登録日:2023/02/08 Wed 23:11:12
更新日:2025/04/12 Sat 00:51:50
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突然ですが、アニヲタ諸君にクイズです。
問題。デデン
「「なぜ山/」ピンポーン
「ジョージ・マロリー」
正解!
「なぜ山に登るのか」という質問に、「そこに山があるから」と答えたことでも知られる有名な登山家は?
答えはジョージ・マロリー、お見事。
( ゚д゚)
( ゚д゚ )
【概要】
突然だが、早押しクイズには、多くの問題集に載っていたり、人気クイズ番組で出題されたりして(クイズプレーヤーの間で)有名になった問題がいくつかあり、
こういった問題は、競技クイズ界隈では「ベタ問」や「ベタ」、もしくは「手垢問題」と呼ぶ。
その「ベタ問」の中でも、項目名にもなっている記事冒頭の「なぜ山/」はベタ問中のベタ問として知られており、
競技クイズを題材とした漫画『ナナマルサンバツ』では、作中の大会においてこの「なぜ山問題」が出題され、
当然の如く解答者が「「なぜ山/」で正解したうえで「ベッタベタすぎてギャグかと思った」というリアクションを取っている。
ちなみに、先程からなぜ山の後ろにくっついているスラッシュ(/)は「
確定ポイント」と呼ばれるもので、
「この文字まで聞けば答えが1つに絞れる」という意味合いで表記される。
即ち「
なぜやま」の4文字を聞けば、
「答えは20世紀初頭に活躍したイギリスの登山家であり、最期は
エベレストの山頂付近で遭難しその生涯を終えた
ジョージ・マロリーで確定」
ということである(クイズ大会や練習などでは単に「押した箇所」の印として使われることもある)。
本問で引用している「そこに山があるから」というマロリーの言葉、実は誤訳である。
ニューヨーク・タイムズの記者に「何故エベレストに登りたかったのか?」と聞かれた際の返答であり、原文は「Because it's there」。
記者の質問内容から考えて「it」が「エベレスト」を意味するのは明白なので、「そこにエベレストがあるから」と訳すのが適当である。
では何故「エベレスト」が「山」に置き換わって広まっているのかというと、1950年代にある登山家が書いた本が要因とされている。
ゆえにこの問題は厳密にいうと不正確なのだが、「そこに山があるからだ」が有名すぎるので、今後もベタ問として生き続けると思われる。
アニヲタにも馴染み深いテーマで例を挙げてみる。
例えば、
「ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』で初登場した、水中を不規則に泳ぎ回るイカの姿をした敵キャラは何?」
という問題があったとして、順を追ってどこが確定ポイントとなるかを考えてみよう。
ゲーム『スーパーマリオブ/
『マリオ2』や『3』の問題かもしれない。
ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』で/
コインを何枚取ると1UPする?とかかもしれない。
ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』で初登場/
クッパや
クリボーかもしれない。
ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』で初登場した、水中/
プクプクかもしれない。
ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』で初登場した、水中を不規則/
ゲッソーしかありえないのでここで確定。(「水中を不規/」で止められるとなお良し)
もちろん「イカの姿」まで聞けば正解はより確実なものとなる。
だが、他の解答者よりも先に答えなければならないという早押しクイズの性質上、
特にこういった「最後まで聞けば誰でも解る」という簡単な問題では、「どこでボタンを押すか」という一瞬の判断が超重要となる。
よっぽどひねくれた問題でない限り「最後の1文字まで聞かないと答えが絞り切れない」ということは無いため、
難易度の高低を問わず、全ての早押し問題には確定ポイントが存在すると言ってよい。
こうした競技クイズを攻略するうえでは、知識量はもちろん「いかにベストなタイミングで押すか」という判断力や瞬発力も必須となるのである。
この場合、ミスの可能性を潰した上で最速で取りに行くのであれば上記の確定ポイントまで待つのが正解だが、他者との勝負という側面がある以上、
- 「現状負けていて運ゲーに賭けてでも追いつきたい」
- 「序盤の内に運ゲーで先行しておきたい」
等の判断をする事もあり、その場合には可能性の高い二択時点、後者のようなある程度外すのも計算の内なら更に前で止めるのも一つの戦略になる。
(余談だが、競技クイズ界隈において上記のようなアニメ・ゲーム関係の問題は『
クイズマジックアカデミー』でのジャンル分けに使用される色にちなんで「
青問」と呼ばれることが多い)
似たような物としては
小倉百人一首の「
きまり字」がある。こちらも「ここまで読まれれば取札が1種類に確定できる」物。
こちらは最短で1文字が7種類、最長は6文字が6種類。
【ベタ問の例】
「なぜ山/ の他に確定ポイントが早いことでよく知られているベタ問をいくつか紹介する。
いずれも「ここまで聞けば確定」というポイントで止められているので、ぜひともタブを開く前に答えを推理してみてほしい。
正解:エクレア
全文:
フランス語で「稲妻」という意味がある、細長いシュークリームにチョコレートをかけたお菓子は何?
前置きの鉄板である「○○語で「××」」問題の中でも最も有名なもの。
「ハワイ語で「跳ねるノミ/」や「イタリア語で「礼拝堂風に/」も抑えておきたい。
ちなみにそれぞれの正解は、前者はウクレレ、後者はア・カペラ。
正解:ラムサール条約
全文:
正式名称を「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」という、締結されたイランの町にちなんだ条約の名前は何?
かなり正式名称の出だしが特徴的な条約であるため早々に確定できる。
ちなみに2023年2月現在、
日本国には同条約に登録された湿地が
北海道の釧路湿原はじめ合計53カ所ある。
正解:のろし
全文:
狼のフンを混ぜていたことから、漢字では狼の煙と書くものは何?
「漢字では○○と書く」という問題も鉄板。
読み上げ問題の場合、瞬時に頭の中で漢字に変換して読む必要がある。
正解:『風の又三郎』
全文:
「どっどど どどうど どどうど どどう」という書き出しで始まる、宮沢賢治の小説のタイトルは何?
いわゆる書き出し問題の中でもインパクトありまくりの一問。
小林多喜二の『蟹工船』も「「おい、地獄/」で確定できてしまう。
正解:『トルコ料理』
全文:
世界三大料理といえば、フランス料理、中華料理と何料理でしょう?
少々事情が異なるパターン。
「三大」や「四大」のうち1つが問われる場合、答えるのは基本的に「その中で一番マイナーなもの」が早押しクイズのセオリー。
特にこの世界三大料理に関してはトルコ料理だけ明らかに知名度に差があるので、「「フランス料理、中/」まで待たずとも「絶対にトルコ料理」と言える。
正解:『ポロロッカ』
全文:
アマゾン川で年に一度、河口から上流に向け、流れが逆流することを?
こちらも少々事情が異なるパターンだが、競技クイズの歴史で非常に有名な問題であるため記載。
1992年に放送されたテレビ番組の1コーナー「史上最強のクイズ王決定戦」で、当時のクイズ王が答えた問題。
本人曰く「『アマゾン川
で』という文脈で続くのは
ポロロッカしかない」とのこと。
なるほどわからん
一応助詞別に分けると「アマゾン川が」と来ると「流れている国は?」など、「アマゾン川に」だと「生息する生き物で…」、「アマゾン川の」だと「周囲に存在する…」、「アマゾン川と」だと「○○川に共通する…」など、「アマゾン川へ」だと「流れ込む支流の一つで…」といった可能性が考えられるが、「アマゾン川で」と場所・状況が限定される助詞の「で」を使う事から「アマゾン川でしか起こりえない事」→「ポロロッカ」という流れになると考えられる。
漫画「
幽☆遊☆白書」でパロディされており、作中の能力バトルでクイズ対決を行った海藤優が「アマゾ」の3文字だけを見て正答を出すという離れ業を披露した。
【パラレル問題】
ここまで読んで、
「~といえばジョージ・マロリーでーすーが、彼は何年生まれ?」と言った感じの引っかけ問題もあるじゃないか、と思った人もいるだろう。
こうした「前半部は引っかけ・前振りで後半部が本物の問い」という形式の問題は、これまた競技クイズ用語で
「パラレル問題」「ですが問題」と呼ばれる。
ドラマ『
古畑任三郎』の『
VSクイズ王』の作中における競技クイズで古畑はこれに引っかかり、1問も解けずに失格となってしまった。
しかしこれにもルールというかお約束があり、
前半部が引っかけだと(訓練された競技者には)見抜けるようになっていなければならない。それを破れば邪道・悪問として批判されてしまう。
例として次の問題
を用いて説明する。
パラレル問題は対比と、読み手のアクセントがあって成立する。即ち……
1. 「日本で一番高い山は富士山ですが/
→「日本」に対比するとすれば「世界」か「他の国」となるが、「他の国の最高峰」を答えさせる問題ならわざわざ「ですが問題」にする必要が無い。そのため「世界一の最高峰」が答えになる。
答え:エベレスト
2. 「日本で一番高い山は富士山ですが/
→「一番」に対比するとすれば「二番以降」となる。そのため「日本で二番目に高い山」が答えになる。
なお賢明なるアニヲタ諸君からは「3番目が答えになる可能性があるだろう」という声が上がりそうだが、その場合だと「日本で一番高い山は富士山、二番目は北岳ですが/のように、読点を入れて一度区切るのがセオリー。
答え:北岳
3. 「日本で一番高い山は富士山ですが/
→「高い」に対比するとすれば「低い」となる。そのため「日本で一番低い山」が答えになる。
答え:日和山
このようにパラレル問題を出す場合は、闇雲に意地悪で作ってはならない。
ちなみに前述の『古畑任三郎』に登場したパラレル問題はかなり意地悪であり、
「『人を見たら泥棒と思え』の反対の意味に当たる諺は『渡る世間に鬼は無し』ですが、『ドングリの背競べ』の逆の意味に当たる諺はなんでしょう?」
答え:掃き溜めに鶴
などという、対比が無くアクセントも無意味な(要は最後まで聞かないと解けない)ものが出題されている。
余談だが、上記のように太文字部分を強調して読む手法は「金竜読み」と呼ばれる
問題が作りにくいためか、パラレル問題が普通に出題されるのは専らクイズバラエティ・パーティ余興の類で、競技クイズにおいては敬遠される傾向が強い。
また、とある年の高校生クイズでは度を越し過ぎるようなパラレル問題が出題されていた事があった。
詳細は「
フライング地獄」にて。
それでは、次がいよいよ最終問題です。
「『アニヲタWiki』において、記事の最後/」ピンポーン
「追記・修正お願いします」
正解!
『アニヲタWiki』において、記事の最後に書くお馴染みの決まり文句は?
答えは追記・修正お願いします、お見事。
- コメント欄のログ化を提案します。 -- 名無しさん (2023-02-11 20:53:06)
- ですがの段追加した人間がいうのもなんだけど、あんまり増やすと「競技クイズ」でよくね?って内容になってくんで、今のタイトルで高評価されるページであり続けるなら抑えた方がいいと思うよ そんなに書きたいなら改めて「競技クイズ」か「パラレル問題」で項目立てればいい -- 名無しさん (2023-02-11 20:56:26)
- ここまでコメントが活発な項目も久々、ネーミングも含めていい項目だぁ・・・ -- 名無しさん (2023-02-11 20:59:16)
- ポロロッカって久米田康治の造語じゃなかったのか… -- 名無しさん (2023-02-11 21:08:14)
- 面白かった、俺も項目名に釣られたわ。 -- 名無しさん (2023-02-12 01:50:43)
- 競技クイズってかるたみたいな概念なんやね。面白いわ。 -- 名無しさん (2023-02-12 02:53:11)
- クイズ経験者だと一発で何の話かわかるタイトルなんだよなぁ(現役)。大会の記録とかを見てると「 -- 名無しさん (2023-02-12 12:28:19)
- 誤送信、「ここで確定してるんか!?いやしてるわ…」みたいなのがあるからクイズの研究は面白い -- 名無しさん (2023-02-12 12:29:28)
- こういう有識者が立てたんだなって分かる&文章が上手い項目って本当面白い。これぞオタク(褒め言葉)って感じがして -- 名無しさん (2023-02-14 18:55:03)
- エクレアはイナまでで確定出来ないか? -- 名無しさん (2023-02-16 16:09:53)
- 要するに百人一首の「むすめふさほせ」 -- 名無しさん (2023-02-16 16:29:57)
- QMAだと逆にパラレル問題が基本だな。文字表示だから共通部分まで一気に出した後、問題文ラストか「ですが~」まで一気に表示させるって事が出来るからまた勝手が違うってのもあるんだろうけど。 -- 名無しさん (2023-02-16 16:32:03)
- 「アマゾン川で/」の場合は文脈というより「このレベルの知識はこの場じゃ出ない」的な予測だろうな 「アマゾン川で乾季と雨季の境に起きる魚の大遡上をトゥピ語で何という?」A.ピラセーマ とかあるし -- 名無しさん (2023-02-17 00:34:52)
- ベタ問例の「どっどど/」の解説、「おい、/」だけで蟹工船は確定されない。「おい、地獄さ~」なら『蟹工船』、「おい、木村さん~」なら樋口一葉の『にごりえ』、「おい、起きろや~」なら水野敬也の『夢をかなえるゾウ』 -- 名無しさん (2023-02-27 12:50:18)
- 江戸むらさきの「クイズ王」というショートコントだとこれをネタにした「夏の『甲子園』「正解」、「夏の 『TUBE』「正解」、「夏の『高嶋ファミリー』「正解」…なんてのがあったな -- 名無しさん (2023-02-27 14:05:12)
- 反対意見がなかったためコメントをログ化しました。 -- (名無しさん) 2023-03-04 14:20:30
- まあでも、競技クイズって物凄い界隈だよなぁ。たとえベタ問でも一般人には馴染みのないモノも結構あるだろうし。学問、スポーツ、サブカル問わず、あらゆるジャンルのとんでもない分量の知識を頭に詰め込んで、やっとスタートラインに立てるかどうかってレベルか。更に、緊張で記憶が飛ばないような強靭なメンタル、読み手の声を聞き取る聴力、そして咄嗟に反応する反射神経も必要と……。バトル物かな? -- (名無しさん) 2023-03-04 17:40:19
- ( ゚д゚ ) -- (名無しさん) 2023-03-18 20:37:59
- ペーパーテストじゃなくて「早押し」である時点で出題者側もこういうのが通用する暗黙のお約束があるって話よね -- (名無しさん) 2023-04-13 18:02:30
- >「他の国の最高峰」を答えさせる問題ならわざわざ「ですが問題」にする必要が無い ってどういうこと?必要ないとか言い出したら世界でも同じに見えるけど 検討すらされてない日本(富士山)→大日本帝国(新高山)とかのがより意味があって綺麗な気もするし -- (名無しさん) 2023-06-14 02:44:02
- 新高山は多分、「現在の」日本で一番大きい山は富士山ですが~、みたいな問題になるんじゃないかな……パラレルはひっかけではないって前提だと、「日本一」は確定ポイントにつながるものでなければならない。日本人にして地球人に向けたクイズである以上「世界一」は「オーストラリア一」より可能性高いが、「オーストラリア一」は「アメリカ一」や「ヨーロッパ一」、何なら「グリーンランド一」等よりありえると考える根拠がない。早押しの根拠に資するものがないと結局後半部分まで問題聞かなきゃならないから前半部分は「必要ない」。もし必要があるちゃんとした良問だとしたら、逆説的に「世界一」以外はありえない(裏テーマに「オーストラリア推し」みたいのが垣間見える場合はちょっと考えなければならない)。 -- (名無しさん) 2023-06-14 20:18:03
- 早押しクイズってのは「答え」を推測するゲームじゃなくて「問題文」を推測するゲームなんだよな。だから出題者側からは推測可能な問題文にしておかないといけないわけで、意地悪なひっかけはナンセンスだも言われてる -- (名無しさん) 2023-06-16 14:47:55
- ↑↑他の国の最高峰を問うとしたら「標高○○○○mと△△△△の最高峰となる山は何?」 -- (名無しさん) 2023-09-09 18:50:13
- となるから、日本と他の国の対比問題にはなりえない -- (名無しさん) 2023-09-09 18:50:50
- ちなみにフランスゴデイナという競走馬がいたりする。どう考えてもエクレアのスラッシュだが馬主はクイズプレイヤー -- (名無しさん) 2023-09-10 01:03:51
- 競技クイズがただの知識テストじゃなくて、出題者と回答者、あるいは回答者同士の駆け引きだっていう好例なんだな。陸上で例えるなら決められた距離を走り切る速さを競うタイムトライアルと、ライバル相手に抜くか抜かれるかの駆け引きも重要になるレースの違いみたいな感じかな。 -- (名無しさん) 2024-05-19 01:27:07
- やっぱり早押しは大変なので、点数は下がるけれど遅くても解答の機会があるQMAの方が楽だな。 -- (名無しさん) 2024-09-25 10:22:07
- 「火をし」の元ネタがわからない。 -- (名無しさん) 2024-12-24 15:38:34
- 火を神聖視することから、拝火教という別名で呼ばれる〜……A.ゾロアスター教 -- (名無しさん) 2024-12-25 00:17:06
- 「○○は××で・す・が~」構文は制限なければ無限に続けられるからな。関連性がなければクイズの意味がなくなっちゃう。 -- (名無しさん) 2024-12-25 07:11:36
最終更新:2025年04月12日 00:51