テトロドトキシン/フグ毒

登録日:2012/04/18(水) 22:55:59
更新日:2025/04/12 Sat 13:23:23
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テトロドトキシン/フグ毒(TTX)とは、その名の通りトラフグやマフグに含まれる猛毒物質である。
分類としては神経毒になる。
語源はテトラオドン(四つ歯という意味で、フグは四枚の歯板を有している)とトキシン()。



■概要

餌に含まれる真性細菌が出した毒がフグの体内にどんどん蓄積されて、
さらに濃縮されて生まれてきたと考えられているアルカロイド(天然化合物)に属する猛毒。

以前は脊椎動物の血液脳関門は通過出来ないとされていたが、天然のトラフグの脳内から検出された事で誤りだった事が判明している。

ちなみにフグはTTXの摂取でドーパミン放出を促す受容体の発現が増加するらしく、
一種のドラッグとして作用してるのではないかとも言われている(実際毒なしのフグは神経質になりがちらしい)。
また松村健道氏によれば、クサフグのメスは産卵時に放出させたテトロドトキシンでオスを引き寄せていて、性フェロモンとしても機能させているらしい。
一部のフグ(マフグやクサフグ等)は天敵対策として膨らむと同時に皮膚から毒を分泌するので、混泳した状態で刺激を与えると他の魚を死なせてしまう
(※膨らまないハコフグも刺激やストレスを与えると皮膚から毒を分泌するが、成分はテトロドトキシンではなくパフトキシンである)。
トラフグ属は稚魚の頃だと体表面に親から受け継いだテトロドトキシンを宿しており、体格を上回る他の魚から捕食されることを防いでいる。
また免疫にも影響を及ぼすらしく、トラフグへ意図的にテトロドトキシン添加飼料を与えて飼育したところ、免疫機能の活性化が確認されたという。
テトロドトキシンを与えない安全なフグを養殖しようとする試みもあったが、こうした性質の他に異常に攻撃性を増すなどしたため失敗している。

極めて安定した物質であり、300℃以上の熱に晒されても無毒化せず、自然分解させる事も極めて困難。


■致死量

濃度で致死量が変わるのもあって、一般的な致死量ではなくマウスユニット(MU)という単位で計られる。
これは1グラムで体重20gのマウス何匹の致死量に相当するかという単位であり、100MU/gなら1グラムでマウス100匹が死ぬ。
体重60kgの人間なら10000MUで致命的らしいので、上記の例なら100gも摂取すればアウトとなる。
まあ種類によっては5000MU/g(致死量2g)とか叩きだすのだが。

分かりやすく例えると、フグの内臓換算でスプーン三分の一くらいで、液体なら2~3ミリリットル。
同量の青酸カリの850倍以上の毒性となる。

人間が摂取して健康被害の発生しない単位は、10MU/g以下とされている。


■フグ毒を持つ生物

主にトラフグには内臓に、マフグには皮の部分と内臓に含まれているが、
個体差・種族差があるのでフグの体内でどのように蓄積されるかなどはまだまだ研究段階なんだとか。
また昨今は環境の変化の影響でフグの雑種も出てきており、それらはまた毒の位置が変わっているという。

他にサバフグは持っている種(ドクサバフグら)と持っていない種(シロサバフグやクロサバフグやカナフグ)が混在しており、
ドクサバフグは日本近海でも確認されることから見極めは重要だが、混入例や中毒による死亡事故も発生している。
ただし本来は無毒の種類でも、海域や環境によって有毒化している例もあるので、素人による判断は危険である。
食用とされるコモンフグやヒガンフグも、越喜来湾・釜石湾・雄勝湾で漁獲された物*1は可食部位の筋肉も強毒性を示すため、流通が禁止されている。
かつて食用とされたナシフグも中毒例が相次いだことから、長崎県の有明海と橘湾、香川県岡山県の瀬戸内海域で採れて処理された物に制限されている。
ハリセンボンは卵巣や精巣のみ持っていると信じられてきたが、過去の調査ではテトロドトキシンが検出されておらず真偽不明のままである。
テトロドトキシン以外の毒を持つフグもいて、麻痺性貝毒/PSP(ホシフグ・淡水フグ・汽水フグ)、パリトキシン/PTX(ハコフグ・淡水フグ)、パフトキシン/オストラキトキシン(ハコフグ)が検出されている。
ちなみにパフトキシンのパフは、ハコフグのハワイ語が語源で、クロハコフグから初めて発見された。

フグ以外ではヒョウモンダコも、これと同じ毒を持っている。
しかもこいつの場合、咬みついて毒を血中に直接注入するのでフグより質が悪く、最悪1時間前後でに至る。
ちなみに2018年9月の日本水産学会で唾液どころか筋肉や体表にまで毒を含んでいるという報告がされており、触ることすら控えておきたい。

他にはオオサンショウウオやイモリなどの両生類の一部、ツムギハゼ、スベスベマンジュウガニ、ヒモムシ、キンシバイなどにも含まれる。
こうした生物は食べる機会も無ければ毒を注入することもないが、体液などを口に入れないようにはしたい。


■作用・症状

フグ毒は体内に吸収されると神経細胞に作用しその働きを阻害する。
具体的には摂取から約30分後に嘔吐・口唇や指先の痺れに始まり、やがて各種神経の麻痺による歩行困難、言語障害、呼吸麻痺などを引き起こし死に至る
死ぬ場合食後1時間が最も多く、通常長くとも6時間以内である。
恐ろしいことにこの時意識は比較的明瞭なのが特徴的であり、
つまり頭の中が割とはっきりしている中、神経が冒され死ぬまで苦しみを味わわねばならない、ということだ


■解毒方法

解毒薬はない。
文字通り、中毒を起こしたらこれを飲ませればよい、というモノが存在しない。一人でいるときに中毒に気づいたら、助かる方法はない。
トリカブトの主要な毒成分であるアコニチンなどの神経を暴走させる毒物とは作用が拮抗しあい、
それぞれの症状が無効化されるのだが、テトロドトキシンのほうが無毒化されるまでの代謝速度が速いため、その内アコニチンによって結局死ぬ
じゃあテトロドトキシンを追加してアコニチンと一緒に無毒化するよう調整しようなんてトチ狂った真似はしないように。
因みにこれを利用してアリバイをでっち上げるという小説のような殺人事件が実際にあったが、自宅でフグとトリカブトが見つかり、毒を盛った状況証拠で捕まったという。

ただし、あくまで麻痺毒であるためすぐに人工呼吸などで外部から酸素を送り続ければ、いずれ排出・代謝されて命を繋ぐことができる。
もちろんすぐにフグ毒と気付いて素早く適切に処置できた場合の話であり、そんなご都合主義レベルの幸運はそうそう無いが。

古来より民間療法に「フグに当たったら、砂に首まで埋める」と言うものがある。
無論そんなことをやってもフグ毒が身体から染み出して回復するわけではない。
フグ毒による死亡が呼吸麻痺によって引き起こされることが多いことから生まれた療法である。

その理屈は身体を砂に埋めて継続的に胸部圧迫をすることで横隔膜のみで細々と呼吸が継続できるようになり、
フグ毒が抜けるまで呼吸を維持できるようにするというもの。無論死亡する場合も多いが、無処置よりは明らかに生還率が上がる。
人工呼吸器が発明されるまでは理に適った手段であったことは間違いない。

変わった例としては、ウンコを食べて助かった例がある。これはウンコと同時にフグを吐き出すことで毒が体外に排出されたことで一命を取り留めたものである。


■中毒事故

毒キノコによる食中毒よりも遥かに件数が多い。まあ毒の効き目のエグさはあっちのが数段上だけど

ほとんどは素人が自分で釣ったフグをさばいて食したあとにあたってしまうケース。素人がなまじ調理をするなど、自殺行為に等しい。

私的な範疇で料理する分には(法的な)問題はないが、業務として客に提供する場合は「ふぐ調理師」の免許が必要である。
この免許は国家資格ではなく、各都道府県ごとに名称や条件は異なるが、これを持たない人間は客にふぐ料理を提供してはいけないという業務独占資格である事は共通である。
とはいえ、人間の手で料理している以上、免許を持つフグ料理店での調理ミスが極めてごくまれに起こる。

これに関連して、未処理のふぐを一般消費者に提供する事は食品衛生法第6条第2号で禁止されている。

……他方、裏メニューとして肝を提供する店も各地で存在するらしく、そういったニュースが時折流れる。
これは昔からある調理法のひとつで、僅かに毒を残して「舌の痺れ」を楽しむというもの。半世紀以上前のことだが、かの八代目坂東三津五郎丈はこれがもとで亡くなった。
現在では当然上記の法律により違法なので要求したり、提供したりしないように。死んでも・人殺しになって刑務所生活&莫大な慰謝料求められても知らないよ。

フグを扱う店には、調理して取り出した内臓は毒物なので、盗難による悪用防止のために鍵付きの箱に保管しなければならない法律があり、その内臓は専門の業者によって回収・処理される。
箱の名称は『フグ棺』。
フグの内臓を法律で合法的に廃棄できるのはこの方法だけで、ただ普通にゴミ袋で捨てただけでは罪になり、厳しい処分が与えられる。
特に東京都では非常に厳しく

  • ステンレス製の付き容器に保管
  • それを築地の除毒場で焼却
  • それを苛性ソーダで中和
  • それを地下に埋める

までしないといけない。


■2次元での扱い

ミステリーなどではお馴染み。
昔は、人間がフグ毒を摂取しても体内で分解されてしまうので、よく暗殺などに使われたらしいが、現在ではすぐに分かる。

名探偵コナン

ミステリー漫画の代表格。
第27巻収録『バトルゲームの罠』で初登場したジョディ・サンテミリオンがこの毒について簡単な解説を行っている。
なお、ご長寿作品にもかかわらず、テトロドトキシンを犯行に使用した事件は2023年現在でも意外なことに同話のみである*2

本編以外では学習漫画のとある話にて、賄賂を要求して断られると悪評を書いて店の評判を落とす悪徳ブロガーに恋人が自殺に追い込まれた料理人の男が、料理フェスの会場でブロガーを殺すため附子(トリカブトから作られる毒薬)とフグ屋から盗んだフグのテトロドトキシンの混合物を料理に混入。
テトロドトキシンとトリカブトの拮抗作用でアリバイを誤魔化しつつ、フグ屋に罪を擦り付けようとした*3がコナンに見破られてお縄についた。

因みに悪徳ブロガーは一命を取り留めたが、今回の件で露骨な悪評を書くことは辞めたらしい。

ドラえもん

あるエピソードでジャイアンドラえもんにフグ毒扱いされているのも有名。
これはジャイアンが自分の破滅的な音痴っぷりに気付かず歌えてる理由をドラえもんが「フグが自分の毒で死ぬか!?」と例えたからだが、
フグは外部摂取により自分の毒で死ぬ事がある(後述)。
とはいえ、ジャイアンもとある道具で自分自身の歌を聞いた時には「酷い歌」と評していたので意図されているかどうかは不明だが的確な例えと言えるだろう。

フレッシュプリキュア!

シフォンがこいつを摂取すると、もがき苦しんで死ぬという、とんでもない記述がなされた絵本が出版されていた。
多分、プリキュアシリーズの全ての妖精があたったら極めて危険だと思うのだが……。ちなみに項目を参照してほしいが他にもトリカブト等についても書かれている。

どうでも良いがフグの中で一番毒が弱い部位でも20~50MU/g(つまり、1gでマウス20~50匹を殺害できる)、
最も毒が強い種類の最も危険な部位なら5000MU/g(1gでマウス5000匹分の致死量に相当する)となる。
体の小さいプリキュアの妖精ならば最も弱い部位でも重篤になりうるのはいうまでもない。
ちなみに体重60kgの人間なら、10000MU分の毒を摂取すれば致命的だとされる。

尚、もがき苦しむという描写は神経の働きを阻害されるというフグ中毒の症状を忠実に再現していると言えよう。
また、神経毒であるフグ毒が作用するということは、妖精達は我々と同じような神経の構造をしている可能性がある。
もしかしたら、彼らは生物学的に我々と繋がりのある存在なのかも知れない。

○ザ・シェフ

15巻に「フグの肝臓を食べさせてほしい」と無茶ぶりをする客との攻防が描かれている。  

魁!!男塾

男塾名物「大海島巡り」の担当教官・三海魔王の一人である鬼蛸入道はお手製のフグ料理(無免許)を振る舞うのが好き。
案の定、と言うべきかその料理を食べた一号生の皆様は漏れなくフグ毒で一晩中苦しむ事になってしまった。恐らくはでさえも
それでも一人の死者も出ていない(推定)あたりは流石は男塾の塾生である。

ドラゴンボール(DRAGON BALL)

ランチ(ドラゴンボール)が市場で買ってきたフグを毒があると知らず調理してしまい、ランチ自身と亀仙人クリリンが3日間寝込んでしまったことがある。
それで一人の死者も出ていないのは超人の亀仙人とクリリンと半分ギャグ補正住人のランチさんのなせる業であろう。

かりあげクン

木村課長がかりあげをフグ料理屋に連れて行ったところ、なんとかりあげがフグ中毒になってしまう。
…といっても搬送されたわけではなく、「フグ刺しをくれ!フグ刺しをくれ!」と叫びながらかりあげが登場。依存症を意味する中毒にかかった、というもので、それを見た課長は「お前いい加減にしろよ」と苦言を呈していた(勿論わざとであり、大量に食べてそんな症状が出ることはない)。

ニンジャスレイヤー

ネオサイタマ市民にもフグはサシミで親しまれている。
特段登場が多い訳ではないのだが、第四部のエピソード「エリミネイト・アナイアレイター」の序盤にて「フグの毒はニンジャをも殺す」と、さらっととんでもない記述が現れた。
モータルにとっては紛れもない脅威、人智を超えた身体能力や超常の異能を持つあのニンジャでさえフグ毒を食らえば死ぬという衝撃の事実が明らかにされたのだ。
一応、ニンジャといえど毒が効かない訳ではないのだが、そこら辺のサンシタであっても毒物・薬物への耐性はモータルを上回る。自力で解毒する描写も第四部に至るまでに多数登場した。
その上でフグ毒がニンジャにとっても致死毒になると断言され、さりげないニンジャ真実の登場にヘッズ達も騒然となった。
ちなみに毒を持たないバイオフグが開発されたこともあったようだが、ネオサイタマ市民の舌には合わなかった模様。

パタリロ!

意地汚さに定評のある主人公・パタリロ・ド・マリネール8世が釣ったトラフグ数十匹を丸かじりし、1万人以上の致死量分のフグ毒を摂取してしまったことがある。
驚異的な生命力により数時間の間ウンウン唸りながらも生存していた(じゃあ上記の通り救命すれば助かるのでは?というのは禁句)が、いよいよ危篤になったところで宇宙人の薬売りによって解毒してもらった。
この経験のためか、後に一度死んで生き返る際の自殺手段としてフグ毒を使ったこともある。

HITMAN

要人暗殺を題材とするステルスアクションゲームシリーズ「HITMAN」においては、日本人を暗殺するステージで フグ毒を使った暗殺 が可能。勘違いニッポン全開な描写も相まって、日本人ファンからはよくネタにされる。

初登場は「HITMAN 2: Sirent Assassin」から。ヤクザのハヤモトjrを暗殺する手段の一つとして彼に提供されるフグ料理に毒を盛ることができ、成功するとシュールな演技と共にハヤモトが倒れて死亡する。
その後もリブート作「HITMAN」のガマ病院(北海道)ステージでも再登場し、ユキ・ヤマザキに 主人公の47自ら握った毒入りフグ寿司を提供可能 。「暗殺以外なんでもできる男」と呼ばれる所以の一つとなった。
ちなみにこのフグ毒、北海道ステージのもう一人のターゲットであるエリック・ソーダースの暗殺にも使える。
こちらは料理に毒を盛るのではなく「医療用幹細胞をフグ毒で汚染して投与させる」というエグい殺し方だが。

○アメコミ

海外でもフグが毒を持つ魚だということは知れ渡っており、「そんなフグをわざわざ食べて中毒死する日本人」がネタにされることも。
アメコミにおいてもそれは変わらず、日本絡みのエピソードでフグ毒が使用されることがある。
日本でも知名度の高いウルヴァリンの妻もフグ毒を盛られて命を落としている。

仮面ライダーストロンガー

奇械人トラフグンはテトロドトキシンを含むカプセルを体内で生成する能力を持ち、これを学校給食に混入して子供達を殺そうとしていた。
このテトロドトキシン、 トラフグのような形状をした毒物 で学者が顕微鏡で除くと フグの絵にしか見えない という特異な性質を持つ上に、現実ではまだ解毒剤は作れないのにトラフグンの毒カプセルを解析して解毒剤を作ることに成功している。
改造人間を作ったりできる世界なので一般の研究所のレベルも高いのかもしれない。*4
なおこのトラフグン、テトロドトキシン入りカプセル生成以外の攻撃手段に乏しく、*5秘密を知った一般人のおじさんを殺すのに、生成したカプセルを無理矢理に 口移しで飲ませて 殺そうとした。


■余談

  • 日本テレビの取材によると、フグの漁師の中にトラフグの毒がたっぷり含まれた肝を食したことのある無謀なチャレンジャーがいたらしい。
    その味は「トロのような味できわめて美味であった」と答えたらしい。
    毒の量は個体によって大きなばらつきがあり、市場で購入したトラフグを調査したところ1/3は無毒だったという報告がされている。
    とはいえ当たりのフグであれば一切れくらいは……なんて思ってはいけない。
    毒があろうとなかろうと、生のフグの内臓何ぞ食べてはいけません
  • 理論上テトロドトキシンには味はなく刺激もないと言われる(なにしろ麻痺毒だし)。人体実験が行えるものではないので確かなことは言えないが、「ピリピリする位が美味しい」などという話を真に受けて*6感覚を頼りに見分けよう、などとは考えない方が賢明。
    なお人間にとっては無味ではあるが、肉食魚はテトロドトキシンを味覚で感知していて、有毒フグを捕食しても吐き出してしまう。吐き出せずに相討ちとなってしまう例もあるが。
  • フグ自身はフグ毒を作らず、実際に毒の無い餌により無毒のフグの養殖が行われている。
    もしかしたらフグの肝を飲食店や一般家庭で味わえる時が来るかもしれない。
    ちなみにその味わいは、試食した人によれば「クリーミーでトロトロの絶品」だったらしい。
    ただし、無毒のフグについては科学的に完全な解明がなされているわけではないため、厚労省などは無毒扱いでの販売を認めていない。
    なお腸内にTTX産生菌が存在している例もあり、無毒養殖でも腸管だけは食用に適していない。
  • フグの卵巣を塩と糠床に三年間漬け込み、毒を安全レベルまで抜ききった伝統的加工食品「ふぐの子糠漬け」が石川県で売られている。こちらは合法的に食べられます。旨味の塊だが猛烈に塩辛いので、薄くスライスしてご飯や日本酒のお供にする。
    ただし、当然ながらふぐの調理師免許を持つ業者にしか製造は許されておらず、更に専門機関で毒性検査を通してから出荷されているとのことで、一般人が真似するのは自殺行為である。
    塩漬けにすることで毒の8割が溶け出し、残った毒も糠漬けでほとんど溶け出して、含有量が食べて大丈夫な基準を満たした少量になる。だが、毒素が抜ける詳しいメカニズムは解明されていない。
    研究の結果、微生物が関与している可能性は低いとされている。
    糠漬けの後に一ヶ月酒粕に漬けた「ふぐの子粕漬け」もある。こちらは少しまろやかな味わい。
  • フグ自身は胃に毒を分解する機能があるらしく、テトロドトキシンを摂取しても死なない。
    ……が、あくまでも「他の生物より耐性がある」というレベルであって、ストレスを感じるとテトロドトキシンをたくさん出してしまうか分解機能が低下するのか、
    自分の毒で死んでしまうこともある。
    致死量はMU/20で、クサフグが700~750、ヒガンフグが500~550、クロサバフグが19~20、シロサバフグが18、ヨリトフグが15で、低めのヨリトフグでも他魚の10倍程度は耐えられる。
    ただしハコフグやカワハギ(※フグ目カワハギ科)のように耐性が著しく低く、フグ目以外の魚と同等な種類も存在する。
  • 若いイルカはフグを適当に痛めつけ、僅かに漏れ出したTTXが混じった海水を口に含むことでトランス状態になる遊びをするらしい。なにそれ恐い。
  • 昭和天皇が御巡幸で下関にお出ましになられた折、名物のフグを楽しみにされていたが「万が一のことがあってはいけない」と侍従たちに止められ絶対に口にさせてもらえなかった。
    しかし、侍従たちはなんと陛下の御前でフグに舌鼓をうつという愚行に及び、陛下はその様子をご覧になり「フグには毒があるのだぞ……」と恨めしそうに仰せになったとか。そして、終生召し上がることがかなわないまま崩御されたのだった……。
  • 分子の構造が非常に特殊で、古くから有機合成の分野で注目を集めていた。
    分子構造が解析決定されたのは1964年、立体的な配置まで再現した不斉合成が成し遂げられたのは2003年のことである。
    テトロドトキシンに限らず生物毒は変わった骨格をもつものが多く、抗生物質と並んでよく有機合成のターゲットにされている。
  • 2018年1月に、愛知県のある地域のスーパーでヨリトフグの肝がパック詰めされ売られているという事件が通報により発覚した。
    ヨリトフグの可食部位は肉、皮、精巣(白子)部分であり、厚生労働省の定義では肝は毒を含む部位であるため流通は禁じられている。
    しかし地元では古くから肝も全部ぶつ切りにして味噌汁などにして食すなどされてきており、
    このスーパーも過去十数年の間地元客の求めに応えて販売しており、地元消費者からの苦情や健康被害という声も聞かれなかった。ある意味地域ぐるみの犯行だったと言える。
    事件発覚後このスーパーに家宅捜索が入り、経営者は「今後フグの販売はしない」と語っている。
  • 沖縄県名物のアバサー汁のアバサーは沖縄で漁獲できるハリセンボン科の総称で、ハリセンボン、ヒトヅラハリセンボン、ネズミフグ、イシガキフグが使用されている。アバサー汁に欠かせない肝臓には、テトロドトキシンが含有されていないことが調査で証明されている。
  • ちりめんじゃこやしらすでフグの稚魚が混入する例が過去に何度か発生している。形態的特徴が認められる前の稚魚であるため外見からの鑑別は困難で、フグ種の特定には遺伝子解析による魚種鑑別法が用いられる。2012年7月に大阪府内の水産卸業者から調査を依頼された事例は、混入したフグ種がナシフグと特定されていて、テトロドトキシンについては3MU/gが検出された。同事例では健康被害が発生する単位では無かったものの、稚魚を除去した上での販売が指導されている。ちなみに、日立造船が平成26年にフグの稚魚をほぼ確実に除去する異物選別装置の実用化を発表している。



追記・修正は、ふぐ毒に当たらないようにして願います。

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最終更新:2025年04月12日 13:23

*1 ここに挙げた場所以外で採れた場合でも中毒死例は起きており、他所が必ずしも安全であることを意味している訳では無い。

*2 『コナン』で使われる毒物はヒ素や青酸カリが多い。

*3 このフグ屋の料理人も過去ブロガーに賄賂を要求されたが拒否して店の悪評を書かれており、動機はあると考えられた

*4 正確には作中で「テトロドトキシンのような薬物」と分析した化学者が話しているため、トラフグンがテトロドトキシンを改良した化学物質なのかもしれない。

*5 一応毒トゲを飛ばす能力はあるのだが連発できない模様。

*6 おそらく薬味か何かの誤認という説が有力。