S.の情報分析官。映画『ザ・スースク』にも登場。
不衛生気味なヒゲが特徴なオタク風青年であり、スミスからは「染めヒゲ」といじられていた。
分析官らしく、情報操作が仕事ではあるが、いざという時は現場に出て武器を振り回すなどやる時はやる男。


  • クレムソン・マーン
演:チャック・イウジ/吹き替え:上田燿司
A.R.G.U.S.の幹部で、アマンダ・ウォラー直属の部下。
バタフライ計画の責任者としてチームの指揮を執り、スミスらに司令を与える。
濃すぎる個性を持ち何かと命令違反の多いチームに毎回頭を抱え、しょっちゅう彼らに怒鳴っている。
アマンダの信頼を得ているものの、彼女を信用してはおらず、むしろ何か隠し事をしているようだが……。


  • ワッシー(Eagly)
スミスの飼い鷲。スミスが収監中は父オーギーに面倒を見てもらっていた。
主人に忠実な鷲であり、敵に対しては誰であろうと果敢に襲い掛かる。
食いしん坊なため、ポテチの袋の音には敏感。


  • オーガスト・“オーギー”・スミス/ホワイトドラゴン
演:ロバート・パトリック/吹き替え:ふくまつ進歩
スミスの父。
巷では悪名高いディープステート(秘密組織)のリーダー「ホワイトドラゴン」であり、徹底した白人至上主義者。
事あるごとに黒人や移民を馬鹿にするのは日常茶飯事であり、「男らしさ」を声高に掲げて「女々しい男」を攻撃する最低のレイシスト兼ミソジニスト。
それは息子のクリスでさえ同じであり、息子をアメリカの敵を断罪するヒーローに育て上げ、武器装備まで用意していたものの、それはあくまで自分の目的を達成するための道具にするために過ぎず、クリスを本心では忌み嫌っている。
温厚なアデバヨでさえ「最悪の父親」と吐き捨てるほどの男であり、クリスの性格が歪んだ最悪の元凶である。
作中では、マーンによってクリスが撃破したバタフライの事件の犯人に仕立て上げられ刑務所送りになるが、やがてそれが息子が噛んでいると知り、「自分の恥を消す」ために彼を殺そうとする。
戦闘ではKKKのマスクをモチーフにしたスーツを着用。飛行機能に様々な武器まで備えられている。


  • ジュードーマスター
演:ナット・リー/吹き替え:バトリ勝悟
ゴフのボディガードを務める傭兵。全身緑色のスーツを着ている。
小柄ながらも優れた格闘技の使い手であり、大の男すらも倒してしまう。
ゴフの正体を知りつつ、彼(?)に忠誠を誓っている。


  • ソフィー・ソン
演:アニー・チャン/吹き替え:米田えん
地元警察の刑事。
ピースメイカーが起こした事件(バタフライの殺害)の捜査を担当し、当初はオーギーが犯人だと突き止めるが、その結果に疑問を抱き、今度はピースメイカーを怪しいと睨んで彼にマークする。


  • ラリー・フィッツギボン
演:ロックリン・マンロ/吹き替え:武田太一
ソフィーの相棒の刑事。
密かにソフィーのことを好いており、彼女からもそうであった様子。


  • キャスパー・ロック
演:クリストファー・ヘイヤーダール
新しく配属された警部。
実はA.R.G.U.S.の人間であり、マーンの同僚。
マーン達をアシストするのが任務だが、根っからのサイコパスであり、快楽のまま、不必要なまでに殺しまくる。


  • キーヤ・アデバヨ
演:エリザベス・フェイス・ルドロー
レオタの妻。
母の言いつけで危険な任務に赴く妻の身を案じ、辞めるよう促す。


  • キース・スミス
演:リアム・ヒューズ
クリスの兄。故人。
弟の個性を尊重する優しい兄だったが、父に命じられた決闘で弟の一撃で事故死してしまう。


  • アマンダ・ウォラー
演:ヴィオラ・デイヴィス/吹き替え:上村典子
自分以外の全ての人間を道具として使い捨てるA.R.G.U.S.の長官。
今作ではあまり出番はないが、その冷酷非情さは相変わらずであり、より残酷な形で表現されている。


  • チャーリー
バタフライのアジトを守っていたゴリラ(を乗っ取っていたバタフライ)。
凄まじい怪力で敵を叩きのめす。


  • ロイランド・ゴフ
演:アントニオ・クーポ
バタフライに乗っ取られていた上院議員。
一家全員がバタフライであり、政財界を裏で牛耳っていた。
スミスらのチームに撃破された後、スミスによって飼われるが、ひょんなことから脱出してある人物の体に入る。そして、スミスにある提案をするのだが……。


演:エズラ・ミラー
  • アクアマン
演:ジェイソン・モモア
スペシャルゲストのジャスティス・リーグの面々。オリジナルキャストはフラッシュとアクアマンの2人だけである。






用語集


  • バタフライ
大型の蝶の姿をした地球外生命体。決してモスラではない。別の生物の体を乗っ取る性質がある。
なお、スターロ同様乗っ取られた後の生物を元に戻すのは不可能。
餌はハチミツに似た謎の蜜であり、体から伸ばした舌からストローのように吸い取る。
母星が壊滅の危機に瀕し、難民として地球まで辿り着いた。
別の星で生きていくためにはその星の生物の体を乗っ取ることしか生存出来ず、密かに暮らしていたが、ゴフは地球の支配を目論み、マーンはそれに反発。
結果、両者は決別したが、ゴフ側にもある思惑があった。


  • カウ
バタフライの餌を生み出す生物。巨大な芋虫の姿をしている。
カウが生み出す餌はバタフライにとって唯一の生命線であり、カウが死んでしまったら数週間も生きていられない。


  • ピースメイカーのヘルメット
ピースメイカーが扱うヘルメットであり、製作者はオーギー。
様々な形のバージョンが存在し、それぞれに敵を振動波で一瞬で肉塊に変えるソニックブーム・相手の体の中が見えるXレイビジョン等の特殊機能を持っており、音声認証で作動する。


  • 日記
ピースメイカーを陥れるためにアマンダ・ウォラーが用意したもの。中身は典型的な誇大妄想狂の陰謀論で埋め尽くされている。


  • バットマイト
バットマンを信奉する謎の妖精。
ただしエコノモスの話で出た都市伝説程度の存在であり、本当にいるのかは不明。


  • カイトマン
ピースメイカーが最初に戦ったヴィラン。
原作ではバットマンのヴィラン。

  • ドールマン
ピースメイカーが会ったことがあるヒーローで、体を縮小する能力の持ち主らしい。
原作ではヒーローチーム『フリーダム・ファイターズ』のメンバー。












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最終更新:2025年01月19日 07:32