怪物くん(テレビドラマ)

登録日:2023/05/07 Sun 17:00:00
更新日:2025/01/11 Sat 10:10:02
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愉快、痛快、奇々怪々!!




本項では、藤子不二雄A氏原作の「怪物くん」のテレビドラマ作品について解説する。



【概要】

2010年4月17日から6月12日まで日本テレビ系の「土曜ドラマ」枠にて放送された。

過去2度アニメ化もされた怪物くんの初実写化であり、しかも主役である怪物くんを務めるのはのリーダーの大野智であるということに二重の意味で驚きが広がった。
当然ながら批判が非常に多く、特に小学生くらいの子供である怪物くんを演じるのはいい歳した大人の大野(当時29歳)であるということが槍玉にあげられた。
しかし蓋を開けてみると、原作と相違点は多いものの大人から子供まで引き込まれるストーリーや怒涛の展開などのおかげで良作認定する人が多く結果的にヒット作となり、翌年には映画化も果たしている。懸念視されたキャスト陣も「怪物くんそのもの」と大好評であり、またお供3人組も原作そのものと好評であった。

なお最終話放送の2週間後には特別番組の「もう帰って来たよ!怪物くん全て新作スペシャル」が放送されており、原作にも登場した怪子ちゃんがここで初登場するほか、原作者の藤子不二雄A先生がカメオ出演を果たした。

藤子不二雄A先生は実写化に快く了承したものの、最初大野が怪物くん役を演じると聞き「どう考えてもイメージが結びつかなかった」と驚きの声を上げていた。
その後放送が開始されると「見事に大野君が自分の怪物くんをつくりあげてくれた!」、「テレビにへばりついて見ている!」と好意的なコメントを残している。
その後大野智の似顔絵を描いたり、嵐の活動休止の時には怪物くんの絵を描いてエールを送るなど嵐自体にも好意を寄せている。

この作品のキャッチコピー「愉快、痛快、奇々怪々!!」というワードは60年代版アニメ怪物くんのOP及びED曲である「おれは怪物くんだ」のサビ部分のフレーズから引用されている。

脚本は後に『仮面ライダーエグゼイド』『仮面ライダーギーツ』を担当することとなる高橋悠也氏。


【音楽】

主題歌は嵐の「Monster」
曲名は当然ながら怪物くんから着想を得ており、MVもそれに合わせたような映像に仕上がっている。
そしてこの曲が発売された2010年の嵐の紅白歌唱曲に選ばれた。
挿入歌には80年代版のアニメOPテーマである「ユカイツーカイ怪物くん」が採用。
こちらは本家で怪物くん役の野沢雅子が歌っていたように、同じく怪物くん役の大野智が歌っており、曲調も現代風にアレンジしている。
ちなみに対となるEDテーマの「おれたちゃ怪物三人組よ」は劇場版へと持ち越されることとなる。

【あらすじ】

この世界には怪物界・人間界・悪魔界の3つの世界がある。
時を遡ること百年。長きに渡り続いた“怪物界VS悪魔界”の戦いは、怪物大王の一撃により終止符を打たれたかにみえた……

それから長い月日が経ったある日のこと、怪物界のプリンス、怪物くんの王位継承式が行われた。
しかしこの怪物くんは大変なワガママでこの厳かな日にも相変わらずワガママっぷりを見せつけており、周りに迷惑をかけていた。
一方、ドラキュラ・オオカミ男・フランケンの3人は怪物くんのお供に任命されたことを誇りに思い、それぞれの故郷で盛大なパーティーなどで一族皆祝っていた。
そしていよいよ即位の儀に取り掛かろうとした瞬間、怪物くんの父親の怪物大王からそのワガママっぷりを指摘され、「大王になる資格はない」と新たな大王になることを保留にされたばかりか、いきなり人間界へと落とされてしまう。お供3人とともに。

人間界へ転移させられた怪物くん達は人間のような姿にさせられてしまう。それどころか怪物くんの持つ念力が何故か使えなくなってしまったのである。
呆気に取られている怪物くん達、すると市川ヒロシという名の小学生の男の子と偶然出会い……?

一方、悪魔界ではデモリーナ率いる悪魔族が、欲望渦巻く人間界から欲望を集め、プリンス・デモキンの復活を企むのであった。
これも全てデモキンによる怪物界や人間界の支配を達成させるため。
果たして怪物くんはデモキン達の野望を食い止めることが出来るのか!?
そして人間界での行いを怪物大王に認められ、怪物ランドに戻り新たな大王になることができるのか!?


【登場人物】

怪物界

  • 怪物くん
演:大野智
怪物界の長である怪物大王の息子で怪物界のプリンス。
人間界での仮の名前は「怪物 太郎」*1
念力と呼ばれる不思議な力を持っており、手を伸ばしたり顔を変えたりすることができる。
次期怪物大王という身分であり、相当な力の持ち主。にもかかわらず、性格はかなりのワガママで世間知らずのお坊ちゃんであり、1話の時点で料理が不味いとひっくり返し、お供の献上品は気に食わないと炎で燃やしてしまうなどやりたい放題。
それを長年見てきた怪物大王から次期大王の器には相応しくないと判断されたため、人間界に落とされてしまっただけでなく、人間らしい姿に変えられたうえに、念力を封印する力を持つ帽子を被っているため念力が使えなくなってしまう。
しかし魔王石が近くにある時のみ念力を自由に使うことができる。
人間界で善行を積めば元に戻すと約束されたが、人間界を下に見ていたため態度は相変わらずだった。
しかし、市川ヒロシとその姉ウタコとの交流で徐々に態度を軟化させていくようになる。
そんな中悪魔界のデモキン達による怪物界、人間界の支配を成り行きで知りその阻止の為お供達と共に身を投じるのである。


  • ドラキュラ/オオカミ男/フランケン
演:八嶋智人/上島竜兵(ダチョウ倶楽部)/チェ・ホンマン
怪物くんのお供である3人組。
原作通りドラキュラは「~ザマス」、オオカミ男は「~ガンス」、フランケンは「フンガー」とそれぞれ特徴的な口癖を持つ。
人間界での仮の名前はドラキュラは「ドラ木 ユラ」、オオカミ男は「大 カミ男」、フランケンは「フラン ケン」である*2
それぞれの種族から選抜されお供になることができたので種族内では次期族長候補のエリートだったのだが、怪物くんの道連れ的に人間界に落とされたうえに人間らしい姿に変えられてしまう。
怪物くんの人間界でのサポート役及び育成係でどうしても必要な存在であるとはいえ、上記のことを一切知らされてないので一連の件の最大の被害者であるといっていいだろう。特にオオカミ男には可愛い盛りの娘のモネがいるというのに……
とはいえ彼らは決して腐らずワガママ放題の怪物くんのサポートを懸命に行う。
そして彼らもまたデモキン達との戦いに身を投じるようになる。


  • 怪物大王
演:鹿賀丈史
怪物界を統べる大王で怪物くんの父親。
息子のワガママっぷりに前々から手を焼いており、その改善のために我が子を千尋の谷に落とすかのごとく怪物くんを人間界へと落とし、それどころか念力を使えないよう念力を封印する帽子を被せてある。
6話にて息子の様子を直接見るために人間に化け人間界へ移動し、怪物くんにバレないようこっそりと様子を見ていたが、怪物くんの「子供を守るなんてわかんねえもん。パパに守ってもらったことなんてないし、人間界に落としたままほったらかしじゃねえか。親ってなんなんだよ!」の言葉に大きなショックを受けキチンと息子のことを見てやれなかったことに後悔する。
その後お供3人にこっそり正体を明かし、息子を王にするための教育を優先させたために愛情を持ってみてやれなかった、息子が人の心をわからないのは自分のせいと深く謝罪するのであった。
なお、この時にこっそりとヒロシの体内にあった魔王石を不思議な力で回収した。


  • 爺や
演:半海一晃
怪物大王に仕える執事であり人間界と怪物ランドを繋ぐゲートの門番係も担当している。怪物大王からの言いつけをキチンと伝えるなど忠実に役目を果たしているが、何らかの役に立つと怪物大王にはバレないようにこっそりと怪物くんに魔王石を渡すなど甘い一面がある。
時折怪物くんの良き相談役にもなっている。


  • 怪物くんの執事
演:松本潤(嵐)
最終話のみに登場。
嵐メンバー繋がりでまさかのカメオ出演である。
ちなみに耳が尖っている以外は人間そのものといっても違和感がない。
怪物くん達にカレーを振舞った。


  • モネ
演:澤田萌音(レギュラー版)/石井萌々果(スペシャル版)
オオカミ男の溺愛する一人娘のオオカミ少女。
まだまだ父親が恋しく、人間界に離れて暮らすオオカミ男からの手紙を受け取ってからはお父さんに会いたいといつも泣いていた。
そこでオオカミ男の誕生日という特別な日に人間界に住むオオカミ男へ会いに行くこととなった。


  • 怪子ちゃん
演:ベッキー
スペシャル版のみに登場。
怪物くんの許嫁で怪物くんの事が大好き。
しかし嫉妬深い性格で、怪物くんの「恋をしている」と書かれた手紙を受け取ったことがキッカケで激しく怒りだし、そのまま人間界にやってくる。
そして怪物くんが恋をしている相手だと思い込みウタコに突っかかってしまい、ヒロシの提案でどっちが怪物くんのことを知ってるのかのクイズでウタコと対決するが惨敗。
しかし怪物くんがウタコのことを恋しているというのは自分の勘違いだったということに気付いたため、安心して怪物界へと帰った。


人間界

  • 市川ヒロシ
演:濱田龍臣
人間界側の主人公的存在となる小学生の男の子。
両親は既に亡くしており、かなり年の離れた姉と2人だけでアパートの一室で暮らしている。
かなり気弱な性格で友達がおらず、気を引くために嘘をついてしまうことがよくあった。
しかし怪物くんと出会い彼らと友達になることができ、見栄のための嘘をつくことも徐々に無くなっていった。
怪物くんが1話で捨てた魔王石を偶然拾いいつもポケットに入れて持っているので、結果的に怪物くんに念力を出す手助けをしている。
そのため戦闘能力は全く無いものの、怪物くんの念力を出すためのサポート係となっている。
だがその魔王石がきっかけで彼もまた悪魔界の陰謀に巻き込まれることになる。


  • 市川ウタコ
演:川島海荷
ヒロシの姉。原作では歌子表記である。
16歳の高校生だがヒロシの父親代わり、母親代わりとしてバイトをしながら彼を養っている。
そのため友達との付き合いも我慢しなければいけない時もあったが、それでヒロシを疎ましく思ったことはない。
フランケンに惚れられているが彼女はフランケンにはその気がないようで、結果的にフランケンが家出するキッカケを作ってしまった。


  • お巡りさん
演:三宅弘城
ヒロシの住む街でいつもパトロールをしている警察官。
何かと怪物くん達のエンカウント率が高く、人間界のことを全く知らない怪物くん達がなにか騒動を起こすとすぐに逮捕をし牢屋に入れてしまうが、相手に全く悪気がないと分かればあっさりと釈放する。
この作品随一のコメディリリーフ。


  • 高杉よし江
6話から登場した若き女性。
ヒロシ姉弟の住むアパートの部屋の隣の部屋に越してきた。
7話から登場した謎の青年、正義くんをしばらくの間自分の部屋に住まわせることにした。


  • 正義くん
7話から登場した背の高い青年。
家出したフランケンがチンピラにつるまれてるところを助けた。
しかし彼には記憶が記憶が全くなく名前すらも覚えてないので、フランケンを助けた正義感のある人という理由で正義くんと怪物くんから名付けられた。
そして怪物くんから人間界のアレコレ、人間を困らせる悪魔族が存在していることを教えてもらい、特に悪魔族の説明を聞くと「許せない」と悪魔族に対する嫌悪感を露わにしていた。
記憶が戻らない間はよし江の部屋で一緒に過ごすこととなった。
介抱してくれてるよし江のことを「優しい人、ずっと一緒にいたい」と告げるなど彼女のことを完全に信頼している。


悪魔界

  • デモキン
演:松岡昌宏(TOKIO
悪魔界のプリンス。原作にも登場したが見た目だけでなく中身も全く違う。
100年前の怪物界との戦いで怪物大王の一撃により長い眠りについており、部下であるデモリーナ、アックマー、Dr.マリスが彼を目覚めさせるために復活のエネルギーとなる人間の欲望を集めている。
怪物界、人間界を支配しようとする絶対的な悪でありまさしく悪魔界のプリンスという名に相応しい。


  • デモリーナ
演:稲森いずみ
デモキンの部下の1人で紅一点のドラマオリジナルキャラクター。しなる鞭を得物としている。
デモキン復活までは彼女が事実上のリーダーを務めており、デモキン復活のために様々な作戦を計画し実行している。
当初は悪魔界で計画の動向を見ていたが、中盤から自ら戦線に出向くことになる。
人間の事を激しく憎んでいるような素振りを時折見せている。


  • アックマー
演:津田寛治
デモキン及びデモリーナの部下である悪魔族の戦士。
人間だけでなく他人に化けることができる。
その特性を利用して怪物くんに化け、ヒロシの警戒心を全く無くし魔王石を強奪しようとしたことも。
デモキン復活のため直接人間界に出向き、人間の様々な欲望を集めるために人間に化けあらゆる悪事を行っていた。が、結局のところ怪物くん一行に返り討ちにされてしまう。


  • Dr.マリス
演:飯田基祐
デモキン及びデモリーナの部下である悪魔族の科学者。
科学者である故にデモキン一味の中で唯一の頭脳派であり、デモキンの復活の方法を冷静に分析し、人間の欲望よりも魔王石が必要だということを見抜いた。
その段差のある禿げ頭から怪物くんから「ケツ頭」呼ばわりされている。
なお、マリスという名前はフランス語で「悪意」を意味しており、「デーモン」や「悪魔」をもじったネーミングの他3人と比べるとかなり捻ったネーミングである。


【用語集】

魔王石

片手だけで収まる程の小さな白い石でこの作品の鍵を握る重要なアイテム。
封じられている怪物くんの念力を解放させるだけでなく、怪物界と人間界、悪魔界の均衡を司る力もあり、悪魔族のように悪意のある者が手にしたらその均衡が崩れ災いが起きてしまう。

念力

原作にも登場する不思議な力のこと。
なお、本来の意味は意思の力だけで物体を動かす能力のことである。
怪物くんには腕を伸ばしたり、他の人に変化するなどの念力を持っているが、それを封じる帽子を被らされているため魔王石が近くにないと効果が発揮できないようになっている。

ダークマター

集まった人間の欲望のエネルギーを貯めておく装置。
デモキン復活のために必要不可欠であったが、7話にて破壊されている。


【余談】

2010年度の紅白では嵐が司会を務めたことも相まって、企画枠の「キャラクター紅白歌合戦」に大野智扮する怪物くんが登場し挿入歌の「ユカイツーカイ怪物くん」を披露。
バックには80年代版アニメ怪物くんの映像が流れた。
バックダンサーとして八嶋智人扮するドラキュラ、上島竜兵扮するオオカミ男も登場したが、スケジュールの都合かチェ・ホンマン扮するフランケンは登場しなかった。*3

アクションシーンの撮影で怪物くん役のスタントマンが連続バク転を行ったが、これを見た大野智がしっくり来ないという理由で自ら連続バク転を行ったら大野のバク転のシーンが採用された。
ちなみに大野はデビュー前の主演舞台で共演した東映特撮作品でもお馴染みJAC(現:JAE)に所属するアクション俳優達にバク転などのアクロバットを教わった経緯がある。





さあ追記するザマス!修正するでガンス!!フンガー!!!(訳:編集する)

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  • 2010年
最終更新:2025年01月11日 10:10

*1 原作では怪物くんの本名という設定である。

*2 劇中ではヒロシやウタコからそれぞれ「ドラ木さん」、「カミ男さん」、「ケンさん」と呼ばれている。

*3 フランケンがいないという怪物くんの指摘に対し、ドラキュラが「怪物ランドから応援するでザマスよ」と怪物くんの世界観を壊さない返答をした。